栄えある任天堂製ADVシリーズ1作目、『ふぁみこんむかし話 新 鬼ヶ島』
シリーズ恒例の前後編ディスクである。
先日プレイした『遊遊記』の前作にあたるが、別に物語に繋がりはない。
(スターシステム式なので一部のキャラが続投しているくらい)
このシリーズにしては珍しくアクションパートが存在せず、純粋なADVゲームとなっている。その分、ADVとしての謎解きを要求されるシーンが多い。
システム的には大体が遊遊記と同じ。
つまり、あの『ひとかえる』システムもある。
今作では男主人公の『どんべ』と女主人公の『ひかり』を切り替えながら進んでいく。
遊遊記に比べると人数が少ない分、より主人公達が深く描写されていて感情移入もしやすい。
自分たちを育ててくれた老夫婦を救いたいという強い意志、
彼らの生い立ちと、その贖罪のための冒険、
冒険のさなか、多くの人物たちとの出会い。
それらの数々がシナリオをより魅力的にしてくれている。
タイトルから想像できるように、今作のテーマは『桃太郎』…かと思いきや『日本昔話のミックス』である。
作中に出てくるあらゆる要素に昔話としての元ネタがあり、桃太郎、かぐや姫、浦島太郎、金太郎、鶴の恩返し、舌切り雀などといったものを組み合わせた完全オリジナルのストーリーである。(これはほんの一例でもっとたくさんの昔話の要素がある)
昔話が元となったキャラたちは、どれもこれもコミカルで面白い。
物語時代の根底にある背景はかなり暗く、重いものになっているのだが、
そのコミカルなキャラたちが生き生きとして動いてくれるため、
常にプレイヤーが重く感じるということはない。
しかし、馬鹿みたいにずっと明るいというわけでもなく、決めるべきポイントではしっかり暗い展開や、それを打破するような燃える展開もある!
このメリハリの良さと感情移入のしやすさが今作の魅力である!
ラストシーンはどこか切ない。
プレイしていて『はじまりの森』のラストに近いものを感じた。
スタッフが同じだし、『はじまりの森』がオマージュだったのかもしれない。
ただし、シリーズ1作目ということもあって、システム的には不親切な点もちらほら。
特に、セーブ周りはどうにかしてほしかった感じはある。
難易度も体感的にはシリーズで一番高い。
特殊な攻略法を要求されることも多く、おまけに一つのミスで即座にゲームオーバー。
最終盤の『おしてみなよ』には笑うしかなかった。
一応、どこでもセーブができるので、ヤバげな選択肢を選ぶ前にセーブをすれば済むのだが、今作のセーブ*は死ぬほど不親切なのであんまり使いたくはない。
*鬼ヶ島のセーブシステム
今作のセーブではディスク入れ替え+ロード時間が発生する。
それだけなら他のADVと同じだが、鬼ヶ島の場合はセーブをするとタイトルに戻される。
タイトルからのデータロードには再びディスク入れ替えが必要で面倒くさい。
遊遊記のいったいさん(クイックセーブ)に慣れていると不便で仕方がない。
ただ、今作のアドバンテージはやはりプレイのしやすさにあるだろう。
何かと入手困難なこのシリーズにしては珍しく、VC配信も移植も行われている。
そのため、気になったらすぐに手を出せるのも魅力だろう。
というか今の時代にオリジナル版をプレイするのは自分のような奇特な人間しかいないだろう。セーブロード周りとかディスク入れ替えとか絶対VC版の方が楽だろうし。
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