いろいろとゲームを語ろう

物好きなゲーマーがただただ最近遊んだゲームの感想とか内容とか書いていくブログ。レトロゲームの割合が高いかもしれない。更新は気が向いた時にだけ。

Red Alarm (レッドアラーム)

任天堂1995年に世に送り出した持ち運べない携帯型ゲーム機Virtual Boy (バーチャルボーイ)』、その双眼鏡のような特徴的なフォルム、画面を覗き込むプレイスタイルという異質さから良くも悪くもゲーム業界、そして数多くのゲーマーに衝撃を与えたゲームハードである。早速だがこのバーチャルボーイが世間でどのような扱われ方をされているか、ぶっちゃけこのページに辿り着くような諸君であればよく理解していることであろう。

『赤い眼鏡』くらいならカワイイものだが、酷い例だと任天堂黒歴史なんて呼ばれることも珍しくはない。まぁ確かに国内売上わずか15万台(黒字ではあるらしい)、更に国内でリリースされたソフトがたった19本海外限定のモノを含んでも50本未満というソフトラインナップの少なさ、トドメに現役期間(本体発売から最後の公式ソフト登場までの期間)が僅か半年にも満たなかったあたり、任天堂の歴史の中でも有数のスッコケたハードなのは事実ではあるが…。
(これでも64DDとかと比較すると健闘してた方なんですよ)

だがしかし!バーチャルボーイ自体に魅力がないかと言われれば間違いなくNOである!!利便性こそかなぐり捨てているが、画面を覗き込むスコープ式だからこそできる臨場感は中々のものであるし、3D立体視も時代を考えれば驚かされること間違いなし。スペックだって当時の据置機(64/PS1/SS)には劣るが携帯機(GB)相手なら負けていない!

それを証明するかの如く、バーチャルボーイのゲームソフトには本機ならではの面白さを追求した、バーチャルボーイでないと遊べないゲームがあったのだ!というわけで今回は我が個人的にバーチャルボーイで一番の名作』と感じているこの作品、『Red Alarm (レッドアラーム)』について語っていくとするのである!!

なおバーチャルボーイハードウェアやコントローラ的に特徴的な仕様があまりにも多すぎるため、バーチャルボーイ自体の知識がないと今回の記事を読んでも理解が難しいかと思われる。バーチャルボーイ自体は本ブログでも過去記事で一度ガッツリと語っているため、そちらを読んでおくと今回の記事も読み進めやすくなる…かもしれない。

あともうひとつ注釈をつけておくと、バーチャルボーイ外部への画面出力の手段が存在しない都合上、本記事で使用するスクショは実機ゲーム画面の直撮りとなる。しかもバーチャルボーイはスコープ型かつ二画面式なので、『スコープの片側にスマホのカメラを突っ込んで撮影する』とかいう凄まじい力業である。よって画質は恐ろしく悪いし、撮影できるのは画面の一部分のみ(上下左右のどこかが見切れてしまう)である。先んじてこちらについては謝罪させていただこう。申し訳ない。

なにはともあれ改めまして本作『レッドアラーム』はバーチャルボーイ(VB)向けのゲームである。詳細は後述するが徹底的にVBに向けた作りとなっているため、2024年現在ほかのプラットフォームに移植されたことはなく、正真正銘プレイ環境はVB実機に限られる

発売日は1995年7月21日でコレはバーチャルボーイ本体と同日。つまりは本作はバーチャルボーイのローンチタイトルでもある。なお本作以外のローンチはマリオズテニス(任天堂)』『テレロボクサー(任天堂)』ギャラクティックピンボール(インテリジェントシステムズ)』『とびだせ!ぱにボン(ハドソン)』4本、ここだけ見るとジャンル被りがない理想的なラインナップではあった。
(その後に続くラインナップが貧弱だったのが痛い)

本作の開発/販売を手掛けたのは今は亡き『T&E SOFT (ティーアンドイーソフト)』、かつてはPC向けにハイドライドシリーズや『DAIVA』シリーズ等のゲームを作り、後にCS向けへとシフトした開発会社である。基本的にはゴルフゲームを主軸にしており、遙かなるオーガスタ『ペブルビーチの波濤』『ワールドグリーン』など多彩なプラットフォーム向けにゴルフゲームを開発してきていた。なんならバーチャルボーイでも本作から1ヶ月後に『T&E ヴァーチャル ゴルフ』をリリースすることになる。

この説明だけだとT&Eソフトはゴルフゲーム専門メーカーのように思われてしまいそうだが、実際にはゴルフ以外にもトンデモナイ作品が多い。例えばゲームボーイで多重スクロールを成し遂げたSTG『地球解放軍ジアース』クセになるスーパーファミコンのキューブパズル『Cu-On-Pa(クオンパ)』自動生成マップでいくらでも遊べ、かつ高い自由度で昨今のオープンワールドに近いゲーム性をセガサターンの時代に提示した『ヴァーチャルハイドライドなどなど。

我個人がこのメーカーに抱いている印象を一言で表すなら『いぶし銀』といったところ。ここが開発した作品は(一部粗削りなものもあるが)プログラム或いはゲームデザイン的に先進的なアイデアに満ちたものが多く、ゲーム業界の歴史において触れておきたい作品が目立つのだ。なんてことなく手に取った見知らぬ作品で『T&E』のコピーライトが目に入ったら『おっ!』とワクワクしてしまうような、そんな実力派メーカーである。

まず最初に本作における最大の特徴を挙げると、ズバリワイヤーフレームである。そう、本作ではメインのゲーム画面がほぼ全てワイヤーフレームのみで構成されているのだ!!…えっ、ワイヤーフレームとはなんぞや?』って…?まぁ若い世代の人とかだとわからぬ人もいるだろうし、サクッと説明しておこう。

ワイヤーフレームというのは3DCGのモデリング、およびレンダリング手法のひとつ。あ、モデリングは『3DCGを作る』こと、レンダリングは『3DCGを画面に表示させる』ことと考えておけば(とりあえず本記事を読むうえでは)大丈夫。もっとザックリと言うならワイヤーフレームとは『点(とそれを繋げる線)のみで画面を描画する』というものである。

…まぁ我も一端のゲームクリエイターではあるが、業種的にはデザイナー/モデラーではなくプログラマー/エンジニアの人間なので上記説明に誤りがあるかもしれぬことは先んじて言っておく。間違えてたらホントにゴメン。

描画する対象が点と線だけということもあり動作が非常に軽量であることも特徴で、それもあってこの技術はゲーム業界においても最初期から活用されている。なお昨今だと開発フェイズでこそワイヤーフレームを扱う場面は多分にあるが、実際にプレイヤーが観測できる範囲でワイヤーフレームが目に入ることは(意識的にそういう演出である場面を除き)なくなっている。これは美麗なテクスチャを張り付けた3DCGを画面にたくさん描画しても問題ないほどプラットフォーム側のスペックが向上したのが要因である。

ワイヤーフレームによって描かれる本作の立体的な世界は非常にシャープで、だからこそ独特なスタイリッシュさが感じられる。バーチャルボーイゆえに当然使える色は赤と黒の2色のみだが、ワイヤーフレームならばその2色あれば充分。視界がゲーム画面に埋め尽くされるのと、3D立体視の存在もあって本作は凄まじい没入感をプレイヤーに与えてくれるのだ。

さてさて、長くなってしまったがゲーム自体の基本システムの紹介に移ろうか。本作のゲームジャンルは『シューティング』、とはいえ縦スクロールや横スクロールではない『3Dシューティング』である!!プレイヤーは自機『レッドシェイフィス』を操作して並居る敵を撃退しつつステージを進み、最深部の『Danger Zone』に待ち受けるボスを倒していく。

プレイヤーが進んでいくことになるステージは先に触れたようにワイヤーフレームによって描かれた完全3Dステージ。自機は(基本的に)自動で奥へと進んでいくことになるが、ステージ自体は真っ直ぐだけでなく真上や真下へと続いていくこともあり、そういった局面においてプレイヤーはステージの流れに合わせて自機を方向転換させつつ進んでいかなくてはならない。また『自動で前に進む』とは行ったが、スクロールが強制されているわけではないため、クイックターン(後述)などを用いればステージを逆走することもできる

プレイヤーが巡ることになるステージは全部で5つ(+ラスボス戦のみの最終面)山岳地帯のような場面を縦横無尽に抜ける3面迷路じみた構造の古代遺跡をワープゾーンを駆使して脱出する4面、高速で逃げるザコ敵を追いながら敵の本拠地を奥へ奥へと進む5面などなど…敵の配置や背景のデザインを工夫することでワイヤーフレームでここまでできるのかと思うくらい特色豊かなものが揃っている。もちろん最深部に待ち受ける大ボスや道中の中ボスはいずれも固有のもの。

ステージがある程度進行すると『Danger Zone(デンジャーゾーン)』というエリアに突入。デンジャーゾーンはボス戦専用の大きなフィールドで、プレイヤーは360度自由に飛び回りながら大量のザコを凌ぎつつボスと戦うことになる。ボスを倒すことができれば無事ステージクリア。

というわけで既になんとなく察しているかもしれないが、本作のゲーム性はぶっちゃけ『スターフォックス』をイメージすればだいたい伝わる『移動(スクロール)の自由度がかなり高まったスターフォックスみたいな感じだろうか。デンジャーゾーンの『360度移動可能な専用フィールドでのボス戦』はある意味『スターフォックス64』の『オールレンジモード』を先取りしていると言えるかもしれない。
(スタフォ無印は1993年、スタフォ64は1997年、本作は1995年)

ゲーム中の操作はデフォルト設定の場合、左側の十字ボタンで自機の移動、右側十字ボタンで自機のスライド移動Aでスピードアップ、BでブレーキRでショット、LでクイックターンSELECTで視点切り替え、STARTでポーズ…となんとなく伝わるようにSTGにしては極めて複雑ただでさえ独特なバーチャルボーイのコントローラ*のボタンを文字通りフル活用する。

*バーチャルボーイのコントローラ
ボタン配置だけ見れば完全に左右対称
左側に十字キーとSTART/SELECT、そしてLボタン
右側に十字キーとA/B、そしてRボタン
数ある任天堂ハードの中でも唯一十字キーが二つある
また電源ケーブルの役割を兼ねているため、
ACアダプタ或いは単三電池(6本)をセットする必要があり、思ったよりも結構重い
詳細は過去のVBそのものを語る記事を参照(手抜き)

それもあってか操作の習熟難易度はかなり高めの部類であるが、上手く操作できるようになったあとの爽快感は格別なのも間違いない。もっとも、サクッと遊ぶだけなら移動(左十字キー)とショット(R)だけ覚えておけば割となんとかなるので、そんなに気負う必要もない。

より詳細に一つずつ説明していくと左側十字ボタンの『移動』はオーソドックスな旋回移動右側十字ボタンの『スライド移動』では自機の向きはそのままに入力した方向へ高速移動できる。その場限りの緊急回避としては使えるが移動にはあまり適さない。またLボタンを押している間はクイックターン状態となり左側十字ボタンでの旋回量が増加、通常よりも大きく曲がることができるようにもなる。後述のブレーキと組み合わせればその場で真後ろを向くことも可能である。

Rボタンを押すと『ショット』が可能、自機の正面方向に対して攻撃できるほか、ボタンを押しっぱなしにしている間はオート連射もしてくれる。また自機を敵の方向へ向ければ『ロックオン』状態となり、そこで再度Bボタンを押すと『ロックオン攻撃』が可能。自動で敵を追尾してくれるためなにかと役に立つ。ロックオンは専用のアイテムを拾うことでパワーアップでき、最大でレベル4まで成長する。

A/Bボタンは『スピードアップ』と『ブレーキ』に用いられる。ABどちらのボタンを押していなくても自動で前に進み続けるが、Aボタンを押すと少しずつスピードが上昇Bボタンを押すと減速してその場に停止更に押し続けるとなんと後退も可能。運用としては敵に狙われた時にやりすごすのがメイン。スピードアップ時の最高速度はアイテムを拾うごとに上昇していく。

敵キャラの中には進行ルートを塞ぐ中ボス(グラディウスでいうところの壁コア的なヤツ)もおり、そういった敵を前にしたときはちゃんとブレーキを活用しなければならない。でないと倒す前に正面からボスにブチ当たる羽目になるからだ。デンジャーゾーンでもそれは同じで、同じエリアに留まり続けるタイプのボスを相手取る場合にブレーキ+ショット連射は非常に有効である。

SELECTボタンを押すとプレイ中の視点が大きく切り替わる。視点は押すたびに『自機の斜め後ろ視点』『自機の後方視点』『自機の後方視点(ズーム)』『コックピット視点』と変化していく。ぶっちゃけ真っ当にゲームをプレイしたいならば『自機の後方視点』一択になってしまうが、一度は『コックピット視点』も体感してみてほしい。すっげぇ没入感を感じられるぞよ。やっぱりどんな3Dシューティングにおいてもコックピット視点こそが一番の華であるぞ…!
(我はこういう『主観視点での自動スクロールタイプのSTG』が大好きです)

ボタン配置についてはオプション画面からキーコンを4パターンから変更可能、キーコンの選択画面ではコントローラの図解付きで操作説明をしてくれるのがありがたい。なおキーコン選択画面はタイトル画面のほか、通常のゲームプレイ中にも呼び出すこともできる。

続いてはゲームオーバーまわり。本作はライフ制を採用しており、『シールド』が体力の役割を果たしている。シールドは初期値10からスタートし被弾とともに削れていく。これが0になってしまったら自機が大破してゲームオーバー。つまり10回までの被弾が許されるため、思った以上に本作の自機は頑丈である。

ほかにもFUEL(燃料)の概念もあり、これはステージ開始直後から時間経過とともに減少、0になったらミスという事実上のタイムリミット。適度に急ぎながらステージを進むべし。なんらかの形でミスになった場合は3回まで『コンティニュー』が行える。コンティニュー時は装備がリセットされてゲームオーバー時のステージ冒頭からリスタート。残念ながら中間ポイントなんて優しいものはない…がステージ自体の長さは適度なので、ちゃんと配置を覚えておけばきっと突破はできるハズ。

プレイ中、画面上では四隅に現在の自機の状況が表示される左上と右上がそれぞれ現在のロックオンとブースター(最高速)のパワーアップの状況で、左下がシールド…つまり自機の残体力、右下が自機の現在のスピードである。ややビジュアル重視のUIなので最初は面食らうかもだが、重要なパラメータそのものは数値化されて画面に表示されているので難しく考えなければいい。

一方で四隅という都合上、(視界的な意味で)見辛いというのは難点だが、パラメータが変動した時は画面中央にもメッセージが出るので、最悪そこさえ見逃さなければ大丈夫。これらのUIはあまりじっくり見る余裕こそないがスタイリッシュで実に格好いい。耐久が減るにつれ左下の表示が削れていくシールド、速度に応じて車のギアの如く切り替わっていくスピードあたりは一度見てみてほしい。

そしてステージクリア時、或いはゲームオーバー時には『REPLAY(リプレイ)』という項目が選択できる。リプレイではそのステージの開始~ステージクリアorゲームオーバーまでの一連の自分のプレイをそのまま見返すことができるのだが、ここではなんとカメラを自由に操作可能!自分自身のプレイを正面や真下などの特殊なアングルから眺めることができる。

カメラは移動やズームイン/ズームアウト、回転といったことができるので、自分なりに格好いいアングルの映像を眺めて存分にニヤニヤするといいだろう。実用的な方面でいえば、『(主観視点でのプレイ時などで)なんで死んだのかわからない』ケースでの死因チェックにも使える。

バーチャルボーイのゲームならではの強みとして本作の『3D立体視』は珠玉というほかない。ワイヤーフレームのおかげで軽快に飛び回れる3Dステージは立体視ひいてはバーチャルボーイそのものの未来に希望を持たせるには十分すぎるものであった。ぶっちゃけこのゲームのためだけにバーチャルボーイを購入する価値があるとすら言ってもいいレベルである。

一方でガンガンに3Dフィールドを飛び回る都合上、非常に酔いやすいのもまた事実ワイヤーフレームゆえの視認性で『どこが壁なのかがわかりづらい』というケース(特に壁に密着しているときに顕著)も慣れるまでは頻発するだろう。本作ではオプション画面の『BRIGHT(明るさ)』『DEPTH(奥行き)』という項目にて視認性を調整することもできるので、自分にあった調整をやっておこう。そしてVB特有の『AUTO PAUSE』*が表示された時はちゃんと休憩をお忘れなく

*AUTO PAUSE(オートポーズ)
全てのバーチャルボーイ用ゲームソフトに標準搭載された機能
画面をずっと見続けることで発生する疲労をフォローするため、
一度のプレイ時間が一定をオーバーすると、
特定タイミングでゲーム側から強制的にゲームが一時停止される
ボタンを押せば即座に解除されゲーム本編に戻れるが、
ここでひとまず休憩をはさむのをオススメする。
なお挿入タイミングは『ステージクリア後/ゲームオーバー後』のように
ゲーム的に影響がない場面なので、『オートポーズでやられた』みたいなことはない
詳細は過去のVBそのものを語る記事を参照(手抜き)

ゲームの難易度はシューティングとして見た場合は並レベル極端に難しいわけではないがクセ自体は強いので慣れるまで少々厳しい。ただしステージ構造や敵の動きは基本シンプルでパターンも決まっているため、操作に慣れてからは一般的なSTGらしい攻略法が通用する。

先に挙げたようにコンティニューも3回まで可能であるし、なんなら隠しコマンド(後述)でステージセレクトすらもできる。手段さえ選ばないならばクリア難易度はさらに下がるだろう。またゲーム自体の難易度はオプションから変更可能で『EASY』『NORMAL』『HARD』の三段階から選択可能。特定難易度限定の要素などは一切ないため、自分の腕前と相談して選ぶべし。

シューティングということで気になるBGMも中々クセになるものが多い。本作のBGMの作曲を手掛けているのはKen Kojima(小島健)氏、本作以外では『Blaze&Blade EQ』『モンスターシード』なども手掛けている人である。重く冷たい音使いが目立つBGM群は本作の硬派なビジュアルによく似合っている

全5面、およびそれらのボス戦全てに専用のBGMが用意されているのもあって、ステージ数の割に曲数もやや多めである。個人的には『STAGE4』『THE FINAL STAGE』、それから『REPLAY』がイチオシ。なお本作は裏技(後述)にてサウンドテストが行えるので、そちらを使えばいくらでもじっくり聞くことができる。またBGMとは少々違うのだが、ゲーム開始時には『Good Luck!』、ステージクリア時には『Fantasticks!』などなど、随所で割とクリアなボイスで流れるのも素晴らしい。

そして本作を語るうえで欠かせないのが、その溢れ出るセンスにある。元々ワイヤーフレームだけで描かれる世界というだけで一部の層にはたまらない絵面なのだが、本作ではそのうえでワイヤーフレーム上で描かれる演出の良質さが輝いている。例えば起動して即座に流れ出すレッドシェイフィスの発進シークエンス、エレベータを昇り発進する…言葉にすればただそれだけの場面だが、様々な視点から機体を映すそのカメラ演出はとにかく印象的。後方に一瞬だけ映りこむ基地もちゃんと描かれていたり発進した瞬間に機体のタイヤ(?)が収納されてたりと細かなところにも手を抜いておらず、この時点で『このゲームは!何か違うぞ!!』と誰しもが思うだろう。ラスボス撃破後にはスタッフクレジットと共に敵基地を破壊しながら脱出するレッドシェイフィスの姿が描かれ、これもまた引き込まれる。

さてさて、本作は『軽量なワイヤーフレームによる3D描写』といったウリが見事に『3D立体視』『スコープ式ゆえの没入感』を有するバーチャルボーイというハードにマッチしたゲームだといえる。だからこそこのゲームはバーチャルボーイでしか遊ぶことができない、バーチャルボーイだからこそ生まれたゲームなのだ。これほどの作品がローンチで生まれたというのは、短命に終わったVBのハード人生において数少ない幸運だったといえるだろう。

とはいえワイヤーフレーム自体は流石に今の時代に改めて見直すとあまりにもレトロな技術であり、人によっては古臭いとすら思えるかもしれない。だが我はクリエイターがその時代でできる限りの技術・表現を駆使してその世界を徹底的に描いている本作の様を見て『愛おしい』と感じている。こればっかりは流石に今の時代に真似しようと思っても決して真似できない境地であろう。


(画像は駿河屋の秋葉原店、ソフトが欲しい場合は店員さんへどうぞ)

というわけで締めに入る前に余談をひとつ挟むのだが、バーチャルボーイ(とそのローンチでもある本作)が登場してから29年もの時が流れた2024年5月頃になって、どういうわけか日本全国の駿河(レトロゲームを含め中古品を取り扱うお店)の店頭に本作の完品パッケージが山積みされるようになった。どうも倉庫から発掘されたらしい…?

そのお値段たるや驚きの1200円(秋葉原の場合)!本作はVBのタイトル内だと中古市場に結構流れている部類であり、プレミアからは縁遠いお安めのゲームなのだが、新品状態の箱・説明書付きと考えると1200円は破格といっていい。バーチャルボーイを所有していてまだ本作を遊んだことのない人はこの機会に是非とも手を出してみるといいだろう。


(左側が元々持ってたやつ、右側が今回新調したヤツ)

…まぁVBでもトップクラスの名作であることは既に知れ渡っているため、大多数のバーチャルボーイ所有者は本作を既に所持していそうなものではあるけど。なお我は元々持ってた箱がズタボロだったので、この機会にコレクション用に1つ追加購入致しました。

なにはともあれバーチャルボーイのスタートダッシュを飾り、そしてバーチャルボーイの象徴にして一番の名作であると知られる『レッドアラーム』、プレイ環境の構築のハードルゆえに気軽なオススメこそできないが、もしもバーチャルボーイを手に取ることがあれば、ぜひぜひ遊んでみてほしいところなのである!!

 

『バーチャルボーイ(本体)』のAmazonページ

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オマケの裏技(デバッグメニュー)コーナー

スタート画面(タイトルロゴが表示されている画面)で『SELECTボタンを60回入力する』と爆発音が鳴り、以後デバッグメニューが開けるようになる。爆発音さえ鳴っていればOKなので、律儀に入力回数を数えなくてもただシンプルに連打していればOK。その後は普通にゲームを開始し、プレイ中に『A,L,R,SELECTを同時押し』デバッグメニューが出現する。

デバッグメニューでは『ステージセレクト』が可能で、1面から最終面(6面)までの好きなステージに挑むことができる。コンティニューを気にせずに挑めるようになるので、あえなく残機を全て失ってしまったあとの再開に便利。使用そのものにペナルティ等は課せられないため、どうしてもクリアできない人は活用するといいだろう。もちろんこの方法で最終面をクリアしてもエンディングは流れる。

なおステージセレクトの上にある『SPECIAL』というのは、ゲーム開発用語でいえば『ゴッドモード』的なヤツ…と思ったけど我の経験してきた現場ローカルの用語カモ。早い話がフル強化&完全無敵モードである。使用すればクリア間違いなしだが、ゲームとしての面白さを大きく損ないかねないのでご利用は計画的に。なお本記事にてスクショを撮る時はお世話になりました。

そしてデバッグメニュー内の『MUSIC』では本作の全BGMのサウンドテストも可能。プレイ中はゲーム部分が忙しかったりSEの存在もあってじっくり聞けなかったBGM群はここで余すところなく堪能するといいだろう。