これまで、『ふぁみこんむかし話』シリーズについてちょくちょく語ってきたわけだが、別にディスクシステムの任天堂製ADVは『ふぁみこんむかし話』だけではない。
そもそも、勝手に同一シリーズにカウントしていた『タイムツイスト』もよく考えてみると『ふぁみこんむかし話』とは別物だし。
(システムは『むかし話』シリーズを踏襲)
話が逸れたが、今回はその『もう一つの任天堂製ADVシリーズ』について語っていく。
『ふぁみこんむかし話』シリーズと双璧を成すADVシリーズ、その名も『ファミコン探偵倶楽部』シリーズである!
『むかし話』が小さい子供から楽しめるシリーズならば、
『探偵倶楽部』は中高生あたりから楽しめるようなシリーズである。
なんていうか、こう、響きが大人っぽいよね『探偵倶楽部』って。
独特なシステム(ひとかえる・憑依)がある『むかし話』に比べると、そういったものがない『探偵倶楽部』はより一般的なADVゲームに近い。
シリーズに共通している要素として、プレイヤーは探偵(の助手)となり、事件を解明すべく聞き込みや調査を行っていく。
シナリオの分岐などは原則的になく、一本道。
(この辺はむかし話と同じ)
ゲームオーバーなどの概念もないため、最終的には総当たりでの攻略が可能。
プレイヤーが推理すべき局面も少なからずあるが、基本的には主人公が勝手に推理して進めてくれるので、『推理ゲーム』というよりは、どっちかというと『探偵小説』の方が近い。
今作はそんな『ファミコン探偵倶楽部』シリーズの1作目、『消えた後継者』である。
最早お馴染みの前後編ディスクである。
どうでもいいが、『探偵倶楽部』は『むかし話』と異なり、マップ移動でディスク入れ替えを要求されることがそこそこあるのでプレイ中にドライブが死なないか心配になってくる。
今作の物語は主人公が記憶喪失になる場面からスタートする。
一般的な推理ADVだとこのタイミングでチュートリアル、基礎知識をプレイヤーが覚えたら記憶が戻るとかいう王道パターンになるところだが、今作ではチュートリアルを終えても記憶が戻らず、主人公は自分の名前(自由に設定可)を思い出すだけに留まっている。
これは、今作の根幹となる設定に主人公の記憶がモロに関わってくるためである。
また、主人公が記憶を無くしたのは『事件の真相を知ったタイミング』であるため、主人公の記憶を戻すということは、『物語の全貌が明らかになる』ことと同じ。
そのため、今作限定のコマンドとして『おもいだす』というものがある。
これは文字通り主人公の失った記憶を『思い出す』というものであり、
シナリオ中の重要なタイミングで実行することになる。
また、探偵ものらしく『すいりする』というコマンドも存在。
シナリオの節目節目において状況を整理するために使われる。
このコマンドのおかげで物語をより分かりやすく、没入しやすくなっている。
状況に応じて選択できるコマンドの数も変わる(=使わないコマンドは表示されない)ため、総当たりもしやすく難易度は低め。
ちなみに、一般的なADVで言うところの『セーブ』にあたるコマンドは『そうさやめる』になっている。
意味は文字通り『操作を辞める』、一見それっぽくセーブを言い換えているだけだが、これにもしっかり意味がある。
シナリオ自体のクオリティも高く、連続殺人事件の裏にある集落の伝承や村の有力者家系のイザコザなどなど、多くの要素が絡みあった一つの巨大な事件が描かれる。
集落の伝承によって否が応にも不気味な雰囲気が漂っており、いくつかホラー的な演出もあり、初見プレイならまず間違いなくビビる。
(あくまで雰囲気だけで、オチがホラーだったりはしない)
暗い場面もあれば、笑える場面も悲しい場面もあり、シリアスもギャグもメリハリよく描かれているのがいい。
キャラクターも裏方で頑張るヒロイン『橘あゆみ』、優れた直観を持つ『天地さん』、独特な口調の医者『熊田先生』などなど、全員がキャラ立ちしていて魅力的。
シリアスもギャグもこなし、かつ絶対死なないであろう謎の安心感がある熊田先生は凄いと思う。
(一方で重要そうな空木さんは一切出番がない。何故だ)
ディスク前後編なだけあってサウンドによる演出にも力が入っていて、プレイしていてどんどん引き込まれるのが魅力。
謎が増えたときに必ず鳴るSEは本当に不気味で驚かされる。
BGMも雰囲気に合っていて、殺人現場で流れる緊張感溢れる物や、探偵事務所で推理する際の緩やかな物などは特に素晴らしい。
グラフィックもファミコンの限界レベルに挑戦しており、演出やバリエーションも豊富。
特に殺人現場は非常に細かく描写されていて、一部のシーンでは遺体のアップがガッツリ描かれる。所謂規制などがない時代なのでかなりストレートなグロ描写である。
(見てて堪えられないレベルのものなどは一切ないのでグロ耐性が低くても大丈夫だが)
ただ、結局はファミコンなので結構無茶なグラフィックも少なくない。
しかし、それがまた想像を掻き立てられ、今作でしか味わえない不気味さを感じられる。
BGM良しキャラ良しシナリオ良しとどこをとっても素晴らしいものの、やはり問題点もなくはない。特に『しらべる』コマンドを使うパートがかなり不親切。
『しらべる』コマンドは画面内の好きなポイントを調べる、というよくあるものだが、今作の『しらべる』は一部の入力を受け付けるポイントがかなり小さい。
とある死体を調べるシーンは特に顕著で、ほんの数ドットズレただけでセリフが変わる。
(しかもコレがフラグに関わっている)
選択肢が限られているとはいえ、選択できなければ意味がないのである。
まぁ、このあたりはシリーズ1作目であるから不親切なのも仕方ないと思う。
次回作以降ではしっかり改善されているので安心である。
今作は任天堂製ADVシリーズの中でも一番移植に恵まれているタイトルである。
GBAでは移植、Wii/WiiUや3DSでのVC配信などなど。
時代が時代なのでシステム面では一部気になる面はあるものの、この雰囲気や演出はこの当時ならではのものであり、物語は今の時代でも十二分に通用するので、今からでも絶対にプレイすべき名作ADVであった!
オマケ
『タイムツイスト』まではプレイ中の画面を直接撮影していたが、
今回からはレトロフリークのスクショ機能を使っている。
機材揃えるのがめんどくさかったけどやっぱスクショ撮れるのは便利ね。
たまーにディスク入れ替えが恋しくなるので実機でのプレイもしたりするけど。
他の任天堂製ADVはこちら