かつてスーパーファミコンと共に華々しくデビューを飾り、全世界で今なお根強い人気を誇る任天堂のレースゲーム『F-ZERO』。そこから始まるF-ZEROシリーズはここ数年…いや十数年に渡って深い眠りについていたのだが、約19年に渡る休止期間を経てとうとう先日NintendoSwitchという現行機種に『F-ZERO 99』として復活を遂げることとなった。コレは実に喜ばしい出来事である。同社の『マリオカート』とは全く異なる『F-ZEROの面白さ』は『F-ZERO』でしか味わうことができない。だからこそこのシリーズに魂を囚われたままのゲーマーは少なくなかったのだ。
…ついでにその影響で我がブログもとある記事のアクセス数が地味に増えたのも個人的には見逃せない。過去にF-ZERO回なんてあったっけ?と思ったそこの貴方、あったんですよ『BS F-ZERO GRAND PRIX 2』…通称『F-ZERO 2』が!!
今から3年前にサテラビュー回の後編として極めてサックリ語った記事であるが、実は本作の情報がネットにほぼ転がっていないこともあって妙にアクセス数が多め。しかしながらその内容は極めて薄かったため、今回こうして記事そのもののリメイクにあたった次第である。なお過去記事のリメイクゆえに過去のサテラビュー回前後編との重複も多いが、そこは目を瞑ってほしい。
というわけで今回の主役は『BS F-ZERO GRAND PRIX 2』!本作は任天堂が誇る名作レースゲーム『F-ZERO』シリーズの2作目。そしてその一方で『幻のF-ZERO』でもある。『F-ZEROの2作目ってニンテンドウ64のF-ZERO Xだろ?』と思ったかもしれないが、実は誰にも知られていない方法で初代F-ZEROとF-ZERO Xの僅かな合間に幻のシリーズ2作目が送り出されていたのだ。
じゃあ本作『F-ZERO 2』はどのプラットフォームでリリースされたのか気になることだろう。答えは実に簡単、初代F-ZEROと同じくスーパーファミコン(SFC)である。…もっともただのスーファミではない。スーファミ用周辺機器、早すぎたオンラインサービスの先駆け『サテラビュー』を介してのリリースとなったのだ。
…よく任天堂の未知/未開拓の領域に真っ先に突っ込まされることから『ファイアーエムブレム』シリーズが『(開発はISだが)任天堂の核実験場』などと揶揄されることもあるが、ぶっちゃけこの『F-ZERO』シリーズも似たようなもんだと思うのである。64DDの『F-ZERO X EXPANSION KIT』だのGC-AC間でデータ連動かつSEGAとの共同開発な『F-ZERO GX/AX』だの先行き不明すぎる市場に毎度毎度ぶっこまれてきたのがF-ZEROなのだ。そんなF-ZEROのチャレンジのある種はじまりといえるのが、今宵の記事の主役たるサテラビュー限定配信ソフトである本作なのだ!!
ここからはゲーム内容に先んじてサテラビューについて説明していくとしよう。そもそも『サテラビュー』というのはスーパーファミコンの末期1995年にリリースされた周辺機器である。誰もが知っている天下の任天堂と衛星デジタル音楽放送の放送局セント・ギガ(St.GIGA)というタッグで送り出された本機は『衛星データ放送でゲームを受信しプレイできる』という当時にしてはあまりにも早すぎる代物であった。
(ちなみにSEGAは1990年に電話回線でゲームをDLする『ゲーム図書館』をメガドラでリリースしていたり)
より詳細に説明するとSFCの下部にモデムを内蔵したサテラビュー本体を取り付け、衛星放送受信用ソフト『BS-X -それは名前を盗まれた街の物語-』を介してゲームの起動やダウンロードを行う…という代物である。一応サテラビュー本体がなくても衛星放送受信カセット単独でも起動でき、その場合はDL済みのゲームの起動と『名前を盗まれた街』を歩き回ることだけが可能。
価格そのものは18000円と少々高額気味であるが、その後はサテラビューに関する追加料金は発生せず(初期投資を除けば)様々なゲームを無料で楽しむことができた。ダウンロードしたゲームは同じく周辺機器の『8Mメモリーパック』に保存される。8Mメモリーパックは衛星放送受信カセットの上部に差し込むことで動作するもので、サテラビュー以外にはRPGツクールなどでも使用できた。ただし8Mメモリーパックはその名の通り8メガ…それも8MBではなく8Mbit(≒1MB)しか容量がなく、そのくせ後述するよう耐久面に難がある非常に厄介な代物だったりする。
サテラビューのゲームには大きく分けて『サウンドリンクゲーム』と『BSオリジナルゲーム』の2種類が存在する。
サウンドリンクゲームはゲームと同時にラジオ放送を流すことで疑似的なボイス付きでゲームを楽しめたり、時間に連動したイベントを発生させたりとリアルタイムでのゲーム体験を楽しめるモノ。代表的なタイトルは『BSファイアーエムブレム アカネイア戦記』や『BSゼルダの伝説 古代の石盤』、『BS探偵倶楽部 雪に消えた過去』などなど。
いずれも超有名シリーズのスピンオフである。サウンドリンクゲームはそのシステム上プレイできる日付/時間帯が事前に定められており、それ以外の時間では一切プレイすることができないのが難点。また要求される容量も大きく、サウンドリンクゲームのDLを行う際に一つの8Mメモリーパックの容量を全て食い尽くしてしまう…らしい。
(このあたりは当時を生きた人間ではないので伝聞です)
(左が『ワリオの森 再び(Wario's Woods)』、右が『ヨッシーのパネポン(Tetris Attack)』)
もう一方のBSオリジナルゲームは8MメモリーパックにDLするまではサウンドリンクゲームと同じだが、そこからの起動は完全に自由。ゲームをDL済みの8Mメモリーパックさえあれば現代であっても遊ぶことができる。ラジオ放送との連動は行われないため、ゲーム内容自体はオーソドックスなSFC用ソフトとそう変わらない。むしろ8Mメモリーパック(容量8Mbit≒1MB)に収まるよう開発されているため、当時のSFC用ソフトに比べるとコンパクトな作品が多い。こっちの代表作は『恋はバランス』や『カービィのおもちゃ箱』、『スペシャルティーショット』など。
(『TETRIS & Dr.Mario』のドクターマリオだけを抜き出したものが『BSドクターマリオ』)
ほかにも『ヨッシーのパネポン(Tetris Attack)』『ワリオの森 再び(Wario's Woods)』のように当時SNES(海外版SFC)でのみリリースされ日本未発売であった作品をローカライズして配信している例も。良くも悪くもサテラビュー独自の要素が控えめなので、数こそ少ないながら後年に復刻された『ラジカル・ドリーマーズ』『改造町人シュビビンマン零』やニンテンドウパワーでリリースされた『BSドクターマリオ』『すってはっくん』のように奇跡的に救済されるケースもないわけではない。
(サウンドリンクゲームだと『BS新・鬼ヶ島』が『平成 新・鬼ヶ島』としてパッケージで販売された)
BSオリジナルゲームと同じような扱いである程度機能を制限したゲームの体験版(起動回数制限やセーブ禁止)も配信されていて、極端な例では実際にリリースされることはなかったがサテラビュー経由で体験版の配信が行われた…なんてモノもある。2020年にはSFC版の『クーリー・スカンク』という未発売ゲームが24年振りに8Mメモリーパック内の体験版データから発掘されるとかいうミラクルな出来事もあった。
(『BS-X -それは名前を盗まれた街の物語-』)
…で、そんなサテラビューだがその後どうなったかというと…まぁ残念ながらヒットはしなかった。任天堂の失敗といえば…という話題で真っ先にとまでは言わないが非常に早いタイミングでその名が挙がるほどである。
失敗した理由はもろもろ考えられるが、大きな要因としては『根本的な知名度の低さ』、そして『導入までのハードルの高さ』があったのだろう。
そもそも先に挙げたようにサテラビューとは『衛星放送を受信してゲームをDLする』代物である。つまりだ、BS放送を受信できない家庭では導入すら行えない。元々BS契約済みであったならいざ知らず、わざわざサテラビューのためにアンテナを設置するなんて人はほぼいなかったことだろう。ソレもSFCの主要ターゲット層たるちびっこならば財布の主導権は親御さんにあるので尚更そうだ。オマケに流通は当初通販オンリー。そんなもんが普及するかというと間違いなくNOである。後に店頭販売されただけ64DDよりは幾分マシだろうが。
サテラビュー自体のサービスがどういったものか伝わりづらかったのも原因だろう。サテラビューの料金形態やサービス内容は今から考えればシンプルなものであるが、当時にしてはあまりにも荒唐無稽で理解のしがたいものであった。繰り返すがSFCの主要ターゲット層はちびっこが主体、その保護者もゲームなどの娯楽に纏わる知識を身に付けていない人が多かった時代のハナシである。
『初期投資さえ済ませてしまえば以降は無料でゲームを楽しめる』というサービス内容に『通常のパッケージ販売とは異なる形態での小規模ソフト配信』、『リアルタイム性を強めた参加型のゲーム体験』など、言ってしまえばのちのバーチャルコンソール(Wii/3DS/WiiU)をはじめとするゲーム配信やニンテンドースイッチオンライン(Nintendo Switch)といったサブスク概念の先駆けでもあり、とにかく新しい物尽くしで未来を見据えていたのはその通りなのだろう。しかしながら早すぎた。サテラビューというサービスを普及させるにはまだユーザー側の知識も、インフラ面も全く追い付いていなかったのだ。
そしてその一方でサテラビューは遅すぎた。最初にも触れたがサテラビューがリリースされたのは1995年のこと。…スーパーファミコンが登場してから既に5年が経過し、前年にはもう他社からCD-ROM搭載の最新機種PlayStation(SCE)とセガサターン(SEGA)が登場している。…というかサテラビューが登場した時点で既にスーファミに続く次世代機として『プロジェクト・リアリティ』もとい『ウルトラ64』が発表されていたのだ。ゲーマーであれば『得体の知れない旧ハードの周辺機器』と『圧倒的ハイスペックの新ハード』のどちらに注目するかなどいうまでもなかろう。
サテラビューの翌年には任天堂の最新機ウルトラ64改め『ニンテンドウ64』がリリース。それに合わせてSSもPS1も値下げ競争が苛烈化…これによりサテラビューの運命は完全に決定づけられたといってもいいだろう。むしろこんな状況の中でN64末期の2000年までサービスが継続したのはだいぶ健闘した方だといえる。
つまりサテラビューとは『(技術やアイデア面では)早すぎて、そして(ハード寿命的には)遅すぎた周辺機器』だった…と我は考えている。せめてもう少し早く生まれていれば、或いはもっともっと遅い時代に生まれていれば、何かが変わっていたのかもしれない。
…さてさて、サテラビューのざっくりしたオハナシを終えたところで記事を締めくくりたい気分であるが忘れてはなかろうか、本記事は『サテラビューのF-ZERO』を語る記事である。すなわちここからが本題中の本題である!
ところで本題に入る前にひとつ説明しておくと、サテラビューのF-ZEROというのは3種類存在する。初っぱなから衝撃的かもしれないがコレが事実。具体的には『BS F-ZERO GRAND PRIX』『BS F-ZERO GRAND PRIX 2』『BS F-ZERO GRAND PRIX 2 プラクティス』の3つ。この記事で語るのはタイトルにある通り最後の『プラクティス版』である。
まずは順を追って説明しよう。SFCで好評を博した初代F-ZEROをサテラビュー向けに移植したものが『BS F-ZERO GRAND PRIX(以後BS F-ZERO)』。コレはサウンドリンクゲームに該当し、ラジオ放送で流れる実況をバックに5つのコースから成るグランプリに挑戦するゲームであった。全4週にかけて配信され、週ごとにグランプリの内容が変化する…というもの。登場コースは初代F-ZEROに登場した15コース(ミュートシティIのみ2回登場)にBSオリジナルの下記4コースを加えた計19コースである…らしい。
BIG BLUE Ⅱ
SILENCE Ⅱ
SAND STORM Ⅰ
SAND STORM Ⅱ
そしてその後にリリースされたのが『BS F-ZERO GRAND PRIX 2(以後BS F-ZERO 2)』。基本システムは『BS F-ZERO』と同じでラジオ放送をバックにグランプリに挑戦するサウンドリンクゲームである。こちらが放送されたのがわずか2週のみであったが、その代わり登場した10コースはすべて初代F-ZEROにはない完全オリジナルコースとなっている。具体的には『BS F-ZERO』の4コースにさらに下記6コースが追加された…らしい。
MUTE CITY Ⅳ
FOREST Ⅰ
FOREST Ⅱ
FOREST Ⅲ
METAL FORT Ⅰ
METAL FORT Ⅱ
…『らしい』などと伝聞調なのが気になるだろうが、このふたつはサウンドリンクゲームゆえに現代では一切プレイできず、その情報すらもほんの僅かしか残されていないためである。なんなら後述する『プラクティス版』ですら、あの情報量がゼロに等しい我がブログ記事(旧)が検索トップに出てくるレベルで情報が散逸してしまっているのだ。
(コレは本作に限らずサテラビュー作品全般にいえる)
『BS F-ZERO』『BS F-ZERO 2』双方のゲーム内容についてはさっくり理解できたと思うが、本記事前半でも語ったようにサウンドリンクゲームにはプレイできる制限時間というものが課せられている。具体的には1時間。さてさて、レースゲームが得意な諸君らに尋ねたい。『1時間内に5つの高難易度コースを通しで完走し、さらに高順位/好タイムを叩き出せ』と言われて、実際に5つのコース全てで満足のいく結果は出せると思うか?よほど腕に覚えがないプレイヤーでもない限り不可能であろう。
というわけでこのゲームにガチで挑むプレイヤーは放送前にそれらのコースの練習をすることとなる。しかしながら『BS F-ZERO 2』ではそうもいかない。何故ならすべてのコースがオリジナルコースなのだから。これらはモチロン初代『F-ZERO』ではフォローしきれず、また『BS F-ZERO』はサウンドリンクゲームという都合上、時間外で起動することができない。
こうなってはぶっつけ本番で…とならないように任天堂が差し伸べた救済の手、それこそが本記事における真の主役『BS F-ZERO GRAND PRIX 2 プラクティス』である!
(タイトルが長いので今後は『本作』や『プラクティス版』と呼称します)
本作『BS F-ZERO GRAND PRIX 2 プラクティス』…『プラクティス版』はそのタイトルが示す通り『BS F-ZERO 2』に先駆けて配信された練習用バージョン。『BS F-ZERO 2』の10コースの中から、その半数の5コースのみをピックアップしたタイトルである。最大の特徴はサテラビューの前2作とは異なりBSオリジナルゲームであるという点。つまりこの『プラクティス版』だけは放送時間に縛られずいつでもプレイすることができるのだ!ソレはサテラビューのサービスが終了した今であっても変わらない!
プラクティス版に収録されているコースは下記の5つ、『MUTE CITY Ⅳ』以外はすべて『BS F-ZERO』で初登場したコースとなっている。詳細についてはあとでもう一度語るが、全体的に初代『F-ZERO』に比べると高難易度となっていて、初代を飛ばしていきなりこちらをプレイすると大変なことになることは避けられない。
MUTE CITY Ⅳ
BIG BLUE Ⅱ
SAND STORM Ⅰ
SILENCE Ⅱ
SAND STORM Ⅱ
プレイ可能なモードは2つ、ひとつは任意のステージを選択し好タイムを突き詰めるタイムアタック『プラクティスモード』、一応本作がリリースされるまでの経緯を考えるとこっちの方がメインなのかも?初代『F-ZERO』とは異なりちゃんと5コース全てを選択できる点はご安心あれ。ベストレコードはもちろん保存される。
そしてもう一つが『グランプリモード』、こちらでは本作の5コースを纏めた『ACE LEAGUE(エースリーグ)』に挑むことができる。ちなみにエースリーグ自体の初出は『BS F-ZERO』でナイト・クイーン・キングに続く第4のリーグとして登場していたのだが、そちらとは内容がまるっきり異なっている。
グランプリのシステム自体は初代『F-ZERO』のものとまるっきり同じなので、まず初心者はグランプリ自体の完走を目指すべし。難易度はBEGINNER/STANDARD/EXPERTの3段階から選択できる。初代のことを考えるとEXPARTクリアでMASTERが解禁されるような気がするが、残念ながら我の腕前ではビギナーの完走がやっとなので…。
(この辺は情報求む)
使用可能なF-ZEROマシンは初代と同じく4種類。カラーリングも初代同様の青・黄・緑・桃であるが、デザインも名前も異なる完全な別物。性能的にはルナボンバー、デザインだとブルーサンダーがお気に入りである。具体的な性能は下記を参照、括弧の中は比較用に初代における同カラーのマシンのものを載せている。加速度だけはどう表していいものかわからなかったので割愛。
BLUE THUNDER(BLUE FALCON)
カラーリング: 青
ENGINE UNIT: BT-626 ×2(BF-2001×4)
MAX POWER: 3230ps(3200ps)
MAX SPEED: 472km/h(457km/h)
WEIGHT: 1260kg(1260kg)LUNA BOMBER(GOLDEN FOX)
カラーリング: 黄
ENGINE UNIT: LB-2000×4(GF-2614×4)
MAX POWER: 7600ps(2950ps)
MAX SPEED: 477km/h(438km/h)
WEIGHT: 3800kg(1020kg)GREEN AMAZONE(WILD GOOSE)
カラーリング: 緑
ENGINE UNIT: GA15B×1(ES-8302×3)
MAX POWER: 1270ps(3670ps)
MAX SPEED: 450km/h(462km/h)
WEIGHT: 890kg(1620kg)FIRE SCORPION(FIRE STINGRAY)
カラーリング: 桃
ENGINE UNIT: RS-5025S ×4(RS-5025×2)
MAX POWER: 4892ps(3800ps)
MAX SPEED: 463km/h(478km/h)
WEIGHT: 2152kg(1960kg)
当然ながら性能も別物。それどころか同カラーであっても初代の性能は全く引き継いでいなかったりもするため、『初代でワイルドグース使ってたし、こっちでグリーンアマゾンに乗り換えてもいけるっしょ!』などと適当に手を出すと痛い目を見る。
基本的にF-ZEROシリーズでは各マシンごとにパイロットが用意されているのだが、本作における4マシンにはいずれもパイロットの設定が存在しない(或いは公表されていない)のは少々残念な点。強いていうならファイアスティングレイ→ファイアスコーピオンで近いエンジンを使っているからそこから想像を膨らませられるかも…という程度である。
ここからはコースについて語っていこう。『MUTE CITY Ⅳ』『BIG BLUE Ⅱ』『SILENCE Ⅱ』はいずれも初代に登場したコースの高難易度バージョン、ナンバリングも初代からの連番となっている。
『BIG BLUE』と『SILENCE』は初代だと1種類しかないコースだったので、こうして高難易度化を果たして帰ってきたのは嬉しいところ。でもハイスピードに走り抜ける構成ながらやたらと狭い前者と後者のヤケクソ気味なジャンプ台と爆弾配置は一周回って笑えてくるくらいヒドイ(誉め言葉)と思う。
本作で初公開となった『MUTE CITY IV』は見慣れたコースなので楽勝…と思いきや最初のコース(=本作で一番簡単)でありながらダッシュボード地帯→カーブ→曲がり切れないとジャンプ台で吹っ飛び着地ミスるとコースアウトという中々イジワルな構造なのでビックリさせられる。
『SAND STORM Ⅰ』『SAND STORM Ⅱ』は名前から初代に登場した『SAND OCEAN』の延長っぽく思えるかもしれないが、似ているのはあくまで名前だけ。Ⅰは本作3番目のコースでありながら急カーブ連打にプレイヤー絶対に殺すといわんばかりのダメージゾーンも相まってとにかくリタイアしやすい本作屈指の難関コース、ⅡはⅠに比べると構造そのものはシンプルながらこっちはこっちでマグネットをはじめとした仕掛けでプレイヤーの操作を阻害してくる。
なおサウンドリンク版にのみ用意されていた『FOREST Ⅰ』『FOREST Ⅱ』『FOREST Ⅲ』と『METAL FORT Ⅰ』『METAL FORT Ⅱ』は残念ながらこのプラクティス版でもプレイすることはできない。というかサウンドリンク版は上述の通り現代でのプレイは不可能であるため、これらのコースは正真正銘マボロシとなってしまった。今となってはその当時を録画したビデオ映像くらいでしか存在を認識できない。
ゲーム内で使用されるBGMについてだが、ぶっちゃけ語れる点は全くない。いや確かにハイクオリティではあるのだが、そもそもすべての楽曲が初代『F-ZERO』からの流用だからである。流用されている楽曲/使用箇所ともに諸君らの想像通りの箇所、唯一気になるであろう新規コースの『SAND STORM』はⅠが『FIRE FIELD』、Ⅱが『DEATH WIND』となっている。実際やたらカーブとダメージ要素が多いⅠ、突風やマグネットで思うように操作できないⅡとしっくりくるチョイスではある。
さて、本作を『幻のF-ZERO』と称した所以については説明するまでもないだろうがその圧倒的な流通量の少なさのせいである。一応、現代では100%プレイ不可なサウンドリンク版の2作と違い、衛星放送受信カセットと本作をDL済みの8Mメモリーパックさえあればプレイできるだけマシだとは思う。しかしただでさえ普及したとは言えなかったサテラビューを所有し、その上でわざわざ貴重な8Mメモリーパックに本作を残したという層は決して多くはないだろう。
(この辺でサウンドリンクゲームの消費用量のデカさが響く)
更にそこに8Mメモリーパックの耐久性の低さまで絡んでくる。というのも8Mメモリーパックは静電気や高熱浸水衝撃その他もろもろでアッサリ死ぬくらいには貧弱であり、そうなってしまうとDLしたゲームデータがそのまま削除され起動できなくなるという恐怖の二段構え。接触不良なんざやらかしたら100%死ぬ。
当然この『F-ZERO 2プラクティス』もその例に漏れず、常に一歩間違えたらデータが飛ぶ危険性と隣り合わせの作品である。だからこそ、このゲームは現存数が極めて少ない。同じくごくごく一部のマニア層しか所有してないであろう64DDの『エキスパンションパック』の方がまだ(耐久面で勝る分)現存しているのではないかと感じられるほどである。我の所有しているコイツも果たしていつまで持つのやら…。
(左が『ワリオの森 再び(Wario's Woods)』、右が『ヨッシーのパネポン(Tetris Attack)』)
…ちなみにだが、本記事前半でも語ったように一部のBSオリジナルゲームは海外オンリーの作品のローカライズであるため、それらの元となったSNESの『Tetris Attack(ヨッシーのパネポン)』や『Wario's Woods(ワリオの森 再び)』を入手し、それらをSFCで動作するように手を加えることで、少々面倒ながらBSオリジナルゲームとほぼ同等の内容を楽しむことはできる。
ならばこの『F-ZERO 2 プラクティス』も…といいたいところだが残念ながら本作のパッケージは存在しない。ネットサーフィンを得意とする人なら『あれ、でもこのゲームのパッケージ画像/ROMカセットをオークションやフリマで見たことあるよ?』と思ったかもしれないが、本作はサテラビュー諸共日本でしか展開されず、そのまま海外に流通されることもなかった作品である。パッケージ?ROMカセット?そんなもの世界のどこでも公式でリリースされていない。よってそれらは全て海賊版である。決して購入してはならないので注意喚起のためここで記載しておく。
(『F-ZERO 99』、ニンテンドースイッチにて配信中)
ところですっごく個人的なハナシをさせてもらうと、本ブログの中でも本作の記事(リメイク前)は定期的にアクセス数がドカンと増えることがやたらと多かった。どこかの実況者さんの解説やRTAiJで本作に言及されたことが理由だと認識している。おかげさまで元々アクセス数がそんなに高くないブログということもあって、本作の記事が伸びるたびに『あ、どっかでF-ZEROシリーズのハナシが出たんだな』となんとなく察せられるようになった。こうして本作の記事のリメイクにあたったのもソレが発端だった。そして(推測だが)今回アクセスが増えた理由は言うまでもなく先日のニンテンドーダイレクトで発表された『F-ZERO 99』である。だがしかし、なぜF-ZERO 99の話題から本作に繋がったのか。同じF-ZEROシリーズだから?惜しいが不正解である。
実をいうと、ややアングラな話題になってしまう(ので反転文字にします)が、どうやらF-ZERO 99の内部データに本作に関係する纏わる情報(コース名)がひとつ仕込まれていることがとある界隈で発見されたらしい。その影響で我がブログの記事までもが爆発的にアクセスされた…というのが真相である。もっとも内部データはしょせん内部データ、実際に日の目をみることもあるだろうが、そのままデータの海に沈み浮かんでこないこともザラにある。だからこそ過度な期待はしない…しない…がそれでもいつか、どこかでかつて幻と消えたこの『F-ZERO 2』のマシンやコースといった要素が拾われてくれることを祈るばかりである。…なんならゲームそのものを復刻してくれてもいいんですよ…。ホラ、スクエニさんだって同じくBSオリジナルゲームの『ラジカル・ドリーマーズ』を現行機向けに移植してくれてたじゃないですか…。え、あっちと違ってこっちは元がサウンドリンクゲームだからハナシが違う…?………そう……。
『8Mメモリーパック(BS F-ZERO 2入りらしい)』のAmazonページ
---独り言---
ホントはグランプリをプレイする動画でもセットで投稿しようとしていたのですが、
キャプチャボードがイカレたのか、はたまたSFC側の映像出力端子が死んだのかは不明ながら、
録画中に2秒近く遅延が発生するようになっており、
グランプリの完走すらままならなくなっていたため、泣く泣くお蔵入りとしました。
前回(オトメディウスX)の録画をした時は問題なかったし本体側の出力端子かなぁ…。
とりあえず3年前の旧記事の時に用意したダイジェスト映像は↓