ゲームというのは言わずもがなソレを動作させるハード…つまるところゲーム機やPCをはじめとするプラットフォームの存在が必要不可欠である。しかしながらプラットフォームにも限界というものがある。ゲームハードにとって避けられない世代交代、ソレが2度3度と続けばかつて栄華を極めたハードとていつかはプラットフォーマーにとっての足枷へと変わる。
製造・販売の終了、修理受付などの公式サポートの停止、オンラインサービスやオンラインストアの終了…足枷になったプラットフォームを切り捨てることは別段間違いというわけではないが、少なからずプラットフォームとともに時代に取り残され、いつしか忘れ去られてしまう名作というものだってあるかもしれぬ。今宵の作品はそんな『プラットフォームとともに眠りにつくかもしれない1作』である…。
というわけでシリアスな前座もおしまい!前回の記事ラストで宣言した通り、今回は『オトメディウスX』について語っていくとしようか!
今作『オトメディウスX』はその名の通り『オトメディウス』の続編、タイトルのXとは『エクセレント!』の意である。『オトメディウスG』はどうした?と思うかもしれないが、オトメGはポジション的には家庭用向けの『移植』であるため、実質的な続編はこの『オトメディウス エクセレント!』ということになる。ファンからの略称は『オトメX』といったところ。
前回の記事でも触れた通り、『オトメディウス』ははじめにACで稼働したのち、追加要素込みでCS向けに『オトメディウス ゴージャス!』として移植される流れであったが、本作は最初からCS向けオンリーでのリリースとなっている。まぁ本家のグラディウスも『グラディウスIV』を最後にACから離れ、続編の『グラディウスV』はCSオリジナルの作品になっていたりしたので、これも時代の流れだったのだろう。
プラットフォームはオトメGと同様にXbox360のみ。やっぱり後方互換に非対応なので、後継機たるXbox OneやXbox Series X/Sでのプレイは不可能。よってプレイしたいという人はXbox360の環境一式を揃えるべし。Xboxならではのゲームオンデマンド機能によりDL版が非常に安く配信されている。ゆえに今からプレイしたいならばDL版が無難である…といいたいところだったのだが…。
さて前回でも触れたとおり、まことに残念なことに『2024年7月29日にXbox 360のストアが終了する』ということが先日報じられた。ストアが終了したとて本作にはパッケージ版はあるのでそちらを購入してプレイする選択肢もあるが、本作のパケ版はまぁとんでもないプレミアがついてしまっている。
よって、いつでも購入が可能なゲームオンデマンド以外での入手はおすすめしづらいのだ。オマケに前作以上にDLCも充実しているため、ストア終了によるダメージは前作よりもさらに深刻である。というわけで、少しでも気になったのなら即座に360のストアにGOすることを先んじて推奨しておきたい。
ところで先に触れておくと本作は前作(オトメG)に比べ世間一般の評価がそこそこ低めの作品である。まぁより厳密には一般層というよりシューター層から厳しい評価を受けているといったところか。コレについては実際その通りだと思うし、前作に比べると明らかすぎる問題点もあるので否定しない。
とはいえ全く楽しめない作品というわけでもなく、どちらかというと『アプローチする対象がシューターじゃなかった』だけで本作が当初想定していたであろう非シューター層ならば問題なく楽しめるポテンシャルはあったと感じられる。いうなれば『シューターに全く見向きもせず、新たな層を獲得しようとした』『シューターにこそ向かない作品』こそが本作である。このあたりについては記事の中でガッツリ触れていこうと思う。
開発元はコナミ(ACオトメディウス)→エムツー(オトメディウスG)と来て再び本家コナミに戻った。デザインはこれまで通り漫画家の吉崎観音先生が担当。あまり知られていないがメトロイドヴァニアの立役者であるIGAこと五十嵐孝司氏が本作のプロデューサーを務めている。氏は『悪魔城ドラキュラ』シリーズをはじめとしたアクションゲーム…特に難易度的にゲーム初心者でも楽しめるつくりの作品を多数手がけてきたお方であり、本作は良くも悪くもそういった方向性が色濃く出ているのが特徴である。
世界観は明確にオトメGの続きとなっており、キャラや設定もそのまま引継ぎ。プレイアブルキャラとなる天使は前作からさらに増加した全12名。詳しくは下記を参照。表記は『キャラ名 & 戦闘騎 (元ネタ)』としている。なお『・』はデフォルト解禁、『■』はとある条件を満たすと使用できる隠しキャラ、『★』はDLCによる追加キャラを表している。
・空羽亜乃亜(CV:佐藤利奈) & ビックバイパー (グラディウス)
■ハイパー亜乃亜(CV:佐藤利奈) & メタリオン (グラディウス2)
・エリュー・トロン(CV:下屋則子) & ロードブリティッシュ (沙羅曼蛇)
・マドカ(CV:石毛佐和) & マードックバイパー2 (ツインビー)
・ジオール・トゥイー(CV:生天目仁美) & セレニティバイパー (XEXEX)
・ティタ・ニューム(CV:広橋涼) & ビッグコアエグザミナ (グラディウスNEO)
■エスメラルダ(CV:伊藤静) & ジェイドナイト (グラディウス外伝)
■ポイニー・クーン(CV:後藤邑子) & ファルシオンβ (グラディウス外伝)
・月士華風魔(CV:佐藤聡美) & 波動剣 (月風魔伝/アクスレイ/トライゴン)
★ココロ・ベルモンド(CV:原田ひとみ) & スタウロス (悪魔城ドラキュラ/トライゴン)
・アーンヴァル(CV:阿澄佳奈) & アンスリウム (武装神姫/サンダークロス)
★ストラーフ(CV:茅原実里) & アルピニア (武装神姫/ソーラーアサルト)
キャラ性能は前作と同じく『オプションの挙動』『パワーアップゲージの長さ/順番』『プラトニックブレイク(後述)』で差別化されている。前作に登場したキャラはエモン・5*以外の全員が続投、性能も前作からほぼ引き継がれている。本作からの新キャラは月士華風魔にココロ・ベルモンド、アーンヴァルとストラーフ、それからハイパー亜乃亜が該当する。
*エモン・5
無印オトメ・オトメGに登場、プレイアブルだと唯一の男性キャラ。
元ネタは言わずもがな『がんばれゴエモン』で、性能は『サンダークロス』。
本作では修行の旅に出たため不参加、とある場面で名前が出てくるのみ。
STGなのにゴエモンがチョイスされた理由はおそらく『パロディウス』繋がり。
ハイパー亜乃亜以外はいずれもKONAMIのゲーム作品(非STG)をモチーフにしたオリキャラ+KONAMIのSTGをモチーフにした性能のRVという組み合わせとなっている。
華風魔は『月風魔伝』、ココロは『悪魔城ドラキュラ』をモチーフにしたキャラであり、特に後者は『暁月の円舞曲/蒼月の十字架』のユリウス・ベルモンドの血縁者という設定。彼女らの性能はごく一部に『トライゴン』の要素を採用しつつ専用の武装も使用可能、どちらも念動波(月風魔伝)、聖水・斧・クロス(悪魔城)など原作にある攻撃を再現したものとなっている。こういった『原作再現要素を数多く持った血縁オリキャラ』というのはのちのボンバーガールにて多用されており、ある意味ではボンガのオリキャラたちの源流はここにあると言っていいのかもしれない。
アーンヴァルとストラーフはともに『武装神姫 BATTLE RONDO』からのゲストキャラ。ただサイズが人間大だったりするので厳密には神姫っぽいけど神姫じゃない別の存在である。武装神姫的にいえば『武装神姫 MOON ANGEL』のアテナが近いのかも。作中でも『ホビー用ロボットをカスタマイズして作り出された人工天使』と明言されている。おかげでもともとが悪魔型MMSのストラーフは『悪魔型天使』とかいう奇妙な存在に…。ちなみに性格設定のベースはMk.2ではなく無印版、つまりストラーフはボクっ娘。性能としてはストラーフが『ソーラーアサルト』のアルピニアを2Dに落とし込んだもの、アーンヴァルは前作のエモン・5(サンクロ)を引き継いだものとなっている。
そして最後にハイパー亜乃亜、名前からして通常の亜乃亜の強化版…のように見せかけて性能は100%別物。乗騎である『グラディウス2』のメタリオンの最終強化状態を完全再現したスペックになっている。つまり、パワーアップゲージが9段階もある。ご丁寧にオプション数が最大2つだったり、特定の順番で装備を行わないと一部が排他扱いになって解除されてしまう等の細かいポイントまで完全再現!おかげさまで絶妙に扱いづらいのはご愛敬。
続投組も含めると、RVのモチーフ元ラインナップはSTGに限っても『グラディウス』『沙羅曼蛇』『グラディウス2』『グラディウス外伝』『ソーラーアサルト』『ツインビー』『サンダークロス』『XEXEX』『アクスレイ』『トライゴン』…とKONAMIの歴代シューティングオールスターといわんばかりな面々が揃っている。それらの作品を模した外観/性能の自機を用いてステージを攻略できるのがファンとしては地味にうれしいハズ。特にアルピニアは2023年現在も本作が唯一の外部出演である。
ステージの最後にはやっぱり美女/美少女たちが操るライディング・コア(ボス)が待ち構えている。オリジナルのボス機体×往年の名作オマージュキャラという組み合わせなのは前作と同様。本作のボス勢は『ネコ船長(ネコ戦艦)』『T.B.リカ(ちちびんたリカ)』『ルビー&コバルト(ひかる&あかね)』といったようにパロディウスモチーフが多め。
それ以外からも華風魔のライバルという扱いで月風魔伝の『龍骨鬼』がまさかまさかのTS擬人化して登場したり、あろうことかKONAMIのレジェンドたる『藤崎詩織(CV:金月真美)』大先輩が『ときめきメモリアル』から殴りこんできたりもする。ちなみに大先輩ご本人を戦わせるのは事務所NGが出たのか、本作の藤崎詩織は『ダークフォースに取り込まれ作り出されたコピー(クローン)』という設定になっている。それはそれでいいのか。
さてさて、オトメGがAC版とゴージャスモードでシステムが別物レベルに様変わりしたのは前回触れた通りであるが、本作はゴージャスをベースにしつつ、一部AC版の要素をプラスしたような形になっている。基本的なシステムはゴージャスモードのソレに準じるので詳細は前回の記事を参照してほしい。まぁ要約すると『いつものグラディウス』って感じであるが。
本家グラディウスやオトメGのゴージャスモード同様にゲームの進行は一本道、フォースフィールドは普通にパワーアップで取得可能。ミス時はオプションばらまき+その場復活。ここにAC版オトメディウスにあった『バースト』と新アクションの『プラトニックブレイク』が追加されている。
『バースト』は『クイックバースト』のみの登場、全キャラ共通で使用すると画面全体の敵+敵弾を全て消去する。ゲージ式ではなく回数式になったので一般的なシューティングでいうところのボムにより近い扱いになったといえる。ちなみにパワーアップゲージの『バーストチャージ』は撤廃、バーストの使用回数はステージ内の専用アイテムを拾うことで増加する。
新アクションである『プラトニックブレイク』は前作でいうところの『ドラマチックバースト(D-バースト)』に該当する要素で、一定時間のチャージを要する各キャラ専用の必殺技みたいなもの。Dバーストとの違いはゲージ消費がなくなったこと、使用時にオプションをばら撒かなくなったこと、オプションの数に関係なく一定の効果を発揮するようになったことの3点。つまるところチャージ時間さえ確保できるのであればいつでも&いくらでも使用できるためだいぶ取り回しがよくなった。
プラトニックブレイクは各キャラごとに異なる。続投組は前作のものを踏まえたものとなっていて、キャラによっては『フリント地獄突き(XEXEX)』『ドラゴンレーザー/ライトニングソード(トライゴン)』『ハイパーブラスト(武装神姫)』のような原作再現技も用意されている。本作のボス戦はこのプラトニックブレイクをどれだけ的確にぶち込めるかが攻略のカギになっているといっていい。
その他、特筆すべき部分だとフォースフィールドのシステムが前作から変わった。具体的にはダメージ判定が大きく異なり、前作では『被弾時に(敵の攻撃に応じて)ゲージが減少していき、ゲージが切れるとフォースフィールドが消える』仕組みだったのが、本作では『被弾内容に関係なく4回まで敵の攻撃を無効化する』ものに変わった。そのうえでさらに『フォースフィールドでの被弾後に一定時間の無敵判定が発生する』という仕様が追加されたため、見た目以上に超高耐久なのが特徴。
自由に各キャラの武装を切り替えられるグラIIIから続くEDITモードの最終進化系『ウェポンカード』システムは本作でも続投。種類もさらに豊富になり、なんとその総数は(多段階パワーアップをカウントしなくても)最大70種類以上にも及ぶ。コレは言うまでもなくシリーズ史上最多である。もちろん大多数の装備は過去のKONAMIシューからピックアップされており、本家グラディウスのナンバリングからMSXや家庭用移植などのスピンオフはもちろん、パロディウスにXEXEXにサンダークロスまで非常に幅広い。なお本作には一部DLCの装備もあり、こちらは各キャラのDLC衣装とセット販売。
(DLCを購入すればデフォ衣装の方でも使用可能になる)
前作だとウェポンカードは1プレイごとのランダム配布/ショップ購入による入手であったが、本作だとステージ攻略中に特定の敵を倒すと確定で取得できるようになった。このおかげで毎回の如く押し付けられる奇跡賞与に頭を抱える必要がなくなったのはありがたい。またウェポンカードの収集状況は全キャラで共通になったので、新たなキャラを使用するまでのハードルも引き下げられている。
ウェポンカードをドロップする敵は『出現する場所』『出現する難易度』『出現する周回』が完全に固定。これらの敵は見た目こそ通常の敵と同一ながらも攻撃パターンが全く異なり、『その敵が所有するウェポンカードの攻撃』をしてくるようになってくる。そのため見分けること自体は割と容易。
場所が固定ならば簡単に集められる…かと思いきや、中には高難易度の4周目や5周目でないと出てこなかったり、逆に低難易度である必要があったり、一見すると壊せなさそうなボスの部位破壊を要求されたりとかなり巧妙に隠されている。まぁそれでもウェポンカード自体は先に挙げた装備の数*Lv数だけ存在するので適当にプレイしていても結構集まりはするのだが、攻略情報ナシで完全コンプは至難の業。イオンリングLv.2をノーヒントで入手できた人は真面目に誇っていいと思う。
本作のメインといえるモードは『ストーリーモード』と『マルチプレイモード』の2つ。とはいえ前作のオリジナル/ゴージャスのような差はなく、あくまで細かな仕様や周回のシステムが異なる程度の違いにおさまっている。
ストーリーモードは読んで字の如くストーリーを楽しみながらゲームを進めていくモード。一部のステージ間では幕間のデモが挿入され、誰でもストーリーの最後まで楽しめるようコンティニュー(その場復活)も無制限なのも特徴。
ステージは全7面…だが最高難易度でのプレイ時に限りストーリー専用の最終8面に突入し、真のラスボス戦に挑むこととなる。周回プレイの概念はなく、7面or8面をクリアするとスタッフロールが流れてゲームオーバーになる。ストーリーの核となるシナリオ部分については後述する。
もう一方のマルチプレイモードは名前からすると多人数用のモードっぽく聞こえるが、名前がマルチプレイなだけで実際にはソロプレイも問題なく可能。ストーリーにあったステージ間の幕間デモはカットされコンティニューは不可能。全7面構成で7面をクリアすると即座に次周の1面がスタート、残機をすべて失いゲームオーバーになるまでエンドレスに続く。2周目以降は撃ち返し弾が発生したり、ボスの行動が強化されたりなどで難易度が上昇していく。
マルチプレイモードでは周回設定を非常に細かく設定できるようになっており、『難易度』『開始時の周回数』『開始面』『最大周回数(何周ENDか)』を選択可能。開始面の設定では『通しプレイ』『特定ステージの単独プレイ』も選べる。後者の場合は特定のステージだけを1周目X面→2周目X面…のように周回したりもできるのでウェポンカード集めにも便利。ただしストーリー限定の8面だけは選択不可能。
DLCを導入済みの場合、通しプレイの設定は1面-7面までの『ALL』と1面-7面+DLCステージの『ALL(EXTEND)』から選択できる。後者の場合は7面のクリア後にEX1面→EX2面→EX3面と進み、EX3面をクリアすると次周の1面に入る。もちろんDLCステージは単独でも選択可能。
(購入していないDLCステージは通しプレイの際にカットされる)
前作が受け入れられるきっかけになったであろうキャラ要素は本作で更にパワーアップ。キャラ自体が増加しているのもそうだが、本作ではそれらの立ち絵などがアニメーションするようになった。プレイアブル組はキャラ選択画面(ボディタッチ時に2パターン)とバーストの使用時に、ボス組は登場シーンにアニメーションが流れる。アニメはそこまで長いわけではないのだが、このおかげで敵味方の各キャラがより魅力的に、そして印象的に映るようになっている。
前作ではよく見ると立ち絵+キャラ選択絵+バースト絵だけで構成されていたOPも本作ではしっかりしたアニメーションになった。本作からの追加キャラのCVを務める佐藤利奈氏/阿澄佳奈氏/茅原実里氏/佐藤聡美氏/原田ひとみ氏の5名が歌うアップテンポなOP曲『fly』と共にお楽しみあれ。EDはEDでトロン/マドカ役の下屋則子氏/石毛佐和氏による『オトメティック』が流れる中、本作のメインキャラ陣の日常が一枚絵で描かれている。
本作のシナリオでは前作で倒されたハズのゴーファー姉妹(CV:島本須美)やメタ・リュームどころか、宿敵バクテリアンの首魁たるダークフォース(CV:金元寿子)まで登場。本家グラのナンバリング最終作『グラディウスV』、MSXシリーズ最終作『ゴーファーの野望 エピソードII』をベースにしつつ、本来の最終作の予定だった『グラディウスIII -伝説から神話へ-』と同じくバクテリアンとの全面戦争が描かれ、なおかつ終盤のとある重要ボス戦はGBシリーズ最終作『ネメシスII』を踏襲…その結果本作はさながら『オトメディウスの完結編』とでもいうべき内容になっている。
本作で冒険することになるステージ群は前作らしい雰囲気を引き継いだ都市部やリゾート地のほか、新たに火山や湿地も追加。また前作では意外なことに存在しなかった宇宙ステージも本作では用意されている。
本作のステージに一貫している特徴として『ステージ全体を通してシナリオ演出が行われる』点が挙げられる。例えば1面では異空間(実質的な空中戦)からスタートしリゾート地を進んでいき、やがて海上へと移るのだが、海上に入ってからは高空からの攻撃が背景に飛んでくるようになる。そしてその大元を追うかのように空中へと高く飛び上がり雑魚ラッシュ→ボス戦…といった形。モチロンそれに合わせて各キャラもしっかり喋る。
さながらステージ攻略と同時にシナリオを読み進めているような感覚である。BGMも背景演出に合わせて転調するため、シナリオに没入しやすいのもうれしいところ。ステージ途中でも進行に合わせて各キャラがしっかり喋ることもあって、シナリオに置いて行かれることはまずないだろう。
特に5面は演出・会話・BGMの全てが見事にマッチしている本作随一の名ステージといっても過言ではない。
『グラディウス艦隊VSバクテリアン艦隊の全面対決の中、プレイヤーが戦線を突っ切る』というシチュエーションは歴代のグラディウスではほぼなかったシチュエーションであり、背景で行われる艦隊戦やソレの激化とともに始まる雑魚ラッシュ、戦況に合わせ転調していくBGMや時折流れる味方(つってもヴェノム博士なんだが…)の通信ボイスや敵将たるダークフォースの演説もあいまってかなりの印象を残してくれる。
…しかしながら、この影響から本作は良くも悪くも『演出先行』のレベルデザインであり、敵の出現パターンから地形・スクロール速度にいたるまで一般的なSTGのつくりとはかけ離れてしまっているのが困ったところ。
シナリオ演出を見せる…というだけならいい。問題は一部の場面では演出中に敵の物量が目に見えて減るか、或いはそもそも敵が出現しなくなる点にある。しかもコレはステージ間の幕間デモではなく、ステージの道中として攻略中に差し込まれている。つまるところシナリオ/演出を重視するあまり、シューティングとしての『倒す/避けるなどの攻略的な面白さ』が損なわれてしまっているのだ。
シンプルに1回だけストーリーを遊ぶ程度ならば多少違和感を覚える程度で済むのだが、コレが問題視されるのは言わずもがなマルチプレイモードの方である。そう、これらの退屈なセクションは周回プレイでも毎回挟まれてしまうのだ。本作のシューターからの評価が低い最大の原因はこれといっても過言ではない。
特に7面終盤はこの『演出先行』の悪いところがモロに表れてしまっている。前半から中盤にかけてはごくごく普通、終盤に待ち受ける壁ボス戦を撃破するとステージがスクロールして本命の7面大ボス戦…という展開なのだが、壁ボス撃破→大ボス戦開始までの間は、敵が一切出現せず障害物もないエリアを緩やかなスクロールで抜けるだけで、本当に『何もしない/できない』時間が1分以上に渡って発生する場面がある。STGで1分間何も起こらないステージなど前代未聞だろう。同じように2面の大ボス戦でも出現から戦闘開始まで約30秒ほど何も起こらない時間が発生する。
ちなみに先に挙げた5面は演出こそ多めながら敵はほぼノンストップでするので不満はなく、ストーリー限定の8面も同じような作りなので楽しい。オトメディウスならではの設定を生かしたボス戦が差し込まれる4面や後述するマニア向け要素を詰め込んだボスラッシュ面の6面といった面白いステージもちゃんと用意されていることははっきり伝えておく。本作は(ステージ攻略的な観点で)面白いステージとそうでないステージの差が極めて激しいのだ。
前作でも時折マニアックなネタをちょくちょく取り込んでいたオトメディウスだが、本作ではさらにネタがマニアック方面に突き抜けているのが特徴。まぁそもそものプレイアブルキャラの人選(ネタ元)からしてかなりマニアよりなのだが、そのほかにも5面で艦隊戦に参加している機体が同じくグラディウスシリーズと世界観を同じくする『コズミックウォーズ』のものだったりも。
極めつけは6面のボスラッシュ。シリーズ恒例の過去作ボスとの連戦になるのだが、メジャーどころのボスは前作で出し尽くしてしまったせいか、本作のボスラッシュはそのまんまグラディウスのカルトクイズにできそうなくらいマニアックな面々が揃っている。具体的なラインナップはペルラ・メラルダ→ネオビッグコア→ミスフィッツ艦→デリンジャーコア→メタルスレイブ、名前だけで姿と原作が思い出せるのなら貴方は立派なグラディウスフリークである。
(グラジェネ→グラ外→グラ2→グラIII→MSX曼蛇が正解)
また本作にはDLCステージが3種類用意されており、これらもまた歴戦のKONAMIマニア向けの内容。それぞれ『聖グラディウス学園』『エビス星』『どんぶり島』というステージに挑むことができる。
聖グラディウス学園では亜乃亜たちの通う学校を進んでいくのだが地下に入ってから一気に雰囲気がおかしく…というかなぜかマニアックなKONAMIのアクションゲーのキャラが襲ってくるようになる。『月風魔伝』はともかく『ガリウスの迷宮』『迷宮寺院ダババ』とかいう渋すぎるチョイスに驚いたプレイヤーは数知れず。前作ではレギュラーだったにも関わらず本作だと一気に姿を消したペンギン軍団もここで登場。最後に待ち受けるのはまさかまさかの『コナミレディ & スペースシップ』!KONAMIオールスターの原点である『コナミワイワイワールド』、そしてグラディウスの原点である『スクランブル』からの刺客である。
エビス星は本作で唯一リストラされたエモン・5の故郷、雰囲気としては『がんばれゴエモン』をイメージしたステージといったところだが、ほか2つに比べると原作ネタは少な目。まぁあくまでエモンの故郷であってがんばれゴエモンの世界ではないので仕方ないのだろうか。こちらのボスはエモン・5を慕う謎の女性『エモン・8(CV:笠原留美)』とどっかで見たことありそうなからくりメカ『ビスマル・X(エクセレント)』。エモン・8の元ネタはもちろんヤエちゃん、ビスマル・エクセレントの方はビスマルエレガントをモチーフにしている。
そして最後にどんぶり島、DLCでは唯一のSTGモチーフのステージで元ネタは『ツインビー』。文字通りツインビー世界のどんぶり島が舞台であり、カニ電車やベルといった『ツインビーパラダイス』や『ツインビーRPG』にあった要素が背景に多数登場する。そしてボスは本家ツインビーのもう一組の主人公『パステル(CV:椎名へきる) & ウインビー(CV:西原久美子)』。
オトメシリーズのマドカは本家ツインビーのまどかとは別人、同じくレジェンド級キャラである藤崎詩織がクローン扱いだったにも関わらず、このステージに出てくるパステルは正真正銘原作のパステル本人である。超先輩は大先輩に比べると取り回しがしやすいのか。もちろんパステルとともに戦うウインビーも原作と同一人物(?)。マドカを使用しているのであればウインビー(本家)VSウインビー(ユニット)という夢の対決も可能。
STGということで気になる難易度だが、ぶっちゃけ非常に簡単…いや、簡単なんて軽い言葉で済ましていいか怪しいくらい超がつくほどの低難易度である。前作オトメ/オトメGも(難易度ノーマルでは)STGにしては並かそれ以下レベルではあったものの、本作はソレに輪をかけて簡単になっている。むしろ、簡単になりすぎている。
少なくとも我がこれまでのゲーマー人生で出会ってきた全てのシューティングの中で『最も簡単な作品は何か?』と聞かれたら秒で本作の名を挙げるであろうほどには低難易度極まっている。なんなら世界一簡単なシューティングなのではないかという疑惑すら生まれてくるレベルである。
…ただしこれはあくまで『アップデート前』のハナシ。詳細については後述するが本作はアップデートにより難易度に大幅なテコ入れがなされ、アプデ前後でもはや完全に別のゲームであるかの如く様変わりした作品なのだ。…良い意味でも、そして悪い意味でも。まぁとりあえずはアプデ前基準で説明していくとしようか。
本作が低難易度とされる要因はいろいろとある。先に挙げた『演出偏重のレベルデザイン』もそうだし、『大幅に変わったフォースフィールドの仕様』もそう。ついでに本作には前作までに…それこそグラディウスの頃から存在した『地形ダメージ』が完全にオミットされているのもソレだ。こういった徹底的な初心者向けシステム/初見殺し要素の撤廃によって、本作はとんでもないレベルの低難易度STGとして世に送り出されてしまったのだ。
その低難易度ぷりたるや、最高難易度たるエキスパートのストーリーモードを完全初見でプレイしてノーコンティニュークリアすら視野に入ってくるレベルである。本作が初グラディウス…いや、初シューティングであっても、ある程度の適性があればノーコンどころかノーミスクリアだってすぐにできてしまえるだろう。
(さすがに周回プレイの高次周ではつらいものもあるが)
もっとも低難易度が完全に悪であるとは限らない。簡単を言い換えれば『詰まってクリアできないケースが起こらない』ということだ。本作はSTG入門者(初心者よりもさらに前段階)の視点でいえばこれ以上ないほどお誂え向きな難易度となっていたのだ。かわいらしいキャラやデザイン面に惹かれ、本作を手に取った非シューターのプレイヤーを優しく受け入れ、そのうえでシューティングというジャンルに慣れさせることができる…そんな『超・超・超初心者向けシューティング』こそが本作なのである。…だからこそ高難易度志向なシューター層からはボロックソに非難されたワケだが。
そうはいっても本作はシューティング、当然ながら本作をプレイしたシューターたちの意見を完全に無視することはできない。というわけで本作の発売からしばらくして、KONAMIは『もっと難しくしろ!』という意見をフィードバックしたアップデートを配信した。…このアプデがまたとんでもない代物だったのだが…。
ここからはアプデ後の難易度についてのハナシをしていく。先に言っておくと我個人としては本作のアプデについてはかなり否定的であるのでご了承あれ。
本作はアプデによりゲームの改修が行われている。改修箇所は多岐にわたり、例えば不具合を疑うレベルで処理落ちが発生していた場面が修正されていたり、一部の場面でSEが追加されていたりなど様々。この辺は純粋にゲーム自体のクオリティを上げるためのモノなのでありがたい内容である。
だがそんなのは些細なもの、重要なのはアプデにより難易度が信じられないレベルに引き上げられた点である。具体的にはプレイヤーの当たり判定が大きくなり、プレイヤーの火力が大幅に引き下げられ(一部武装で顕著)、ボスの耐久力が大幅にアップした。ほかにも細かな変更点はあるが、基本的には『プレイヤー側を徹底的に弱体化』『敵側を超大幅強化』という方向性になっている。
…これだけなら『高難易度を好むプレイヤーでも楽しめるようにした』と思うことだろう。だが本作の問題は上記の変更を『高難易度モードの追加』ではなく、根本的な仕様変更…つまり『既存のモードを全て置き換える』という形で導入してしまったことにある。
その結果どうなったか?アプデ前の難易度くらいがちょうどいいと感じていたレベルのSTG超初心者/入門者が一瞬にして淘汰された。『低難易度→ちょっと低めの難易度』程度の変化であればまだ着いていけたかもしれない。だが本作のアプデによる難易度上昇は些か極端すぎたのだ。下手するとアプデ前のエキスパート(最高難易度)よりもアプデ後のイージー(最低難易度)の方が難しい箇所すらあるという有様である。
(我はアプデ前だとエキスパートで10周余裕だったが、アプデ後はノーマルでギリギリ1周というレベル)
さて、こうして良くも悪くもアプデの結果『簡単すぎるSTG』から『一般的なSTG』に変化した『オトメディウスX』は改めてシューター層と向き合うことになる。STG入門層を犠牲にする形になってしまったが、こうなると重要なのはシューター層の方である。そして高難易度化により本作は今度こそシューターから認められ一件落着…なんてことにはならなかった。
そもそものハナシ、このアプデで変化したのは『プレイヤーの性能(当たり判定と攻撃力)』と『ボスの耐久力』だけであり、根本的な『演出偏重のレベルデザイン』には全く手が加わっていない。つまり周回で退屈になるステージ進行はそのまんまである。一方でボス戦はプレイヤーの火力低下とボスの耐久上昇のダブルパンチで異様に固くなり、爽快感が一気に消えた。キャラや装備の組み合わせ次第では火力不足が原因でマトモに戦っても自爆(時間切れ)されることもあるほどである。
シューター層からしてみればコレでは『簡単すぎるSTG』が『退屈すぎるSTG』に変化しただけであり、ソレで今作が魅力的に映るかといえば全くもってそんなことはなかったワケなのだ。せめて高難易度化の方向性が今のように『安易なプレイヤーの弱体化』に走らず、『敵の数を増やす』『弾の数を増やす』のような『敵の強化』『爽快感の上昇』に向かっていればこのようなことにならなかったのかもしれない。
(グラIIIなどは非常に高難易度ながら、プレイヤーも相応に強いので爽快感は担保されている)
ちなみに今から本作をプレイするならば必然的にアプデ後になる…わけではなく、Xbox360は本体機能でアプデを削除することができるので、やや手順が面倒ではあるがアプデ前とアプデ後の両方のバージョンをプレイすることができる。ただアプデ前の状態でDLCを導入しているとセーブデータが破損するので要注意。よってアプデ前の状態に戻すときはもしものことも考えて外部にセーブデータのバックアップも残しておくことを推奨する。
キャラや世界観をより理解するのに欠かせない『ギャラリー』は本作にも登場。最初から全解禁されていた前作とは異なり本作ではストーリーモードを難易度エキスパートでクリアすることにより、そのキャラに関する資料が少しずつ解禁されていくようになった。
ギャラリー内で閲覧できる画像には前作との重複はなく、そのうえで(デフォルトで)155種類も用意されている。またDLCキャラや衣装を購入した場合はそれらの設定資料も随時追加されていく。またギャラリーを閲覧するときも『どの画像を閲覧するか』を選択できるようになったため、使いやすさも格段に向上した。…それが普通なのはまぁそうなんだが前作だとソレができなかったもので…。あと『その他1/2』のページだけは複数ページに分かれている点に気付きづらいのは注意。
要注目な資料内のコメントも相変わらず…というか『本作における龍骨鬼の復活にはヴラド公(ドラキュラ)が関わっている』『ルビー&コバルトはティタ&メタのような人型バクテリアンの最新型』といった『ソレ本編で使ってくれよ!!』となる設定がやっぱり多い。
さてここからはBGMについても触れていこう。前作でもかなり力の入っていたサウンド面だが、本作でもその異様なこだわりっぷりは相変わらず…むしろパワーアップしている箇所すらある。デフォルトで流れるBGMはステージ曲が全てオリジナル、ボスは全てアレンジ曲という形式。作曲を手掛ける面々については後述する。
前作だとボス戦BGMは中ボス・大ボス・ラスボスの3種のみであったが、本作だとすべてのボスに専用曲が用意された。搭乗者がいるボスの場合はそちら側の原作アレンジが流れるようになっている。
例えばネコ船長は『クライシス第4楽章(パロだ!)』、T.B.リカなら『The Final Enemy(グラII)』…否『ちちびんたリカのテーマ(パロだ!)』が流れる。モチロン龍骨鬼戦は『龍骨鬼(月風魔伝)』のアレンジ。じゃあ藤崎詩織は?となるだろうが、ちゃんと原作『ときめきメモリアル(PCエンジン版)』…内のミニゲーム『フォースギア』のボス戦BGMとかいうトンデモないチョイスがされている。
ボスが無人機の場合は機体の方の原作アレンジが採用、こっちは主にボスラッシュの面々が該当。例外はなぜか*完全オリジナルBGMが新規で作曲されたペルラ・メラルダのみ。あとどっからどうみてもグラ外のガンナーウォールなのに『Dark Force(グラIII)』が割り当てられたゲートキーパーもそうか。
*ペルラ・メラルダ戦のBGM
オトメXにおけるぺルラ・メラルダ戦BGMは『Gear』
この曲はどこをどう聞いても完全オリジナル曲であり、
原作『グラディウスジェネレーション』のボス曲とは似ても似つかない。
…元々グラジェネ自体BGMの評価が低い作品なのだが、
本作でアレンジではなく、完全新曲という手段をわざわざ用いることになった原因は
ひとえに原作の…それもよりにもよってボス曲に盗作疑惑があったせいなのだろう。
前作と同じくパック単位でのBGM差し替えDLCも配信されている。全て各キャラの原作(モチーフ元)のBGMアレンジなのも同様。前作とは異なる特徴としては全体的に複数楽曲のミックスやメドレー、或いは原曲の印象的なフレーズを盛り込んだ事実上の新曲ともいえるようなものが中心で、いわゆる『単曲アレンジ』が少ない点。
これもあってか曲名も原曲とは全く異なるオリジナルのものが設定されている。そのため本作のDLC楽曲群は良くも悪くも耳で聞いてそのフレーズが理解できる…つまるところ前作以上に遥かにマニア向けの代物になっている。
ひとつのパックごとに収録されている曲数は各11曲(といってもほぼ10曲だが)。内訳はステージ曲9つと汎用ボス曲1つ、ラスボス曲1つ。なお6面は道中らしい道中が存在しないためDLC楽曲が存在しない。本作はデフォルトで全ボス専用曲持ちなので、中ボスやボスラッシュを除くそれら全てが同じ曲になってしまうのはちょっともったいないと感じたり。
アレンジの出展元は下記の通り。先ほど触れた通り曲名から原曲を判別するのが不可能であるため、あくまで我自身が全楽曲を自身の耳で聞いて判別できた範囲で記載している。抜けや間違いがあるかもしれないがご了承いただきたい。
亜乃亜…『グラディウス』『グラディウスII -GOFERの野望-』『グラディウスIV -復活-』
トロン…『沙羅曼蛇』『ライフフォース』『沙羅曼蛇2』
マドカ…『出たな!ツインビー』『ツインビーヤッホー! ふしぎの国で大あばれ!!』
ジオール…『XEXEX』
ティタ…『グラディウス2』『ゴーファーの野望 エピソードII』
エスメ&ポイニー…『グラディウス外伝』『ファルシオン』『グラディウスIII -伝説から神話へ-』
華風魔…『月風魔伝』『アクスレイ』『クライシスフォース』
ココロ…『悪魔城ドラキュラ(SFC)』『悪魔城ドラキュラ(AC)』『トライゴン』『A-JAX』『フラックアタック』
アーンヴァル…『武装神姫 BATTLE MASTERS』『サンダークロス』『サンダークロスII』『スペースマンボウ』
ストラーフ…『武装神姫 BATTLE MASTERS』『グラディウスV』『ソーラーアサルト』『ソーラーアサルト リバイズド』
前作からの続投組は亜乃亜の『グラIII』がエスメ&ポイニーに移ったくらいでほぼ変化なし。エモンの担当だった『サンクロ』『スペマン』は性能ごとアーンヴァルに引き継がれた。
あんばる以外の本作追加キャラだとストラーフが『グラV』『ソーラーアサルト』と前作になかったグラディウス系をフォローする形。華風魔が『アクスレイ』『クライシスフォース』、ココロが『トライゴン』『A-JAX』『フラックアタック』とかなり渋いチョイスとなっている。…おい誰だ今KONAMIの地味STG詰め合わせとか言ったヤツ。
追加キャラ全員に共通する点としてSTG楽曲だけでなく、キャラ側のモチーフ元からもBGMがピックアップされていることが挙げられる。華風魔とココロはもちろん『月風魔伝』『悪魔城ドラキュラ』、アーンヴァルとストラーフは『武装神姫バトマス』の楽曲が起用されている。バトマスに出てたのは無印じゃなくてMk.2の方とか突っ込まない。
メドレーやミックスゆえに、より多数の楽曲がより幅広い作品からピックアップされているのは本作のサウンド面における最大の強みといえる。それこそ『ソーラーアサルト』や『クライシスフォース』といった作品の公式アレンジはこういった場でなければ行われなかったことであろうし、このおかげで『A THEME OF THE SALAMANDER2(曼蛇2)』や『APOLLON(グラIV)』のようなマイナー名曲に光が当たっているのもうれしい。
(前者はトロン7面序盤『From The Sky』、後者は亜乃亜1面『Vast Expanse Of Ocean』)
『Counter Work(フラックアタック)』に『シモン・ベルモンドのテーマ(SFC悪魔城)』のフレーズを盛り込んだココロ汎用ボス『Red Warriors』や『RIDE ON(武装神姫バトマス)』→『First Attack(サンクロ)』→『Skywalker(サンクロ)』と繋がるアーンヴァル5面『Blast』といったシリーズをまたいだミックス/アレンジメドレーなんかはまさしくオトメディウスの場だからこそできた楽曲だと言っていい。
数こそ減ってしまったが単曲アレンジのBGMも相変わらずハイクオリティ。『BLACK HOLE(グラ外)』『空中回廊(ツインビー・ヤッホー)』のような有名曲(それぞれエスメ/ポイニー8面『Dive On The Horizon』、マドカ4面『Secrets In The Green』)から『Hydra(スペマン)』『THEMA OF THE MECHANICAL BOSS(曼蛇2)』といったマイナー曲(それぞれアーンヴァルとトロンの汎用ボス『Killer Dust』『The Crimson World』)まで大胆に、しかしながら原曲の良さも残しつつアレンジが行われている。
となると気になるのは『原曲の印象的なフレーズを盛り込んだ事実上の新曲』だが、こちらも単体の曲として純粋に良質な内容なのでご安心あれ。『Moonspin(グラ2)』が最後に組み込まれているとはいえ、序盤の疾走感あるフレーズで一気に駆け抜けていくティタ1面『Twinkle Twinkle』は個人的に本作で一番お気に入りの楽曲である。
ところでだいぶ前の箇所で『本作のゲーム部分は演出先行のつくりで、ステージBGMも展開に合わせて転調する』と記載したのだが、それはDLC楽曲においても同様。DLCパックを設定してプレイしてみると、どの曲でも敵が一斉に出現するタイミングや背景が大きく変化するタイミングで転調やメドレーが切り替わるようになっているのがわかる。
この思想はステージBGMの長さにも現れており、本作はどのステージでどのBGMパックを流していたとしても、ちょうどBGMが1ループするタイミングで道中が終了する(=ボスが出現してBGMが変わる)ように作られている。反面どれもループを前提にしていないようで、ループ部分の繋ぎがやや不自然に思えるものが多い。この辺はコンティニュー画面でやや放置→コンティニューしてステージボスまで進めるとわかりやすい。
それゆえ、本作の楽曲はとにかく単体で聞くよりも『ゲームのプレイ中に聞く』ことに特化しているのだ。本作のBGMは実際にプレイしながら聞き、サントラなどで曲を聞くときもステージの情景を思い浮かべながら楽しむべし。
さてさて、前作時点で26名もいた作曲陣は確認できる範囲で30名まで増加。ただし前作からは入れ替わりが発生しており、続投した方々も多いが抜けた人も多い。前作から引き続き参加しているお方は『山根ミチル氏(悪魔城/幻水シリーズ)』『桜庭統氏(VP/マリオテニスシリーズ)』『古代祐三氏(セブドラ/ベアナックルシリーズ)』などなど。言わずもがなその実力は本作でも相変わらず。
一方で本作から新たに参加されたお方もこれまた豪華。KONAMI社内ならば『佐藤直之氏(BEMANI/パワプロシリーズ)』、社外ならば『青木佳乃氏(ロックマンエグゼ/流星のロックマンシリーズ)』『岩垂徳行氏(ラング/逆裁シリーズ)』『柴田徹也氏(ヴァンパイア/DMCシリーズ)』といったところ。社外からのメンバーは元カプコンのサウンドクリエイターが多め。
前作以上に海外の作曲家も多く、ShantaeやMightyシリーズでおなじみの『Jake Kaufman』やゲーム的にはソニックシリーズに度々携わってきた『Bentley Jones』など、そっち方面の知識があればこれまた豪華なことがわかるメンツが揃っている。
DLC抜きのデフォ設定のオリジナル楽曲は『日比野則彦氏(ボクタイ/MGSシリーズ)』率いる株式会社ジェム・インパクトのメンバーが、ボス戦BGMのアレンジは『イズタニタカヒロ氏(エスコン/ベヨネッタシリーズ)』が中心に担当している。
DLC楽曲は作曲陣がばらけており、有限会社ベイシスケイプの所属メンバーのみのエスメ&ポイニーパック、『福井健一郎氏(サンセットライダーズ/FF12)』+1名という名義のティタパック、文字通り全曲が『古川もとあき氏(XEXEX/A-JAX)』作曲となっているジオールパックなど構成も様々。DLC購入の時は参考までにどのパックにお気に入りのクリエイターが携わっているか要チェックである。
作曲スタッフが30人ともあって、その楽曲数はシューティング史上最大規模と思われる149曲!おかげでサントラも前作を超える5枚組、一本のSTGでこれほどのことになるケースを我はほかに見たことがない。ちなみに1枚目がデフォルト設定のBGM、2枚目から先がDLC楽曲という形式。
サントラ自体の音質は悪くなく、それでいて散々語ったように大ボリュームなので満足度も高い。通常のゲーム内では聞くことができないメインテーマ『fly』のフル尺バージョンや、没曲『Vertical Movement』*も収録されている。後者はオトメGのサントラ初期版にうっかり『Dear Blue』が収録されていたこともあってシンプルにミスっぽくも思えるが…。
*サントラ限定収録『Vertical Movement』
サントラにおけるDISC1の20番目の曲。
公式サイトによればステージ6(ボスラッシュ)の3番目のボス曲らしい
…が実際のボスラッシュ3番手はミスフィッツ艦でBGMも別の曲。
というかサントラだと本来5連戦のはずのボスラッシュが6連戦かのように記載されている。
曲自体は『沙羅曼蛇』のボス曲『Poison of Snake』のアレンジ、
本来ならネオビッグコアとミスフィッツ艦の間に曼蛇出展のボスがいたのかもしれない。
ただふたつ難点があり、ひとつはあろうことか同一作品内で曲名が重複しているものが存在する点。具体的にはデリンジャーコア戦とアーンヴァル3面の『Whirlpool』、マドカ1面とマドカ5面『Nostalgic Journey』が該当する。サントラを直接ディスクから聞く場合は問題ないのだが、PCやスマホに取り込んで聞こうとすると地味に困る。
そしてもうひとつは大半のステージBGMの冒頭にビューンという飛行音が何故か入ってしまっている点である。飛行音自体はゲーム内でも聞こえるものとはいえ、ぶっちゃけ曲というより効果音みたいなものなので非常に気になる。ちなみに実際のゲーム中でも飛行音が挿入されない5面と8面のBGMならば問題ない。
また本作のサントラはコナスタ(コナミの公式通販)限定であるのだが、遠い昔に完売してからは再販する気配が微塵もない。そのうえでオトメGのものと異なりDL配信が全く行われておらず、その結果どうなったかというと…まぁトンデモないプレミア化をおこしてしまっている。おかげで気軽にオススメしづらいのが最大の難点か。ぶっちゃけ本作のゲーム本編+全DLCを購入するほうがはるかに安上がりである。
…さて、我は本作に対してひっじょーに複雑な感情を抱いている。何一つオブラートに包まず申させていただくと本作は当時にしては珍しく『入門者向けのシューティング』というほぼオンリーワンなポジションを担えるポテンシャルを秘めていたにもかかわらず、ほかでもない自分自身の手でその座を投げ捨ててしまった作品である。
当初の通りに低難易度の方向性に完全に振り切ってSTG初心者を完全に掴んだままにしていれば…はたまた高難易度に舵を切るにしても爽快感ややりがいのある高難易度をしっかり提供できていれば…そう思わずにはいられない…とにかく惜しい作品と評さざるを得ない。
もっともアプデで一気に引っ掻き回されてしまったとはいえ、本作は本作で独特な面白さがあるのもまた事実。特に歴代KONAMIシューティングでもトップクラスといっても過言ではないマニア向け要素の数々はファンであればニヤリとできること間違いなし。キャラ要素・シナリオ・サウンド方面も極めて高いクオリティで、根本にあるシステムも前作や本家グラディウスからの正当進化である。本作にのめりこめるかどうかはこういった魅力によってその他の問題点をどれだけ許容できるかでバッサリ分かれるだろう。だからこそ前作『オトメディウスG』ほど気軽にオススメはできないものの、それでも一度はしっかりプレイしてみてほしいところである。
ところで本作の評判の悪さが祟ったのか、(2023年現在)本作を最後にコナミは自社でシューティングを開発しなくなってしまった。『オトメディウス』はおろか、本家『グラディウス』や『パロディウス』まで巻き込み、全てのシリーズが停止してしまっている。まぁこれについてはそもそも今の時代にフルプライスでSTG出しても採算取れねぇだろってのもありそうだが…。
だがしかし、STGでこそないものの本作の『人気IPの美少女化』『疑似的なKONAMIオールスター』といったエッセンスは時代を超えて今のKONAMIにも受け継がれている。そしてこの系譜はやがて後の時代にて『ボンバーガール』という形で久々の大ヒットを飛ばし、『チェイスチェイスジョーカーズ』『麻雀ファイトガール』といった2番手・3番手の誕生に繋がっている。それを考えれば『オトメディウス』シリーズの存在は完全に無駄だったわけではない…そうは思えてこないだろうか?
それから『スクランブル』から連なる40年近いKONAMIシューティングの歴史が本作で止まったままなのはもったいない。というわけで個人的にはいつか再び…『オトメディウス』でも『パロディウス』でも『グラディウス』でもいいので、かつて伝説となったシリーズが復活し、再び神話を築き上げるその時を待ち望んでいるのである!!
…とりあえずまずは手始めにオトメディウスGとオトメディウスXの移植とかからいかがですかね…360のストア閉まったらもうプレイできなくなるのもあるし、10年前よりもシューター人口が増えたうえ人気IP美少女化がより受け入れられた今の時代ならばワンチャンいけそうな気もするんですよ…ええ。
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