いろいろとゲームを語ろう

物好きなゲーマーがただただ最近遊んだゲームの感想とか内容とか書いていくブログ。レトロゲームの割合が高いかもしれない。更新は気が向いた時にだけ。

ATARI 50: The Anniversary Celebration

コンピュータゲームとは人類が生み出した最も素晴らしい文化である。人種・性別・言語、それら全ての垣根を超え、全ての者に平等に素晴らしい体験を与えてくれる。そして、50年以上前から続くゲーム文化の歴史において、日本という国は特に大きな立ち位置にあった。今もなお世界中にその名を轟かせる天下の任天堂も、そのライバルとして北米南米を制覇したSEGAも、一部のコア層の心をガッツリ掴んだNEC-HESNKも、いずれも日本発の企業だったからである。

だがしかし、『ゲーム』という文化は何も日本だけのモノではない。むしろゲーム文化そのものが産声を挙げたのは海の先にある米国である。そしてゲーム業界の原点たるアメリカにおける最初期のゲームを語る上で避けては通れないメーカーこそが今宵の記事における主役、ATARI(アタリ)』である。

この社名はゲーマーであれば一度くらいは耳にしたことがあるだろうが、この記事ではひとまず最初にATARI、そして米国における最初期のゲーム史についてかなりザックリと触れようと思う。既に知っているならば飛ばしてしまって結構アタリショック』という単語からその内容を察せる者ならば冒頭の解説は必要ないだろう。

ATARIとは世界初のゲーム会社、その歴史ははるか昔の1972年まで遡る。世界初の家庭用ゲーム機、マグナボックス社の『ODYSSEY(オデッセイ)』が世に放たれ、ゲームという文化がスタートしたそのとき、オデッセイから強く影響を受けた一人の技術者がいた。その男の名は『Nolan Bushnell(ノーラン・ブッシュネル)』

彼は友人たちと共にゲーム会社『ATARI』を創業し、アーケードゲーム『PONG(ポン)』をリリース。コレが大ヒットしたことでATARIの大躍進が始まることとなる。ちなみに米国企業らしからぬネーミングなのは、そもそもの社名の由来が日本語(囲碁用語の『アタリ』)であるためである。

それからのATARIの約10年間は激動の日々であった。『HOME-PONG(ホーム・ポン)』等に続く新たな家庭用ゲーム機『Video Computer System(VCS)』…後のAtari 2600』の発売、親会社ワーナーと旧ATARIメンバーの対立ワーナーによる大幅な改革とそれに反発する社員の離脱、世界初のサードパーティActivision(アクティビジョン)』の誕生、小売の水増し発注で発生した大量の不良在庫、2600との食い合いになって失敗した後継機Atari 5200』、広がり過ぎた2600の市場が仇となり際限なく増えてゆく(ゲームに知見がない)サードパーティと低クオリティなゲームの数々、そして…起こるべくして起こったアタリショック』*こと『Video Game Crash』…。

*アタリショック(Video Game Crash of 1983)
1982年~1984年にかけて米国ゲーム業界で発生した事象
そこに至るまでの経緯は極めて複雑であるため、ザックリ要約すると
『ゲームを作れない会社が多数参入したことで低品質なゲームばかりになり、
ユーザーからも小売からも完全に見捨てられ市場崩壊、
サードパーティや販売店の倒産が相次ぎ最後にはハードメーカーが全て撤退した』というハナシ。
ちなみに『ビデオゲームの墓場』のせいか『E.T.』が原因かのように語られることも多いのだが、
この通りアタリショックは膨れ上がった爆弾が最後の最後に大爆発した案件であり、
E.T.』は運悪く最後のトリガーを引いてしまっただけで直接の原因とは程遠い(と自分は考えている)。

数名の男たちの野心から始まり、やがてはATARIに参入していた数多のサードパーティはおろか、マグナボックスフェアチャイルドといったライバルメーカーすらも巻き込み、米国のゲーム業界を纏めて焦土と化したアメリカにおける初期のゲーム史は、決して忘れてはならない負の神話として今なお語り継がれている。なおATARI創業~市場崩壊に至るまでの流れは、現状明かされている範囲ですら相当数のドラマがあり、この記事で触れているのは本当にザックリとした部分のみである。もっと深く知りたいならぜひ調べてみるがよろし。

さてさて、そんな波乱万丈な運命を辿ったATARIであるが、驚くことにこの現代においてもその名前は生き残り続けている。そして2022年、とうとうATARI創業50周年を迎えたのだ!…まぁ厳密には現在のATARIは権利を取得した別会社*なのだが、このあたりはややこしいので本文ではスルーさせてもらう。

*元祖ATARIの末路と新生ATARI
アタリショックの後、ATARIのCS部門はアタリコープという社名になり、何度かに渡って買収。
最終的にフランスのインフォグラム社がその権利を手にすることになったのだが、
その後インフォグラムは子会社として『Atari Interactive』を創設、
取得したATARIブランドのコンテンツをリリースし、
最後には自社の名前すら『Atari SA』に改名するまでになった。
つまり、現在活動しているATARIとは元インフォグラムの『Atari SA』ということになる。

ということでいよいよここからが本番、今回のタイトルはAtari 50: The Anniversary Celebration(アタリ50: アニバーサリーセレブレーション)』である!

プラットフォームはSwitch/PS4/PS5/XSX/One/Steamの6つハイスペックを要求するようなゲームではないので、どのプラットフォームでも問題なく楽しむことができるはず。ちなみにうっすらと察してるかもだが海外のみでのリリースであり、日本国内では未発売&今後の発売予定もない(2022年12月現在)。とはいえ現代のCS機はリージョンフリーなので動作自体は問題なく可能日本語ローカライズも行われている。国内から購入するならSteam版が一番手っ取り早いだろう。

-------2023/09/03追記-------
なななんと!驚くことに日本でも本作がリリースされたのだ!
残念ながらパケ版は存在せずDL版のみの販売であるが、
日本からでも簡単に入手できるようになったのは実にうれしい。
さてさて、各種プラットフォームのストアに今すぐGOである!!
---------追記終わり--------

今回はトレーダー(輸入品販売もある秋葉原のゲーム屋)の店頭で購入したのだが、入荷していたのがSwitch版とPS4版だけだったのでPS4を選択。北米アカウントを使えばPSストアの購入ページは閲覧できるのだが、残念ながら本ディスクはPS5アップグレードには非対応であった。

本作はそのタイトル通りATARIの創業50周年を記念して発売された作品であり、過去にATARIがリリースしてきた作品が各種資料と共に多数収録されている。…とこれだけならよくあるコレクション作品と同じように思えるかもしれないが、本作は世間一般のそういった作品とは一線を画すとある特徴がある。

本作で何よりも秀逸なのは『データベース』とその魅せ方にある。過去に語ったコレクションの数々からもわかるように、設定資料やデータベースは最早昨今のコレクションに『あって当然』なレベルにまで浸透してきているが、本作はただそれを閲覧する機能があるだけでなく、ゲーム全編を通して一つのミュージアム然とした作りになっているのが特徴。

本作を起動するとまず下記のような5つの項目が出てくる。

『アーケードの起源(ARCADE ORIGINS)』
『アーケードが帰ってきた(BIRTH OF THE CONSOLE)』
『浮き沈み(HIGHS AND LOWS)』
『PCの夜明け(THE DOWN OF PCs)』
『1990年以降(THE 1990S AND BEYOND)』

これらはそれぞれATARIのゲーム市場を表しており、それぞれ上から順にATARI創業からのアーケード(1971~1984)』Atari 2600の全盛期(1977~1982)』Atari 5200への世代交代とアタリショックAtari 7800での再起(1982~1989)』Atari 800から続くATARIのPC市場(1979~1992)』Atari Lynx/Atari Jaguar等、90年代以降のATARI(1989~1998)』にフォーカスが当てられている。項目を選択するとATARIのゲーム史が年表ごとに表示され、この年表に沿って様々な資料を閲覧することができる。

年表の中にあるのはゲームハード/ゲームソフトのほか、貴重な映像や画像、それからATARIに纏わる人物の名言などなど。年表を右へ動かせば未来へと進み、下に潜ればより深く掘り下げられる。一度でも閲覧した項目はマーカーが付くため、何日かに分けて読み進めるのも良いだろう。

ゲームハードの項目ではVCS用キーボードコントローラ』Jaguar CD』のような周辺機器だけでなく、Atari 2600 Jr.』Atari 600XL/800XL』等の廉価版/マイナーチェンジ機も満遍なく語られ、その中には未発売に終わったJaguar VRAtari Cosmos』についても重点的に触れた項目もあり、とにかく守備範囲も広い。

それぞれの項目の説明も長すぎず短すぎずで読みやすく、それでいて簡潔に纏められている。本作の全ての項目を読み終えただけでプレイヤーはちょっとしたATARI博士になれるかも。黎明期ということもあって説明の中にはマーク・サーニー(『クラッシュ』『ラチェクラ』やPS4/PS5の開発者)スティーブ・ジョブズ(Apple創業者の一人)といったレジェンド級の名前もチラホラ出てくるのも地味に見どころである。

映像は当時のCMドキュメンタリー番組のものも用意されているが、メインとなっているのは本作のために用意されたATARI中核メンバーのインタビュー映像である。年表の随所でインタビュー映像の項目があり、その年代に纏わる様々な事象をPONGの開発者たる『Allan Alcorn(アラン・アルコーン)』ATARIで数々のゲームを手掛けた『Howard Scott Warshow(ハワード・スコット・ウォーショウ)』Tod Frye(トッド・フライ)』ATARI製PCの開発者『Jerry Jessop(ジェリー・ジェソップ)』といった、かつてATARIに在籍し文字通り伝説として語り継がれるクリエイターを中心とした18名が語ってくれる。

インタビューの内容は特定のゲーム作品における開発裏話のほか、『旧ATARI従業員の大半はヒッピーでマリファナ吸いながら仕事をしていた』という有名なウワサの真偽『何故Atari 5200はあんなにデカいのか』といった興味深い話も。変わり種ではレディ・プレイヤー1の原作者である『Ernest Cline(アーネスト・クライン)』のインタビューもあり、こちらでは氏の少年時代のゲーム体験や同作品で非常に重要なファクターとなっていた『Adventure(Atari 2600)』から受けた衝撃、そこからレディプレが誕生するまでの経緯が語られる。
(メインは『レディプレ』とのコラボで開発された新作2600用ソフト『THE STACKS』だけど)

もちろんアタリショック』の時代に纏わるインタビュー映像も用意されている。その時代のインタビューでは無茶振りに応え『E.T.』を開発したウォーショウ2600版『パックマン』のプログラマーのトッドAtari 5200』の強行リリースを止めようとしたジェソップ毛色の変わったATARIをなおも信じ『Atari Cosmos』を開発するもソレを潰されてしまったアルコーン等、歴史の生き証人たる彼らから見たレイモンド・カサール*時代のATARIについて語られる。

*レイモンド・カサール
1978年~1983年、ワーナーに売却された後のATARIの経営者。
元は繊維会社『バーリントン・インダストリーズ』の副社長で、
ワーナーからの引き抜きでATARIの家庭用部門のトップに就任した。
…が、自由な社風のブッシュネル率いる旧ATARI
徹底した利益のみ追及するスタイルのレイモンド達の相性は極めて悪く、両者は対立。
結果、ブッシュネルがATARIを追い出され、旧ATARIメンバーが続々離脱していく原因となる。
レイモンドによる経営の是非は、その後にアタリショックが発生したことから察するべし。
なお最後はアタリショック真っ只中の1983年にインサイダー取引疑惑で解任された。
本作中でも度々言及されるのだが、記念作品とは思えないほどボロクソに言われている。
(当時ゲーム会社の経営というモノに前例がなかったことは考慮すべきだろうが…)

アタリショック時代のインタビューではややジョークで茶化したりする場面などもあるが、当時の後悔や無念をひしひしと感じる内容のオンパレード。心なしかこの映像の時だけクリエイター陣の表情もどこか悲しそうで、お通夜ムードのようなものが終始漂っている。むしろ『少しでも茶化さないとやってられない』レベルの代物なので、故にとにかく聞いていてしんどい。だがコレは悲しいことに実際のゲーム業界でかつて起こった悲劇、無視してはいけない負の歴史そのものである。こういった歴史を実際に体感した方々の声で知ることができる点こそが本作の最大の魅力なのかもしれない。

最初に書いた通り本作は全編に渡って日本語ローカライズが行われている。ローカライズのクオリティに関しては…良くはない、というかやや悪い。まぁそもそもが海外限定の作品なので日本語が入っているだけでも儲けものである。若干日本語が奇妙な箇所もあるにはあるが、意味が伝わらないほど酷い誤訳などはそこまでないので安心すべし。またインタビュー映像は当然英語ながら、これまた日本語字幕が用意されているため、英語がわからなくても内容は十分理解できる。
(一部のフォントが正しく表示されない問題などはあるのでそこは注意)

データベース内で項目が用意されているゲーム作品は勿論プレイ可能当時のマニュアルやパッケージ(3Dモデル)をまるごと収録しているほか、オマケとして当時のチラシや関連コミック、初公開となる開発資料も多数収録。システム的には便利に遊ぶためのセーブロードやフィルター機能もあり、操作では通常のスティック/ボタンのほか、タッチパネルを用いて擬似的にトラックボールのような遊び方もできるようになっている。本作には元がトラックボール操作だった作品も収録されているので、地味にコレがありがたい。2600のゲーム起動時には細かな設定…というよりは当時から用意されていたモード選択が可能

マニュアルに関してはフルで英語なものの、それぞれのゲーム選択画面で簡易的な説明が読めるほか、大多数のタイトルがシンプルな作りになっているため直感で楽しめる。…まぁ流石に『Swordquest』シリーズ*辺りはかなりハードルが高いだろうが。一応コレも当時のコミックがまるごと収録されているので、英語に自信があるなら財宝探しに挑んでみるべし。

*『Swordquest』シリーズ
1982年から1983年にかけてATARIが2600向けに発売したシリーズ。
『Earthworld/Fireworld/Waterworld/AirWorld』という4部作。
付属のコミックからヒントを得て財宝を手に入れるゲーム
…なのだが、ここでの財宝とは現実の財宝(総額15万$)であることが大きな特徴。
ゲームごとに財宝を得られるのは一人だけで、最後は財宝保有者で決勝戦を行う
…という色々とぶっ飛んだ作品。ちなみに時期的に色々察しが付くだろうが、
アタリショックの余波で4作目がリリースされなかったため、決勝戦が行われることはなかった。

プラットフォーム的にはATARIの原点たる『アーケード』、かつて米国ゲーム業界の覇者となったAtari 2600』、前世代機より短命に終わった次世代機Atari 5200』再起を託した真の次世代機Atari 7800』、64bitシステム搭載のATARI最期の花火Atari Jaguar(ジャガー)』携帯機市場にも乗り出したAtari Lynx(リンクス)』ATARI初のホビーパソコンAtari 800』、そこに電子ゲームの『Touch Me』を加えた計8機種のタイトルが収録されている。

プレイ可能な作品数は全プラットフォーム合計で脅威の97本。数だけならば他に並ぶものなどいないであろう圧倒的な収録数である。あまりに圧倒的すぎてリストアップするとゲーム語りどころではなくなるため、ゲームリストについては本記事の最後に載せるだけに留める。2600向けにリリースされてきた『RealSports』シリーズや『Swordquest』シリーズも当然全て網羅。その人気故に複数のプラットフォームにリリースされてきた『Breakout』や『Asteroids』は複数のバージョンで収録されており、プラットフォームごとの違いや性能差によるパワーアップを楽しむことができる

ただし、収録タイトルはいずれもあくまで他社が絡まない『アタリコープ』だけで権利が完結するタイトルに限られている。なので本来ATARIの歴史を語る上で避けられないであろうスペースインベーダー(TAITO)ドンキーコング(任天堂)パックマン(ナムコ)E.T.等もスルーされるか、触れるにしてもインタビュー映像で軽く名前が出てくる程度に留まる。もちろん現在ワーナーが権利を抱えているアタリゲームズ*の作品も未収録。まぁこの辺りは仕方あるまい。
(むしろアタリコープ縛りで100本近く収録しているのがヤバい)

*アタリゲームズ
アタリショック後に分裂した旧ATARIのもう一方。
『株式会社テンゲン』の親会社といえば日本のゲーマーに伝わりやすいか。
この記事ではサックリした扱いだが、こちらも分裂後にハチャメチャな運命を辿っており、
あちこちのゲーム会社を転々とした後、最後は元鞘のワーナーに権利が戻ってきた。
こちら側の代表作は『マーブルマッドネス』や『ガントレット』など。
こっちはこっちで別のコレクション作品として出ることが稀にある。
ちなみにゲームこそ収録されていないが、
本作のインタビュー映像にはアタリゲームズ側のクリエイターも出演している。

ATARIの…特に最初期のアーケードや2600向けタイトルは流石にゲーム業界の原始の時代ということもあり、シンプルを極めたものが多く、ガッツリと遊べる作品を期待すると肩透かしに終わってしまうかも。しかしながら『Tempest』Major Havocのように昨今でも普通に通用するであろう面白さがある作品も混ざるのが油断ならない。

また、一つ一つが小粒とあっても、そんな作品が97本も収録されているとなれば、かなり長い時間を楽しめることだろう。小粒というのもあくまで初期の作品に限った話であり、例えばJaguarは曲がりなりにも64/PS1/SSと同世代のハードであったため、ボリュームも相応に多め。2600とて技術が成熟した後期~末期の作品であれば、次世代(同世代?)機たるFC/SMSにも引けを取らないものがある。

とりわけアーケードではATARIの先見の明がフルに発揮されており、1984年の作品でありながらポリゴンを用いたフル3DシューティングI,Robot最大8人の同時対戦(COM対戦も可)を1977年の時点で実現したレースゲーム『Sprint 8』など、プレイした後に稼働年を見て驚かされるばかり。

収録作品の中にはCSゲーム業界において初めてイースターエッグが仕込まれた『Adventure(Atari 2600)』、ガイドキャラの皮肉セリフ『Where did you learn to fly?(どこで操縦を学んだのですか?)』が何故かカルト的知名度を誇る『Cybermorph(Atari Jaguar)』などなど、ゲーマーとして死ぬまでには一度は触れておきたい作品も多い。
(ちなみに後者のセリフはまさかのトロフィー条件にもなっている。マジかよ。)

日本ではお世辞にも普及したとは言いづらい『Atari Jaguarや、そもそも日本に上陸することすらなかった『Atari 5200』のソフトが収録されているのは素晴らしいという他ないだろう。本作に収録されているゲーム群の実機はいずれも世界レベルで幾つ現存しているのかすら怪しいブツ揃いなので資料的価値も高い…まぁ欲を言えばJaguar CD』のソフトも一本くらいは欲しかったというのはあるが。

昨今失われつつある歴史的な作品だけでなく、世に生まれることすらできなかった未発売作品も多数収録。未発売作品は当時お蔵入りするのも納得なほど極めて尖っている(だからこそ面白い)作品も多く、つくづく驚かされる。

ゲームリストの中にはタイトルが伏せられた+意味深な説明文が書かれた項目もあるが、コレは隠しゲーム。本作or本作収録作品で何かしらの条件を満たすことで解禁される。説明文は解禁条件のヒントとなっているが、地味にわかりづらいので本記事のラストで解禁方法を紹介する

そして、ここからがまた本作の目玉なのだが、本作にはなんと驚くことに新作タイトルまでもが収録されている。それも6本。これらの新作タイトル群はAtari Reimagined』と呼ばれ、ATARIの名作を現行機種/現在の技術で復活させようとしたものである。内容はリメイクもあれば新作もあるし、オリジナルに寄り添ったモノもあればテーマが同じなだけで全くの別物と化した作品も。とりあえずここからはそれらをザックリ説明させてもらう。

『Neo Breakout』世界最古(多分)ブロック崩し『Breakout』のリメイク。従来通りのシステムに3Dを生かした演出が追加されているほか、ステージをクリアしていくとオリジナルにはなかった新しいギミックも登場する。純粋なブロック崩しとしてやりごたえもあり、極めたプレイヤーならばスコアアタックも楽しめる。一味違ったルールでの対戦モード『バトルブレイクアウトもあり、こちらはCOM対戦も可能というぼっちに優しいシステム。

『Quadratank』2600のロンチタイトル『Combat』のリメイク。4人対戦に対応しただけでなく、新ルールや新ステージ、新たな武器など豊富な追加要素が魅力。如何にして素早く自機をパワーアップさせライバルを蹂躙するかがカギ。コレもまたCOM対戦が可能だが、真に本作が輝くのはマルチプレイであろう。…まぁ自分にはマルチプレイをやる相手がいないのでシングルオンリーでの感想しか書けないケドも。

『Haunted Houses』最初期のサバイバルホラー『Haunted House』の新作…なのだが、まさかまさかのローポリ風3D。画面もトップビュー視点(一応こちらも選べる)からTPS視点主体に変わった上、『敵を避ける』のが重要だったオリジナルとは違い『敵に見つからないように隠れる』というスニーキング的な趣が強められているため、Reimaginedの中では特に別物になった作品。ヘンテコな外観とは裏腹に極めて難易度が高く、コレに纏わるトロフィー(ハイスコアが条件)を獲得できた人は素直に誇っていいだろう。そもそもコレ2人プレイ前提っぽいので1人だと難しいのは当然な気もするが…。

『Yars' Revenge Enhanced』は同名の固定画面STG。Reimaginedの中でも最もオリジナル…つまり『Yars' Revenge』に近いリメイク。どれくらい近いかというと、演出以外の追加要素が殆ど存在しない。言い換えればオリジナル版の面白さをそのままにド派手にした作品なので、ある意味最も技術の進歩が感じられる作品かもしれない。

『Swordquest: Airworld』はかつてリリース…どころか開発すらされなかった『Swordquest』シリーズ幻の4作目にして最終作である。他のReimaginedが現行機種ならではの演出をフルで生かしている中、本作のみは『当時もしも4作目が出ていたら…』を具現化したような2600風味の内容。他のシリーズ作と同様にヒントを元にミニゲームを攻略し、財宝を見つけ出すべし。コミックとの連動要素こそないが、謎解きのヒントとなるマニュアルが用意されている。ちなみにこのマニュアルは日本語にもローカライズされているため、英語が読めなくとも財宝探しには挑戦できる。

Reimaginedの中でも一番イチオシなのは『VCTR-SCTR(ベクターセクター)』、コレは4つのフェイズからなるウェーブを攻略していくシューティングなのだが、この構成というのが凄まじく、フェイズ1が『Asteroids(2Pプレイ時はSpace Duel)』同様の固定画面STGフェイズ2が『Lunar Lander』のような着陸パートフェイズ3がMajor Havocの前半ステージそのままな奥スクSTG締めのフェイズ4は『Tempest』…というATARIのアーケードSTG全部乗せと言わんばかりの作品である。そのうえグラフィックは全編ワイヤーフレーム風味!とにかくプレイしている間はテンションがブチ上がること間違いなしである。

旧作97本に加え、新作6本、合わせて103本ものゲームが収録されている本作はインタビューや年表の資料的価値を完全に無視した『単なるゲームの詰め合わせ』として購入しても充分満足できるボリュームを誇っている。全作品の完全クリアはおろか、トロコン…否、一通りの作品を軽くプレイするだけでもガッツリ楽しむことができるハズである。

有り余るほどの多数の歴史資料や名言に囲まれつつ、実際のゲーム作品そのものも体験し、ATARIという企業を通してゲーム業界黎明期の歴史を紐解いていく本作のプレイ体験は、まさしくゲームの博物館のごとし代物である。本作は単なるコレクションではなく、実際に遊んで学べるゲームミュージアムなのだ。

さて、1971年のSyzygy(ATARIの前身)から始まる本作の年表は5つの時代を経て50年後の2022年…即ち現代での一つの映像に辿り着く。この映像ではATARIの創業者たるノーラン・ブッシュネルATARI(Atari SA)のCEOであるウェイド・ローゼンの対談が行われており、ATARIという会社の原点を今一度振り返るような内容になっている。そしてその映像の先…年表の本当の末尾に書かれているのは、これから先の未来に向けた希望を感じるテキストである。

ATARIというゲーム会社が辿った一連の事象や栄枯盛衰、そしてそれらの波乱万丈の末、一度は『ゲームオーバー』になっても諦めずに『コンティニュー』し、今もなお歩みを止めることのないその姿からは一人のゲーマーとしてもクリエイターとしても学べることが大いにある

本作を通して、改めてゲーム業界の原点というモノを学び直してみるのも良いものだと思うのである!そして、本作で過去を見直し、改めて未来への天望を示したATARIのこれからにも期待したいところである!!

 

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『Atari 50(PS5版)』のAmazonページ

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---以下、オマケ---

Atari 50』収録作品リスト

プラットフォーム別、並びは本作における年代ソート順
また、頭に*が付いているものは隠しゲーム

アーケード(25作品)

PONG
Breakout
Sprint 8
Fire Truck
Super Breakout
Asteroids
Lunar Lander
Missile Command
Warlords
Asteroids Deluxe
Centipede
Tempest
Gravitar
Liberator
Millipede
Quantum
Space Duel
Black Widow
Crystal Castles
Food Fight
Major Havoc
Cloak & Dagger
I,Robot
Akka Arrh(未発売)
Maze Invaders(未発売)

Atari 2600(41作品)

Air-Sea Battle
*Basic Math
Combat
*Race 500
Surround
3-D Tic-Tac-Toe
*Breakout
Outlaw
Canyon Bomber
Adventure
Dodge'Em
Asteroids
Caverns of Mars
Missile Command
Super Breakout
Warlords
Demons to Diamonds
Haunted House
RealSports Baseball
RealSports Football
RealSports Volleyball
Swordquest: EarthWorld
Yars'Revenge
Centipede
*Gravitar
Miner 2049er
Quadrun
RealSports Soccer
RealSports Tennis
Swordquest: FireWorld
Swordquest: WaterWorld
Crystal Castles
Millipede
Solaris
RealSports Boxing
Dark Chambers
Secret Quest
Fatal Run
*Combat Two(未発売)
RealSports Basketball(未発売)
Saboteur(未発売)

Atari 5200(5作品)

Missile Command
Star Raiders
Super Breakout
Bounty Bob Strikes Back!
Millipede(未発売)

Atari 7800(7作品)

Asteroids
Centipede
Dark Chambers
Basketbrawl
Fatal Run
Ninja Golf
Scrapyard Dog

Atari Jaguar(9作品)

Cybermorph
Evolution Dino Dudes
Trevor McFur In The Crescent Galaxy
Club Drive
Tempest 2000
Atari Karts
Missile Command 3D
Ruiner Pinball
Fight For Life

Atari Lynx(5作品)

Scrapyard Dog
Turbo Sub
Basketbrawl
Malibu Bikini Volleyball
Super Asteroids & Missile Command

Atari 800(4作品)

Miner 2049er
Bounty Bob Strikes Back!
Food Fight
Yoomp!

電子ゲーム(1作品)

Touch Me

Atari Reimagined(6作品)

Haunted Houses
Neo Breakout
Quadratank
Swordquest: AirWorld
VCTR-SCTR
Yars'Revenge Enhanced


隠しゲーム解禁条件

Basic Math

『グレイブ・アカデミーの
行き止まりには秘密の部屋がある
宝を見つけるにはTestを通過せよ
お茶の子さいさいだね』

『Haunted Houses』のグレイブアカデミー(チュートリアル)に入り、2Fエレベータに乗れるようになったら、エレベータを無視して奥へ進む。壁に『TEST』と書かれた先に扉があるので、扉の前で立ち止まる。暫くすると教室にワープするので、室内にあるテスト用紙を拾って奥の机に近付く

Breakout(Atari 2600)

『また壁が崩れる
ONEの順番が狂う
あのゲームの特別ボードをクリアしたら
秘密の任務は完了だ』

『Neo Breakout』ブレイクアウトモードで6面をクリアする。通しでクリアする必要はなくコンティニューの使用もOK。何度も繰り返し挑戦していればいつかはクリアできるはず。

Race 500

『リドルのゲームには秘密がある
5つの道を歩き尽くし
隅々まで探索すれば
ゴールラインが見えるはず』

年表の『アーケードの起源』~『1990年代以降』の探索率を全て100%にする。探索率の100%は年表内の全ての項目にスタンプが押されればOK。なお映像/画像系の項目は再生/ズームする必要があることと、ゲームタイトルの項目はプレイではなく箱のズームをしなければ探索率に反映されない点には注意。

Combat Two

『プロトタイプが遊びに来た
戦場に
見つけて戦車を作り直せ
何をぐずぐずしているんだ?』

『Quadratank』マップ2、旗争奪戦モード、武器をロケット&レーザーにしてゲームを開始する。この設定にしている時のみ、マップ中央の円模様(ATARIのロゴ)の近くをロケットが通った際に専用のSEが鳴るようになる。SEが途中で途切れないようにロケットを操作して円模様の周りを1回転させる
ロケットは射出後にスティックで軌道操作が可能、ただし初期状態だと飛距離が足らず達成できないため、ゲーム開始後に射程(レンジ)のアイテムを集め、飛距離を伸ばしておく必要がある。簡単そうに見えて意外と難しいのでCOM抜きの一人プレイ、かつ制限時間もナシ設定で開始するといい

Gravitar(Atari 2600)

第三セクターの戦場
黄金の虚空に
客人が来ても躊躇するな
どのみち撃破しなきゃならないんだ』

『VCTR-SCTR』のウェーブ3の『Asteroids』パートに登場する『Gravitar』の敵キャラを全滅させればOK。本作は実質STG4本分のテクニックが要求されるため、ウェーブ3への到達は中々骨が折れる。幸い到達面からのステージセレクト自体は用意されているので、何度も挑戦してウェーブ1・2を突破すべし。本作のベースとなっている作品を事前に練習しておけば突破率は上がる