前回の記事からあんまり期間も空いてはいないが、唐突ながらアツく語りたい作品が出て来てしまったので今回も語るとするのである!
さぁさぁ今回語るべき作品はあの伝説の名作のリマスター!『ソニックカラーズ アルティメット』である!!2回連続でソニックシリーズの記事になってしまうが気にするでない!いいじゃん!我はソニックが好きなのだ!
(マニアックだろうが海外専売だろうが世に出たものなら一通り手を出している程度にはファンであります)
さて今作は11年前に発売されたかのWiiの名作『ソニックカラーズ』のリマスターである。早速だが今回のリマスター、シリーズを追ってきたファンにとっては異例of異例の代物だったりする。
ソニックシリーズ自体は今年で30周年を迎える長寿シリーズではあるが、実はこう見えて『リマスター』が出たことが殆どない。確かにメガドラ時代の初期作品を中心にコレクション系作品に収録されたり、以前我がブログでも語ったSEGA AGESのようにアレンジ移植されたりすることこそあったが、いずれも単純な『移植』の範疇であり、『リマスター』ではない。
過去のソニックシリーズにおける数少ないリマスターはかつてドリームキャストにてリリースされた『ソニックアドベンチャー』『ソニックアドベンチャー2』*のPS3/360版のみであり、他に同様の例はほぼ存在しない。
*ソニックアドベンチャーシリーズの移植
一応ソニアドシリーズ2作はGCにて
移植版『DX』『2バトル』がリリースされているものの、
これらをリマスターに含めていいかは少々微妙なライン。
どちらかといえばPC版『R』のような他機種完全版というポジションかと思われる。
では何故、今になってこの異例ともいえるリマスターをリリースするに至ったのか。その答えは至極単純明快である。
昨年公開された実写映画『ソニック・ザ・ムービー』*、そちらの大ヒットによりこれまで手薄であったファミリー層にソニックが認知されるようになった…はいいのだが、如何せん現行機種で手軽にプレイできるソニックは『ファン向け特化のレースゲーム(TSR)』『良質であるがマニア向けかつ現在の本流から外れた2DACT(マニア)』『本流に最も近いが賛否両論の3DACT(フォース)』の3本であり、いずれも初心者のデビュー作とするには少々厳しいものがあった。
(SEGA AGESの2作もあるが、こっちはこっちで根本的に客層が違う)
*ソニック・ザ・ムービー
2020年公開、ソニックシリーズ初の実写映画。
ソニックと保安官トムの友情が描かれる。
ゲーム本編とのつながりはないパラレル設定で、
ゲームからのメイン出演はソニックとエッグマンのみ。
個人的にはソニックとして見た場合『Not for me』であったため、
あまり細かくは触れていくつもりはないが、
純粋なアクション映画として見た場合は中々のモノであった。
現在はNetFlixにて配信中。
初心者向け、かつ本流に近い作品という点を意識した場合、選択肢に上るのは00年代後期~10年代前期のシリーズ作品になるワケだが、これらの作品をプレイするならば2世代~3世代前のハード、或いは現在の世代でも何かしらのサービスに登録する必要があり、当然ながら初心者が乗り越えやすいハードルであるとは言いづらい。
(特に国内では人気の都合から出荷量があまり多くないので、旧作の価格も高騰しがちだし)
そういうわけで、映画経由で流入してきた『未来のソニックファンへと向けた入門編』として、今作『ソニックカラーズ』に白羽の矢が立ったというワケである。
『ソニックカラーズ』はシステム的にも世界観的にも昨今のソニックシリーズのスタンダード*に限りなく近く、それでいてシリーズでも屈指の低難易度でもあることから、確かに初心者のデビューにはお誂え向きといえよう。
システム的に見た場合、厳密には現在のソニックの始祖は『ソニックワールドアドベンチャー(ワルアド)』であり、最新作基準で見た場合一番スタンダードなのは『ソニックジェネレーションズ 白の時空(ジェネ白)』だと思うのだが、前者は高難易度、後者は根本的なテーマがシリーズファン向けなので仕方あるまい。また、ワルアドもジェネも(PSではストリーミングという形になるが)定額サービスや互換機能を用いることで現行機種でもプレイ可能という一方で、カラーズだけは現状そういった復刻がなかったというのも理由の一つであろう。
(ご丁寧にカラーズはWii版もDS版もWiiUやPCでのDL版/VCの販売が行われていなかったし)
*昨今のソニックのスタンダード
昨今のソニックの本流におけるスタンダードは
所謂『ブーストソニック』と呼ばれるもの。
かつて『ソニックラッシュ』で衝撃的なデビューを果たしたブーストを
3Dに落とし込んだ『ソニックワールドアドベンチャー』などが代表的。
メリハリを持たせるため2Dと3Dがスピーディに切り替わるため『2.5D』と呼ばれることも。
ちなみにブーストという名称自体は『アドバンス2』が初出だったり。
ということでそろそろ本題に入る…前にオリジナルとなる『ソニックカラーズ』について触れさせていただこう。ここから暫くオリジナル版の概要について触れるため、『そんなこと言われずともわかってる!アルティメットの概要についてだけ教えてくれ!』という人は目次を用意したので、『ソニックカラーズ アルティメット』を選択してほしい。(前にも似たようなことやったなコレ)
ソニックカラーズ(オリジナル版)
『ソニックカラーズ』は2010年にリリースされたソニックシリーズの1作、プラットフォームはWiiとニンテンドーDSで、両機種ともに同日発売。ちなみに(マリソニ除く)Wiiでリリースされたソニックとしては6作目、DSでは4作目にあたるため、どちらのハードで見てもかなり末期のリリース。おかげでシリーズファン以外からの注目度はだいぶ低かった。
(まぁこの頃のソニックは国内でロクな宣伝を打ってなかったので当然といえる)
最初に言っておくと実はこの『ソニックカラーズ』、シリーズ内でのポジションが非常に特殊だったりする。今作の目玉要素にして新要素のカラーパワー(後述)こそWii版とDS版で共通しているが、ゲームシステムはそれぞれ大幅に異なっているのが特徴。
より具体的にはWii版では適宜切り替わる2D/3Dに対応しながらステージを進めていく『ソニックワールドアドベンチャー』から現在まで続くブーストソニックのスタンダード、DS版では3Dステージがスペック的に厳しかったためか(キャラは3Dだが)システム的には全編2Dとなっており、その代わり『ソニックラッシュ』のようにブーストのスピード感を突き詰めたような内容となっている。
つまり、Wii版カラーズとDS版カラーズはどちらも同じ『ソニックカラーズ』というタイトルでありながら、その実『ソニックワールドアドベンチャーの続編』と『ソニックラッシュアドベンチャーの続編』という全く異なる系譜に分かれていることになる。
このような『性能差のあるマルチプラットフォームでそれぞれの特色を生かした別ゲーとして成立させる』という手法はこの当時のソニックシリーズではよくあるものであり、最初に行われたのはWii版の前作『ソニックワールドアドベンチャー』、この時はPS2/Wii版とPS3/360版の2パターン。
この方式は『一粒で二度おいしい』としてファンからも好評、今作以降でも『ソニックジェネレーションズ(PS3/360版と3DS版)』『ソニックロストワールド(WiiU/PC版と3DS版)』『ソニックトゥーン(WiiU版と3DS版)』と続いていく。
これらはプラットフォームごとにデベロッパーも異なっており、今作の場合Wii版が本家本元のSEGA、DS版がディンプスとなっている。
ちなみにディンプスはかつてCAPCOMで『ストリートファイター』を開発したメンバーが設立した会社であり、現代でも同シリーズの開発に携わっている。GBA以降の(アクションゲームとしての)携帯機ソニック作品は大体こちらの開発である。
今作のメイン要素として華々しく登場したのが『カラーパワー』、こちらは異星人『ウィスプ』がソニックに力を貸すことで発動するという設定。
システム的にはステージ内に配置されたウィスプを取得することでカラーパワーを発動できるようになり、カラーパワーを使用すると少しの間だけ通常のソニックでは進めない新しいルートを開拓できるものとなっている。
カラーパワーの効果はウィスプによって異なり、今作に登場するものならば『反射するレーザーになって高速移動(シアン・レーザー)』『一定時間、地中を掘り進む(イエロー・ドリル)』等。
ウィスプたちはそれぞれ色の名前を冠しており、その名の通りのカラーリングであるため、視覚的にもわかりやすくなっているのはありがたい点。
カラーパワーのシステムは公式も大きくプッシュしており、今作以降の本家シリーズでも少しずつ形を変えながら続投、再登場のたびに新種のウィスプが増え続けている。
(今作のラストからしてそれはどうなんだともツッコまれていたが、強引気味な後付け設定でどうにかなった)
なおウィスプは色縛りだとネタ切れも速そうに思えるかもしれないが、なんだかんだマゼンタとピンク・イエローとアイボリー・シアンとブルーとインディゴがそれぞれ別能力として成立するレベルなので意外と柔軟性はありネタも尽きない。
カラーパワーの発動中はボーナススコアが入り、かつアイテムのある隠しルートに進めたりすることもあるため、今作のスコアアタックでは欠かせないシステムとなっている。
このおかげで今作は他作品に比べランクの基準が大きく異なっており、他作品の高ランクでは『いかにスピーディに仕掛けを突破したか』という点が問われるのに対し、今作の高ランクは『いかにカラーパワーを上手く使って目一杯仕掛けを利用したか』が重視されることになる。
言い換えれば他作品のノリでステージを突破しても決して高ランクが取れないようになっており、最高ランクであるS狙いならばある程度タイムを度外視したスコア稼ぎを行う必要が出てくる。結果的に今作ではスコアアタックとタイムアタックで全く違う動きになるため、双方共にプレイを極めるのが中々楽しい。
ちなみにだが、カラーパワーは高ランク・好タイムを目指すならば必須かつ、通常プレイでも使用すれば便利な代物ではあるものの、ただ単純にクリアするだけならば完全無視しても良かったりする。この辺りはソニックシリーズのお約束である『ルート構築の自由度の高さ』の現れであると言えよう。
ソニックシリーズ全体を通しての魅力ともいえるBGMのハイクオリティっぷりは今作でも相変わらず。BGMは各エリアごとに3曲用意されている、ACTは6つあるため、各BGMが流れる機会は原則2回ずつ。メインテーマ曲『Reach For The Stars』は言わずもがな、ステージ曲ならば『Planet Wisp - Act 1』や『Aquarium Park - Act 1』あたりは特に人気か。ラスボス戦の後半戦で流れるBGMもまた素晴らしい。
(惜しむらくは手加減しないとサビに入ったあたりでラスボスが落ちることか)
難易度はシリーズの中でも群を抜いて低め、ソニックシリーズは多数のスピンオフを持ち、本家シリーズも2D(クラシック)・3D(アドベンチャー系)・2.5D(ブースト)とそれぞれ別々の路線であるため一概に比較できないところもあるものの、その中でも今作は特に簡単な部類に入る。ブーストソニックに限った場合ならば間違いなく一番簡単である。初見殺し要素なども極限まで減らされているうえ、高難易度エリアも所謂ショートカットルート側に配置されているケースの方が多いため、隠し要素のコンプリートなどを目指さずに適当にクリアまで突っ走るだけであれば、今作が初ソニックであってもスムーズにプレイできるだろう。
これも難易度の低さの理由の一端ではあるが、メインになるステージの量もそれなり。やり込み要素などを抜きにすると6エリア*6ACT+αなので、歴代のソニックシリーズの中では少な目ではあるものの、一般的なアクションゲームとしてはTHE・普通といった感じ。とりあえず『気軽にアクションに触れたい!』という人にこそオススメできるボリュームである。一方でやり込み要素のコンプリートを全て自力でどうにかしようとすると、絶妙なボリューム感になる。
ところで、カラーズについてファンが口を開く場合、なにかとシナリオ方面の話題になることが多い。それもいい意味ではなく悪い意味で。
何一つの配慮もせずハッキリ述べてしまうと、ぶっちゃけ今作のシナリオは薄い。良いとか悪いとか以前の問題でとにかく薄い。アドベンチャーシリーズや新ソニどころか、アドバンスシリーズ…いや、下手するとメガドラのソニック3&ナックルズよりも薄い可能性すらある。今作のシナリオを一言で説明すると『Dr.エッグマンがウィスプたちの母星を侵略しテーマパークを作ったので、ソニックが乗り込んでぶっ潰す』というのみ。これだけならまだいいが、今作は『ソニックがテーマパーク(≒エッグマンの本拠地)に侵入した』というところからスタートする。
つまり言ってしまえば『あとはエッグマンを倒すだけ!』という状況から物語が始まるため、根本的にそもそもの話の広めようがなくなっているのである。『ガノン城からスタートするゼルダの伝説』『ポケモンリーグからスタートするポケモン』あたりをイメージすれば、シナリオの薄さが伝わりやすいだろうか。一応シナリオの核となる『ウィスプ達との出会いと別れ』については描かれているものの、それでも必要最低限の描写止まりであり、ムービーもウィスプ達との交流に充てられるものは僅かで、大半はソニック単独のジョークでボスを挑発するだけのものに費やされている。おなじみの歴代キャラたちもどういうわけか今作には登場せず、新キャラ組を除くとメインで登場するのはソニックとテイルスとエッグマンのみ。おかげでよりシナリオの薄さが際立っている。
ちなみにコレはWii版の話であり、DS版ではムービーこそ僅かであるものの、ステージクリアごとにウィスプや歴代キャラ(DS版ではヒーローズ組と新ソニ組が登場)との寸劇が挟まれるため、体感的にWii版よりはシナリオに彩りを感じられるようにはなっている。更に言えば、条件次第でWii版のシナリオを外れ、DS版限定かつ『シリーズのお約束』を踏襲したアツい展開になったりする。まぁこちらもこちらで本筋はWii版と同一なので、根本的な薄さの改善にはなっていないのだが、『ライバルズ2の後日談』や『ラッシュアドベンチャーに登場したとあるキャラのその後』等について言及されているため、少なくともファンであればニヤリとできる内容になっている。
ただし、良くも悪くも薄いということはシナリオにそこまで集中しなくてもゲームを楽しめる…ということかもしれない。そもそもソニックシリーズでシナリオ方面に力を入れだしたのは『ソニックアドベンチャー』以降のことであるし、ゲーム内でシナリオらしいシナリオが描かれるようになったのだってせいぜい『ソニックCD』か『ソニック3&K』くらいからのことである。それを考えると、ある意味シナリオが薄いというのは先祖返りという見方もできないでもない…かも。
…とにかく、オリジナル版の『ソニックカラーズ』についてはこんな感じ。一言でまとめると『シナリオ周りにこそ難はあるが、それ以外は手堅くまとまった、特にソニックシリーズ初心者向けの作品』といったところである。
ソニックカラーズ アルティメット
ここからはいよいよ正真正銘の本題、『ソニックカラーズ アルティメット』について語っていこう。
(今回はマジで前略が長い!)
最初にも軽く触れたように、今作はかつてWiiにてリリースされた『ソニックカラーズ』のリマスターである。プラットフォームはPS4とNintendoSwitch、ソフトのほかに記念メダルやアートブック等が付属した『30thアニバーサリーエディション』も同時にリリースされている。
自分が購入したのはPS4版、当然ながら『30thアニバーサリーエディション』をチョイスである。記念メダルは20年前の『ソニックアドベンチャー2』の限定版(こちらは10thアニバーサリー)にも付属したグッズでもあるため、そういった意味ではシリーズの歴史を感じられるグッズなような気もしないでもない。
今回のリマスターを担当したのはBlindSquirrelGamesというアメリカのゲームデベロッパー。作品が作品だけに自分とはあまり縁がない会社であるが、過去には『バイオショック』『マスエフェクト』等のリマスターを手掛けているところである。
ちなみに『Wii版のリマスター』であるため、DS版の要素はほぼ存在しない。DS版限定カラーパワー(バースト/ヴォイド)は影も形もなく、シナリオもWii版と同一。強いて言うならばとあるボスのデザインがDS版のものに変わっていたりもするが、本当に些細な違いである。
さて、『アルティメット』という大層な名を冠しているのは伊達ではなく、今作では様々な面でその名に恥じない要素の追加が行われている。
まずリマスターとしてあって当然な高解像度化については言うまでもないだろう。そもそもカラーズはオリジナル版の時点でWiiの中でも最高峰のグラフィックだったので、そこまで目に見えて大きく変わった…というわけではないのだが、それでも見比べてみると一目瞭然である。
PS4版ならばオリジナルよりもフレームレートが向上、念願の60fpsである。やはりアクションゲームというジャンルではフレームレートが正義である。このヌルヌルっぷりを目にすれば一発で進化を感じられることであろう。ちなみにSwitch版はWii同様の30fpsではあるものの、一方でこちらは『ソニックカラーズを携帯できる』という絶対的な強みがある。フレームレートのPS4か、はたまた携帯できるSwitchか、お好きな方をどうぞ。
オリジナルからの変更点として特に大きいのは『テイルスセーブ』というシステムが追加された点であろう。
こちらは救済要素の一環であり、『落下によるミスをした場合、専用の残機を消費することでスコア・リングを引き継いだまま復活できる』というファンから見たらあまりに強力過ぎてビックリする代物である。もとより落下死の危険性はかなり低いカラーズであるが、このシステムが追加されたことにより、実質的にほとんどの落下死エリアを無効化できるのは大きいだろう。オリジナル版よりも更に初心者向けにするための変更と言える。スコアが保持されることでオリジナル版以上に高ランクを取りやすくもなった。ただし、あくまで無効化できるのは『落下ミス』だけなので過信は禁物。
同じく難易度を下げるための変更としては『ホーミングアタックのスイートスポット』の追加である。こちらは『特定のタイミングでホーミングアタックを行うことでブーストゲージが上昇する』という仕組みになっている。一回のホーミングで上昇するゲージ量こそ僅かであるが、塵も積もれば山となり上手く扱うことでオリジナル版では事実上ブーストが封印されていたエリアをかっ飛ばすこともできるようになった。地味ながらコレは嬉しい変更点である。スイートスポットのタイミングを逃しても普通のホーミングアタックとして発動するため、ガチでプレイしない限りはそこまで気にせずともOKなのもありがたいところ。
そしてここからが明確な追加要素、まずは新カラーパワーの『ジェイド・ゴースト』である。発動すると『一定時間自由に空中を浮遊しつつ、特定の地点で壁を抜けることができる』というもので、過去のカラーパワーにありそうでなかった類の能力である。強いて言うならばグリーン・ホバーに近いか(リングダッシュが使えない等の差異はあるが)。
オリジナルからステージそのものの追加は行われていないため、一部の既存ステージがゴースト追加に合わせて構造が変わっていたりする。ゴースト追加のおかげで何度もWii版でプレイしたステージであっても、新しいエリアを模索する楽しみがある。とはいえあくまでカラーパワーなのでゴースト必須のエリアは隠しエリアのみ。このあたりはオリジナル版の良さをよくわかっている。なおゴースト自体は今作が初というわけではなく、過去に本ブログでも触れた『チームソニックレーシング』が初出だったり。
そしてもう一つ大々的に紹介されていた要素こそが『ライバルラッシュ』。ある程度今作をやり込むと、特定ステージにシリーズおなじみのライバル『メタルソニック』が出現しレース対決ができる。やりこみ解禁の要素ということで、カラーズ内では珍しく高難易度。
メタル自体の強さはそれなりで、『正規ルートで安定したテクニックで駆け抜けられる』程度のプレイスキルがあればいい勝負ができるくらいの絶妙な強さ。過去シリーズも経験した上級者からすると少々物足りないが、今作から入った初心者が頑張ればギリギリ勝てるレベルと考えるとベストな調整であろう。
ただ、メタルのレースと名乗ってはいるが、『ソニックCD』のように相手が妨害してくるわけでもなく、逆に『青の冒険』のようにこちらからの妨害もできないため、(このあたりは『トゥーン』でもそうだった気がするが…)言ってしまえば『ちょっと演出が特殊なタイムアタック』だったりする。まぁカラーパワーとかのシステムを考えると純粋にレースさせるのは厳しかったのかもしれない。個人的にはそこそこ手ごたえもあって面白いのに、ゲーム中で6回しか用意されていないのがちょっと残念だったり。
オリジナル版の時点で人気のあったBGMも大半が『Remix』として新規アレンジが行われている。オリジナル版では3曲のBGMを6つのACTで使用…つまり各BGMごとに1度ずつ流用していたのだが、今回は流用していた片方でアレンジ版が流れるようになっている。同様に流用が行われていたボス戦のBGMも前半ボス(ロタタトロン・キャプテンジェリー・フリゲートオーシャン)でアレンジ版、後半ボス(リフレシネイター・アドミラルジェリー・フリゲートスカリアン)で原曲が流れる。ただしプラネットウィスプだけは例外で、デフォルトだと全部のACTで原曲が流れるようになっている(後述)。
アレンジ版は原曲の方向性を踏襲しつつも、今までにはない派手なアレンジが行われているため必聴。『Planet Wisp - Act3(Remix)』や『vs. Rotatatron(Remix)』、それからラスボス戦や『Super Sonic』がアレンジだとお気に入り。
ここまで書くと、今作はまさに『アルティメット』なリマスターであり、これからプレイするシリーズ入門者は絶対に手を出すべき内容だと感じるかもしれないが、ぶっちゃけるとあんまりオススメはできない…少なくとも今の時点では。
というのも、今作は改良されたポイントや追加要素こそそれなりにあるが、それらに加えてどういうわけか問題点がWii版の比ではないレベルで増加しているのだ。
まず、ちょっとプレイしただけでまず間違いなくバグが発生する。少なくとも自分は今作をトロコンするまでにのべ3桁を越えるレベルでバグに遭遇した。明らかに『ちょっとプレイすれば気付く』というレベルの単純なバグですら信じられないくらい存在する。
過去のソニックシリーズにバグがなかったとは言わないが、ここまで極端に酷いのは今作くらいである。最早バグが多すぎて『コレはバグってるのではなく、仕様通りなのでは…?』と思ってしまうレベルである。(個人的に気に入ってるので比較に出したくはないが)新ソニ*の方がまだバグが少ないと感じるレベルである。まぁこっちも何がバグで何が仕様通りかわからぬのだが…。
*新ソニ
2006年にリリースされたPS3/360用ソフト
『SONIC THE HEDGEHOG』のこと。
特に副題などがついていないため、ファンからは『新ソニ』『2006』などと呼ばれる。
PS3ロンチということもあり、スタッフ側も無理をしたリリースだったのか、
頻発する処理落ち、そしてありえないほど多いロードのおかげでその評価はシリーズの中でも特に低い。
しかし一方で2021年現在最後のアドベンチャー路線の作品であるため、
クオリティはともかくとしてその方向性だけは評価する人も多い。
ちなみに自分はあまり嫌いではない。
代表的なバグとしては『カラーパワー発動時やリザルト画面でサウンドが消える』『一部カラーパワー発動時のボイスが再生されない』『ムービーで複数の言語が同時に再生される』『テイルスセーブでの再開時にモーションがおかしい』などなど。一つ一つのバグは小さいものであるが、とにかく数が多くかつ発生頻度も高いため、Wii版のプレイヤーならばプレイしていて違和感しか覚えない。BGMに至ってはWii版未プレイでもおかしいと思うだろう。
そして酷いものになるとゲーム自体がフリーズ・クラッシュすることもある。特にロード中にクラッシュするケースは最悪であり、こうなると確実にセーブデータが破損する。Wii版であればセーブファイルが複数用意できたので、複数ファイルにバックアップを取るなどの対策もできたのだが、今回のリマスターではセーブ枠が1つだけになっているため、データが破損すると文字通り最初からやりなおしになってしまう。
よって、今作をプレイする場合は少しの間だけでもいいので、プラットフォーム側のオンラインストレージ機能の使用を強く推奨する。Switch版なら『Nintendo Switch Online』、PS4版なら『Playstation Plus』或いは『Playstation Now』にまず加入しておくべし。このセーブデータ破損は何の前触れもなく唐突に発生するものであるため、プレイヤーは常に最悪のケースを想定して動くほかないのである。
(自分はPlus会員だったおかげで6時間分やり直し食らっただけで済みました)
ちなみにセーブデータ破損の報告はザっとネットを見た感じPS4版のみのようだが、Switch版はSwitch版でPS4版にはないテクスチャバグの報告がそれなりにあったりするため、あちらでも万が一の事態を想定しておいた方がいいだろう。
セーブデータの破損を伴わない単純なフリーズならば脅威度は薄いように思えるが、実体としてはそうでもない。いや普通にクリアする分にはそう問題もないのだが、コイツが牙を剥くのはやりこみ要素である『エッグシャトル』のプレイ中である。
エッグシャトルはWii版から存在する今作のやりこみ要素であり、『全メインステージ・全ボスを中断セーブ&休憩なしで走破する』というもので、Wii時代から(特にタイムアタックで)人気を博していたモードなのだが、『中断セーブなし』という仕様上エッグシャトル中にフリーズすると当然ながら記録は残らず、おまけにまた最初のステージからやり直しになってしまう。
エッグシャトルは今回のリマスターでアチーブメント(PS4ではトロフィー)の一部になっていて重要度が増しているうえ、熟練者でも1周するだけで1時間近くかかるモードであるため、本モードの終盤でフリーズが発生した場合の絶望感は洒落にならない。
単純な難易度の高さでゲームオーバーになるのであればまだしも、突然のフリーズで強制終了させられるのはやはり納得できるようなものではない。エッグシャトルの終盤戦でフリーズ食らったときなんかは『…スタッフ本当にシャトル通しのテストプレイやってるんだろうな…?』と呟く程度にはイライラしていたのは覚えている。
ちなみに参考までに自分はトロコンまでにフリーズを5回(うち2回がエッグシャトル)、クラッシュからのセーブデータ破損を1回経験しているのである。エッグシャトルのプレイ中はただただずっとフリーズしないことを祈り続けていたのは言うまでもない。
また、コレは一概にバグとは言い切れないような気もするが、一部Wii版の再現をぶん投げていると思しき箇所も存在する。例えば、どういうわけか一部敵キャラの挙動が高速化している。特にスプリンクラー(一定周期で鉄球を落とす敵)は攻撃頻度・鉄球の落下速度ともにWii版のほぼ倍速になっているため、コイツの登場エリアの難易度が理不尽に上昇している。
ほかにもソニックのジャンプ力*も低下しているのか、Wii版で乗ることのできた足場にひと工夫しないと登れないようになっていたり、ステージセレクトのソニックの飛び出しモーション*がおかしかったりと、Wii版を知ってると『なんかおかしくない?』となる箇所が非常に多い。
*ソニックのジャンプ力
非常にわかりづらいが縦方向へのジャンプ量が間違いなく下がっている。
元々カラーズは『ソニックのジャンプでギリギリの足場』が多数存在するため、
この変更によりオリジナル版のルートが一部使えなくなってたりする。
スターライトカーニバルACT5序盤、スパイクエリアに入るルートあたりで顕著。
Wii版では最大の2段ジャンプで登れた足場に乗れなくなっている。
*ソニックの飛び出しモーション
Wii版カラーズではステージセレクトに遷移した際、
ピョコっとソニックがステージから飛び出すようなモーションを取る。
コレはぶっちゃけ小ジャンプのようなモーションなのだが、
モーションの途中からソニックを表示させることによって、
『ステージから飛び出した!』感を演出している。
リマスターでは最初からソニックが表示されてしまっているため、
本当にその場でただ小ジャンプをするだけになっている。
あとこれは問題点かというと少し違うのだが、何故かプラネットウィスプのアレンジ版BGMが別売りになっている。今作ではほぼ全てのBGMがアレンジされているのは前述した通りなのだが、デフォルトではプラネットウィスプのみ全ACTで原曲が流れるようになっている。プラネットウィスプのACT1~3でアレンジ版を流すためには追加で500円の『アルティメットリミックスパック』というDLC(デジタルデラックス版では同梱)を購入する必要がある。無論、原曲のクオリティも高いのでソレでもいいのだが、正直あまり心証としてはよろしくない。
『DLCとして売るのが悪い』とは言ってない。これがもしも『デフォルトでは全曲原曲だが、DLCで全部アレンジ曲になる』等であれば納得もしていたのである。どうせシリーズファンとしてソニックのDLCというだけで全購入は確実だし。今回なにがマズいかというと、『わざわざ全ステージのBGMをアレンジにしたうえで、特に人気の1ステージ分だけアレンジをDLCにしている』のがアレなのである。悪質とまでは言わないが…なんかその…ぶっちゃけセコイ。
とまぁ、今回のリマスターは確かにオリジナルであるWii版から順当に進化した作品…と言いたいところなのだが、少なくとも現時点ではせっかくの追加点や改良点が同時に増加してしまったバグを始めとする問題点の方に埋もれてしまっており、手放しに初心者にオススメできるとはとてもではないが言いづらい状態になってしまっている。
オリジナルとなる『ソニックカラーズ』自体は『Wii最高峰のアクション』とまで謂われるだけあり、そちらを踏襲している今回のリマスターも純粋に『ゲーム部分』を評価するのであれば、間違いなく面白く、シリーズ初心者にもプレイしてほしい内容になっている。だが、少なくとも現時点では溢れんばかりのバグのせいで、純粋な気持ちでゲーム部分を楽しめないというのが正直なところである。
幸いなことに、SEGA公式および開発元のBlindSquirrelGamesは今回の不具合に対して声明を出しており、後日アップデートパッチの配信をするように告知。なお、既に海外ではパッチの配信が行われているという。このパッチでどれだけバグを減らせるか、それが今作の総合的なクオリティにそのまま直結するといっていいだろう。
---20230218追記---
販売元&開発元の継続的なアップデートの末、
2023年現在、この記事で書いたようなバグの大半は解消されている。
本作は純粋なブーストソニックのデビュー作として自信を持ってオススメできる一作となったのだ!
---------追記終了---------
折角のシリーズ30周年を飾る記念作品でありながら、初っ端から出端を挫かれてしまった今作であるが、今後のパッチ配信によって、今度という今度こそ『アルティメット』という名にふさわしいリマスターになってくれると祈っているのである。
(バグにさえ目を瞑れば現時点でも楽しめるので、四の五の言わずみんなソニックデビューしよう!)
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