
ハードスペックが向上しクリエイターが目指していたであろう表現を遺憾無くゲームに組み込めるようになった昨今。世に送り出されるゲームの有り様は実に多彩なものとなり、作品やメーカーごとの目指す表現の方向性というか到達点…のようなものは従来以上にハッキリ如実に表れるようになったといえる。もちろんプレイヤーの好みに合う合わないはあれどどれが正解だとか間違いだとかの優劣はなく、世にリリースされた時点でソレは正しい形であり、そして我はそれら全てをただ愛でるのみである。
数多のゲーム会社が様々な作品を送り出すなか、今も昔も飛び抜けて独特な表現に挑み続ける野心的なメーカーが存在する。その名も『enhance(エンハンス)』。過去に『スペースチャンネル5』『Rez』『メテオス』といったセンス溢れるゲームをいくつも手掛けてきた水口哲也氏がUGA→キューエンタテインメントを経て立ち上げたゲームメーカーである。その最大の特徴は極めて高い『表現力』にある。ゲームとはサウンドやグラフィックといった複数の文化の集合体…といったハナシを過去記事でした記憶があるが、このメーカーのソレはまさしく別格。

(Tetris Effect)
これはただ単純にグラフィックが凄いとかそういったものではなく…いや実際ゲームを構成する個々のクオリティが高いのも事実なのだが、水口氏が提唱するシナスタジア理論を色濃く受け継いだ作品たちはいずれもサウンド・ビジュアルが相互に作用しあい、更にはプレイヤーのインプットやコントローラからのフィードバックもまたその一部に組み込まれている。
視覚、聴覚、そして触覚に訴えかける表現が高い次元で融合したゲームのプレイ体験は唯一無二のものであり、その有り様はまさしく『ゲーム』でありながら一種の『アート』ともいうべきものである。このアートのようなゲーム表現こそがエンハンス作品の最大の魅力である。このほかにもエンハンスは早い段階からVRに手を出しただけでなく、ユーザの裁量で際限なく性能を高められるPC版なんかはリリース時点の一般的なPCスペックを遥かに超過した環境での動作を想定したモードまでも搭載しているなど、表現の追求にとことん余念がない点も見逃せない。
(Rez Infinite)
我も(元々水口ゲーが好きなのもあるが)こういったエンハンス作品には度々楽しませて貰っており、事実過去記事で触れた『Rez Infinite』はレールシューティングの歴史に名を残すべき1本だと思っているし、『Tetris Effect』はひとりでじっくり楽しむオールドスタイルなテトリスとしては最高傑作であると考えているほどである。
(HUMANITYは積んじゃってるのでそのうちプレイしときたい…)
というわけで今宵の記事の主役はそんなエンハンスが送る新たなゲームにしてアート!『Lumines Arise (ルミネスアライズ)』であるぞ!

(LUMINES REMASTERED)
『ルミネス』とはかつて水口氏が設立したキューエンタテインメントの代表作にしてデビュー作。SCE(現:SIE)初の携帯型ゲーム機であるPSPのローンチタイトルでもあったルミネスは否応なく注目の的となり、その独自性溢れるゲームシステムから革新的な傑作パズルとして高く評価されることとなった。…一方であまり宜しくない用途でも扱われ一時期は市場から姿を消す一幕もあったりしたが、全てはもう過去の出来事である。
PSPで1作目がリリースされて以来、ルミネスは知る人ぞ知る名作として静かながらも多くの人に愛され続けてきた。それはやがてシリーズ化へと繋がり、ルミネスはPS2やPS3に360、Vitaやスマホといった多彩なプラットフォームへコンスタントに展開されていくことになる。

本作『ルミネスアライズ』はそんなルミネスシリーズの最新作。現行機で遊べるルミネスとしては1作目のリマスターが先んじてリリースされていたが完全新作という意味では実に9年ぶりとなる。
(そもそもリマスター版ですら7年前じゃし)
冒頭でも触れた通り販売元はenhanceで開発はMonstars…と早い話が『Rez Infinite』や『Tetris Effect』なんかと同じ布陣である。これらのメーカーが手掛ける水口ゲー濃度の高さは関連作をプレイした人であれば説明不要であろう。
プラットフォームはPS5とPC。『Rez Infinite』『Tetris Effect』から引き続きVRモードにも対応…しているのだが、今回は我が環境の都合上VRなしでのプレイとなる。過去記事でちょくちょくVR回あったのに何故?…と思うやもしれないが、『Rez Infinite』やらで使っていたのは初代PSVR、でもって本作はPSVR2にしか対応しておらぬのじゃ。…いやPSVR2も気になるゲームは幾つかあるのだけど、まだあと一歩踏み出せないというか…。

本ブログにおいてルミネスを取り扱うのは今回が初なので、まずは初代から脈々と受け継がれる基本ルール&システムから説明していく。ルミネスにおいてプレイヤーは上からどんどん降ってくるブロックの塊を操作していく。フィールドが横16×縦10マスと落ちものパズルのなかでもかなり横長なのも特徴。これは初出のPSPが横長画面だったからでもあるのだろうが、ゲーム的な意図もきっちり存在する。
ルミネスのブロックはいついかなる時でも常に2色、どれだけ難易度が上がろうともブロックの種類がこれ以上増えることはない。ただし色が少ないかわりやや特殊な手順を踏まないとブロックを消せないようになっている。
ルミネスというゲームを一言でザックリ表すと『ひたすら四角形(スクエア)を作るゲーム』である。というわけで同じ色のブロックを組み合わせて2×2マス以上の大きさのスクエアをガンガン作っていくことがルミネスにおける基本の目標。

『四角形を作るだけ?ラクショーじゃん』などと思うかもしれないが、本作のブロックは常に2×2の形で出現するため同色を四角形に揃えるにはちょっとした工夫が必要になる。1マス単位の段差ができている箇所をうまい具合に利用してブロックを分割するべし。
もっともスクエアを作った段階だとまだブロックは消えない。ルミネスでは画面上部で常に『タイムライン』が進行しており、フィールドにはタイムラインの位置を示すラインが表示される。そして『タイムラインが通りすぎた段階でスクエアが成立していたブロック』のみが消滅する仕組みとなっているのだ。これこそがルミネスのパズルゲー的な最大の特徴『ブロック消去までのタイムラグ』である。

同色を四角形に揃えただけで安心するのはまだ早い。むしろそこからがルミネスの本番である。タイムラインがフィールドの端まで到達(=一周)するまでに成立したスクエアの数が4を越えると『コンボ』となり、それを連続して行うことでコンボが継続され倍率がどんどん上昇、より高スコアを目指せるようになる。タイムラインが一周するまでに全力で更なるスクエアを組み上げるべし。
そんな短時間で複数の四角形を作るなんて無理だろう…と思いきや実はそうでもない。先ほど触れたようにブロックが消滅するのはタイムラインが通過したタイミングのみ。逆に言えばそれまでは四角形に揃えたブロックは画面に残り続けている。つまりは『既に四角形が成立したブロック』を利用して新たなスクエアを作ることだって可能なのだ。
2×2のスクエアの縦or横に2つ同色のブロックを繋げるだけでアラ不思議、2つめのスクエアが誕生、残りの横or縦に2つ繋げればまたひとつスクエアが増え、出来上がった凹み部分を埋めればスクエアが4つまで増加…といったように工夫次第でスクエアはどんどん増やすことができる。このスクエア成立-タイムライン通過までの僅かな時間を利用したスコア稼ぎが実にアツいのだ。

タイムラインが通過しブロックが消えた後でものんびりしている暇はない。この時点で次なるタイムライン通過までのカウントダウンは既に始まっている。コンボを持続させるためにもすぐさま次なるスクエアを組み上げるのだ!
ルミネスには『ぷよぷよ』や『コラムス』のような連鎖のシステムこそ存在しないが、絶え間なくスクエアを組むためには『タイムライン通過後に現在のブロック配置がどう変化するか』を予想しておくことが大切。やり方やコツさえ掴んでしまえば後は瞬時の判断力と操作の素早さ次第でいくらでもスコアを伸ばせることであろう。
もっとも、焦ってブロックをガンガン落としていくのはそれはそれで推奨しない。タイムラインと丁度重なったタイミングでスクエアを組んでしまうとスクエアの右半分だけが消滅するペナルティが課せられるからだ。スクエアを作ることばかり考えすぎてタイムラインを視界から外してしまい、残骸ブロックに埋め尽くされやがて窒息…というのはルミネスに慣れはじめの初心者が最も陥りやすいミスである。

奇妙な形にブロックが積み上がりスクエアを作れなくなっても諦めるべからず。落下してくるなかに時折混ざる専用のアイコンのついた『チェインブロック』を同色のブロックに隣接させると繋がった同色のブロック全てが消滅する。うまく活用することで窮地を脱却したり、一気にたくさんのスクエアを組むことにも繋げられるハズ!…ただしブロックが消えるタイミングは普段通り『タイムラインの通過時』なので、接地するタイミングをしくじると更なる惨事に繋がる可能性もなきにしもあらず。
休む暇なくノンストップで黙々とブロックを動かし揃え、ブロック消去までのタイムラグですぐさま次なる盤面を想定して新たな一手を打つ…ということから、ルミネスの面白さは『パネルでポン』に近いものがあると感じる。ルールもパズルゲーとしてのカテゴリもまるで異なるが、『パネポン』のゲーム性を好むプレイヤーならばルミネスにも適応できるポテンシャルがある…ような気がする。

『タイムライン』の速度や位置は常にその時々のBGMと同期。BGMの1拍につき横2マス分進行し、必ず8拍でフィールドを一周する。楽曲が変わらない限り原則そのテンポは常に一定であるため、ある程度プレイしていくうちに自然とプレイヤーはリズムにノることができ、やがては画面を見ずともおおまかなタイムラインの位置を把握できるようになるわけだ。
ところでプレイが安定してくるとどうしても若干ダレてきてしまうのが落ちものパズルの性。というわけでルミネスには飽きを防ぐためプレイに彩りを与える『スキン』という概念が用意されている。スキンはプレイ中に一定以上のブロックを消去するたびに遷移する。落ちものパズルにおけるスキンといえば大体の人間がブロックや背景などビジュアル面だけの変化を想像することだろう。だがルミネスの場合はそこに加えてBGMやSEもスキンとともに別物に切り替わる。

そして先ほどのハナシを改めて思い出してほしい。ブロック消去のキーとなるタイムラインは常にBGMに同期しているのだ。つまるところスキンと共にBGMが変化することでテンポ…つまりはタイムラインの進行速度までもが変動し、スキンごとに違った立ち回りが求められる。
ハイテンポのBGMの時はそれだけタイムラインも高速で進むためスクエアを急いで組む必要が出てくるぶん操作が大変なのは当然だが、だからといってローテンポの時がラクかといわれるとそれも違う。ローテンポ時は四角形を作りやすくスコアを稼ぎやすい反面、ブロックが積み上がってきたときはタイムラインの進みが遅いぶん消去までに時間がかかり、不要なブロックの置場所がなくなったり窒息の危険性が跳ね上がるからだ。

スキン変化の折にBGMとセットでSEまでも切り替わるのがこれまた素晴らしい。ブロック回転・移動・消去などで流れるSEはどれもスキンごとのBGMとの親和性を重視したものとなっており、楽曲のリズムを意識せざるを得ないゲームシステムも相まって、さながらプレイヤーは音楽を演奏しているかのような気分で落ちものパズルを楽しめる。
プレイヤーの入力をも楽曲の一部に取り込み演出へと昇華している様はまさしく『Rez Infinite』や『Tetris Effect』あたりと同じく水口氏のシナスタジア理論をこれ以上ないほど体現しており、この感覚こそが紛れもなくルミネス最大の特徴にして魅力だと断言できる。もっとも『Rez Infinite』の記事でも触れた通り、この感覚をテキストで語ろうとすること自体がナンセンスの極み。少しでも気になったならまずプレイしてみるべし。さすれば我の言いたいことはきっと伝わる…ハズ!

…とまぁ音と光の電飾パズルこと『ルミネス』の基礎オブ基礎はこんなところである。最低限の事前知識を得られたことでここからようやく本題、いよいよ本記事の主役である『ルミネスアライズ』に触れていこう。最初にも触れたように本作ははルミネスシリーズの完全新作。その内容を一言で表すならば『ルミネスとテトリスエフェクトを掛け合わせた代物』である。同開発元の同ジャンルだからといっていきなり『テトリスエフェクト』を持ち出すのはどうなのか…とお思いの方も多かろうが、実際本作は『ルミネスの新作』でありながら『テトリスエフェクトの進化系』とでもいうべき要素が随所に見られるのだ。
基本システムは過去作のソレを踏襲しているうえで、本作では新システムとして『BURST(バースト)』なるものが登場。スクエアを成立させるたびに少しずつタイムライン上部のカウントが貯まっていき、これが50以上の状態でL2/R2を入力するとBURST状態に突入!

BURST中は一部のスクエアがタイムライン経過で消えなくなり、消えなくなったスクエアをより大きくすることで周囲の別色ブロックを画面外に吹き飛ばす!空いたスペースにすかさず同色のブロックを配置してどんどんスクエアを巨大化させていくべし!タイムラインが何周かするとBURSTは解除され、その際に巨大化した正方形も消滅、ボーナススコアを獲得すると同時に上部から吹き飛ばした別色ブロックが一気に降りそそぐ。
てなわけでBURST終了直後のフィールドには必然的に1色のブロックだけが散らばる状態になるので、プレイヤーはそのまま流れるようにコンボ継続や大量のスクエア成立にシフトするべし。この『少しの間だけブロック消去を保留にし、あとから一気に解き放つことで爽快感を与える』というスタイルは『Tetris Effect』の『ZONE』に近い思想である。

さてさて、ルミネスアライズには『JOURNEY』『PLAYLISTS』『MISSIONS』『MULTIPLAYER』『LOOMII-PON』…と大きく分けて5つのゲームモードが搭載。過去のシリーズ作に搭載されたモードも大体は(形式が違えど)本作にも続投している。
まずは本作の一番のメイン『JOURNEY(ジャーニー)』から。これは旧作のメインモードにあたるポジションで、プレイヤーはいくつものステージ…もといスキンを連続して攻略しルミネスの旅路を歩んでいく。ちなみに難易度はEASY/NORMAL/HARDの三段階。…名前からお察しの方も多いだろうが、ぶっちゃけ『Tetris Effect』にあった同名モードをルミネス用に再構築したものである。

JOURNEYには9つのエリアが存在し、最終エリア以外はそれぞれ4-5つのスキンから構成される。一定量のスクエアを作成するごとにスキンが切り替わり1エリア分を完走するごとにリザルト+ランク評価に遷移する。スキン遷移は従来の『操作を止めることなくシームレスにスキン等が変化』するのではなく、『条件達成後の8拍目に一時的に操作をストップさせ、派手な画面演出とともに次のスキンへ移動する』という『Tetris Effect』に近い形式となった。演出がパワーアップした反面、スキン切り替えの度に操作の手を止められてしまうのは従来のノンストップ感を評価していた身からするとちと不満だったり。
なお一応ストーリーモードという触れ込み…なんだがいつも通りテキストだのなんだのは基本存在しないので、シナリオについてはスキンの順序や楽曲の雰囲気・背景演出などから推測する以上のことはできない。少なくとも我個人としては『人工的に作り出された"モノ"が様々な生命の形や、時にはその無情さをも目の当たりにして学び、やがて自己を確立したひとりの"人間"となる(ネタバレ反転)』…みたいなものを感じ取ったが、おそらくこれは正解ではないだろう。というかそもそも『正解』なんてもの自体が存在しないのかもしれない。本作の旅路を自分自身の目で確かめて各々が解釈したもの全てが不正解であり正解なのだ…と我は考えている。

ところで過去のルミネス作品のメインモードは『最初から最後までノンストップでプレイ』といった仕様で、逆に言えばある程度のプレイスキルがなければ終盤のスキンを拝むことすら許されない(=他モードでも選択不可)ストイックなスタイルだったのだが、本作のJOURNEYでは一度でも到達済みであればエリア単位での再開も可能なほか、ゲームオーバー時には当該スキンからのリトライもできる。
さらには『ブロック自動落下OFF』『ゲームオーバーなし』といった効果を持つ『Rez』譲りの『KIRAKUNI LUMINES(気楽にルミネス)』なんかも搭載されているなど、シリーズでもトップクラスなレベルで初心者に優しい作り。とにもかくにもどれだけパズルゲームが苦手であろうとも辛抱強くJOURNEYに挑み続ければ、いつかはきっと全スキン解禁くらいはできるハズ。
(当然だが『気楽にルミネス』を有効化するとスコアタなどの対象外になるのはお忘れなきよう)

もちろん最初から最後まで全スキンを通しでプレイし、途中でゲームオーバーになったならばまた最初から全部やり直しという昔ながらのルミネスに近いスタイルの『SURVIVAL』も搭載。初心者はまず『STANDARDの全スキン解放』→『SURVIVAL完走』と段階的にスキルアップに挑むといいだろう。
JOURNEYで一度でもクリアしたスキンはフリープレイ用のモード『PLAYLISTS』でも解禁される。PLAYLISTSでは最終面を除く全35種のスキンのなかからお好きなモノを最大10個までピックアップし、自由に通しプレイを行うことができる。『THEATER』設定ならば完全オートプレイになるため通常プレイでは眺めている余裕がなかったであろう演出群をじっくり楽しむことだって可能。心行くまでルミネスの世界に浸るのだ。ちなみにオートプレイは普通に立ち回りがクソ上手いのでシンプルにプレイを眺めているだけでも割と勉強になったりする。

続いては『MISSIONS』、一風変わったルールでのルミネスを楽しめるモードである。MISSIONSには『TRAINING』と『CHALLENGE』の2つのカテゴリがあり、TRAININGでは簡易的なチュートリアルを最初に行ったうえで『落下パターン固定・手数固定で指定された条件の達成を目指す』という『なぞぷよ』のような遊び方ができる。問題の数は全60問、最終盤に『これが正答でいいのかよ!?』ってなるトンデモ問題が一部混じってたりするのはご愛敬。
もう一方のCHALLENGEは特殊ルールを課せられた状態で挑むルミネス。『ブロックの形状が通常と違う』『接地するとランダムでバウンドし位置がずれる』『(後述のBURST BATTLEの要領で)隣接したブロックを消してタマゴを割る』など通常プレイでは再現不可能なトンデモ仕様がステージごとに設定されており、その条件下で指定された条件を満たしつつ最後まで耐え抜けばクリアとなる。例えるならば『Tetris Effect』の『ミステリー』を要素単位で切り出した感じである。スキンこそJOURNEYと共通ながら全26面とこちらもなかなかのボリューム感。

『MULTIPLAYER』は名前からしてソロプレイヤー的に無用…と思わせておいてこのモードでないと遊べない要素もあるので必見。このモードではシンプルな時間制スコアアタックである『TIME ATTACK 60/180/300』のほか、下からせりあがるブロックを対処していく『DIG DOWN』、そして『BURST BATTLE』という対戦が可能。一人で挑戦するスコアタ系ルールは言わずもがな、BURST BATTLEもローカルでの部屋作成を行えばCOM相手に対戦が可能なのでぼっちにも優しい。
『Tetris Effect』の『Effect Modes』と同様に毎週末にはオンラインイベントが開催されているものの、その内容は『MULTIPLAYER内の好きなルール(無論ソロでもOK)をプレイするとポイントが貯まり、それの全プレイヤー合計が一定を超えたら報酬が増加』という非常にライトなオンライン要素なのでオンライン嫌いにも安心である。我は結局手を出していないがBURST BATTLEにはランクマもあるので腕に自信があるのなら挑んでみるのもよかろう。

ところで本作から新たにルミネスのマスコット(?)の『LOOMII』なるものが登場。こやつらはJOURNEYにてBURSTを使用しスクエアを消していくとどんどん集まってくる収集要素(?)のようなポジションで、各難易度ごとに1000…合計3000匹を集めるやりこみが存在する。
同時にMULTIPLAYERなどのモードで使用されるアバターとしての役割もあり、プレイヤーはゲームを遊ぶたびに得られるPONという通貨を利用して『LOOMII-PON』…要はガチャを引いてパーツを獲得し、自分自身の分身となるLOOMIIを着飾ることもできる。基本的にじっくり眺めている余裕はないのだが、プレイ中のLOOMIIは画面右下でスキンに応じた踊りをしていたりするのが妙にかわいらしい。

さてさてお次はBGMのオハナシ。本作の楽曲は『Rez Infinite』の追加エリアや『Tetris Effect』から引き続きHydelic氏が担当。それもあって本作のサウンドは先に挙げた2作のようなアンビエント調…所謂『チルい』楽曲が中心。もちろんソレ一辺倒というわけでもないのだが、それらの作品のBGMが好みだった人は自ずと本作も気に入るだろう。ド派手な演出と合わせてプレイを全力で盛り上げてくれるので、プレイする際にはヘッドフォンを装着し心の奥底から聞き入るべし。一方で従来のルミネスシリーズらしい雰囲気かと言われるとちょっと違うような気がするが、まぁそれもまた本作の顔ということで。個人的には『Arise』『Sky Falls Down(feat.Luma)』『In Black and White』『Only Human(feat.Krysta Youngs)』が単体の楽曲として見た場合のお気に入りである。

それではついに本作における最大の魅力である『演出』に触れていくことにしよう。『ルミネス』は初代のころから一貫して水口氏のシナスタジア理論が強く表れており、演出面にも相応に気合の入ったシリーズではあったのだが、本作では『Tetris Effect』の経験を活かしあちらで高く評価された演出面をよりダイナミックにしたうえで本作にも導入している。
より具体的にはビジュアル面が圧倒的にパワーアップ。グラフィックが美麗になったのに加え、背景は様々なオブジェクトが動き回ったりライティングが切り替わったりと非常にド派手。同一のスキンであっても複数の段階変化のようなものを持っており、スクエアの消去数に合わせて少しずつ背景やブロックが変化する。無論これらもまたBGMやプレイヤー入力といったものと連動している。

左右の背景にデカい手が出現しプレイヤーがボタン入力に応じて動く『AUTOMATON DIGITS』やフィールドに水が注がれ落下と同時に水しぶきが上がる『TROPICAL SURVIVAL』などなどステージごとの演出の幅も広がっており、そのインパクトは過去作のソレをも優に超えるレベルである。『RISE AND FALL』なんかでは『ぐっすんおよよ』の如くフィールド内で人間が走り回り、時にはブロックに乗り上げたりするため見ているだけで楽しい。流石にブロックで押しつぶしたりはできなかった。
本作はゲームシステムは2Dでもグラフィックはフル3D、となればカメラ演出も見逃すべからず。スクエアが成立するたびにカメラはある程度ズームを繰り返すし、ブロックも消去時には奥や手前に飛んで行ったりと3Dであることを徹底してフル活用。なかでも『SLICE & DICE』ではなんとブロック(野菜)を消去すると同時にスライスされる。サクサクっといい音を立ててリズムよく切れるのも相まって不思議な心地よさを覚えることだろう。演出面にだけ目を向けるなら我はこの『SLICE & DICE』が本作で一番のお気に入りである。

…とここまで本作を褒めちぎってきたわけだが、一方で本作にはあまりにも明確な、そして避けようがないトンデモなく大きな問題点がある。それはずばり『ビジュアル演出』である!!『さっきまで最大の魅力とか言ってただろ、ハナシが違うじゃないか!』という叫びが聞こえてきそうだが、まぁ聞きたまえよ。
確かに本作の演出は素晴らしい。とりわけビジュアル方面への気合の入りように限って言えばエンハンス作品…ひいてはゲーム業界全体のなかでもトップクラスであると評価してもいいほどだと思える。本作の演出を超えるような作品はむこう10年出てこずともおかしくはないだろう。じゃあなんで問題なのかというと…本作はビジュアル演出に気合を入れすぎたのだ。
『Tetris Effect』あたりの時点で『俺たちが見せたいのはゲームじゃなくて演出なんだよ!!』とでもいいたげな思想はうっすら感じられたし、実際同作ではそれがプラス方面に働いてはいた。だが本作においてはそれがやや極端なまでに出すぎている。それこそプレイヤー自身に牙を剥いてしまうレベルで。

ハッキリ言おう。本作はあまりにもビジュアル演出に振り切れ過ぎてしまったがために、その反動が『プレイ中の視認性の悪化』という形でモロに表れてしまっている。従来の『ルミネス』や『Tetris Effect』にも一部視認性に難があるスキンやら背景演出やらは存在したが、本作の視認性の悪さはそれらとすら比較にならないほど。しかもそんなのが幾つもあるのだからたまったもんじゃない。2色のブロックの色合いが近いくらいならかわいいもので、酷いときには背景色と同化したりライティングの影響でブロックに影がかかり視認できなくなったりなどなど…。
3Dであることを生かした演出も魅力とは書いたが、なかにはプレイヤーの妨害に繋がるものも少なくない。先ほど一番のお気に入り演出として挙げた『SLICE & DICE』なんかはまさしくそれ。『消去したブロック(野菜)がスライスされて飛んでいく』ってのはいいアイデアだと思うんだ、問題はそのスライスされた野菜が画面手前に飛んできてフィールドを直接隠してくることがあるってことでね。

似たようなものだと『GLOBE』というスキン。こちらは『消去したブロック(球体)が画面手前側から転がり落ち、それが背景にどんどん増えていく』というものなのだが、当然転がり落ちた球体はフィールド内でプレイヤーが動かしているものと同じ見た目なので、後半になると『ブロックがあると思ったら背景だった/背景だと思ったらブロックだった』という事故が発生するようになる。ならばビジュアル演出が大人しければ視認性がマシ…かというとそれも違い、黒背景に黒主体のブロックとかいうド直球な視認性の悪さをぶつけてくる『CANDLELIGHT』なんてのもあったりするのが困りもの。JOURNEYモードの初回プレイはほんと何回『いや見えねえよ!?』と叫びたくなったものか…。

過去のルミネスの場合、スキンの難易度は『BGMのテンポ』や『スキンの挿入タイミング(直前の曲との落差)』に影響される面が大きかったが、こと本作においては高難易度のスキン=視認性の悪いスキンといってもいいぐらい視認性がそのまま難易度に直結している。ここまで言えばわかるかもしれないが、本作における死因の9割は『視認性の悪さによる置きミスからの立て直し失敗』である。純粋に消去タイミングをしくじったり落下速度に押しつぶされたりしてゲームオーバーになるなら納得もいくが、『画面がよく見えない』ってだけでゲームオーバーに繋がるミスを誘発されるのは流石にかなり引っかかる。
とはいえ視認性を改善する方法はちゃんと用意されている。本作はオプションから各ビジュアル演出の度合いを変更できる(ゲーム冒頭でもその旨が表示される)ようになっているので、各種演出をほぼ全て最低限まで抑えてしまえばいいのだ。こうすれば純粋なパズルゲームとして本作をほぼストレスなく楽しめるようになることだろう。…もっともその場合、『演出をカットしてまで本作をプレイする意義はあるのか?』というより根本的な疑問が発生するのだが…。いや、演出抜きの水口ゲーとかカツ抜きカツカレーとかチャーシュー抜きチャーシュー麺とかチョコ抜きチョコケーキとかそういうのと同じなので…。

そういうわけで本作『Lumines Arise(ルミネスアライズ)』だが、我個人としてはかなーーーーり受け取り方に困っている作品である。もちろん1本のゲームとしてみた場合のクオリティは高い。そもそも根底にある『ルミネス』というゲーム自体が初代の時点で完成していることからゲーム部分がつまらないなんてことはありえないし、ゲームを彩る要素も総じてハイクオリティ、ボリュームとて申し分ないほどある。むしろシナスタジア…もとい水口ゲー濃度は過去作の比ではないほど高いため、ルミネスの原点を考えるならば本作こそがルミネスの正統進化にして到達点であるともいえる。
だがしかし、その一方で我は本作の有り様についてもやもやしたものを覚えずにはいられない。『いかなるゲームであろうと、それがゲームならば愛する』…それが我の根本にある絶対に揺るがない、揺るいではならないとしている思想である。だからこそ我はこれまでいくつもの『ゲーム』と向き合ってきた。いかなる作品とて一度手を出したならば全て真っ向から向き合い、真っ向から楽しみ、ときには真っ向から語ってきた。それが『ゲーム』である以上、我はソレに命がけで挑まなければならないからだ。

だがそんな我の前にこやつは…『ルミネスアライズ』は現れた。圧倒的なまでに演出や表現に力を入れ、ゲームとしての遊びやすさをその代償に差し出した本作は我の目にとって『アートの道を極めようとせんがため、ゲームであることを自ら捨てようとしている作品』に映った。我がこれまで水口ゲーおよびエンハンス作品を高く評価してきた要因は『アートのようなゲーム』だったからであって、『ゲームのようなアート』を求めていたわけではない。
もちろん演出が素晴らしいのはいいことだ。だがしかし良質な演出や表現にこだわるあまり、視認性というゲームとしての最低限・大前提の構成要素をここまで犠牲にしてしまうのならば、『アート』と『ゲーム』の主従が逆転してしまうならば、それはもうゲームである必要すらないのではないか?…本作をプレイしているあいだ、我はずっとそんな疑問を頭に思い浮かべ続けていた。

…否。そもそも最初に触れていたではないか、『世にリリースされた時点でソレは正しい形であり、我はそれら全てをただ愛でるのみ』と。進化の果てにアートへと至ろうとする『ルミネスアライズ』もまたゲームの在り方のひとつである。どうやら我の思考はいつの間にやらずいぶん凝り固まってしまっていたようだ。本作との出会いは我に自らの視野を改めて広げるきっかけを与えてくれたのだ。
ほんの少しだけ寄り道をしてしまったが、そろそろ今回の記事の締めくくりに入らせていただこう。ビジュアル表現を更に極めたことにより、『ルミネス』は更なるステージへと足を踏み入れた。過ぎたるは猶及ばざるがごとし…の言葉通り、この進化は必ずしもプラス方面にだけには働かないものかもしれない。だがいかなる事象も極限まで突き抜けたとすれば、それはもはや一種の芸術である。
本記事においてやや厳しい言葉を本作に投げ掛けた我ではあるが、一方でこの先に待つ『ゲームであることを完全に捨て去り、アートとしての道を極めたルミネス』がどのような進化を遂げるか気になっていることも事実である。ここまで来たら徹底的にやってみてほしい。何はともあれ、『光と音の電飾パズル』が今後どのような進化を見せてくれるのか、じっくり注目したいところである!!

---オマケ---
気まぐれに本作のSURVIVAL(NORMAL)のクリア動画を投稿していたり。
本作の演出がどんなもんなのかを知りたい人や時間に余裕がある人は暇つぶしにぜひぜひどうぞ
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