
『カービィのエアライド』、今から22年前…2003年に誕生した『星のカービィ』シリーズのスピンオフのひとつ。リリース当初は口コミやらパーティーゲー需要でライト層に静かに広まり、それから時を経て今度はゲーマー層に高く評価され、それがネットを経由して更に多方面に…といった経緯で人気が大爆発したというカービィにしてはやや珍しい評価の変遷を経験した作品である。
『エアライド』が数あるカービィ作品の中でも突き抜けた人気を誇る…まさしく伝説級の作品であることは我がブログに辿り着くような諸君らであれば既にご存じと思われるが、その人気に反してリリース後の動きというのはこれまでほぼ無いに等しいものであった。
もっとも、ディレクターを同じくする『スマブラ』シリーズや『新パルテナ』に本作の何かしらを踏襲した要素が導入されたり、エアライド楽曲が『あつカビ』『ファイターズ2』あたりでアレンジされたり、小説版(つばさカービィ)にて1巻まるまるエアライドをテーマにした回があったりなど公式からの扱いは決して悪いわけではない。だがしかし、それでも肝心の『カービィのエアライド』というゲーム作品はそれ以上の展開を見せることがなかったのだ。…まぁ当のゲームキューブ自体がなかなか復刻に恵まれないハードであるし、カービィシリーズ的にはいちスピンオフ作品でしかないので、取り立ててピックアップするほどではなかったと言われてしまうとそれまでなのだが。

そんな公式の沈黙を破ったのは2025年4月2日のNintendo Direct。このニンダイは任天堂期待の最新ハード『Nintendo Switch 2』の詳細が明かされることが事前に公表されており、誇張抜きで世界中の全ゲーマーが注目する配信であった。そしてその配信の中で『カービィのエアライド』の正式な続編にして今回の主役『カービィのエアライダー』が発表されたのだ!
というわけで今回の記事では20年以上に渡る時を超えてついに目を覚ました伝説の作品を語っていこうではないか!前作『カービィのエアライド』のド直球世代にして未だにちょくちょくエアライドをプレイしていた我が本作をスルーするなどハナから有り得ぬことなのだ!!
なお前回の記事から繰り返しになってしまうが、我は基本的にレースゲームがド下手である。ゲーム側から提示された目標であればクリアまでは頑張るものの、それはそれとしてゴールの見えない最速更新を目指すほどの意欲はない。前作でも本作でも相変わらずクリアチェッカー全埋めを完遂した段階で力尽きる程度のライト層である。よって本記事も前回同様に浅瀬でちゃぷちゃぷ楽しむスタイルのライトな視点から本作を語っていこうと思うのでご容赦いただきたい。

早速ゲーム語りに入りたいところだがその前にまずはゲーム自体の紹介から。本作『カービィのエアライダー』はその名が示すように『カービィのエアライド』の続編である。ところでこれまでエアライドのプレイヤーは『エアライダー』と呼ばれていたので本作の登場でだいぶややこしいことになっていたり。
プラットフォームは言わずもがなNintendoSwitch2、まだまだ立ち上げ段階といえるこの時期に本作という超話題作を投入するあたりに任天堂の本気が伺えるといえる。なおSwitch2専用タイトルゆえ旧Switchでのプレイは不可能なので悪しからず。
本作のディレクターを務めるのは有限会社Soraの桜井政博氏。ある程度ゲームに関心がある人間であれば誰もが知っているように『カービィ』や『スマブラ』の生みの親にしてレジェンドである。桜井氏は『星のカービィ(初代)』『夢の泉の物語』『スーパーデラックス』といった作品を手掛けてきたが、前作『カービィのエアライド』を最後にHAL研究所から独立しており、ソレ以降は本家カービィシリーズの開発から長らく離れていた。
(正確には独立後も『鏡の大迷宮』の監修に携わっている)

そんな彼が最後に手掛けた『エアライド』の続編である本作で再びカービィシリーズにカムバックするというのはなんとも運命的なものを感じずにはいられないだろう。いうなれば本作は約22年ぶりの『桜井カービィ』という見方もできるかもしれない。
そして本作の開発を手がけるのは前作同様HAL研究所…ではなくバンダイナムコスタジオ。Sora×バンナムは皆様ご存じ『スマブラfor』以降の『スマブラ』シリーズから引き継がれた布陣である。それもあってか本作ではUI・ゲームフロー・演出などなど随所に直近の『スマブラSP』から継承された点が非常に目立つ。
(まぁソレ言うなら旧エアライドもスマブラDXから逆輸入されたものが多かったが)
『エアライド』の続編を名乗るだけあり、本作の基本的なシステムやルールについてはほぼ前作のソレを踏襲。というわけでわざわざイチから説明しなおすのも面倒だし各モードの基礎中の基礎は前回の『カービィのエアライド』を語った記事を参照していただきたい。今回の記事では本作『カービィのエアライダー』における変更点や追加要素を中心にピックアップしていくことにしよう。

操作にはJoy-Con両手持ち/単体持ち、プロコン2、そしてSwitch2用GCコンにも対応。本作はSwitch2専用タイトルだがコントローラ周りは旧Switchのものも使えるので安心である。操作性の面でいえばやはり背面ボタン(GL/GR)付きのプロコン2がトップか。前作から引き続きプレイする人ならGCコンもありだろう。なお我は本体と同時に購入してっきり埃を被ったままでいた令和最新GCコンの封印を本作でついに解いた。…我が普段使いしているGCコンはどれもスティックがヘタってる(20年以上前から使い続けている骨董品ゆえ当然)ので、令和版のカッチリしたスティック感触に微妙に違和感があったりしないでもない…。
↑この記事冒頭で映ってるヤツ

プッシュとコントロールスティックだけでほぼ完結するシンプル操作は本作でも相変わらず。曲がりたいときにまずプッシュ、チャージを溜めつつドリフト旋回、チャージダッシュで一気に加速!…という大原則は本作でもそのまま通用する。
ただし今回からは新たにスティック・プッシュに加え新たにボタンがひとつ増えた。その名も『スペシャルボタン』。走行中に溜まっていくスペシャルゲージが最大の時にこのボタンを押すと『スペシャルワザ』と呼ばれる特殊なワザが発動するようになった。スペシャルについてはまた後程触れていく。

使用するボタンが増えたとて心配する必要はない。スペシャルボタンを押す局面は限られているため操作は相変わらず、そもそも1ボタン+スティックで完結していたものが2ボタン+スティックになっただけである。Joy-Conのおすそわけプレイで全操作が可能なくらいシンプルに纏まっているのは流石といえよう。
ただ基本システム自体は前作をまるっきり踏襲しているとはいえ、細かな面で見ていくと変更点はやっぱり多い。新要素でいえば空中でクイックスピン(前作だとトルネイド限定)ができるようになったり、プッシュ+下入力で急ブレーキ、停止中のスティック入力で前後に微調整(前作は前方のみ)、スペシャルボタン連打でコピー能力の任意解除(前作は時間経過のみ)…などがそれだ。またダッシュパネル上でプッシュせずとも加速する(前作はプッシュ必須)ようにもなった。

前作にあった加速テクニック『スタースリップ』『敵加速』は共に続投。スタースリップは発生範囲が旧エアライド以上に伸びたほか、ある程度の距離であれば星の軌跡が残るのでだいぶ使いやすくなり、敵加速は純粋なザコ敵だけでなく他プレイヤーを攻撃した際にも発動するようになった。その結果『常にスタースリップで超加速を行いつつ接敵時に攻撃し敵加速で追い抜く、抜かれた側が今度はスタースリップで加速し追いかける』…とレースの最初から最後まで特に意識せずとも白熱したデッドヒートを繰り広げられるようになっている。
また本作だとこれらで加速が行われる際に星を吸収する演出が追加されたので、わかりやすく『コレを使うと加速ができるよ!』という点が伝わりやすくなったのはナイス。旧作だとこのへんは説明書や公式HPに記載はあれどゲーム中で紹介されることはほぼなかったので、説明書などを読み飛ばしていると最後まで知らないままな人がいたりするのでね。

ところで前作プレイヤーであれば操作はすぐ頭に入ることだろうが、一方で操作の手触りはまるで異なるので当時やり込んでいたから本作もラクショーとはならないのは要注意。むしろ前作の操作感に慣れ親しんでいるほど本作に慣れるまで苦労するかもしれない。とくにポンピングのタイミングが変わったのとクイックスピンの入力判定がやたら緩くなったのは前作プレイヤーなら誰もが引っ掛かるポイントだろう。
基本操作やテクニックに関しては『教習所』で実践を交えて学べる。前作プレイヤーなら不要…と言いたいところだが、一部キー配置が変わっていたりするものとかもあるのでちゃんと免許の更新をしておこう。期限切れの免許(知識)で走って事故ってもしらないヨ。
また本作はデフォルトだとかなりカメラが寄り気味なほか、前作だとさほど多くはなかったダイナミックなカメラ演出がチャージ時やコース内の特定セクション突入時なんかにこれでもかと多様されるので、あまり3Dアクションに慣れていない人は3D酔いに気を付けるべし。なんなら前作は大丈夫でも本作は無理なんて人もいるかもしれない。一応酔い防止機能は一応備わっている…がホントにきつい人は適度に休憩を挟むといいだろう。

さてさてここからが本題。本作ではなんとプレイアブルキャラにカービィ以外を扱えるようになったのだ!…いやまぁ前作でもデデメタ使えたけどほぼオマケ要素だったし…。本作における自機は『ライダー』と『マシン』の組み合わせで構成され、ライダーとマシンそれぞれに異なるパラメータや専用の特殊能力が備わっている。つまりこの組み合わせの数だけ自機が存在するといっていい。
まずは『ライダー』から触れていこう。言うまでもなくマシンに乗る側のキャラのことである。毎度お馴染みピンクだまのカービィにデデデ・メタナイト・バンダナワドルディを加えたいつもの4人はもちろん、桜井カービィのマルク・コックカワサキ、下村カービィのリック・グーイ、フラグシップ地代のドロッチェ、そして熊崎カービィのマホロア・タランザ・スージー、果てには『エッガーランド』からの刺客ロロロ&ラララとシリーズ全体から幅広く人気キャラが参戦!

そしてライダーになる権利はメインキャラだけじゃないぜと言わんばかりにザコキャラのプレイアブル化も続々。みんな大好きキングオブわにゃの一般ワドルディをはじめ、ヘルパー枠が板に付いたナックルジョー、コピーが参戦できないなら本人が参戦すればいいじゃない理論のロッキーにスターマンとこれまた多彩な面子が揃い、プレイアブルとなるライダーの総数は実に21名に登る。まぁアドリボ三魔官といった『スタアラ』の残りのドリフレ組や直近の本家新作『ディスカバリー』で活躍のエフィリンとかも来て欲しくはあったが、流石にソレは贅沢な悩みか。

前作同様にキャラのカラチェンも可能なほか、『カラチェンを行うと原作の別キャラ/別バリエーションに近い姿になる』という『スマブラSP』から逆輸入された要素もある。ダメタ・ギャラに近い仮面デザインになるメタナイト、原作の強化個体(ダーク/リベンジ)に近い色合いになるドロッチェにロロララ、Wiiデラのエピローグ衣装になるマホロアなどなど…シリーズファンであれば元ネタにピンと来る人も多かろう。
まぁ実は解放条件の都合で実は前作よりもカラバリのパターン自体は減少していたりもするのだが、カービィデデメタの3名しかいなかった前作と21名もいる本作とでは比べること自体がおかしいだろう。なおカラーリングが被っても同キャラ対戦は問題なく可能である。

ライダーたちはそれぞれが異なる能力を持つ。メタナイトやデデデであれば前作同様近付いた相手を自動で攻撃できるし、ドロッチェならその際にアイテムを奪い去るなんてことも。ナイス着地の度にキルニードルを生やして前方を妨害するマホロアや特定タイミングでのプッシュで糸を出して加速できるタランザなどライダー個別のアクションは実に多彩。
そして各キャラの特徴を更に際立たせる最大の差別化点をこそが先に挙げた『スペシャルワザ』!そう、スペシャルは各キャラごとに専用のものがそれぞれ用意されているのだ!
ゲージ最大時にのみ使用できるスペシャルワザは総じて超加速するものとなっているのだが、その際に各キャラは原作再現の塊のようなアクションを行ってくれる。デフォルト解禁のキャラを例に挙げるとニューデデデハンマーでジェット加速するデデデ(USDXのマスクドデデデ)、4枚羽となり目の前の相手をガンガン切り捨てるメタナイト(スマブラSPのダークネスイリュージョン)、金色に輝きスピードアップするワドルディ(参ドロのゴールデンワドルディ)といった感じである。

カービィに限り主人公特権か特別仕様でカラーリングごとにスペシャルワザが変化。もちろんピンクがウルトラソードで青がスノーボウル(ともにWii)、キービィがクラッシュで赤がバーニング(ともに夢の泉)…とどれも過去作ネタである。バーニングくんはこのメンツと並ぶとだいぶ出世した感あるな。
ちなみにだが自らの足で大爆走するリックを筆頭に、スペシャル発動中はマシンから降りるライダーがそこそこ存在する。どこぞの青いハリネズミ同様に君らもマシンがハンデになってる側かよ…と一瞬思ったが、よくよく考えてみれば前作も大概のマシンはタイヤ単体(ホイール)になる方が早かったりしたし今さらだったか。

そしてエアライドといえば多種多様な『エアライドマシン』のハナシも欠かせない。本作では前作に登場した14(+4)種類全てが当時の特徴そのままに続投!前作では大きく分けてスタータイプとバイクタイプの2つのスタイルが存在したが、本作ではソレに加えてタンクタイプとチャリオットタイプが新登場!新マシンも含めた通常マシンの総数は22(+α)種類である!
タンクはプッシュ中に停止せず、かつチャージダッシュ時に瞬時に向きが変わるスリックスターとルインズスターをミックスしたような形式、チャリオットはバイクを更に極端にしたスタイルで飛行性能は平たく言って皆無、反面地上では驚くほどの安定感を見せてくれる。

そしてスターも新機軸の2タイプに負けじと個性豊かなマシンが追加!スピンと同時に高く飛び上がるホップスター、前方の攻撃判定で相手の能力を奪って一時的にパワーアップするヴァンパイアスター、紙飛行機の如く軽やかに空を飛べるものの文字通りの紙耐久なペーパースター、スピンする度に変形しスター型とバイク型を切り替えるヘンシンスターなど前作以上にブッ飛んだマシンが揃っている。一方バイクは追加がヘンシンスターのバイク形態のみなので影が薄いのはナイショ。
また本作ではエアライドマシンのカラーリングを自由に変更したりデカールを張り付けたりすることにより、自分だけの『オレマシン』を作れるようにもなった。性能そのものは変化しないので自分の心の赴くまま最高の姿にカスタマイズするべし。自信があるなら『オレマシン市場』に流して全世界にアピールするのもいいだろう。なお我はデザインセンスが皆無なので基本的には眺めるだけで楽しんでおります。

前作だとマシンの個性は極端なパラメータ調整により行われていた(サークライのYouTubeチャンネルより)らしく根底の仕様は共通だったものの、本作ではどのマシンも仕様から別物とのこと。そのせいか前作でガチ勢が長年の研究の末発見し半ばエアライドの代名詞と化していた『特殊走法』は軒並みオミットされた。なんと公式テクニックだったと思しきウィングスターのバウンド*すら抹消する徹底具合である。
*バウンド(特殊走法)
前作に存在したウィングスターの特殊走法の一種
ナイス着地時にスティック下入力を行うことで、
ナイス着地の加速を得つつ再度飛び上がって加速、
半永久的に飛行状態を維持できることができる…というもの
特殊走法はその多くがプレイヤー側の研究で発見された非公式テクなのだが、
バウンドに関しては当時の攻略本にほぼ同等のものが掲載されていたため、
特殊走法でありながら限りなく公式テクに近い異例の存在だったりする

そのため本作におけるマシンごとの個性は基本スペックや最初から仕様として用意された箇所にほぼ集約される形となり、前作のような変則的なテクニックの熟知よりも基本のライン取りをはじめとした純粋なドライブテクやパラメータ差が勝敗に強く現れるようになっている。
一般的なレースゲーに近い思想となったことで万人受けする作りになったのは間違いないが、その反面個性の暴力で殴り合うエアライドらしさはだいぶ薄れてしまったのはちょっとだけ寂しい…と思いきやどうも前作からのエアライダーたちは早くも抹消されていない特殊走法を発見したり、本作で可能となった新特殊走法を開拓したりしているようだ。ガチ勢こわい。

カービィ以外がプレイアブル化したことで気になる『コピー能力』だが、もちろん本作でも登場。それどころか本作では原作でコピーを使えたカービィ・グーイ・リックだけでなく、なんと全キャラがコピー能力を使用できるようになったのだ!コピー能力発動までの操作や手順は前作と同様で、カービィならすいこみ、カービィ以外のキャラはキャプチャーして敵キャラを取り込むことができる。当然スカなら星型弾を発射!
コピー能力は全17種類。前作に登場したものは軒並み続投しているが、残念ながらウィングとトルネイドのみはリストラ。代わりに前作ではありそうでなかったカッター・ジェット・ファイターなどが仲間入り。最新作『ディスカバリー』からはドリルが参戦したほか、シリーズ恒例激レア能力のUFOと(コピー能力としては)『タッチ!』以来20年ぶりの復活となるミサイルがまさかの登場。…とはいえUFOとミサイルは明らかに下位救済用コピーといったポジションなので対人戦でもない限りほぼ見る機会はなかったり。下位じゃないとコピールーレットにすら出てこないとは驚いた。

本作完全オリジナルのコピー能力だとチャージダッシュとともに光となって超加速するフラッシュ、無敵状態の鉄球に変身してゴロゴロ転がるスチールボールが該当。…スチールボールくん、きみ昔メタルとか名乗って参ドロにいませんでしたか?
前作からの続投コピーも前作そのままというわけではなく、クイックスピンでSDXの如くバーニングアタックが発動するファイアやレバガチャ廃止で自動的にパワーが貯まる+プッシュ入力時ではなくボタンを離した際に攻撃するようになったプラズマなど、軒並み使いやすいようなテコ入れも行われている。

とにもかくにも本作の基本および前作からの変更点にザックリ触れられたところで、本作で楽しめる各モードの紹介に移らせて頂こう。本作には前作と同じように『エアライド』『ウエライド』『シティトライアル』といった毛色の異なる3つのゲームモードが収録。どれか一つを極めてもいいし、全部のモードを好きなように渡り歩くのだって構わない。本作ではこの3モードはいずれもオンラインでのマルチプレイにも対応しているのでCP相手で物足りなくなったなら世界のライバルたちに挑んでみるのも一興である。

まずは『エアライド』から。言わずもがな本作のメインともいえるゲームモードでシンプルにレースを楽しむことができる。今回のレースは最大6名まで参加可能。ルールは前作同様オーソドックスな周回制と距離を競う時間制の2パターン。スペシャルワザ抜きで最速を極めるタイムアタック・フリーランの2モードも引き続き搭載、今回は各コースのベストラップ/ベストタイムがマシンごとに個別に記録されるようになったのがありがたい。
エアライドモードで走れるコースは本作オリジナルの8種(+隠し1種)に更に前作の9種を加えた計18コース!昨今のキャラものレースゲーと比較するとまだちょい少なめな部類ではあるが、なんやかんやで前作の9種(エアライド単独)から倍増しているのでボリューム不足の面はだいぶ解消されたといえるだろう。

本作オリジナルの9コースは空に浮かぶ巨大な遺跡に突撃する『エアトピア』やら、なんでもありなデジタル空間を駆け抜ける『サイベリオ』など前作に負けず劣らずオリジナリティ・センスに溢れたものばかり!
『フォーリス』や『ギャラクティック・ノヴァ(隠しコースゆえネタバレ反転)』といった1周が非常に長いかわりにその1周に多彩なロケーションが設けられ、おすすめ周回数が1周に設定されている…要はマリオカートでいうところのセクション型のような設計がされているコースも新登場。もちろん時間制でのプレイやオプションで周回数を弄れば何周でも走れるのでそこはご安心。

言わずもがなコースごとに特有のギミックや分岐があるだけでなく、ここぞというセクションに差し掛かるとダイナミックなカメラワークを活かした演出が挿入されたりもするため走行中のテンションは爆アゲ間違いなし!
なかでも洞窟コース『ケイビオン』ではなんとあのガレブくん本人が再登場!ガレブは前作とほぼ同時期の『鏡の大迷宮』でデビューし、続く続編『星のカービィGC(仮)』でプレイアブル化…の予定だったが同作の開発中止で活躍の機会を失い、それから『サンドバッグさん』に身を窶し15年近くに渡って物言わぬサンドバッグ扱いが続いていたところ本作で堂々の大復活である。長年の鬱憤を晴らすかの如く、今度は貴様等がサンドバッグになる番だと言わんばかりに大暴れするガレブの勇姿を見逃すな!
(鏡の大迷宮が本編で一番好きな民なので本作のガレブが公開された際には変な声が出ました)

そして本作には前作のエアライドコース全9種も収録!ビジュアルこそだいぶリッチになったがコース構成やギミックはほぼ全て当時とほぼ同じものとなっている。流石に基本仕様が異なるため当時と全く同じ走りができるワケではないものの、こういった形でかつての名コース群を走れること自体に大いに価値がある!
コース内にて登場するザコ敵ではエアライドを代表するスカ枠のデイルやニードルをコピーできるピチクリなど長年エアライドのみの出演だったメンツの再登場が行われている。ただし残念ながら全員続投というワケにはいかず、一部前作から入れ替わり/リストラがあったりする。コピー能力が消滅したカーラーとフラッピィは仕方ないにしても、コピー自体は残留なのに差し替えられたヒートファンファンとソードナイトは泣いていい。まぁヒートファンファンは元を辿ると更に別キャラ(ローリングタートル)の差し替え枠の亜種なんだが。因果は巡るとはこのことか。

続いては『ウエライド』、相も変わらず上から見下ろし視点のコンパクトなレースゲームである。前作のウエライドは操作システムこそ同じでも内部の作りは完全に別物(というかウエライドだけ開発元が違う)だったが、本作は内部的にもエアライドと共通のシステムとなり『簡略化されたエアライド』といった雰囲気がより強まった。
それもあってか今回は全プレイヤーの性能は横並びではなく、各々のプレイヤーがライダー・マシンの選択を行えるようになった。ラインナップは『エアライド』と同様、マシンごとの特色やキャラごとの専用能力も含めてそのままこの『ウエライド』でも使用できる。強いて言うならスペシャルワザだけは使用できないので、必然的にそちらに依存した性能のキャラはちょっと使いづらい…かも?

操作方法は前作と同じ。『フリースター』基準でスティックを倒した方向に向いてくれる『フリー操作』と『ハンドルスター』基準で左右入力で時計回り/反時計回りに向き直る『ハンドル操作』の2パターンが選択できる。…というわけでうっすらお察しの通り前作のウエライドを象徴する『フリースター』と『ハンドルスター』はマシンとしては残念ながらともにリストラ。どうしても使いたいならばオレマシンでそれっぽいビジュアルのモノを作るしかない。
ウエライドで選択できるコースは全部で9種類(うち1種隠し)。例によってコース名は漢字1文字で表されているほか、本作のコースはフラリア→花やダグウォーター→流のようにどれもエアライド側のコースがベース。ギミックやコース構造にも近しい要素が目立つがシステムが違うのでちょっとばかし違う印象を受けるだろう。
エアライド側とは違いこちらは前作コースの復刻はない。光とか水とか綺麗なグラフィックで見てみたかったのだが…流石にないものねだりか。

ハードスペックの向上によるものかはたまたプレイヤー側のプレイ環境の変化に合わせてか、コースはどれも前作に登場したものよりもかなり広いものとなったが、スタースリップや敵加速といった概念がこちらにも導入されたおかげで1プレイにかかる時間は前作とさほど変わらず短め。
ウエライド特有の乱戦要素は本作でも健在。ただし本作のウエライドはギミックの影響力がやや控え目なので、予想だにしない展開をレースに運んでくるのは主にアイテム側。本作のアイテムは大半が後述のシティと共用だが一部は前作のものとほぼ同じ効果を持つ専用のモノも登場する。本作のウエライドは最大8名が参加可能なので、人数を増やせばそれだけアイテムによるカオス具合もパワーアップ!

そしていよいよ皆様お待ちかねの『シティトライアル』!いわずと知れたリプレイ性のバケモノの大人気モード!!今回はなんと最大16人での同時プレイやチーム戦が可能となっている。今度の舞台は空に浮かぶ巨大な空島『スカイア』。シティとは一体…と突っ込みたいがよくよく考えると前作も街部分はシティの一区画でしかなかったな…。
スカイアは縦にも横にも前作のシティ以上に広いものとなっており、ロケーションも市街地に森に火山といった前作のシティとテーマが重なる部分のほかに、海に浮かぶ船やら火口から入れる謎の異空間、いつもあるとは限らないし辿り着くにはちょい大変なご褒美エリアの浮島などなど前作以上に多彩。本作ではプレイするたびに地形が微妙に変化する要素まで存在するので猶更飽きさせない。
もっともフィールドが広くなったとはいえやるべきことは前作と変わらない。前半の『シティ』改め『スカイア』にてマシンの強化や乗り換えを行い、後半の『スタジアム』にて特殊ルールで競い合い決着をつけるのだ!トライアルの制限時間は3分-7分、スタジアムも合わせて1プレイにかかる時間は前作同様10分以内に収まる感じである。

本作でもマップの随所にエアライドマシンが出現し、自由にマシンの乗り換えが行える。初期マシンのライトスターは前作に輪をかけて貧弱になったため早々に乗り換えないと地獄を見るが、乗り換え方法が変わったため前作からのプレイヤーは注意が必要。
乗り換えにはマシンの近くに寄ってスペシャルボタン!いちいちマシンから降りる必要はなくなったほか、なんと破壊寸前の状況であれば他プレイヤーのマシンを横取りすることすらできる!
基本的に使う機会はないだろうが、近くにマシンがない場合であればスペシャルボタン長押しでマシンから降りることもできる。なお前作の『プッシュ+スティック下入力』ではマシンから降りられないので前作プレイヤーは早いうちにこの操作に慣れておくべし。
ただスカイア中は『マシンの乗り換え(および降車)』『スペシャル発動』『コピー能力解除』をスペシャルボタンひとつに集約してしまっているため、別のアクションが誤爆してしまいやすい点は困りもの。条件が重なっている場合はスペシャル>乗り換え>コピー解除の優先順位で発生するので、乗り換えたいときにゲージが貯まりかけている場合は注意しよう。スペシャルは途中解除ができないからもたついているうちにマシンがどっかに消える可能性もある。

スカイアにてランダム出現するコンテナは前作と同じくパワーアップの出てくる青・コピー能力の赤・一時強化のアイテムが出る緑の3種類。後述の仕様変更の影響で相対的に即時発動の攻撃アイテムが出てくる緑コンテナの価値が向上。このほかに迂闊に触れると痛い目を見る爆発コンテナやら、なかなか見かけない代わりに壊せば大量のパワーアップや伝説パーツが出現するレアコンテナが新登場。
マシンの強化に用いられるパワーアップアイテム(および変動するパラメータ)は前作と同じくサイコウソク・カソク・チャージ・センカイ・コウゲキ・ボウギョ・ヒコウ・オモサ・タイリョクの9つ。パラメータが伸びた際の恩恵もこれまた前作同様、もちろん全能力がまとめて上昇するオールだって健在である。
パワーアップアイテムはスカイア内に直接落ちているものや青コンテナを破壊すると出てくるもののほか、本作では森の木々や洞窟に点在するクリスタルなどのオブジェクトを破壊することでも入手できるようになった。

本作はパワーダウン(灰色)の出現率が著しく下げられただけでなく、フィールドの広さやプレイ人数の多さとの兼ね合いからか前作とは比較にならないほど大量のパワーアップアイテムが1プレイ中に出現する。
…つまりどういうことかというと、いとも容易くマシンが制御不能に陥るようになった。運が上振れた状況が重なったことで特定のパラメータが突出し地獄を見るといった場面は前作でも稀に見たが、本作は運とか関係なく普通にプレイしている範疇でも各種パラメータがあっさりインフレを起こす。逆に言えばそれだけ能力強化がしやすいということでもあるので『パワーアップ不足で手も足も出ない…』とはなりにくいし、トンデモ能力のマシンを乗りこなすことによる高揚感は前作のソレをも大きく上回る。

前作では『乗っているマシンが破壊されると大幅パワーダウン(アイテムを周囲に撒き散らす)』というシステムこそあれど壊した側にさほど恩恵があるわけでもないため、こちらが圧倒的な武力(ハイドラ等)を得た時でもない限り相互不干渉な状況になりやすかった…が、本作は『撃破プレイヤーが被撃破プレイヤーが失ったパワーアップを自動で奪い取る』という仕様が追加されたことで必然的に『他ライバルの撃破』の比重が育成において大きくなった。地道なアイテム回収ももちろん大切だが、ある程度の戦闘力があるならば他のライバルが乗っているマシンをぶっ壊したほうがだいぶ手っ取り早い。
一方で被撃破プレイヤーのすぐ近くにマシンが寄ってくるようになったため復帰そのものは簡単。さらに言えば自身を撃破した相手には専用のアイコンが表示され、この相手を撃破すると『リベンジ成功』となり通常よりも多くのアイテムを奪い取れるぞ!
…これらの仕様が重なった結果、本作のシティトライアルは少しの油断が命取り、殺し殺されの応酬が常に繰り広げられるトンデモナイ世紀末と化したワケじゃが、まぁゲーム側が殺し合いを容認どころか推奨してるので当然といえる。争え……もっと争え……

ところで前作だとあまりにもアホすぎてレベル最大にしたところで動く的にしかならなかったCPたちだが、本作では圧倒的にAIが賢くなりソロプレイでも真っ当に対戦が楽しめるようになった。アイテムはちゃんと集めるし有効なマシンを見つければ乗り換えだってする。イベントにも積極的に参加するし、なんと状況次第では伝説のエアライドマシンを完成させることすらあるのだ!永遠に壁や虚空に向かってジャンプを繰り返していたおバカなCPは今の時代にはもう存在しない。
というわけで『伝説のエアライドマシン』の紹介である。本作でも伝説マシンのパーツを各3種類集めればその場で最強格のマシンに乗り込むことができるぞ!伝説マシンは種類が増えたからかパーツの出現率は前作よりも体感低め、今回は青コンテナ・レアコンテナから出現するようになった。パーツはパワーアップと同じく攻撃されたら奪われるうえ、前作と違い誰が伝説パーツを持っているか一目瞭然となったおかげで奪い合いが実にアツい!…つまりまた新たな争いの火種となるワケですね、ハイ。

飛行能力に超特化した空の『ドラグーン』、戦闘能力に超特化した陸の『ハイドラ』は言わずもがな引き続き登場、さらに本作では新たな伝説マシンが2種類追加されている!ネタバレになるので詳細は割愛するが、ひとつは本作の新仕様をフルに生かした代物、そしてもうひとつはありとあらゆる意味で規格外すぎる代物なのでどちらも自分の目で確かめてほしい!
これまた前作と同じく条件を満たせばドライブで乗れるようになるのだが、なんと本作ではそれと同時にエアライドやウエライドにおけるタイムアタック・フリーランでも伝説マシンが解禁される。流石にメインモードでは使用禁止だがそれにしても太っ腹である。

そしてシティトライアルといえばやっぱり何が起こるかわからない『イベント』も魅力。本作のイベントは前作から倍増した全40種類!『ダッシュゾーン大増殖』『マシンが飛びやすくなった』『マシンがこわれそう!耐えれば全回復+パワーアップ!』など系統は違えどスカイア全体が変化したり、全プレイヤーが強制的に対象となるイベントの割合が増え前作以上にイベントの影響力が増した。
スカイア自体が広いことを生かしてフィールドのいち区画を利用した『ショートレース』や『デスマッチ』などの任意参加型のイベントも登場。純粋なデメリットイベントはだいぶ減り、総じて『参加すれば相応のリターンはあるし、参加しないならそれはそれで時間的な余裕が生まれるので違うことができる』といったスタイルとなっている。
もちろん中ボス的な扱いのイベントもあり、前作から続投した怪鳥ダイナブレイドのほか、シリーズおなじみキャラであるウエライドのトゲゾーこうら隻眼の雷雲クラッコにまさかの『夢の泉』デザインでの再登場となるグランドウィリーが登場。それぞれ攻撃パターンや倒し方も異なるので、ライバルとは一時休戦し協力して立ち向かうべし!…まぁライバルを囮なり死兵なりにして突っ込ませ、後ろからボスごとブチ抜き漁夫るのも手ではあるけどね。

シティトライアルの決着の場となる『スタジアム』は今回ランダムでピックされた4種類から選択できるようになった。投票制などではなく純粋に自分がどのスタジアムに挑戦するかを選択する形式であり、同じ競技を選択したもの同士での対戦となる。逆にそのスタジアムを選んだのが自分だけであればかの有名な『戦わずして完全王者!』となり無条件で優勝が確定する。
自分自身のライダー・マシンやその強化状況、ライバルの育成したマシンの傾向などから自分が行くべきスタジアムを選ぶのが勝利のカギ。あまりにもどうしようもない状況でも人気のなさそうなスタジアムを選んだことで上の『完全王者』になれる可能性もなくはないのがミソ。

このシステムにより前作だと時折あった『育てたマシンと全く噛み合わないスタジアムが選ばれて負け確…』の悲劇は本作ではほぼ発生しない。たまにスタジアムがひとつ固定になることもあるが、その場合はそこそこの確率でトライアル開始前にスタジアムの内容が明示されるので安心である。
前作同様に開始前にスタジアムを固定しておくこともできるのだが、本作ではこれまたスマブラ譲りの『スタジアムスイッチ』が導入。特定のスタジアムだけが選出されるようにできるうえ『シングルレース』のように複数パターンが存在するものならばバリエーションごとにON/OFFできるようにもなったのが素晴らしい。
(前作は固定化こそできるがバリエーション違いの選択はできなかった)

肝心のスタジアムのルールは大枠だけなら16種類、差分込みならなんと50種類である!前作に収録されていたルールはほぼ全て続投しており、『バトルロイヤル』や『ハイジャンプ』なども健在。『ポイントストライク』に至っては的が動くバリエーション違いが新たに追加されている。ただし『ゼロヨンアタック』は全コースが新調、『デスマッチ』は1と2のみ前作を踏襲したもので残りは本作オリジナルと厳密に全てが続投しているわけではない。
そして完全新規ルールではカービィらしく食べ物を食べまくる『グルメレース』やあちらこちらからビームが襲い掛かる『ビームパッセージ』、巨大化アイテムがやたら登場するなかでのデスマッチ『ビッグバトル』などが新登場。高速で落下しながらリングをくぐる『スカイフォール』では単純な飛行能力だけでなくある程度の重さがなければ落下速度が確保できないなど一風変わった能力が求められたりするので最後まで油断は禁物。

そして前作では独特な能力補正(無敵化)+撃破失敗で全員一律最下位というあんまりな仕様ゆえ不評だった『VSデデデ』は本作だと抹消…と思いきや『VSボス』名義のボスバトルとして続投。『相手体力バーの常時表示』『無敵化(=詰み)の撤廃』『撃破失敗でも貢献度で順位が決まる』と前作の不満点をほぼ潰す形となっており、純粋に全員が楽しめる全員参加のレイドボス系スタジアムに進化を遂げた。
なおプレイアブルキャラにデデデがいるからか本作は討伐対象にデデデが不在。ならば誰がボス枠かといえば、本作オリジナルキャラの『メカデデデ』のほか、発売前に公開(チラ見せ)されていた範囲だけでも『ナイトメア(夢の泉の物語)』『ゼロ・ツー(星のカービィ64)』と歴代作品のラスボス格がまさかまさかの起用。…メカデデデも一応『カービィボウル』のラスボスと同名なのだが、流石に別物すぎるので単なる名前被りだろう。たぶん。

ボス枠は上記3体のほかにもまだ存在し、後述の『ロードトリップ』でのみ戦えるボスもいる。ロードトリップで打ち倒すことで初めてスタジアムに追加されるボスもいるので、まずはそちらで戦ってみることを推奨したい。オンライン対戦だとお構いなしに出てくるせいでロードトリップ終盤のネタバレを意図せず食らった人も何人かおるようじゃが。
さて、あくまでプレイアブルキャラの延長線上にあった前作デデデとは異なり、本作の討伐対象たちはみなボス前提で作られたキャラ。それもあって攻撃パターンは非常に豊富かつダイナミック、フィールド全体をフルに利用するものもチラホラ。攻撃パターンも一辺倒ではなく体力を減らすごとに段階が変化、なかにはメカデデデのマシン-人型変形やナイトメアのウィザード-パワーオーブ変身のようにシームレスに姿を変えるものも少なくないため、戦っていて単調さを感じる場面はほぼないと断言できる。

シリーズファン的には旧作復活ボスの攻撃パターンからも目が離せない。本作は言わずもがな3Dのレースゲーム…つまり3Dアクションゲームでもあるのだが、なんと原作(2Dアクション)の攻撃パターンのほぼ全てが3Dアクションのフォーマットで再現されているからだ。過去のシリーズをやりこんできたプレイヤーであれば予備動作をみた時点で『あの技が来る!』と身構えられること間違いなし。…まぁ対処法が変わっているヤツもあるので思わぬ一撃を食らう可能性もあるけどね。ブラックホールとかブラックホールとか、あとブラックホールとか。Wiiデラといい近年のカービィはブラックホールに初見殺しならぬ経験者殺しを仕込むのがトレンドなのか。
強いていうなら『星のカービィ64』以来25年ぶりの再登場となるゼロツーだけは魔改造されすぎて原型留めていない感はあるが、これに関してはそもそも原作0²が攻撃パターン(実質)1種とかいうラスボスにあるまじき体たらくだったため仕方あるまい。雰囲気とBGMとキャラデザだけで25年もカリスマ維持してたヤツは伊達じゃない。
(むしろ原作の3DSTGをよくぞここまで本作のシステムに落としこんだと評価したい)

そんなこんなで前作から引き継がれた3モードについて紹介をし終えたところだが…本作のメインモードはさらにもう一つある。それこそが『ロードトリップ』!!というわけでここまでも本題だったがここからも本題である!
『ロードトリップ』とは先に挙げたエアライド・ウエライド・シティトライアルの3モードをミックスしたモード。最初に好きなライダーを1名選び、長い長い冒険の旅路がスタートする。
プレイヤーの眼前にあるのは3つの道、それぞれに異なるお題と報酬が設定されておりどの道に進むかは自由に選べる。選んだお題へ挑戦し無事突破できればある程度のロード(通貨)と提示されていた報酬…パワーアップアイテムを獲得し次なる3択へ…といった繰り返しで進行していく。最深部ではちょっと難しめのお題とともにボスがプレイヤーを待ち受け、そのお題も突破できればワールドクリアとなり次のワールドへ冒険の舞台は移り変わる。

早い話が非常に緩やかに進むようになったシティトライアルであり、プレイヤーは自分の乗っているマシン性能や欲しいパラメータ、そして自分自身の腕前と相談しながら旅の道筋を決めていくことになるワケだ。なお高難易度のお題であればパワーアップ量も少しだけ多い。
シティトライアルと同じ…いやそれ以上にロードトリップ開始時のマシンは非常に低速かつ貧弱。これを如何にして強化していくかが攻略のカギ。バランス良く成長させいかなる競技にも対応できるようにするのだっていいし、1方面に限界ギリギリまで突き抜けさせ特定の競技であれば負けなしな機体も悪くない。
後者は三択全部向いてないお題だったら終わるじゃねぇかと思いきや、『レース系のお題でライバルのマシンを破壊して強引に突破』などの荒業が使えないでもない。マシン強化の自由度が高いからこそプレイヤーのセンスや閃きがシティトライアル以上に問われるといっても過言ではないだろう。

ロードトリップのお題はエアライド・ウエライド・シティトライアルの全てから満遍なくチョイスされる。ごくごく普通のレースの時もあれば『エアライドのレース中に特定のマシンを破壊する』のような一味違うものがあったり、『一定数以上のコンテナ破壊』『スカイア乱入ボスの撃破』といったシティトライアルのスカイア内におけるイベント単体がピックアップされることも。
『全員に定期的に特定のコピー/アイテムが至急されながらのレース』だとか『レールパニックやビームパッセージのフィールドでグルメレース』といった通常プレイでは不可能な組み合わせのお題なんかもちらほら。

ここまでの説明で既視感を抱いた人もいると思うが、この『元からあるシステムを組み合わせて一味違うプレイ体験を何度も繰り返し提供する』というゲーム設計は『スマブラSP』における『スピリット戦』や『灯火の星』と全く同じものである。あちらが刺さった人であれば必然的にこちらも楽しめることだろう。
(まぁこの辺の源流はスマブラDXのイベント戦あたりにありそうだが)
道中にあるのはお題やマシンだけではない。コピーのもとのような持ち越せるアイテムや大砲・宝箱のようなギミックだってあるし、ロードを消費して買い物できるお店や好きなパワーアップをひとつ入手+体力が全回復する休憩所なんかもある。休憩所以外のシステムは利用するかどうか全て貴方次第。

旅路の途中にはエアライドマシンが落ちていることも。エアライドマシンに触れるとその場で乗り換えが発生する。乗り換えるか否かはプレイヤーの判断次第だが、1度でも拾ったマシンはその後の休憩所やワールド開始時、あるいはリトライ時にいつでも自由に乗り換えられるようになる。様々なお題に対する選択肢を増やすためにもエアライドマシンは見つけ次第乗り込んでおくのが吉。
ワールドによっては道中で『仲間』を3択or2択から拾うことができる。仲間はワールドの終わりの『分岐点』で登場し、行く手を阻む敵をやっつけたり或いは別の道を示してくれ、これによって次に進むワールドが変化する。ワールドごとに入手できるマシンやミッションの傾向がだいぶ変わるのでよくよく考えて仲間を選びたい…と言いたいところだが、分岐点での展開は基本的に予想不可能。行き当たりばったりの旅を楽しむといい。

バタファイア(鏡の大迷宮)、エリーヌ(タッチSR)、ピコハンマシン(TDX)など分岐点でのイベントに登場する障害物や仲間はほぼ全てが過去のカービィ作品に登場したメンバー。活躍の機会はほぼ一瞬のカメオ的な扱いながら懐かしい気分になれることだろう。シリーズファンならきっと全キャラの名前や出展を答えられるハズ!
1ワールドあたりのお題(=ステージ)は9個前後。そしてゲームクリアまでには最低11ワールドの踏破が必要であり、1周するだけでも最短2時間はかかる。更に分岐までカウントするなら驚異の全26ワールド、全てのエアライドマシンの回収や全ワールドへの突入を目指すならば周回プレイも必須となるため、他モードとは異なるベクトルながらやりこもうとすると果てしないボリュームを誇る。
よってロードトリップは(ステージ単位で見れば短いとはいえ)ワンプレイがサクッと終わる他3モードのことを考えるとエアライドにしてはだいぶ異質なモードといえる。道中でのセーブも可能なのでしっかり腰を据えてコツコツプレイしクリアを目指すべし。

難易度はカジュアル・ノーマル・ハードから選択でき、クリア後はスーパーハードが解禁。カジュアル-ハードは道中いつでも変更可能。本作で初めて『エアライダー』にデビューした初心者ならカジュアル、普段からレースゲームをそこそこ遊ぶ人や前作のプレイ経験がある人ならノーマル、前作をガッツリやりこんでいた人ならハードを選ぶとちょうどいい。本作には桜井氏の作品にしては珍しく『高難易度で突破するとごほうび増加!』といったシステムが全く存在しない(クリアチェッカーにハード指定のモノがある程度)ので、変に見栄を張らず自分の実力に見合った難易度で楽しむのがベスト。
序盤ワールドではパラメータの低さからゆったりしたゲーム進行になりやすく慣れたプレイヤー的にはだいぶ単調に思えてしまうのだが、パラメータの上昇も緩やかかつ傾向も選べるため、初心者がこの『カービィのエアライダー』というゲームに慣れる最初の一歩としてはこれ以上ないくらい適任。本作を購入したらまずロードトリップをプレイして他3モードの感覚を掴み、あとはロードトリップを進めるなり任意の他モードに注力するなりすると遊びやすいだろう。

前作『カービィのエアライド』はひたすらレースやら何やらを繰り返していくストイックを極めたような作品でありストーリーのようなものは影も形も存在しなかった。本作においてもそこは同じ…と思いきや、今回はこのロードトリップに一点集中する形で明確なストーリーが設けられている。
本作の物語は『マシンがどこかに行きたがっているから、とりあえず行ってみよう!』という導入から始まる。そこから先は主人公(任意選択キャラ)の視点だとひたすら淡々と進み、気が付けばなんかヤバげなヤツをシバいて世界を脅威から救っていた…といった実にカービィらしい展開となる。分岐点で発生するイベントをレベル突入時のデモのような立ち位置と考えると猶更それっぽい。
近年の熊崎カービィに代表される濃厚なシナリオ&テキストと比較するとかなり薄味気味ではあるが、この『シナリオ描写は必要最低限にとどめ、本当に重要なシーン(冒頭とラスボス前後)でだけ物語を動かす』スタイルはそれこそ『夢の泉』『SDX』といった過去の桜井カービィにおけるストーリーテリングのソレなのである種の懐かしさも感じさせる。
(まぁ熊崎カービィもスペシャルページでテキストが充実している点以外はこの延長線上にあるのだが)

とはいえここまではあくまで主人公視点での物語。本作では『カケラ』と呼ばれるものを獲得する度に、事件の発端となった出来事が少しずつムービーで明かされていく。ムービーは章仕立てとなっており、本作のキーキャラである半生命体『ゾラ』や旅の途中で幾度となく邂逅する謎のエンカウンター、そして銀河の果ての大彗星『ギャラクティック・ノヴァ』にフォーカスし、ナレーションによりこれまた淡々と進行する。その行く末についてはご自身の目で確かめて頂きたい。
最初に触れた通り本作は22年ぶりに桜井氏が手掛ける…言うなれば『22年ぶりの桜井カービィ』となるわけだが、本作のシナリオでは先に挙げた『ギャラクティック・ノヴァ』だけでなくあの『夢の泉』、そして『エアライドマシン』が深く関わってくる。『夢の泉の物語』『スーパーデラックス』『エアライド』…これらはいうまでもなく過去に桜井氏が手掛けてきた作品群…すなわち本作は22年ぶりの桜井カービィにして桜井カービィの集大成のような物語だといえるのだ。
ところで『SDX』で初登場しその後もシリーズ作(特にWiiとロボプラ)でたびたび言及され作品間を繋ぐ重大なファクターとなっていたギャラクティック・ノヴァだが、実はコイツ自体が本格的にメインシナリオに絡むのは(リメイクのUSDX除き)当のSDX以来29年ぶりとなる。久々のメイン出演ゆえか我々プレイヤーの想像もつかない…それこそ生みの親じきじきの掘り下げじゃなかったら100%大荒れしてたであろう凄まじいムーヴを見せてくれるので、そういう意味でも必見である。やっぱハルカンドラは滅びるべき…もう滅んでたわ…。

エアライドにウエライドにシティトライアル、それらを渡り歩くロードトリップとこれだけで相当なボリュームを誇る本作であるが諸君らは何か忘れてはおらぬだろうか。そう、本作は『カービィのエアライド』の続編…ならば当然『エアライド』を象徴するあのやりこみ要素『クリアチェッカー』が存在するのだ!
クリアチェッカーの基本ルールは前作同様。指定されたお題をクリアするたびに随時マスが埋まっていき、その上下左右の条件が新たに開示。マスにはご褒美が設定されているほか、どうしてもクリアできないお題は回数制限つきの『空きマスチェック』ならぬ『ぬりつぶしマス』で突破した扱いにもできる。今回は1枚につき150マス、更にエアライド・ウエライド・シティトライアルに加え新たにロードトリップとオンラインのシートが追加されたため、そのお題の総数たるや150マス×5枚の合計750個!
前作ではご褒美の有無を示す赤・緑の2色(+紫)だけで構成されておりどうしても無機質なシートでしかなかったビジュアルだが、本作では埋めていくごとに少しずつイラストが出来上がっていく『新パルテナ』の宝物庫や『スマブラSP』のクリアゲッターに近い形式となった。

今回は全てのマスにご褒美が設定されており、前作で度々見られた『死ぬ気で攻略したのに得られたものは何もなかった…』といったことはなくなり、更に言えばお題を開示済みのマスであればご褒美のシルエットを見れるようになった。つまりは特定の報酬を狙ってのプレイ目標が立てやすくなっているワケだ。クリアチェッカー攻略で解禁されるご褒美はライダー・マシン・コース・スタジアム・裏曲・オレマシンパーツなど前作以上に多彩。
本作では同じマシン・ライダーがご褒美となっているマスが複数存在し、いずれかのマスを埋めることさえできれば当該キャラをアンロック可能。前作だとやや難しめのお題をクリアしないと入手できないマシンがいくつかあったので、解禁方法が複数あるのはいいことである。なお解禁済みのキャラ・マシンのマスを埋めた場合、キャラであればカラバリが、マシンの場合はオレマシン用の素体が追加される。

前作で本格的にクリアチェッカー埋めに挑む場合『クリアチェッカーを開く』→『お題をメモ』→『お題に合わせてルールを設定』…といったやや面倒な手順が必要だったのだが、本作ではマシンやキャラ選択画面で1ボタンでサクッと出せてクリアチェッカーを確認できるうえ、一部のお題はマスから直接挑戦できるようにもなり利便性が向上。
『ごほうびリスト』という扱いで未攻略のマスのみピックアップしてお題を確認できたり、コースやスタジアムの選択画面やポーズ画面では解禁できる可能性のあるお題も表示されるなど、とことんユーザーフレンドリー精神の塊のような作りとなっている。
ただし前作における評価点の一つであった『セーブデータ作成時にランダムでマス配置が決まる(≒プレイヤーの数だけ違った順序でお題が提示される)』要素は残念ながらオミット。お題の系統ごとにある程度まとまった配置が行われているためわかりやすくはなったものの少々寂しくはある…。

お題の総数が増えた一方で肝心のクリアチェッカー自体の難易度は前作と比較すると大幅に低下。クリア条件のノルマやタイムは普通にプレイすればまず達成できるほどに甘く、そのうえでルール設定でも融通が効く。前作における難関枠だったタイムアタック・フリーランに至ってはエアライド・ウエライドに各1マスずつ&累積系ゆえ誇張抜きで誰でもクリア可能。ひとまず全体のさわりレベルでプレイすれば『いろいろ○○(モード名)』というムービーが解禁されるので、デビューしたての初心者はまずそこを目標としよう。
前作では『各シートの120マス中100マスを埋める』ことがエンディング…ひとまずのゴールラインだったが、本作の場合はエアライド・ウエライド・シティトライアルの各シートで150マス…即ち全埋めを達成することでエンディングが流れるようになった。
(ロードトリップとオンラインはクリアチェッカーのムービーがない)

こう聞くと前作以上にクリアのハードルが上がったように思えるかもしれないが、先に触れた通り本作はお題が前作の比ではないくらい簡単になっているのでそう身構えなくていい。…あまりにも歯応えがなさすぎて肩透かしだったのも事実じゃが、前作から地続きのTA・FRに加えロードトリップのスーパーハードにオンライン対戦と高難易度を求めるプレイヤー向けコンテンツ自体は充実しているので、クリアチェッカーは相対的にライト向けのやりこみ要素に落ち着いたということなのだろう。
クリアチェッカー絡みの最終目標は言わずもがな全シート・全マスのフルコンプリート(前作でいう全金)となるが、本作では5枚のシートのうち『オンライン』だけは埋めずともコンプリート判定となる。前作のようなマルチプレイ前提のマスは『オンライン』以外には存在しないので、ソロプレイでのみ楽しみたい人やオンライン環境のない人でも安心するべし。オンラインのお題にもご褒美は用意されているのだが、オンラインで解禁される要素はほぼライセンスカード関係…つまりオンラインプレイをしないならば無用の長物である。

ちなみに本作では『パドック』という遊べる待機部屋を作り、そこで他プレイヤーと一緒に対戦を行える機能が備わっているのだが、実はパドックは内部の人間が1人だけでも問題なく作成できるし空きにCOMを含めての対戦だって可能。
そしてパドック内でのプレイであれば問題なく『オンライン』のクリアチェッカーの達成条件にカウントされるので、パドックを駆使すればソロプレイでも『オンライン』のシートの大半を埋めることは可能だったりする。流石に全埋めは不可能(オンラインでのグミ獲得やライセンスカード等が無理)ではあるが、『対人戦はやりたくない!でもやりこみ要素を無視するのも気分が悪い!』という主に我の事だが凄まじくメンドクサイ思想を持つ対人戦嫌いのプレイヤーまでもこうフォローするとは配慮が行き届きすぎて笑ってしまった。

前作『カービィのエアライド』はサウンド面で非常に高い評価を獲得していた作品だった。となればもちろん本作のサウンドについても気になるところであろう。本作のサウンドはカービィファンにはおなじみの酒井省吾氏、『ラングリッサー』シリーズや『逆転裁判』シリーズなどの楽曲を手掛けてきた岩垂徳行氏のほか、複数名のバンナム所属スタッフが担当。岩垂氏が本家カービィに携わるのは今回が初だが過去にはスマブラシリーズでカービィ楽曲のアレンジを手がけていたり、サークライ的には『新パルテナ』にも参加していたりとそれなりに繋がりがある。
本作のオリジナル楽曲はどれもコースの雰囲気にパーフェクトにマッチしたものばかり。言うまでもなく楽曲のクオリティは高い部類に入るだろう。一方で(作曲スタッフがほぼ異なるので当然だが)前作のソレとはだいぶテイストが違うのはやや好みが分かれそうなポイント。

というのも前作のBGMはコースにある程度寄せつつもどこか逸脱したような…それこそコースから曲そのものが独立して走り出すかのような雰囲気が感じられたのだが、本作のBGMは良くも悪くもひたすらコースに寄り添っており、どこまでもコースとBGMがワンセットな印象を受けるからである。
早い話が前作も本作も楽曲のクオリティこそ非常に高いながら、その良さの方向性がだいぶ違うワケだ。前作の楽曲は『"コース"とは異なる方面で"BGM"自体に独自に光るものがある』といった良さがあり、そして本作の楽曲が持つのは『"コース"と"BGM"が常に二人三脚で一緒に輝く』という良さがあるのだ。
我個人の感想としては『曲単体で聴くならば前作の方が好みだが、実際のレース中に聴くなら本作の新曲も好き』といったところである。なお本作の新曲のなかでも『ダグウォーター』『フォーリス』の2曲は『ステージの雰囲気なんか知らねぇ!トバしていくから着いてきな!』と言わんばかりに前作楽曲の魂…言うなれば『エアライドらしさ』のようなものを強く感じられたのでお気に入りである。

本作でも『表音楽・裏音楽』の概念は健在。エアライド・ウエライドの全コースにてデフォルトの『表曲』とは別にクリアチェッカーで特定のマスを埋めると流せるようになる『裏曲』が用意されている。解禁後であればコース選択画面で流すBGMを切り替え可能。
表音楽は新曲、裏音楽が過去作BGMのアレンジor流用というスタイルも前作同様。本作では『CROWNED(Wii)』『Prayer song to God(スタアラ)』などWii以降の作品は原曲流用、それ以前の作品は新規アレンジが中心。本作からの新アレンジは『アイランドアイス(参ドロ)』『VS.ダークマター(カービィ3)』のように意外な選曲が多め。どれもこれも正統派アレンジなのがニクイ。
過去作からの流用曲も『リンゴジュースのうた』…の原曲『あつめて!リンゴマッチ(バトデラ)』や『ひとりで勝負をしかけたな(タッチSR)』に『悔恨の貴公子(カビハンZ)』などなど外伝作品からピックアップされているものがちらほら。全楽曲の出典元がわかれば貴方も立派なカービィマニアである。

シティトライアルでは『スマブラDX』から引き継がれた表曲・裏曲システムではなく『スマブラX』以降でおなじみの『オレ曲セレクト』を搭載。ゲーム内のほぼ全楽曲に確率を設定し、確率を設定した中からプレイ開始時にランダムでBGMが再生される。一応本作のスカイアにも表曲・裏曲が個別に用意されているが、シティトライアルは2周どころか何十・何百回と繰り返しプレイするのが前提のモードなので、オレ曲セレクトとの相性もバツグンである。
前作の楽曲はほぼ全て本作にも続投し、主にエアライドの前作コースやシティトライアルのイベント・スタジアムで使用される。コース収録のないウエライドも表曲のみであるが前作BGMが再録。アニメカービィ(アニカビ)からの流用曲とて例外ではなく、『エアライド:チェックナイト(強いぞ星の戦士)』『スタジアム:バトルロイヤル(ワープスター)』といったアニカビ初出の劇伴が当時と同じ場面でしっかり流れてくれる。もちろんクレジットにはアニカビの作曲家である宮川彬良氏の名前もしっかり掲載されているぞよ。

サークライ繋がりでなんと『スマブラ』シリーズにおけるカービィ楽曲もいくつか収録。アレンジを手がけた作曲家が本作と共通する『伝説のエアライドマシン(スマブラX)』『メタナイトの逆襲(スマブラX)』『シティトライアル(スマブラSP)』どころか、なんと下村陽子氏アレンジの『デデデ大王のテーマ(スマブラX)』まで再録。スマブラからの楽曲流用はカービィどころかゲーム業界の歴史全体でも極めて珍しい。本作以外の例は開発が地続きだったであろう前作『カービィのエアライド』を除くと『シアトリズム ファイナルバーライン』や『ソニックオリジンズ』くらいなものである。

ほぼUIが『スマブラSP』まんまなサウンドテストが本作にも搭載されているので、BGMをじっくり楽しみたい人はこのモードに入り浸るといいだろう。…とはいえプレイリスト作成やスリープ中のBGM再生といった機能は非搭載なので利便性はかなり低い。ゲーム音楽愛好家としてはコレが本作における一番の不満点である。
カービィのスピンオフ作品は基本的にサントラを販売することがまずないため、本作も音源化はほぼ見込めない。というわけで望めることがあるとすればやはり『Nintendo Music』になるか。発売前の特別配信という異例の扱いでいくつかの楽曲が既に配信済みなのでそちらを拡充する形でなんとかしてくれぬものか…。

ここまでずいぶんと長くなってしまったがそろそろまとめに入らせていただこうか。『カービィのエアライド』が多くの人に愛され、そして続編やら復刻やらを望まれてきたのは前回・今回と我がブログを読み進めてきた諸君らであれば理解できることであろう。だがしかし『エアライド』という作品が今ほど高い人気を獲得するに至れたのには、単純なクオリティの高さに加えて時代が味方したことも大きいと我は考えている。
長期にわたる開発難航からの桜井氏参加により短期間でパラメータやシステムを纏め上げたことによって誕生したのは良くも悪くもトンデモないハチャメチャなバランスのゲームだった。多種多様なエアライドマシン、それらが織りなすゲームバランスに安定感などほぼ皆無であり、もしもインターネットやSNSが普及した昨今にリリースされたのであれば『バランスが崩壊した変なレースゲーム』で片付けられ一過性のブームで終わっていたことであろう。

とはいえ当時はまだインターネットが今ほど普及する前の時代。多くのプレイヤーはオフライン…一人で黙々とプレイしたり、ローカルで友達と仲良く楽しんだりする方が主流であった。破滅的なバランスや粗の多さは必ずしもマイナスに働くわけではない。むしろソレはライト層を交えたみんなでワイワイ対戦するうえでのバラエティ性や、そのシステムの粗を逆に活用してタイムの限界を極めるなど多彩なプレイスタイルを生むことに繋がったのだ。
だからこそというか『カービィのエアライド』を現代に蘇らせるにはいくつもの懸念があったことが容易に推察できる。ゲーム自体のクオリティは大前提としたうえで、その面白さの根底にあるのは『個性の暴力で殴りあうブッ飛んだ不安定なバランス・バラエティ性』だった。だがそんなものが昨今のゲーム業界で許されるかといえば当然NO。

インターネットが普及した昨今では強力なマシンや組み合わせの情報があれば即座に共有され、オンラインではソレに従うプレイヤーで溢れることになる。そのような状況は間違いなくゲームの寿命を縮め、公式としてはどうしてもアップデートという形で性能にメスを入れざるを得ない。しかしそんなことを繰り返していては『カービィのエアライド』特有のハチャメチャなバランスという魅力は間違いなく失われてしまうことであろう。
『カービィのエアライド』という作品は良くも悪くも『アップデートが不可能で情報共有がほぼ行われない完全オフライン環境』の当時だからこそ高い評価を受け、長期的に愛されることに繋がった奇跡の作品である。…そんな作品を現代に復活させる行為があまりにもリスキーであることは言うまでもない。復刻や続編の要望が20年以上もスルーされてきた理由もここにあるのだろう。

それでも、それでもだ。『カービィのエアライド』は復活した!生みの親がじきじきに手がける続編『カービィのエアライダー』として!!異なる顔を持つ3モードに個性豊かなエアライドマシンといった前作で好評だった要素を踏襲したうえでブラッシュアップし、堅実かつ丁寧に仕上げられた本作はまさしく多くの人に望まれていたであろう『カービィのエアライド』の続編である。流石に前作と比較すると粗っぽさは鳴りを潜めてしまったので、そちらに惹かれていた人にとっては物足りなさもあるかもしれないが、こればかりは時代の変化ゆえ仕方あるまい。『エアライド』と『エアライダー』には各々異なる良さがあるのだ。なんかこのへんスマブラDXとスマブラSPの関係性に重なるような…。
前作『カービィのエアライド』はリリース後20年以上にわたり我々を楽しませ続けてくれた。きっと本作『カービィのエアライダー』もそれは同じ。『エアライド』から『エアライダー』へ、20年分の思いが詰め込まれたバトンはこうしてしっかり受け渡された。さてさて、これからの20年で『エアライダー』がどんな輝きを見せてくれるのか…今からでも実に楽しみである!!
