普段のゲーム語りが80-90年代レトロ寄りだったりSEGAハード寄りだったりするせいであまり信じられないかもしれないが、我は2000年代初期の任天堂ハードが黄金期となる世代/スタンスのゲーマーである。プラットフォーム的にいうならば据置機はゲームキューブ、携帯機はゲームボーイアドバンスがど真ん中といったところ。…まぁ我はそもそもゲーム文化に手を出したタイミングがだいぶ早かったので年齢的にはWii/DS世代のが近いんじゃがそれはさておき。
そして我がブログに辿り着く諸君らであればご存じの通り、ゲームキューブは任天堂ハードのなかでは成功したとはやや言い難い部類の代物である。本体スペックやコントローラの操作感などは言うことなしではあったものの、ソフトラインナップに関しては同時期のライバルであるPS2に大きく見劣りしていたことについては正直否定しようがない。
だからこそというか我々の世代における『ゲームキューブの思い出の作品』というのはある程度共通したものになる。良くも悪くも選択肢がさほど多くはなかったことでプレイヤーに記憶に残る定番タイトルが固まりやすかったのだ。よく話題に挙がる作品でいえば『大乱闘スマッシュブラザーズDX』だとか『スターフォックス アサルト』、サードなら『ガチャフォース』なんかがそれだ。
(逆にマイナーどころはとことんマイナーになりやすい側面もあるが…)

今宵語る作品もまたそういった『ゲームキューブを代表する名作』としてよく知られた一本…先ほど列挙した中にタイトルが入ってなかったことで既に察している人もいるだろう。そうだ、今宵はゲームキューブの伝説級大人気タイトル『カービィのエアライド』をガッツリ語っていく。待望のSwitch2向け完全新作『カービィのエアライダー』の発売が近付くにつれ増してゆくこの高揚感を今回の記事にぶつけようではないか!!
ちなみにアニカビや鏡の大迷宮の過去記事で触れていたように、我はアニカビ→鏡→エアライドという順にカービィシリーズにデビューした勢なので我にとってエアライドはカービィ歴の原点のひとつといえる。そういうわけで今回は我がブログの継続7周年記念でもあるぞよ。…カービィ記事がかれこれ2年ぶりとかマジですかいな。そして2025年のGC記事は4本目。こっちはこっちで偏りすぎじゃろ。

さて本作『カービィのエアライド』はタイトルが示す通り誰もが知ってるかわいくてかっこいいピンクだまが主役を務める『星のカービィ』シリーズのスピンオフにしてゲームキューブ唯一のカービィ作品である。ゲームジャンルはシリーズ初となる3Dアクションレース。なんなら3Dフィールド上でカービィを操作できる作品という意味でも本作はシリーズ初である。
(3D化はカービィ64やスマブラといった前例があるが、あれらのシステムは2Dアクション)
先に言っておくが、我は基本的にレースゲームは超が付くほどドヘタである。当然それは本作でも変わらず、クリアチェッカーを全埋めしたところで力尽きた程度の腕前である。エアライドといえばそれこそエアライド歴20年超えのエアライダー(超ガチ勢)たちが凄まじいスーパープレイをしているイメージを持つ人が多かろうが、生憎我はそんなスーパープレイとは無縁のごく一般プレイヤー。よって本記事もガチのテクニック的なハナシは最小限に、どちらかといえばライトでちゃぷちゃぷ楽しむレベルのプレイヤーの思い出語り…といったスタンスでやっていこうと思う。

本作が発売されたのは2003年7月のこと。2002年の『星のカービィ 夢の泉デラックス(GBA)』と2004年の『星のカービィ 鏡の大迷宮(GBA)』の合間であり、当時放映していたTVアニメ『星のカービィ(アニメカービィ)』の完結(2003年9月まで)が間近に迫る時期である。
一説では後の『星のカービィWii』『スターアライズ』などの原型になったともされる『星のカービィGC(仮)』が開発中止になったことを筆頭に、GC-Wiiあたりの据置機カービィは特に難産だったことで知られており、本作もまたその例に漏れず『カービィボウル64』→『カービィのエアライド(64)』→『カービィのエアライド(GC)』という幾度とない路線変更+タイトル変更を経たうえ、更なる開発難航に対処するため当時『スマブラDX』の開発を終えたばかりの桜井政博氏が参画することでようやく現在の形で誕生に至った作品である。
(とはいえ64時代のものは現在のものとはだいぶ異なるが)
この辺の経緯は実に興味深いハナシが多いのだが、ソレについては我が記事を読むよりも『桜井政博のゲーム作るには(桜井政博氏のYoutubeチャンネル)』でサークライ直々の語りがあるのでそちらを視聴した方がいいだろう。
なお本作の開発難航っぷりが伺える小ネタとして本作開発中の時期にリリースされたスマブラDXおよび夢の泉デラックス(ともにエアライド同様HAL研開発)ではそれぞれ『カービィのエアライド』『カービィのエアグラインド』という本作をネタにしたイベント戦/サブゲームが収録されていたりする。

ちなみに本作『カービィのエアライド』は当時の統括ディレクターにしてカービィの生みの親である桜井政博氏がHAL研在籍時代に最後に手掛けたカービィ作品として有名だが、実はその一方で現在のHAL研取締役にしてゼネラルディレクター、『熊崎カービィ』路線を立ち上げた熊崎信也氏が(クレジットで確認できる限り)初めてデザイナーとして携わったカービィ作品でもある。
(本作以前に夢デラでデバッガーをしていたらしいが同作のクレジットに記載はない)
そういう意味ではある意味本作はカービィの歴史のターニングポイントといってもいいかもしれない。まぁ桜井カービィ/下村カービィと熊崎カービィの間にはフラグシップ時代(鏡の大迷宮/参ドロ)が挟まっているのじゃがそれはひとまず置いておく。

リリースまでの経緯をざっくり紹介したところでここからが本題、改めまして本作『カービィのエアライド』は好きなエアライドマシンにカービィを乗せレースに挑むゲーム!プレイ人数は最大4人、もちろん1人でだって楽しめる。地味に周辺機器の『ブロードバンドアダプタ』にも対応しておりゲームキューブ本体をLAN経由で最大4台まで接続して対戦することも可能である。ぶっちゃけ実際にコレをやったプレイヤーを見たことがないケド。
本作でまず特筆すべきはシンプル極まりない基本システム。ゲーム中、マシンは原則なにもしていなくても自動で前へと進み続ける。ここでプレイヤーが行うべき操作はたった2つ、コントロールスティックによるハンドリングとAボタンによるプッシュだけ。まぁハンドリングは文字通りの旋回操作なので説明の必要はないだろう。

本作を本作たらしめる象徴ともいえる操作こそが『プッシュ』。プッシュはいついかなるときでもAボタンを入力すると使用でき、地上でのプッシュ中は一時的に減速する。空中でプッシュをした場合はまず急降下し、着地後は地上プッシュと同じ効果が発動する。
大多数のマシンは地上プッシュ中に『チャージ』が使用できる。チャージ中は画面右下にある『チャージタンク』がいっぱいになるまでエネルギーを溜めることができ、Aボタンを離した際に『チャージダッシュ』が発動!チャージタンクの量に応じた加速を行える。
コースに点在するカーブに差し掛かったらまずAを押して『プッシュ』!速度が低下するのを利用して左右へハンドリングを行い『チャージ』を溜め、向きを調整したらAを離して『チャージダッシュ』!!コレが本作における基本のキの字といえる操作である。数多のレースゲームにおける『ドリフト』とマリオカートなんかでお馴染みの『ミニターボ』がワンセットと考えれば感覚は掴みやすいだろう。

プッシュの役割はドリフトだけではない。コース内にはあちこちにスイッチやダッシュパネルといったギミックが点在しており、これらを起動するにもプッシュの操作が必要になる。敵キャラが近くにいる状態でプッシュの操作をすると『すいこみ』が使用可能。すいこんだ敵が能力を持っていたならば『コピー能力(後述)』が発動し、スカであったならば『星型弾』にして自動的に吐き出せる。もちろん本家シリーズ同様に複数のスカを同時に吸い込んだなら『貫通星型弾』になるし、複数の能力持ちだったなら『コピールーレット』がスタートする。
レース中に使用できるアクションはかなり多いように見えるのだが、一方でこれらのアクションは全てAボタンに集約されている。いついかなる時でもAボタンを押すだけで自動的に状況に応じて使い分けてくれるので、プレイヤーが考えるべきはハンドリング操作とAを押すタイミングと長さのみ。おかげで本作は多彩なアクションがあるにも拘わらず、極めてシンプルな操作で楽しめるようになっているのだ!

そして3Dアクションレースということで本作のレースでは立体的な立ち回りだって要求される。本作のマシンたちはジャンプ台や段差といった地形から飛び立つと『飛行』することができる。飛行中は下入力で上昇、上入力で下降という操縦桿のような操作体系。一部の足場を無視したり他プレイヤーの妨害を回避したりといったことができるほか、大多数のマシンは地上と空中とで基本速度が大きく異なり、マシンによっては飛行状態を維持した方が素早くなる例も多い。
大まかな基本操作は上記の通りだが、このほかにも回転入力でコピーがない状態でも直接攻撃ができる『クイックスピン』に他プレイヤーの後方にいると加速する『スタースリップ』、敵を倒すと一瞬だけ加速する『敵加速』、地面に対し水平に着地すると加速する『ナイス着地』など細かな公式テクニックは非常に多い。シンプル操作ながら極めようとするとその奥深さに魅了されること間違いなしである。…まぁ本作のガチ勢たちは『特殊走法(後述)』などと呼ばれる公式技が児戯に思えるほどの超テクニックを使いこなすので文字通り次元が違うのじゃが…。

もちろんカービィの代名詞たる『コピー能力』も登場。先に挙げたように能力を持つ敵を吸い込むことで発動し一定時間だけ効果が持続する。本作に登場するコピーは11種類。変身中に近付いた敵を問答無用で切り捨てるソード、Aを離したタイミングで炎を投げるファイア、プッシュすると一定範囲内に攻撃するフリーズとニードルといったわかりやすいものからクイックスピンが一時的に強化される+チャージダッシュ時に攻撃できるトルネイド、SDXよろしくレバガチャで段階的にパワーを溜めて攻撃できるプラズマなどその効果はとにかく幅広い。ホイールやウィングに至っては一時的にマシン性能や操作感覚すら変化する。これらを使いこなすこともまた本作のレースで勝利を掴み取るためのカギである。

そして本作を語るうえで欠かせない要素こそが『エアライドマシン』!これは本作でカービィが乗るマシンのことで、本作における実質的なキャラ選択のようなものである。エアライドマシンはシリーズおなじみの『ワープスター』をはじめ14種類(+α)存在し、それぞれが異なる性能となっているのだが、いずれもピーキーなまでに何らかの能力が振り切れており、実際に動かしてみるとマシンがひとつ変わっただけで操作感からプレイスタイルに至るまでまるで別物になってしまうのが面白いところ。
飛行能力が高い『ウィングスター』や攻撃性能に優れた『デビルスター』のように強みが明確なマシンも多い一方で、チャージタンクを燃料のように扱いチャージが尽きると動けなくなる『ヘビースター』、初心者でも扱いやすい反面チャージができない『ワゴンスター』、通常時はロクにチャージできないが旋回中に限りチャージが爆発的に溜まる『ターボスター』などなど…一見すると強みなのか弱みなのか謎なレベルで個性の塊のようなマシンが揃っている。

マシンの中には『バイク型』と呼ばれるものも存在し、こちらは先に挙げたような性能差に加え通常のマシン(スター型と呼ばれる)とは異なり『滑空はできないが段差で大ジャンプできる』『プッシュをせずとも通過するだけで自動的にダッシュパネルやスイッチといった仕掛けを起動できる』といった特徴がある。
特定の条件を満たすと隠しキャラ扱いでシリーズおなじみの『デデデ大王』と『メタナイト』も参戦!エアライドマシンの一種扱いゆえマシンの変更はできないうえコピー能力も使用できないが、前者はバイク型かつ常時ハンマーで攻撃可能、後者はソードカービィとウィングカービィを足して割ったようなこれまたヘンテコな性能を持つ。本作ではこういった個性豊かなマシン/キャラたちが同一ルール上のレースで争うことになるので、実にバラエティ豊かなレース展開が楽しめるのだ。

更に本作を限界まで極めたエアライダーであれば『特殊走法』なるものを編み出し、我々一般プレイヤー程度では到底理解の及ばない速度でコースを駆け抜けていたりもする。
離陸時に超加速する仕様と地上での速度減衰が空中より控えめであることを利用し一瞬で離陸→着地を行い爆発的な加速を行う『ジェットスター』の『ジェットダッシュ』、ドリフト中に減速しない仕様を逆手に取りダッシュパネルなどの加速中に真横を向いてドリフト状態で速度を維持したまますっ飛んでいく『スリックスター』の『横滑り』あたりが特殊走法の中でもとりわけ有名な例だが、ガチ勢たちによる研究の成果によりほぼ全てのマシンにおいてこんな特殊走法が(場合によっては複数)発見されている。
特殊走法はいずれも各マシンの個性や仕様をフル活用したものばかりであり、その存在自体が如何に本作が多くのプレイヤーに長年に渡って愛されたかの証明になっていると断言してもいいだろう。ちなみに特殊走法はバグ的な挙動をする一方で実際にバグを利用したと思われるものは非常に少ない。加速する原理も一つずつ嚙み砕いて考えれば(実際に使えるかどうかはさておき)理屈としては理解できるものも少なくない。走法そのものは公式の想定外だったにせよ、特殊走法は各マシンの個性付けのため行われた極端なパラメータ調整ゆえに成立するものであり、開発側の拘り・プレイヤー側のやりこみの双方があったからこそ誕生したある意味では必然、またある意味では奇跡の産物だった…と言えるかもしれない。

ところでコレだけ個性的なエアライドマシンが揃い踏みしているというならば、当然気になるのはマシン性能まわりのバランスであろう。まぁこんだけ暴力的なまでに個性でぶん殴ってくる代物だらけのバランス調整なんか上手くいくはずもなく、各マシンごとの性能格差はかなり世紀末じみたものとなっている。本記事に訪れるような諸君らであれば本作のエアライドモードにおける最強機体とされる『エアライド四強*』やその逆の『エアライド三弱』のことを既にご存じの人も多いだろう。
*エアライド四強/エアライド三弱
本作のエアライドモードにおける最強/最弱マシンを指す言葉
四強はスクーター・スリック・ジェット・ロケット
三弱はメタナイト・デデデ・ワゴン(少し前までレックス)
とはいえ四強の方は総じて要求テクニックが極めて高く
特殊走法をフル活用できる腕前や知識がなければ
逆にマシンに振り回されるのがオチである
あくまで"世界最高レベルのプレイヤー陣から見た"強機体なので
『使えば誰でも勝てるお手軽最強マシン』のようなものではない
三弱は…まぁ一般プレイヤーでもうっすら弱いことを察するレベルだが…

かといって性能格差が酷過ぎて試合が成立しない…なんてケースは稀。いずれのマシンも突出したパラメータ調整による賜物でなんらかの一芸は持っており、一般的なプレイヤー同士の対戦であれば立ち回りによっていくらでも性能差を覆せる可能性はある。
先に挙げた四強・三弱をはじめとしたマシン評価は特殊走法のフル活用を前提とした…それこそWR更新を志すような世界最高峰のエアライダー達の視点によるものである。そして忘れがちだがそもそも一般プレイヤーがごく普通にプレイする範疇で選択肢に入ってくる特殊走法はせいぜい公式テクとして用意されているであろう『ウィングスター』の『バウンド』くらいなのだ。
よって本作は極まった目線になっていくほど粗が見えてくるとはいえ、知り合いの誰かやCPと気軽に遊んだり、クリアチェッカー攻略に挑む程度のプレイヤーであればさほど気にならないくらいの絶妙なバランスになっているわけだ。
もちろん一般プレイヤー同士での対戦でも勝ちやすいマシンや負けやすいマシンはある程度偏りやすくはあるが、初心者-中級者くらいまでの範囲であればそれは『マシンの強弱』というよりも『扱いやすさ』の面が大きい。本作のマシンは個性が弾けているほど扱いづらさも際立ち、そして使いこなしたときに一気に化ける傾向が強いのだ。それこそ四強のひとつとされるスリックスターなんかは立ち回りを理解せず扱うと悲惨なことになる筆頭である。

ちょいと脱線を挟みつつも本作の基本ともいえるシステム・概念について紹介を終えたところで、ようやくゲーム的な意味での本題に足を踏み入れていこう。本作には3つの大きく趣の異なるゲームモードが収録されている。3つ全てがシステムからして別物なのだが、初回プレイ時は各ゲームモードに入るたびにチュートリアルを兼ねた動画が流れるようになっているため安心。なんともユーザーフレンドリーである。
ひとつはタイトルにもある『エアライド』、好きなエアライドマシンでレースに挑むモードである。公式的には最もメインに据えられたモードと考えられ、手軽にプレイできる遊びやすさと極めようとした場合のストイックな奥深さを両立させている。対戦ルールは指定された回数コースを周回する『周回制』と制限時間が終了するまでに走行した距離を競う『時間制』の2つ。周回数と制限時間についてはある程度自由に設定できる。

また一般的なレースゲームらしくタイムを追究するモードとして『タイムアタック』と『フリーラン』も搭載。『タイムアタック』は3周を終えるまでのタイムが記録されるもので、コース内にはライバルこそ不在なものの通常通り敵は出現する。敵は周回ごとに顔ぶれが変化するものの、配置は完全に固定されているため運要素は極力減らされている。
もう一方の『フリーラン』は周回するたびにタイムが記録されるものであり、気の済むまでひたすら1周のタイムを突き詰めることができる。タイムアタックとは異なりライバルはおろか敵キャラすら一切登場しないため、純粋なコース取りのテクニックが問われる内容である。
事前に触れたように本作には敵を倒すことで発動する『敵加速』をはじめ、一時的に操作感&スピードが変化するホイールなど敵キャラがいることを前提とした加速システムが用意されているほか、マシンによっては敵加速に重点を置かれた性能のものもそこそこ存在する。その結果『タイムアタックでは好タイムを望めるが、敵加速ができないフリーランでは活躍が難しい』『フリーランでは安定した走りを見せられるが、タイムアタックでは敵に進路を妨害されやすく不安定』といったようにマシンごとの得手不得手にも繋がっている。

『エアライド』でレースの舞台となるコースは全部で9つ(うち1つ隠し)。草原・砂漠・機械など様々なシチュエーションが用意されているほか、樹海地帯を進んでいったかと思えば滝の中の洞窟に突入、最後には激流に突っ込んで一気に移動する『ヴァレリオン』や火山を進みつつ中盤のレール地帯で3ルートに分岐、溶岩の龍が飛び交うマグマ地帯で合流する『マグヒート』といったようにコースの情景も目まぐるしく変化し飽きさせない。
ルート分岐も豊富に存在するため、最適なルート取りを探る際の楽しさもなかなか。直接的なレースに影響こそしないものの『コルダ』のレール地帯で現れる巨大な龍やら『ヴァレリオン』でタマゴの中からこちらを覗く不気味な目玉などプレイヤーの印象に残るビジュアルの背景も多く、コースデザインと合わせて絶大なインパクトを与えてくれること間違いなしである。

続いては『ウエライド』、こちらはトップビューのレースゲーム。ウエから見るからウエライド、実にわかりやすいネーミングである。このモードはエアライドを更に簡略化したような代物で、プッシュやチャージダッシュといった基本システムだけは共通だが敵キャラやコピー能力、エアライドマシンの性能差といった要素は軒並みオミットされている。
ウエから見下ろす固定視点でステージ全景が1画面に収まってしまうほど狭い全7コースが舞台。各コースの名前は草・炎・空のように漢字1文字で表される。1周にかかる時間は長くても10秒程度となっており、そのぶんレースで要求される周回数が6周前後とそこそこ多いが、それでも1レースは1分+α程度で終了する。1プレイの手軽さでいえば他モードの追随を許さないだろう。なおエアライドと同じく『タイムアタック』と『フリーラン』はこちらでもプレイ可能。
レース開始前にプレイヤーはエアライドマシンの選択を行う。このモードで使えるマシンはフリースター(赤)とハンドルスター(青)の2種類。この2つは性能こそ同じだが操作方法が異なる。フリースターは常にスティックを倒した方に向き、ハンドルスターは左右入力で向きを回転させる。直感的なのは前者だが、『ラリーX』『F1スピリット』のような昔ながらのトップビューのレースに慣れ親しんだ人は後者の方が動かしやすいかも。ちなみに我はハンドルスター派である。

ここまでの説明だとただただ地味になったエアライドのような印象を抱いてしまうかもしれないが、本モードならではの特徴はそのハプニングの多さとバラエティ的なワイワイ感にある。
確かにこのモードでは敵キャラやコピー能力こそ存在しない。しかしその代わりこちらではレース中にアイテムが出現する。アイテムは足を止めることなく左右に攻撃し続けるギコノコやハンマー、自動的に前方の相手を追尾するミサイルなどのシンプルなものから取得者以外の姿が全く見えなくなったり操作が反転したりするダレヤネンやピヨリン、上位プレイヤーをピンポイントで狙い撃ちするクラッコのようなド派手なものまでとにかく種類が豊富。アイテムの量はオプションから調整できるほか、全てのアイテムを拾うまで効果がわからない『ハテナ』に変えることだって可能。
更に各コースには大量のギミックが仕込まれており、こちらはインコースを通ると捕獲され一定時間動けなくなるサンドワームや触れると大ジャンプして一気にショートカットできる間欠泉といったエアライド以上にレースへの影響力がデカいものばかり。しかもギミックの位置そのものこそ固定ながら発生タイミングは完全にランダム。

そして1周が短いということはそれだけ周回遅れが発生しやすく、順位に差がついていても容易にアイテムでの妨害が行えるということになる。当然周回にかかる時間も短いのでアイテムやギミック次第では周回遅れからの大逆転とて狙える可能性が高い。発生ランダムなギミックや大量発生するアイテムによってウエライドのレースはとにかく目まぐるしくド派手に戦況が大きく動くのが最大の特徴にして魅力。
マシン性能は先に挙げた通り操作感以外は全員横並びなおかげでプレイヤー自身のテクニックが如実に表れる一方で、強力なアイテムやランダム要素によって腕前の差を覆せる…早い話が『マリオカート』に代表される運要素強めなゲームバランスとなっている。徹底的にストイックさを追究した『エアライド』、バラエティ豊かな『シティトライアル』とは色々な意味で別物なので他モードの息抜きがてらプレイすると猶更楽しい。

そして最後が皆様お待ちかねの『シティトライアル』!当時本作を遊んでいたプレイヤーにとってこのモードこそがエアライドの思い出そのもの…そんな印象を抱いている人も少なくないだろう。このモードは前半の『シティ』と後半の『スタジアム』から構成。『シティ』でマシンを強化し、『スタジアム』で強化したマシンを競い合わせ決着を付ける…というのが主な流れとなる。
ちなみに『ウエライド』とは異なり『シティトライアル』の基本操作やシステムはほぼ『エアライド』のソレと共通。『エアライド』で使えるテクニックは全て『シティトライアル』でも使えるし、もちろんその逆も然り。

まずは『シティ』から紹介していこう。ゲーム開始と同時に全ての参加者はシティトライアル専用マシンの『ライトスター』に乗せられた状態でシティに放り出される。シティは縦横に非常に広い箱庭型のマップになっており、プレイヤーたちは制限時間が尽きるまで自由に走り回って街を探索することになる。
シティには市街地・森林・火山といった様々なロケーションがあるほか、火山から行ける『空中庭園』や点在する傾斜から飛び立つことで空高く飛び回ったり、逆に森林地帯の穴などに入ることで地下マップを走り回ったりもできる。シティ外周にはレールで繋げられた駅が設けられており、駅-駅への移動は素早く行えるようにもなっている。まぁレールゆえに移動ルートが固定されているため慣れたプレイヤーからカモられる危険もあるが。
シティにおける目的は『プレイヤー自身の強化』である。マップ内には様々なアイテムが落ちており、これらを拾い集めることでマシンの基礎性能を底上げすることができる。
アイテムで変動するパラメータはサイコウソク・カソク・チャージ・センカイ・コウゲキ・ボウギョ・ヒコウ・オモサ・タイリョクの9つ。各パラメータがどのような効果をもたらすかは…まぁ名前通りなので説明不要だろう。アイテムは色付きのものを拾うとパワーアップするが、灰色のものを拾ってしまうと逆にパワーダウンしてしまうため要注意。

シティトライアルでは各マシンに耐久力…早い話が体力が設定されている。体力はライバルからの攻撃を受けると減少、体力が尽きてしまうとその場で乗っていたマシンが破壊され、その時点でのパワーアップの約半分をバラ撒いてしまう。マシンを破壊されても諦めるべからず。カービィにはまだ2本の足とホバリングがあるのだ!…というわけでマシンが破壊されたなら徒歩で代わりのマシンを探し回る羽目になる。
マシンなしのカービィ単機状態のときはスティック入力で自由に歩き回ったり、ホバリングである程度の高さの足場に登ったりできる。ただしジャンプ台・レールのようなマシン前提のギミックは一切起動できず、なによりアイテムを拾うことすらできないのでマシンなしの状態が続けば続くほど長期的に見るとピンチ。
…というかこちらからの攻撃手段も防御手段も持たない文字通りの丸腰なので、他プレイヤーから一方的に嬲られてアイテムをカツアゲされる危険すらある。よって可及的速やかに代わりのマシンを見つけるべし。選り好みしてる余裕なんてないぞ!

エアライドマシンはシティのどこかにランダムで落ちている。カービィ単機の状態でエアライドマシンに触れるとそのマシンは晴れてカービィのもの。拾ったマシンに搭乗して走り出せるのだ!
『エアライド』の紹介で説明したようにエアライドマシンはどれも個性の塊!シティトライアルではエアライドだとあまり目立たなかったマシン自体の耐久力/攻撃力に光が当たるだけでなく、アイテムを拾ったことによる強化幅もマシンごとに個別であるため、取得アイテムの傾向やマシン性能の噛み合わせ次第では乗り換えない方がよかったり、強化してもほぼ意味がないパラメータがあったり、逆に強化しすぎて制御不能に陥るケースすらもある。このあたりの取捨選択もまた本モードの魅力である。

カクカクとした移動しかできない『ルインズスター』が制御しやすさの面からアイテムを回収しやすかったり、『ワゴンスター』が高耐久ゆえ事故を防ぎやすい、逆に『レックスウィリー』は高火力で他プレイヤーのマシンを破壊しやすい…といったようにエアライドとはまた別に変わったマシンが活躍することもある。なんなら初期マシンである『ライトスター』も制御しやすいうえアイテムによる成長率が高く設定されているため、終盤まで乗り続けたライトスターは侮れない強さを持つ。
『エアライドでは強力だがシティトライアルでは扱いづらい』『エアライドだと弱いが、シティトライアルでは扱い次第で一気に化ける』…その両方が存在するため、両モードをプレイすることで本作のマシン選びの奥深さを更に感じることができるだろう。
シティではチャージ中にスティック下入力を行うことでマシンから降りることも可能。走行中により惹かれるマシンを見つけたらすかさず乗り換えるといいだろう。現在のパワーアップ状態とも相談し、多種多様なマシンとの一期一会の出会いを大切にするのだ!ちなみにパワーアップの状況はマシンを乗り換えても継続されるので安心すべし。

シティのアイテムは純粋なパラメータ変化のものだけではない。使いきりの攻撃アイテムである『ゴルボール』や『クラッカー』、体力回復用の『たべもの』、拾った瞬間から発動する『コピー能力』なんかがソレだ。どうしてもパワーアップと比較すると優先度は下がるが、これらの効果をしっかり把握して使いこなせるようになれば晴れてシティ上級者を名乗れることだろう。
アイテムはソレそのものが直接落ちていることもあるが、基本的には随所にランダム発生する『コンテナ』を破壊することで出現。コンテナは青・緑・赤の3種類。それぞれパワーアップ・使いきりアイテム・コピー能力が主に出現するため、自身がその時点で最も求めているコンテナを探し出すべし。

赤いコンテナの中身は原則コピー能力だが、ごくごく稀に見慣れないパーツのようなものが出現することもある。これこそが『伝説のエアライドマシン』のパーツであり、これを3つ全て集めきると伝説のエアライドマシン…『ドラグーン』もしくは『ハイドラ』が誕生する。
圧倒的な走行能力と飛行能力を持ち、いかなる状況でも対応できる『ドラグーン』、規格外の攻撃力と耐久力でライバルを蹂躙できる友情ブレイカー『ハイドラ』…伝説のマシンはどちらもその名に恥じない性能なので、手にしたプレイヤーが一気に勝利へと近付くこと間違いなし。
伝説マシンのパーツが出現する赤コンテナはある程度出現ポイントが限られていたり、なんなら『赤コンテナがあればパーツ確定』なエリアすらもあるため、何度もプレイしていくうちに自ずと完成までのハードルは下がっていく。当時このモードをやりこんでいたプレイヤーなら今でもそういったポイントを覚えている人も少なくないだろう。

シティはいつもいつでも平和というわけではない。ある程度の時間が経過するとサイレンのような音が鳴り響き、なんらかの『イベント』が発生することがある。イベントの内容は『街の灯台にあかりがともった!』『回復エリアが街のどこかに出現した!』といった地味なものから『DANGER!DANGER!メテオが落ちてきた!』『上空にナゾの超巨大飛行物体が接近中!』といったものまで様々。なかには『パワーアップにニセモノアイテムがまざった!要注意!』『アイテムがやわらかくなったようです。はずんでいます。』などのクソ迷惑だがちょっと笑ってしまうシュールさのあるイベントも。
基本的に強制的にデメリットが課せられるものを除けば無視することも可能だが、『街に正体不明の巨岩が出現!破壊せよ!』では巨岩破壊時にアイテムが大量出現、『怪鳥“ダイナブレイド”出現!アタマをねらえ!』ではダイナブレイド撃破時に全能力が上昇するオールが確定入手できるなど、積極的に参加して活躍したプレイヤーには相応のご褒美が用意されている。

シティ側の制限時間が長くなればなるほどイベントの発生回数も増える。何度もプレイしていくにつれておおまかな発生タイミングは読めるようになるものの、一方でイベントの内容は発生してみるまでわからない。何がおこるかわからないドキドキとアクシデントに対するアドリブを全力で楽しむべし。
…余談だが本作にてダイナブレイド登場時に『キャッスルロロロ』のアレンジが流れたことで、完全に『キャッスルロロロ=ダイナブレイドのテーマ』という印象が根付いてしまい、現代ではそこから拡大解釈される形でキャッスルロロロ=ダイナブレイドほか巨大ボスのテーマのような扱いが定着していたりする。よく知らんデカブツどもに自分の持ちステージのテーマ曲かっさらわれたロロロとラララは怒っていいと思う。

さて、規定の時間が経過するとその場でシティは終了、後半戦の『スタジアム』へと移行する。『スタジアム』では普段のレースとはひと味違う特殊ルールで競いあうことになる。スタジアムで乗り込むマシンはシティ終了時に搭乗していたもの。もちろんアイテムによるパラメータ変化も反映されている。
スタジアムのルールは大きく分けて8種類、細かいステージ/コース違いもカウントすると24種類が用意されている。純粋に速度を極めたプレイヤーが勝つ『ゼロヨンアタック』や戦闘能力が求められる『デスマッチ』、飛行能力がものをいう『エアグライダー』などそのラインナップは実に幅広い。対戦目的ではなく実質的なレイドボスともいえる『VSデデデ』なんてのもある。

言うまでもなくスタジアムごとに求められる能力は異なる。走行能力にだけ特化したマシンが戦闘系競技に挑んだところで満足に活躍はできないし、逆に戦闘能力にだけ特化したマシンはレース競技ではロクな結果を残せない。いかにシティでマシンを強化できていたにせよ、他プレイヤーのマシンを破壊しつくしたにせよ、シティトライアルにおける最終的な勝者はスタジアムを制した者である。そのため前もってスタジアムで活躍できるようなマシン選びや能力の調節がなにより大切となる。
シティでは先に触れた通りアイテムでマシンを強化できるものの、パラメータの中には上げることによるデメリットが存在しているものもいくつかある。攻撃力・防御力が上昇するかわりに飛行能力が低下するオモサなんかはわかりやすい例であろう。逆に言えばパラメータを下げることによるメリットもあるわけだが、だからといっていち方面に特化させること自体が正解かと言われるとそれも違う。特化型のマシンはハマれば強いが、ハマらなかった時が悲惨なのだ。

スタジアムの内容は原則ランダムで決まり開始まで何が来るかはわからない。ならば事前準備のしようもないじゃないか…と思いきや、実はいくつか判断材料がある。代表的なのはシティのイベント枠で発生することがある『スタジアム予言』であろう。予言ではスタジアムの内容を示唆するテキストが表示されるので、それを参考にマシンの方向性を決めることができる。
そしてもうひとつはシティ内でのアイテムの出現傾向。シティのパワーアップアイテムは一見すると完全ランダムのようにも見えるが、その実スタジアムの内容に応じてある程度出現する種類に補正がかけられている。よって『なんかコウゲキとボウギョをやたら見かけるからデスマッチあたりが来そう』『ヒコウの比率が高すぎる…ハイジャンプかエアグライダー?』のように、プレイを重ねていくうちに予言などなくともある程度アタリをつけられるようになってくる。
もっともスタジアム予言はあくまで予言なので外れることも普通にあるし、アイテムの出現傾向も本当にただの確率の偏りで蓋を開けてみたら全然想定外のスタジアムが来た…なんてこともザラにある。どこまで予言や自身の経験則を信じるかもまたひとつの駆け引きといえるだろう。

なおシティトライアルの開始前に設定を弄っておくことでスタジアムをある程度固定することもできる。流石に『シングルレース』や『デスマッチ』のように複数バージョンが存在するスタジアムは細かな指定こそ行えないが、スタジアムの方向性を事前に確定させておくことで全プレイヤーの目標が最初から定まるため、完全ランダムのときよりも戦略・立ち回りが明確になることだろう。後述の『クリアチェッカー』攻略のときにも役立つはず。
ちなみに『スタジアム』というモードから任意のスタジアムやマシンをピックアップして挑むことも可能。シティ開始前とは違いバージョン違いも選択できるので、特定のスタジアムを練習したいときに活用するといい。ただしこのモードでプレイする場合、言うまでもなくパラメータはデフォルト値で固定、また伝説のエアライドマシン2種は選択できないため、『とにかく限界まで記録を極めたい!』という人は大人しくシティトライアル経由で挑むべし。

ここまでの説明から理解できるようにシティトライアルの魅力はそのあまりにも高すぎる『ランダム性』、およびソレが生み出す『リプレイ性の高さ』である。シティでマシンを強化しスタジアムで決着をつける…という基本の流れこそ変わらないが、シティ内で出現するアイテムや乗り換え先のマシン、発生するイベントから最終的な決着をつけるスタジアムのルールまでその多くがランダム頼り。
しかしながらこれらのランダム要素はいずれもバリエーションが豊富であり、それゆえ何度プレイしても全く違ったゲーム展開となる。だからこそ何度繰り返しプレイしても違った魅力を味わうことができるのだ。リリース当時、他2モードを全くプレイせずほぼほぼこのシティトライアルに籠りきりだったライト層が大量発生していたのも納得といえよう。

ここまでの説明がシティトライアルのメインといえる部分だが、それとは別に制限時間やアイテム・ライバルなしでひたすら自由に街を走り回れる『ドライブ』といったモードも存在する。ドライブはシティで唯一デデデ大王とメタナイトが使用可能なほか、やや面倒だが条件を満たせば伝説のエアライドマシンも使用できるようになる、このモード限定で飛行能力が極めて高い『フライトワープスター』というマシンも用意されているなどそれなりに必見。複数人でのプレイも可能なので、ローカルルールを決めて遊んでみるのも一興。マシンの乗り換えには地下駐車場をご利用ください。

カービィシリーズといえばやはりBGMのハナシも欠かせない。本作はシリーズ全体でもトップクラスにサウンド方面で高い評価を獲得している。本作の楽曲を手掛けたサウンドスタッフは安藤浩和氏・酒井省吾氏・池上正氏・石川淳氏の4名。いずれもカービィファンには説明不要、数々のカービィ作品を手掛けてきた布陣である。
レースゲームということもあって本作の楽曲はクールでヒロイックなものが中心、それゆえ従来の本家カービィらしいポップな曲調は少なめだが、本作はどのモードもファンシーさの中に独特な冷たさのような雰囲気があるのでコレが絶妙にマッチ。作曲陣の一部が共通しているからか全体的に『スマブラDX』に近いテイストである。

本作には『表音楽(表曲)』と『裏音楽(裏曲)』という概念が存在し、エアライド・ウエライドの全コースおよびシティトライアルのシティのBGMにはデフォルトで流れる表曲のほか、条件を満たすと流れるようになる裏曲がそれぞれ用意されている。基本的に表曲は本作のオリジナル曲で裏曲は過去作BGMのアレンジ。アレンジの出典元は『夢の泉』『SDX』『64』など本家シリーズ全体から選出。
裏曲は後述のクリアチェッカーで特定のマスを埋めると解禁され以後はランダムで流れるようになる。ちなみにXやZを押した状態で試合を開始すると確定で裏曲となる。このあたりの仕様にどこか既視感を抱く人も多いだろうが、実際この表曲・裏曲の概念は桜井氏が本作の前に手掛けた『スマブラDX』と同じものである。このシステムは後の『スマブラfor3DS』にも引き継がれ、桜井氏の作品ではないが『カービィファイターズ2』にも導入されている。
先に触れた通り本作の楽曲はいずれも高く評価されているが、その中でも人気なものをモードごとにピックアップしていくとエアライドは『エアライド:コルダ』『エアライド:ヴァレリオン』、ウエライドならば『ウエライド:草』『ウエライド:光』、シティトライアルだと『シティトライアル:街』『シティトライアル:街(裏)』あたりだろうか。個人的にはこれら以外だと『メニュー』『エアライド:ギャラックス』『星のカービィ 夢の泉デラックス:夢の泉(ギャラックス裏)』あたりがイチオシ。まぁギャラックスの裏はどちらかというと『スマブラDX』からの再録っぽい感じなんだが。

エアライドの開発時期がちょうどTVアニメ『星のカービィ(アニカビ)』の放送時期と被っていたからか、本作とアニカビとでは双方で楽曲の共有が行われており、『強いぞ星の戦士(エアライド:チェックナイト)』『デデデてんてこまい(シティトライアル:アイテムバウンド)』『ワープスター(スタジアム:バトルロイヤル)』などをはじめとしたアニカビの劇伴が本作に複数流用されていたり、逆に『エアライド:プランテス』『エアライド:コルダ』など本作のオリジナル曲をアレンジしたものが先行してアニカビの作中で流れていたりする。そのため本作のクレジットにはスペシャルサンクス扱いでアニカビの作曲家である宮川彬良氏の名も掲載されている。
(少しハナシは逸れるがアニカビ末期にはエアライドマシンたちが登場するエアライドの宣伝回も存在する)

非常にハイクオリティな本作のサウンド群、当然気の済むまでじっくりと浸りたいのがゲーム音楽スキーとしての性…なのだが例によって例のごとく本作のサウンドは音源化に恵まれていない。…いや、音源化そのものは一応行われているし、ゲーム側にサウンドテスト自体は存在するため初期のカービィ作品のなかではだいぶマシ寄りではある。
しかしながらその音源化というのが一般販売された『アニカビのサントラ』にてアニカビ-本作間で流用された一部楽曲のみ、当時のニンドリの付録である『出張サウンドテスト』にエアライド・ウエライドの一部楽曲のみ、そして今は亡きクラブニンテンドーの景品および店舗限定特典だった『ベストセレクション』『鏡の大迷宮 サウンド+』やスペコレの特典である『メモリアルサントラ』にそれぞれ一部楽曲だけ収録…といった有様である。これらのうち一般販売されたのはアニカビのものだけなうえ、全て揃えたところで全楽曲の50%すら網羅できない絶望に頭を抱えたカービィファンも多い。

近年…『ロボボプラネット』以後のカービィ作品では過去作からの流用曲もサントラに収録してくれるようになったので、『シティトライアル:チャージタンク暴走』『星のカービィ:グリーングリーンズ(チェックナイト裏)』など発売から10年以上も経過してようやく音源化の機会が訪れた楽曲もないわけではないが、やはりそのペースはかなり遅い。『Nintendo Music』への収録を今か今かと心待ちにしている状態である。…ほら『エアライダー』でも旧エアライド楽曲が収録されてるみたいだし、そっちとセットでお願いできませんかねぇ…。

さてさて、多種多様なバラエティ要素があるとはいえ本作はあくまでレースゲーム。ということで最終的に行き着く先は好タイムを突き詰めるフリーランやタイムアタックとなるわけだが、目標やご褒美の存在しない道を極めるのは心理的なハードルが高い…そんな人も多いだろう。
そんな人に向けた新しい形のやりこみ要素として、本作には『クリアチェッカー』なるものがある。これはお題が記載された120個のマスから構成されるもので、お題を達成するたびに随時該当のマスが埋まっていくシステムである。クリアチェッカーはエアライド・ウエライド・シティトライアルのそれぞれに専用のものが存在し、ゲーム内には120マス×3枚の合計360個のお題が用意されていることになる。
お題の内容はエアライドを例に挙げると『全コースをプレイする』『空を飛んだ状態でゴールする』『最下位でファイナルラップを迎え逆転トップを取る』のように簡単なものからトリッキーなものまで実に様々。モノによってはコース・マシン・ルールを指定されたうえで一定のタイムを要求されるものも多いので、普段使わないマシン等に触れる導線としても機能し、プレイ内容の固定化をうまいこと回避している。

そしてクリアチェッカーの一部のマスには『ごほうび』が設定されており、それらのマスを埋めるごとにカービィのカラバリ・マシン・コース・裏曲などといった隠し要素が随時アンロックされていく。早い話がクリアチェッカーを埋める過程でどんどん新しい遊び方がゲーム側から提供される作りとなっているわけだ。
ところでクリアチェッカーのお題は最初から全て開示されているわけではない。お題の内容がわかるのは『既に埋まっているマスの上下左右1マス』のみとなっている。
先に挙げたようにお題には何も考えずプレイしていても達成できるようなものもちらほら存在するので、お題がわからずとも最初の数マスは自ずと埋まる。するとそこに隣接しているマスのお題が開示されるので、今度はそれらのクリアを目指す挑戦がはじまる。無事に達成できれば更に広い範囲のマスのお題が開示され…といった繰り返しがクリアチェッカーの主な楽しみ方。

そのうち『開示されているお題がどれも難しくて詰まった…』なんてこともあるだろうが、そんなときは一度クリアチェッカーのことを頭の隅に追いやり好きなように遊んでみるといい。クリアチェッカーを意識せずとも本作の楽しさは変わらないし、なんなら気付かぬうちに開示されていないマスのお題を達成し、また新たな道が開けることもあるからだ。
どうしてもクリアできない…しかしクリアしたことにしたいお題に遭遇した場合は『空きマスチェック』が役に立つ。これは『無条件でそのマスを埋めた扱いにできる』という救済措置の一種。ただし使用回数に制限はあるうえこの方法で埋めたマスは紫色になってしまう。あとからちゃんとお題を達成できたなら元の色に戻りはするが、空きマスチェックの回数は返ってこない。よってここぞというタイミングで使用するべし。
でもってここからがもっと面白いポイント。本作を何度も何度も1から周回プレイしている人でないと気付かない点なのだが、実はクリアチェッカーは右下1マスを除いた全マスの並びがランダムとなっている。配列は初回セーブデータの作成時に決まるので、実際に埋めてみるまでどこに何のマスがあるのかは誰にもわからない。これはすなわちプレイヤーの数だけお題が開示される順番がまるっきり異なるということ。当然マシンをはじめとした隠し要素の解禁順も人によって全然変わるため、プレイヤーの数だけ本作のプレイ体験が違ったものになるワケである。

クリアチェッカーにおいて唯一配置が固定されている右下1マスは『120マスのうち100マスを埋める』というもの。コレを達成するとスタッフクレジットが解禁される。エアライド・ウエライド・シティトライアルでそれぞれ個別にクリアチェッカーが用意されているのは先ほど触れた通りだが、この右下1マス達成で流れるスタッフクレジットも各モード個別のものとなっている。とりあえず3モード全てでこのマスを埋められれば『カービィのエアライドをクリアした!』と胸を張って言えることだろう。
もちろん本作はスタッフクレジットに到達しただけでは終わらない。各クリアチェッカーを120マス全て埋めきった場合は全マスが金色に輝くので、目指せ3モード全金(ゲーム中のクリアチェッカー全360マスの制覇)であるぞ!
このシステムに桜井氏も手応えを感じたのか、本作以降に氏がディレクションを勤めた作品ではほぼ確実にコレと同様のものが導入されている。『スマブラX』以降のスマブラシリーズにおける『クリアゲッター』や『新・光神話パルテナの鏡』の『宝物庫』のルーツはこのクリアチェッカーだったのだ。

さて、ここまで散々本作を褒め称えてきたわけだが、一方で本作にはどうしても無視できない問題点…のようなものもある。それはずばり『ボリューム不足』である。さっきまでの説明を聞いた諸君らは『毛色の違う3モードがあるなら十分だろ』『個性が爆発するエアライドマシン軍団を忘れたか』『クリアチェッカー完遂にどんだけかかると思ってるんだ』…などと思うかもしれない。全くもってその通りだ。
だがコレはいかなるゲームも究めんとするようなゲーマーの意見、本作に不足しているのは『ライト層がパッと見で理解できる、わかりやすいやりこみ要素』なのだ。本作には『ストーリーモード』はおろか数多のレースゲーに標準搭載されている『グランプリ』のような概念すら存在しない。あるのはコース・マシン・CPの設定を決めひたすらレースを繰り返す…いわば『フリー対戦』のようなモードだけなのだ。

そのうえで本作はとにかくコースの種類が少ない。エアライド9・ウエライド7の計16というコース数は現代どころか当時の基準で見てもかなり控え目。さらに対戦相手であるCPは最高レベルだろうと変な縛りプレイでもしてない限りまず負けないほど弱い。よっていかにゲームがド下手であろうとある程度プレイすれば全コースで1位を獲るのも容易い。シティトライアルだけはそのランダム性ゆえ他モードよりも長く楽しめるとはいえ、CPの貧弱さは相変わらずなのでやっぱり1位を狙うだけならすぐに終わってしまう。
そのためクリアチェッカー埋めやタイムアタック・フリーラン等の好タイム追求に目が向かない…要は『レースゲーム=全コース・全モードで1位を取ればゲームクリアで終わり!』程度の認識のライト層の視点からするとどうしてもボリューム不足に映ってしまう。

先に挙げた通り本作には多彩なエアライドマシン、クリアチェッカーにタイムアタックなどなど遊べる要素は豊富に備わっている。しかしながら良くも悪くも遊び方を強制したり押し付けたりする部分がほぼ存在しない。
だからこそ各々のプレイヤーがただただひたすらにレースを繰り返す、クリアチェッカーのコンプに挑戦、TAやフリーランで最速を目指す、身近な友達と盛り上がる…といった自分なりの楽しみ方を手探りで見つけなければならない。逆に言えば数多の要素から各々のプレイヤーが夢中になれる遊びを見つけたその瞬間より本作は一気に化けることだろう。

そういうわけで本作をどれだけ楽しめるかは各々のスタンスによりけりな面が強い。軽く手を出すだけで終わりな人もいれば、何百・何千時間とプレイしてもまだ足りないという人だっている。
間口こそ広くはあるがゴール地点を自分自身で見出だす必要があるあたりは、ゲーム開始からやりこみの終着点まで範囲が最初からハッキリ明示され懇切丁寧に導線が用意されていることが多いカービィ作品のなかではだいぶ異質。
この『遊びの材料は用意してある!あとは自分で考えて好きに遊べ!』というスタイルはカービィ作品というよりも『メテオス』やfor以降の『スマブラ』シリーズのような桜井氏が本作以後に手掛けた作品群に近い。そういう意味では本作はカービィにしては珍しく人を選ぶ作品といえるのだ。

ところで本作『カービィのエアライド』はゲームキューブの話題であればまず間違いなくその名が挙がるほどの超人気作として知られている…が、実は売上的にはそこまでヒットしていたワケではなかったりする。むしろ日本45万・全世界135万という売上だけに着目するとシリーズ内でも下から数えた方が早い。それゆえ一時期は『知る人ぞ知る傑作』のような扱いが主であった。リアタイ世代である我の周囲でも本作を所有していた人間は我ひとりしかいなかったのを覚えている。
にも拘らず、本作は令和の時代においてまるで『ゲームキューブの伝説の作品』『新作が出たら大ヒット間違いなし!』のように扱われている。これは何故か?ひとえにエアライドの火を絶やさない熱い思いを持つファンが多かったからであろう。

この場合のファンとは当時のプレイヤーだけに限ったハナシではない。リリース当時に本作をプレイした経験が幼少期の楽しい思い出として根付いていた人や現代に至るまで本作を極め続けたガチ勢はもちろんだが、後年になって本作の存在を発信し広めた人やソレに惹かれた人など、多くの人々から実に20年以上に渡って本作が愛され、求められたからこそ、こうして単発だったハズの『エアライド』という作品が新作『エアライダー』へと繋がるまでになったのだ。
…まぁ思い出補正のようなものが極限レベルで乗っかっているうえに、長らく復刻されていなかったことによるプレミア性、オマケに未プレイの人をも含めた多くの人々に語り継がれるうちに噂や評価に尾ひれが付きまくった結果、現代では異常なまでに神格化されすぎているような雰囲気もそこはかとなく感じられるが…。
(このへんは『シェンムーIII』発表当時のシェンムーに対する空気感に近いものがある)

なにはともあれ、これほどまでに根強いファン層が形成されるに至った根本的な要因が本作のクオリティの高さにあるということは、この記事をここまで読み進めてくれた諸君らであれば今さら説明するまでもなく理解できるだろう。
本作は個性溢れるマシンや多彩なルールにより数多の遊び方を許容し、ライト層には気軽にプレイできる楽しさを、そしてガチ層にはいくら遊んでも底が見えない奥深さを提供してくれる。随所に見られるゲーマー向け要素の多さゆえ普段のカービィほど万人受けするとは言いがたいが、逆にハマる人はとことんまでハマる代物となっているのだ。

(カービィのエアライダー おためしライド)
来週いよいよリリースされるSwitch2向け最新作『カービィのエアライダー』には旧作のエアライドコース全9種も再録されるとのことなので、あちらがリリースされたら本作もいよいよお役御免となるかもしれない。…まぁ体験版で軽く触った限りですら仕様や操作の手触りがだいぶ別物だったので拘り強い人が旧作に留まる可能性も普通にありそうだが、そのときはSwitch2向けサブスクのGC配信に『エアライド』が来るのを地道に待とうではないか。
とにもかくにも、役目を終えようとも本作『カービィのエアライド』が長きに渡り愛され続けたことには変わりない。そして我々が『エアライド』を愛する思いもまた、これからずっと変わることなどない。『カービィのエアライド』から『カービィのエアライダー』への世代交代を目前にして、そんな気持ちを再確認した次第である。今だからこそ改めて言える。『カービィのエアライド』はいいぞ!!
