ニンテンドー3DS…天下の任天堂が伝説を築いたニンテンドーDSの後継機である。DSの特徴であるタッチパネルやマイク、二画面を引き継いだうえで、新たに3D立体視にも対応、後期の新モデルたるNewニンテンドー3DSシリーズでは性能向上のほか、NFCリーダー/ライター対応といったゲーム機らしからぬ機能拡張が施された。
(初期型の3DSも外部機器でNFC対応可能)
『NFC』、用語としてはある程度ITないしはゲームに造詣が浅いと聞きなれていないだろうが、Suicaやマイナンバーカードを始めとする磁器カードに用いられている技術…と説明すれば身近なものだとわかるだろう。ゲーム機との相性についてはまぁなんとも言えないが、ゲームのオンライン購入に交通系ICカードを利用できたのは便利だったので何とも言えない。現代のゲーム業界でのこの技術はamiiboにも使用されており、なんだかんだでグッズ化が絶望的だった一部ゲームキャラの立体化にも貢献している…という見方も出来るかも。
事前解説も終わったところで先に注意点を述べておくと、今回のタイトルは現時点で既に配信が終了しており、加えて事実上のパッケージ版も存在しない…つまるところ今後の新規入手はどう足掻いても不可能な作品である。
(厳密にはパケ版も存在するがゲーム自体は直接DLという形なのでどっちにせよNG)
いちおう小説や設定資料集、アンソロやボイスドラマといった他メディアで展開したものは市場に残されているため、それらに触れるだけならば問題なく可能であるが、その全ての中核にあるゲーム本編に触れることは叶わない。それでもいいという方のみ今回のゲーム語り…というか一種の思い出話に付き合ってほしい。
さてさて、今宵語るタイトルは『めがみめぐり』。プラットフォームはニンテンドー3DS。ただ諸々の事情から本作を120%楽しむにはNewニンテンドー3DS(同LL)でプレイすることが望ましい。今作は『3DSのスペックを限界まで引き出した作品』であり、同時に『New3DSの機能を生かそうと尽力した作品』なのだ。DL配信限定のタイトルであり、価格は無料。3DS中期あたりからCS向けに増えだした『F2P(Free to Play/基本無料)』のタイトルである。
2016年12月8日に配信/発売され、何度かアプデを重ねたのち、2018年9月末に一部連動サービスが終了、そうして2020年9月末にはサービス終了が宣言され、ソフト自体の配信も終了した。ただしオンライン機能が使用できなくなったというだけで、ゲームをDL済みの本体であれば引き続きプレイは可能。
店頭販売用のパッケージ版としてコレクターズ・パッケージというモノも存在。ただしこちらの内容は『宝玉(ゲーム内通貨)のコード+サントラ等のグッズ』であり、ゲーム自体は別途eshopからダウンロードする形式。つまりゲームカードとしての今作は存在しない。
さて、言わずもがなこのF2PとはPCのオンラインゲームやスマホのソーシャルゲーム等から輸入された概念、必然的にCS向けにこの料金形態で提供される作品にはそれらからの移植、或いは派生作がメインとなっていた。
(そもそも他プラットフォームで出す利点がない場合はCSオンリーになるだろうが)
しかしながら今作はF2Pタイトルでありながら、PCやスマホといった他プラットフォームでのリリースを行わず、最初から最後まで3DS専用ソフトであり続けたという非常に珍しいポジションの作品である。コレがファーストパーティである任天堂の作品ならば納得の流れであるが、本作はまさかのCAPCOM作品である。
というわけで本作の開発・販売はCAPCOM、代表作は…まぁ説明する必要がないくらい有名メーカーである。ロックマン然りモンハン然りバイオ然り、硬派なゲームに定評のある同社と今作の可愛らしいビジュアルはどうもイメージが一致しない人も多かろうが、まぁココは昔から時折はっちゃけることでもお馴染みなので…。『クイズなないろDREAMS 虹色町の奇跡』とかね。
キャラクターデザインを担当しているのは箕星太朗先生、『ラブプラスの人』といえばゲーマーどころか一般層にも一瞬で伝わるだろう。元々はKONAMI所属(当時はミノ☆タロー名義)のデザイナー/イラストレーターで、本作配信の1年ほど前にフリーとして独立していた。
とりあえず今作のメイン要素について触れる…前に冒頭のあらすじについて触れさせていただきたい。その方がここからの話もスムーズに進むのである。本作は『交通系ICカードに宿ったツクモガミのツクモの"立派なめがみ様になりたい"という願いを叶えるため、ツクモと、そして彼女を見守るめがみの中の大めがみアマテラスオオミカミと共に日本を巡る』という物語。
立派なめがみになるためにはツクモの『神格』を上げる必要があり、そのためにはツクモの目標ともいえる『七柱のめがみ様』や『ムナカタ三女神』が管理する『神格試験』を受けなくてはならない。今作の物語ではツクモとアマテラス、七柱のめがみ様&ムナカタ三女神、それから時々プレイヤー(ヌシ様)を交えつつ賑やかに進行し、ツクモが成長していく様が描かれる。
というわけで今作のメインのゲーム部分は大きく分けて二つ。一つは『日本中を巡る旅』、そしてもう一つは『ツクモとの交流』である。
まず『日本中を巡る旅』だが、コレはズバリ『すごろく』である。サイコロを振りながら出た目の数だけ好きな方向へ進み、目的地を目指して進んでいく。すごろくのマップは超が付くほど広大、現実の日本全国を上は北海道から下は沖縄まで、路線図をベースにすごろくに落とし込んでいる。桃鉄シリーズをイメージすれば伝わりやすいか。
一般的なすごろくゲームに必須であろうライバル(他プレイヤー)の概念は存在しないため、自分のペースで自由に好きなように進行できるのが特徴。マスの種類は『駅マス』と『通常マス』の2種類のみと非常にシンプル。通常マスは止まっても何も起こらない純粋な通り道で、駅マスは止まると何かしらの会話(後述)が発生する。モチロン駅マスは現実の駅と同じ場所にある。
駅近辺の背景にはその地域の名産品や名所が配置されていることもあり、見知った地域であれば背景を見ているだけでも飽きない。中には天満橋駅(大阪)近辺にカプコン本社があったり、(どこだったか忘れたが)バカでかいメットール像があったりといったお遊び要素もチラホラ。
また駅/通常という情報とは別でそれぞれのマスにはランダムで何かしらのイベントが割り当てられていることがあり、イベントが設定されているマスに止まるとそれらのイベント(会話はナシ)が発生するようになっている。汎用的なイベントとしては『食材/おさい銭の入手』『つづら』『もののけ退治』『ミニゲーム』の4つ。このほかにもシナリオや旅の進行用のイベントもあるがここでは割愛。
『もののけ退治』と『ミニゲーム』は後でまとめて語った方が説明しやすいので後回しとして、食材とおさい銭は早い話がアイテム入手のイベント、つづらは『無料ガチャ』的なアレである。前者は料理(後述)や移動に使用でき、後者ならば新しい神衣(衣装)を入手できる。
サイコロを振れる回数にはこれといった制限はなく、何度でも好きなだけ振ることができる。…がしかし、やはりかなり離れた県に向かおうとすると骨が折れることは避けられない。隣県程度ならまぁどうとでもなるだろうが、日本を縦断するレベルの移動ともなるとリアルで1時間くらいかかることもザラ。
というわけで今作では移動を簡略化するためのシステムが存在する。サイコロを振る際に『おさい銭』…つまりはゲーム内マネーを使用することで都道府県を指定してワープ移動したり、なんなら駅ごと指定してワープもできる。駅指定のワープはより高価な『宝玉』の消費が必須であるが、都道府県指定なら僅か1000枚のおさい銭で使用できる。なお当初は単純な地方指定移動もできたが色々あって抹消。
(北海道を除く)大半の都府県は10分程度サイコロを振れば端から端まで回れるので、ぶっちゃけ駅指定移動はほぼ使用機会がないと言っていい。サイコロの出目もおさい銭50枚で任意の数字に固定できるので、すごろくとは思えないほど移動周りは快適である。
さて、すごろく中に駅マスに止まることで『ツクモとの会話』がスタート。この『ツクモとの交流』こそが今作が最もプッシュしていたポイントでもある。あらすじでも軽く触れた通り、ツクモはまだ生まれたばかりの見習いツクモガミ、立派なめがみを目指す彼女はプレイヤーの持つ知識を色々と知ろうとする。この会話イベントではツクモからの問いかけや質問に対し、テキストを入力して応対していくこととなる。
ツクモはプレイヤーが入力したテキスト(ことば)を覚え、以降の会話イベントではその言葉を用いて更なる会話を行う。その会話に対しプレイヤーがテキストで応対し…という繰り返しで、ツクモはどんどん言葉を、そして知識を身に着けていく。なお、プレイヤーが入力する以外にもシナリオ会話に出てきたワードを覚えることもある。
会話イベントの中には『〇〇(過去入力したテキスト)は好きか嫌いか』や『××(過去入力したテキスト)が得意なものは何か』といった特殊なものもあり、当然これらに対する解答も以降の会話で用いられることがある。
覚えさせた言葉は内部的にある程度カテゴリ分けが行われているらしく、明らかに意味の通らないような会話が発生することは稀。よってこういったコミュニケーションにありがちな『どう答えたらいいかわからない…』といった状況に陥ることは少ない。無論、適当に答えていた場合は別なので、ツクモの問いかけには真摯にしっかりと答えるべし。
(まぁシナリオで覚える言葉は結構ヘンテコな分類なのだが…『ヤマンバギャル(グループ名)』とか…)
ちなみに全ての会話がテキスト入力を挟むもの、というわけでもなく例えば単なる雑談だけの会話が起こることもあれば、髪型に関する話題(後述)だとか、特殊なモノではその駅の最寄りの名所や到達した県に対する話題なんてのも発生する。特定状況下で起こり得る専用会話のバリエーションの豊富さは過去の近いジャンルのゲームの中でも屈指だと言い切れる。
ツクモとの会話シーンはここ10年の作品でよく見られるLive2Dを採用。イラストとしか思えない立ち絵がヌルヌル動くアレのことだ。今作ではツクモとアマテラス(デフォルメ状態)がLive2Dでのアニメーションとなるが、コレがまた実に可愛らしい。独特なノリの会話に合わせてツクモとアマテラスがワチャワチャと動きながら会話する様には和むこと間違いなし。特にツクモが自分のほっぺをプニプニするモーションなんかはいつまで見ていても飽きない。
本作はゲーム全編を通し『ツクモのみフルボイス』という仕様になっているため、この会話イベントのツクモ(CV:伊藤彩沙)はフルボイスでプレイヤーに語り掛けてくれる。すると当然ながら『プレイヤーの入力したテキストにどうやってボイス対応を行っているのか』という疑問が生まれるワケだが、そこで出てくるのが本作の大きな特徴の一つともいえる『めがみスピークエンジン』である。
『めがみスピークエンジン』とはその名から察せられるように今作のために用意された合成音声システムである。一言でどういうものか説明させてもらうと、『テキストを元に自動的に合成音声を生成する』というもの。天下の東芝が開発に絡んでいることもあってか、このめがみスピークエンジンのクオリティは中々のモノ。ゲーム内での会話文は言わずもがな、プレイヤーが入力した単語であっても5~7文字以内であれば自然なイントネーションでのボイスを自動的に生成してくれる。まぁ『VOICEROID(ボイロ)』だとか『AquesTalk(所謂ゆっくりボイス)』みたいなものがゲーム内で動作し、自動的にフルボイス化してくれる…と言えばわかりやすいだろう。
ツクモに言葉を教えた際にはツクモ自身から『テキストの読み方』『イントネーション』等の確認が行われる。基本的に最初から最適と思しき読み方をしてくれるが、合成音声の常で長文や当て字には弱い。そういった時はプレイヤーがその辺りを細かく指定することもできる。指定といってもPC向け合成音声ソフトのような細かい調整をするわけではなく、単純に選択肢を選んでいくor読み仮名を入力するだけなので、かなりユーザーフレンドリーである。
…ところでカプコンはめがみスピークエンジンを利用し、ツクモを声優事務所の「響」に所属させ『音声合成声優』として売り出そうとしていたりもしたのだが、結論から言うとコレは上手くいかなかった。『過去にKONAMIがやらかした前例があったのに何故似たようなムーブを…?』などと思わないでもないが、まぁ同時期に任天堂も近いことをやってた(結果は察しろ)ので、ゲーム業界が持つ一種のロマンみたいなものなのかも…。
(KONAMIは『アイドル』、任天堂とカプコンは『声優』として売り出してた点が主な違い)
少し話は逸れるが、ここでツクモとの交流要素についても触れておこう。ツクモとの交流は何も駅マスでの会話イベントだけが全てではない。中にはミニゲームで遊んだり、料理を食べさせたり、一緒に旅行したりもできる。
ミニゲームは『かえるさんがころんだ』『カルタとり』『時は点なりハイあんどロー』の3種類、止まったマスによってどのミニゲームが遊べるかが変化する。難易度はらくらく/そこそこ/きつきつの3段階だが、ぶっちゃけ最高難易度でもかなり簡単なので肩の力を抜いてプレイできる。
『カエル』は名前からなんとなくわかるだろうが、要は『だるまさんがころんだ』である。タッチペンの連打と長押しを駆使してツクモに近付いていく。通常の『だるまさんがころんだ』の部分が『〇〇が××』といったように過去教えたことばになっているのが特徴。〇〇と××に入ることばは完全ランダムなので、カオスな文章が生成されるのがデフォ。でも時々意味が通るモノが誕生することがあるのが面白い。ちなみにテキストを読む速度はランダムで早くなったり遅くなったりするので『めっちゃ長いことばを覚えさせれば楽勝じゃん!』なんてことにはならない。
『カルタ』…もまぁ読んで字の如く。過去に覚えさせたことばがカルタになって並べられるので、読まれ次第素早く取るべし。高難易度になるにつれてカルタの枚数が増えるほか、ツクモの反応速度も上がるので中々一筋縄ではいかない。文章そのものではなく文字数を覚えておくのがコツ。ちなみに読み札を読むのはツクモだが、読んでる最中でも普通に取りに来るので『読み仮名めっちゃ長くしたら簡単じゃん!』ということには(以下略)
『ハイロー』はトランプのハイアンドローと近い内容。ツクモとプレイヤーにことば(過去に覚えさせたもの)が書かれたカードが配られるので、そのカードの文字数がツクモより大きいか小さいか、それとも同じであるかを当てる。自分のカードは全て見えるが、ツクモのカードは頭文字しか見えない。そのうえでツクモからそのことばに関するヒントが貰えるので、そこから文字数を予想する必要がある。高難易度になるとカードの枚数が最大3枚まで増えるのでよりややこしくなる。頭文字しか見えない+出題範囲は全てのことばからランダムというシステムの都合上、覚えさせたことばが増えると露骨に難易度が上がるので要注意。
ミニゲームが終了すると、その成績に応じた松竹梅草の4段階評価がなされ、その結果に応じたツクモの能力値が上昇する。ちなみに能力値は『こんじょう』『うつくしさ』『つよさ』『やさしさ』『かしこさ』の5項目で、今作の目的たる神格試験の合格にはコレを上昇させることが必要になる。
今作はミニゲーム以外でのパラメータ上昇量がそこまで多くないのもあって、パラメータ上げは専らミニゲーム頼りになることだろう。なお今作はツクモを育成するゲームだが、ミニゲームの評価基準はツクモ側ではなくプレイヤー側のスコアなので手加減無用。でも優勢時のツクモがカワイイのでちょっとだけ手加減しちゃう。
ミニゲームで成長できる項目は固定。『カエル』ならこんじょう、『カルタ』ならつよさ/うつくしさ、『ハイロー』ならかしこさ/やさしさが上昇する。なおカエルは1項目だけだからか上昇量が他の倍なのでミニゲーム中心で育成するとこんじょうが突出しやすい。コレ自体は神格試験には無関係だが後述の髪型イベントでちょっとばかし影響がある。
ミニゲームという扱いではないが、特定のマスに止まった時に発生する『もののけ退治』も実質的なミニゲームのような内容。こちらではツクモともののけが相対し、交互に攻撃しあう。ターン開始時には『ほんものタッチ(バラバラにされた言葉から正解を選ぶ)』『たてよこコトバサーチ(散りばめられた文字列からことばを探す)』『ことだまターゲット(タイミングよくタッチ)』といったワードパズル的なモノをプレイし、ソレを成功させることでツクモが攻撃できるといったシステム。どのパズルでもツクモがヒントを出したりしてくれるので攻略は簡単、なのであんまり気張らずにプレイすべし。
もののけには13段階で強さが設定されており、事前に強さを見て戦わずに逃げるのも一つの手。後述の神衣によって多少の補正はかかるが、大体7か8を越えると危険域。その分報酬も豪華だし運が良ければ勝てることもあるのでダメ元で突貫してみるのもまぁ悪くはない。負けたとしてもペナルティらしいペナルティもないしね。そもそもダメな時は全問正解してても普通にヤラレるし…。
今作は基本的に2Dの立ち絵を用いたゲームであるが、ミニゲームともののけ退治、それから後述の神格試験に限り3Dモデルを使用した作りとなっている。この3Dモデルはこれらのタイミングでしか見ることはできないものなのだが、この3Dモデルの可愛らしさはとにかく目を見張るものがある。Live2Dで動作する2D立ち絵とも遜色ないレベルで多彩な表情や動きを見せてくれるため、ミニゲームのモチベが尽きづらい。まぁなにが言いたいかというと『ツクモかわいい』である。何を今更と思うかもしれないが、この『ツクモの可愛らしさ』こそが今作の最も重要なポイントなのだ。
もののけを退治したり特定のマスに止まったりすると食材を入手でき、ソレを消費して料理を作ることができる。この時の料理のバリエーションはトンデモナイほど幅広く、その数なんと130種類以上。『カレーライス』や『マカロニグラタン』のように一般的な料理だけでなく、こういったゲームだからこそできる『おっきりこみ』『しもつかれ』等といったご当地料理(郷土料理)まで網羅されている…というか料理については郷土料理の方が本番であり、全ての都道府県の郷土料理が一県あたり3種類用意されている。また、郷土料理は各県でのみ手に入る専用の食材が必要になるとはいえ、通常料理に比べると作成コストが非常に低く、ゲーム攻略的にもかなり便利なものとなっている。
料理を食べたツクモはパラメータが上昇するほか、その料理の解説をしてくれる。この時のツクモは何故か尋常でないレベルで語彙力が堪能になっており、本職のレポーター顔負けの食レポを見ることができる。食レポの内容はもちろん料理ごとに専用のモノが用意されているうえ、一つの料理あたりに複数のパターンが存在し、中には選択肢によって内容が分岐するケースもある。
料理のグラフィックにやたら力が入っているのも特徴であり、全ての料理に専用のグラフィックが存在。一口で終わるような料理以外は『途中まで食べた状態』のグラフィックもある。前述した食レポと併せて完全に飯テロの域に入っている要素であり、お腹が空いている時に本作の料理作りを実行するのは自殺行為である。今作で最も印象に残った箇所として『ツクモの食レポ』を挙げるプレイヤーは多いだろう。
交流要素ではアプデで追加された『旅モード』も見逃せない。メニュー画面から旅行プランを決定すれば、プランにある3つの駅を回る旅の始まりである。それぞれの駅に止まると近辺の名所に関係する専用の会話が流れ、旅の最後には名所(実写)をバックにツクモの写真を撮ることができる。撮った写真は自由にフレームやシールなどでデコったものをSDカードに保存可能。コレはゲーム内からでも確認でき、その写真についての思い出話をツクモから聞くこともできる。
(SDカードから該当の写真データを消すと思い出話が聞けなくなるので注意)
旅プランは言わずもがな全ての県に用意されており、こちらも140種類と非常に多い。パラメータ的な上昇量は通常の会話イベントと大差ないためゲームの攻略的には一切触れなくても問題ない要素だが、彼女との思い出作りにはお誂え向きなモードである。
旅、といえば本作はなんとリアル…つまり『現実側での旅』をゲーム内にフィードバックするシステムが存在した点も触れないわけにはいかないだろう。その名もなんと『交通系ICカード連動』である!そう、冒頭に話したNew3DSのNFCリーダー機能の話はここに繋がるのだ!!コレはSuica・PASMOなどといった交通系ICカードを現実で利用し、ソレを本作で読みこませることでソレに因んだ会話がゲーム内で発生する…というもの。単純な電車利用などのほかに、電子マネーを利用した商品の決済なども対象。コレに併せて『特定の店舗で利用した交通系ICカードを読みこませることで専用の衣装を入手!』といったリアル連動イベントも行われた。
プラットフォーマーたる任天堂ですらamiibo以上の活用を行っていなかったNew3DSのNFC機能、その中でも特にニッチな交通系ICカード対応をここまで活用していた作品は3DSでは今作をおいて他になかったことだろう。この試みを2016年時点で実行にまで移していた点は紛れもなく賞賛すべき点である。本作はまだ見ぬ新たなNFC対応ゲームの未来のため切り込み役を担った作品なのだ。
コミュニケーションを主体としたゲームには付き物の着せ替え機能はもちろん今作にも搭載。ツクモに様々な神衣(衣装)を着せてコーディネートすることができる。いつでもコーディネート可能な項目は『神衣(要は服装)』『あたま』『アクセサリー』『ヘアカラー』『アイカラー』の5項目、前半3つは事前に入手したモノのみ使用可能で、それぞれの衣装に応じたパラメータに補正がかかるほか、もののけ退治に用いられる『属性(相性がいいと倒しやすい)』が付与される。また『ご利益』…要は特殊効果的なものが衣装ごとに用意されている。
パラメータの不足を補うためにコーデするか、それとも性能度外視でひたすら可愛らしさを追及したコーデにするかは人それぞれ。ご利益同士のシナジーを狙ったコーデというのもアリ。神衣は着せた際に専用のボイスが流れるほか、モノによっては会話イベントで専用の会話が流れることもある。いつもとは違った雰囲気のツクモを見られるため、会話目当てで着てみるのもいい。個人的には『藤鼠色の衣装(サイコロ偶数時におさい銭入手)』+『インテリメガネ(サイコロが偶数しか出なくなる)』の組み合わせがオススメ。またヘアカラーとアイカラーについては最初から全種類解禁済み、こちらは能力補正やご利益が一切存在しないので完全に見た目重視でOK。
ツクモの髪型も変更することができる。髪型はプレイヤーが任意で変更することはできず、ツクモから『髪型を変えたい』という話題を切り出された時に限り変更可能。髪の長さはプレイヤーの要望を聞いてくれるが、ヘアスタイルのパターンは『その時点で最も高いパラメータ』に応じたものから選ばれる。条件次第ではそこから『〇〇っぽい感じ』という指定もできる。変更前と変更後の髪型が同じパターンから選出される場合は、ソレをアレンジした少し違う髪型になる。
髪型は細かなバリエーション違いも含めると脅威の266種類!ツクモと旅を続けていれば、いつかはお気に入りの髪型に出会えるはず。ちなみに一度変更しても直後の会話で以前のモノor初期の髪型に戻すこともできるので、気軽に変更してしまって問題ない。ちなみにパターンさえ理解してしまえば(バリエーション違いまで含めて指定するのは厳しいが)狙った髪型にするのも不可能ではない。
(神衣の補正で特定のパラメータのみ突出させる)
神衣はシナリオ進行で手に入ることもあるが、基本的な入手手段はつづら…つまるところガチャである。本作では『宝玉』というゲーム内通貨を消費することで神衣を増やすことができる。つづらには高級つづらと通常つづら(あとイベント用の限定つづら)があり、通常のつづらはゲーム内で特定のマスに止まると無償で開けられる。ただしこちらで手に入るのは『あたま』と『アクセサリー』のみ、本格的な衣装の入手には有償の高級つづらを開ける必要がある。
ゲーム内通貨についてもここで説明しておこう。本作の通貨は『おさい銭』と『宝玉』の二種類。『宝玉』が世間一般のF2Pゲームで言われるところの『石』と呼ばれる概念であり、ゲーム内での入手手段は課金or後述のおさい銭との交換のみ。ぶっちゃけ用途は高級つづらくらいしかないため、ゲーム中で宝玉が不足するようなケースはほぼほぼ存在しない。
『おさい銭』は先にも挙げたように移動の簡略化のために用いられる。宝玉よりも低級なゲーム内マネーという扱いであり、『特定のマスに止まる』『もののけを退治する』『ストーリーを進行する』等、様々な入手手段が用意されている。ぶっちゃけ消費量よりも入手量の方が多いので、こちらもまた不足するようなケースはほぼ起こり得ない。参考までに県指定のワープが1000枚、出目指定が50枚の消費だったが、特定のマスに止まった時に入手できるおさい銭は1回あたりランダムで30枚~100枚、ストーリーでは進行状況にもよるが1000枚前後が手に入る。
旅を彩る魅力的な楽曲の数々も見逃せない。テーマがテーマ故に落ち着いた優しい曲調の物が多めだが、中には軽快なノリのものや、感動的なムードを盛り上げてくれるメロディアスな楽曲もある。大抵ツクモ側の攻撃と同時に丁度良くサビに入るもののけ退治のBGM『ノリノリバトル』は他所でもほんの少し話題になったりしたので知っている人も多いかも。ほかに印象に残りやすいのは神格試験の『ヘブンズトライアル』、シナリオ終盤のとあるイベントで流れる『ツクモキューンのテーマ part.2』あたりか。
いずれも作曲を担当しているのは元KONAMIの北川保昌氏。カプコン関係だと本作以外では後に『大逆転裁判』シリーズ等の楽曲を手掛ることとなるサウンドクリエイターである。我がブログの過去記事でいうならば『パワプロクンポケット3』の作曲家でもある。
(中央下がコレクターズパッケージ同梱のサントラ、ほか5つは単品販売版のキャラソンCD)
本作のBGMを収録したサントラはコレクターズパッケージに同梱される形でのリリースとなり、単品での販売は行われなかった、とはいえコレクターズパッケージ自体は通販等で探せば普通に見つかるので、今からでも入手が容易なのは幸いである。
ただしそのリリースのタイミングからもわかるように『旅モード』『ヘブンズトライアル/ヘブンズボイシーズ(ムナカタ三女神ver)』『神格77段時のイベント曲』といった後のアプデで追加されたBGMは未収録。全曲を網羅したサントラが発売されることはとうとうなかった。これらも初期曲とは負けず劣らずの良曲揃いなので実に勿体ない。特にムナカタ三女神に関係するBGMはストーリーを完遂+一部イベントを消化すると聴けなくなるため猶更。
通常のBGMとは別にめがみ達が歌うキャラソンも存在し、こちらは七柱のめがみ様+アマテラス+ツクモの物のほか、メインテーマ(歌はツクモ)の『めがみめぐり』、(アプデ前時点での)全員歌唱の『ファイファイハイテンション!』の11曲。これらはDLCとして配信され、すごろく中にフルコーラスで流すことができた。キャラソンは2~3名がセットのシングルCDとして4種類販売、インスト版とボイスドラマも収録されている。後に全キャラソンを収録した上でリアルイベントのDVD&公式連載漫画『4コマめぐり』の単行本を同梱した決定版も発売されたが、こちらにはボイスドラマとインスト版が収録されてない点は注意。
(また登場時期の都合でムナカタ三女神はキャラソンが存在しない)
さて、長くなってしまったが今作の目標は『神格試験に挑み、合格すること』。神格試験を受けるためには『お供え物』が必要になるので、まずマップのどこかに配置されたお供え物を取りに行く必要がある。お供え物を入手したら今度こそ神格試験…というワケにはいかず、今度は能力アップを目的としたアマテラスからの『おしごと』を3回達成しなくてはならない。上記を終え、担当めがみの場所(これまたランダム)に到達することで、初めて神格試験に挑むことができる。
神格試験ではツクモが頑張っている姿を『たてよこコトバサーチ』で応援することになる…が、この応援はあくまで最終評価に多少の補正を与える程度、合格できるか否かは殆どがツクモ自身のそれまでの成長に懸かっている。彼女の頑張りをその目に焼き付けるべし。神格試験の最終評価が一定以上であれば合格となり、ツクモの神格が1段階上昇、能力値が再度リセットされ、次の神格試験に向けて出発することになる。
つまり今作は『お供え物を取りに行く』→『特殊なおしごと3回』→『神格試験』を1セットとして、コレをひたすら繰り返していくゲームとなる。『神格試験への出発時』と『お供え物入手時』、『神格試験合格時』では担当めがみとアマテラス、そしてツクモを交えた会話シーンが挿入、合格時の会話ではなんだかんだで一件落着的な終わり方を見せるため、この1セットが1つの物語として作られている。
(ただし特定の神格では後味の悪い終わり方もある)
配信当初の神格上限は50段、神格50段を迎えた際に一応の結末を迎えることとなりひとまずのエンディングが流れる。その後のアプデにて神格の上限が80段まで引き延ばされ、51~80段ではムナカタ三女神を中心に描かれる新章兼本編のアフターストーリーがスタートする。神格80段を迎えると2度目のエンディング、そこから先は神格が上昇しなくなる(=ストーリーが完全に終了する)。
アマテラスオオミカミ(CV:尾崎由香)
アメノウズメ(CV:佐々木未来)
ソトオリヒメ(CV:大塚紗英)
トヨタマヒメ(CV:上田麗奈)
コノハナサクヤヒメ(CV:鈴木愛奈)
イシコリドメ(CV:大亀あすか)
ククリヒメ(CV:今村彩夏)
アメノサグメ(CV:千菅春香)
タキツヒメ(CV:松井恵理子)
イチキシマヒメ(CV:山口立花子)
オキツシマヒメ(CV:近藤玲奈)
ツクモ以外にシナリオに登場するめがみたちは上記の11名。いずれも共通して極めてキャラが濃い。作中で最も出番の多いアマテラスは言わずもがな、信者を獲得するという意味合いでは近いものだとしてアイドルになったコノハナサクヤヒメや、なにをどうしたか『川柳(歌)』から飛躍してロックシンガーと化したソトオリヒメなど、いい意味で現代かぶれした日本神話のめがみたちが登場する。中でも毎回シナリオの重要な局面で絡んでくるアメノサグメ、ナチュラルにトンデモなトラブルを巻き起こすククリヒメあたりは特に印象に残りやすいか。アプデで追加されたムナカタ三女神も神格51段以降は出ずっぱりになるので、それまでの8名とも負けず劣らずのインパクトを残してくれる。
シナリオではヌシ様・ツクモ・アマテラス、それからめがみ達を交えたほんわかとしたノリで進んでいく。基本は前述したように1話完結型の漫画やアニメのような展開となっているが、一定の段を越えたあたりから少しずつ『ツクモが目指しているめがみの姿』や『めがみとしての在り方』等がフォーカスされるようになっていき、一件落着で終わらない話が出てくるようになる。またソレに合わせて先行きが見えなくなるなどシナリオもややシリアス寄りにシフトしていく。
ツクモを中心とした一連の物語は配信当初における神格上限であった50段目にてひとまずの完結を迎えることになるわけだが、そこに行きつくまでの描写はかなり見どころが多い。ツクモの成長も作中で何度も描かれ、プレイヤーにとっても『めがみめぐり』という旅の終点が朧げながら見えてくるため、そのあたりから本作特有の『寂しさ』のようなものが感じられるようになる。
『終わりが近付くことによる寂しさ』というのは本作に限らずいかなる創作作品においても存在するものである。しかしながら、本作に対し抱くことになる『寂しさ』とは一般的な作品に対するソレと少々異なるものである点についてはハッキリと触れておきたい。先にも触れたが『めがみめぐり』というゲームの主軸に据えられているのは『プレイヤーとツクモの交流』である。生まれたてでまだ何も知らないツクモに対し、プレイヤー(とアマテラス)は色々な言葉を、知識を、文化を教えていく。素直なツクモはそれらをしっかりと覚え、またそれらの知識を元にプレイヤーからまた新たな知識を得るため問いかける。
ツクモの問いかけに対する答えは、それこそヌシ様の数だけ存在し、良くも悪くもツクモが覚えられる知識はヌシ様の偏りの影響を受ける。始めはまっさらだったツクモが『ヌシ様にとってのオンリーワンなツクモ』となるまでに、そう時間はかからないだろう。やがてそんなツクモの姿にさながら『親心』に近い感情を抱くことになる。まるで手のかかる娘のようだったツクモが自らの意思で道を選び、そしてプレイヤーの手から離れていく…ソレこそが本作が持つ『寂しさ』の正体である。ツクモの成長を心から喜び、祝いたい、でも今のままの旅路が続いてほしい…そういった感傷を『めがみめぐり』という作品はプレイヤーに抱かせてくるのだ。
ところで本作の問題点も一応ハッキリ書いておく。なんというか本作、良くも悪くもやることが極めてシンプルゆえに『隠しきれない単調さ』が常に見え隠れしてしまっているのだ。交流要素やICカード連動など注目すべき要素は確かにありはするのだが、おそらく最もプレイすることになるすごろくパートがひっじょーに地味かつ地道なものなので、何度も何度もやり続けていくうちに段々と『飽き』が来てしまうのだ。
事実、我は本作の80段EDに辿り着くまでの間に幾度となく放置期間を挟み、実際に80段に到達したのは該当のアプデからかなり経過してからのことであった。初期はスムーズに侵攻する反面、中盤あたりから露骨に神格試験の位置が遠くなったり、パラメータのノルマが厳しくなってきたりするのもそれを助長させる。
結果的に本作は『極めて単調なすごろくパート』を『ツクモがカワイイ!!』というシンプルな感情に突き動かされる形でなんとか維持されながら進行していく状況が殆どであり、つまるところ本作は徹底して『ツクモの可愛さに依存したゲーム』であり、ツクモとの交流orツクモ自身を魅力として感じられなければ本作そのものが苦行になってしまう可能性すらもあるのだ。その点でいえばかなり人を選ぶ作品だったといえるかもしれない。
肝心のゲーム部分が単調であることは否めない。だがそれはそれとして先鋭的なシステムや魅力的な世界観など、光る物があったのは紛れもなく事実。何よりもF2PゲームでありながらF2Pにありがちな『型』をできうる限り撤廃し、他所の二番煎じ/二匹目の土壌を狙わない、正真正銘の全く新しいF2Pゲームを作ろうというその精神を高く評価したいと我は感じている。
敢え無くサービスを終了してしまった本作だが、それまでの4年という間に本作は多くのプレイヤーの心を掴めていたという事は間違いなかろう。ソレは公式Twitterが沈黙してから数年越しに動いた(ネットサービス不調のお詫びツイート)際、速攻で反応していたヌシ様たちが何人も見受けられたことからも窺える。サービスが終了した今であっても『めがみめぐり』の続編ないしはその系譜たりうる作品の復活を待ち望むヌシ様はおそらく我以外にもいるハズだ。
ところで本作のキモの一つともいえた『交通系ICカードとの連動』についての余談をひとつ。実はNFC自体は現行機たるNintendoSwitchでも元々対応していたのだが、2022年に発表されたとあるゲームにて交通系ICカードとの連動が採用されたことから、本当に一瞬だけ本作のことが話題に上がるという一幕があったりしたり。
そんなこともあったためか、本作を現行機種に移植してほしいという声は少ないながらもまだ一定数は存在する。だが現状の事実は『Switchで交通系ICカードを使用できる』というのみでそれ以上でもそれ以下でもなく、まだまだ『めがみめぐり』の復活への望みはかなり薄いと考えられる。…しかし、それでも待ち望んでいればいつかきっと奇跡は起こる。ツクモと新たな世界で旅ができる…そんな日が来るのをただただ祈っている。それまではNew3DSで引き続きツクモとの旅路を続けることにするのである。
12月登場!
— PlayTEPPEN_ASIA (@PlayTEPPEN_ASIA) 2023年11月28日
「THE BEAUTIFUL 8」
追加カード先行公開🧐
【ツクモ】
プレイ時:空いているランダムな
自分の枠1つを10秒間封鎖
封鎖が解けた時:
ランダムな味方ユニット1体に+1/+1#TEPPEN#めがみめぐり#開発中のものです pic.twitter.com/Md1Klo1CPw
…最後に、本記事を書いている真っ最中にカプコン×ガンホーのDCG『TEPPEN』にて『めがみめぐり』の楽曲とツクモのカードが実装されることが発表というあまりにも想定外極まりないサプライズイベントが発生した。どちらも同じくカプコンが関わるゲームであるため実装そのものは不思議ではないのだが、コレはつまり『カプコン自身がめがみめぐりの存在を忘れていない/なかったことにしていない』ことを示している。もしかしたら、『めがみめぐり』の復活の日は…ツクモと新たなプラットフォームで旅ができるその機会は、そう遠くないのかもしれない…。
(あくまで希望的観測です)