インティ・クリエイツとはかつてカプコンの元で『ロックマンゼロ』『ロックマンゼクス』をはじめ、良質な2Dアクションを多数開発したことでその名を轟かせ、今なお数多のメーカーの、そして自社パブリッシングの作品を世に届けている超有力デベロッパーである。
ルーツがカプコンにあるため、やはりインティ・クリエイツの真骨頂はアクションゲームにある。今も昔もインティ製のアクションゲームはその手触りの良さや絶妙な難易度調整で数多くのゲーマーの心を掴んでおり、インティのアクションゲームであれば、ソレがシリーズものであろうとも、完全新規のIPであろうとも購入するという『インティ・クリエイツそのもののファン』は少なくない。インティ初の自社パブリッシング(=従来のシリーズ作のネームバリューに頼れない)タイトルである『蒼き雷霆 ガンヴォルト』が1作目の時点でヒットしていたことからもソレは伺える。そしてそれら全てのタイトルで一定以上の評価を獲得しているあたり、やはりインティ・クリエイツはアクションゲームにおいてトップクラスのメーカーだと言っていいだろう。
今回の記事で語るタイトルも、そんなインティ・クリエイツが手掛けるアクションゲーム、それも今年リリースされたばかりで、この記事を書いている時点におけるインティ製2Dアクションの最新作でもある。…まぁインティは既に『幻日のヨハネ -BLAZE in the DEEPBLUE-』『九魂の久遠』という二つの新作2Dアクションを発表しているケドも。
(前者は11月発売予定)
というわけで今宵の主役は『Grim Guardians: Demon Purge(グリム・ガーディアンズ デーモンパージ)』!インティが送る新作アクションである!プラットフォームはSwitch/PS4/PS5/One/XSX/PC、まぁ現行機種全部である。先んじてDL版がリリース、パッケージ版は1ヵ月遅れで発売された。なおパッケージ版が存在するのはSwich版とPS5版のみ。パッケージの限定版には特典としてサントラなどが付属している。今回はPS5限定版をチョイスした。
本作は悪魔ハンターである2人の少女が魔城と化した学校へと挑むゴシックホラー風味な2Dアクションゲームである。…魔城という響きや2Dアクション、ゴシックホラーといった要素からどことなーくメトロイドヴァニアの後半部分…というか『悪魔城ドラキュラ』的な雰囲気が感じられるが、あくまで近い雰囲気を感じるだけで遊んでみると完全に別物である。
ちなみにインティ・クリエイツは本作以前にメトロイドヴァニアの歴史を語る上での最重要人物ともいえるIGA氏の手掛ける『Bloodstained: Ritual of the Night』…のスピンオフ『Bloodstained: Curse of the Moon』『Bloodstained: Curse of the Moon 2』の開発も手掛けていた。…急にハナシが脱線したように思えるが、この事前知識があった方が今後の説明がやりやすいのだ。
さて、本作の主人公となる悪魔ハンター姉妹、その名は『神園しのぶ(CV:上間江望)』と『神園真夜(CV:橋本ちなみ)』!…どっかで聞き覚えのある名前?それもそのはず、なんてったってこの2人はインティを代表するガンシュー…もとい眼シューであるところの『ぎゃる☆がん』、その2作目『ぎゃる☆がん だぶるぴーす』におけるメインヒロインなのだから!!
というわけで本作はアクションゲームでこそあるが、世界観は『ぎゃる☆がん』シリーズの直接の延長であり、いわば『ぎゃる☆がん』のスピンオフなのである。ほら、タイトルだって『Grim Guardians: Demon Purge』で『Gal Gun Double Peace(ぎゃる☆がん だぶるぴーす)』と同じく『GGDP』って略せるようになってるでしょ?
…まぁ『んなもんわかるわけねーだろ!』というのはごもっとも。我もタイトルのことは完全クリアしてから気付いたレベルである。ちなみに海外版のタイトルは『Gal Guardians: Demon Purge』…日本風に言えば『ぎゃる☆がーでぃあんず』となっていて、日本よりは『ぎゃる☆がんのスピンオフ』だと伝わりやすくなっていたり。
さてさて、前座もこのくらいにして、ここからゲームシステムについて触れていくとしよう。本作はゲームジャンル的にはステージクリア型のアクションゲームである。その雰囲気からどことなく探索型アクション(メトロイドヴァニア)の香りを漂わせているが、実際のゲームシステムは紛れもなく面クリア型のソレである。
ゲーム中、プレイヤーは神園姉妹を適宜交代しながらステージを進んでいく。交代は1ボタン(R2/L2)で可能でその場でもう一方に交代する。交代の瞬間ゲーム内の時間は停止するので一安心、まぁ言ってしまえば『悪魔城伝説』や『Bloodstained: Curse of the Moon(以後CotMと表記)』と同じシステムである。
二人の体力は個別に管理されており、『片方のHPが尽きかけているので交代してその場を凌ぐ』といったことも可能。HPがゼロになると使用していたキャラがダウン、もう一方のキャラだけになった状態でチェックポイントから再スタートする。二人ともダウンしてしまった場合は完全にミスとなる。これもまた『CotM』と同じシステムである。
『CotM』だと一度ダウンした味方はリトライ(残機消費)かステージクリアまで復活しなかったが、こちらではダウンした味方がその地点に倒れっぱなしになっており、もう一方のキャラでその地点に到達できれば『姉妹レスキュー』を行いそのキャラを蘇生することができる。この姉妹レスキューは何度でも可能であるため、『片方のキャラだけで死亡地点に辿り着ける程度の腕前』さえあれば、残機を消費せずに何度も再チャレンジを行うことができるのが特徴である。
しのぶと真夜はそれぞれ使用できるアクションがまるっきり異なる。
しのぶは退魔サブマシンガンを用いた遠距離攻撃が主体。遠くから一方的に攻撃が可能であるが単発火力は控えめ、かつ弾切れの概念があり、定期的にリロードを行わないと攻撃ができなくなってしまう。最初こそ扱いづらいものの、中盤以降は強化されて一気に化けるのでご安心あれ。ちなみにリロードの操作は下入力2回押し、これまた同社の2Dアクション『蒼き雷霆 ガンヴォルト』シリーズで採用されているものである。
真夜は折り紙(といっても武器の形をしているが)を使った近接攻撃が主体。高火力かつスピーディに立ち回れるが、必然的に敵に近づく必要があるため被弾する危険性が高い。中盤以降はチャージ攻撃も使えるようになる。どこぞの伝説の赤きレプリロイドや白き鋼鉄のXよろしくぶった切った敵は真っ二つになる。その辺りの作品を過去遊んでいたのであれば、すんなり手に馴染むだろう。
基本アクションは上記の通りだが、そこに加えて特殊攻撃…もといサブウェポンのシステムが本作には存在する。サブウェポンは使用時に一定量WEAPONポイントを消費する。WEAPONポイントとは要は悪魔城におけるハート的なヤツ。こちらは姉妹で共用なので使用は計画的に。
『悪魔城』や『CotM』のソレとは異なり、サブウェポンはアイテムではなく切替方式。つまり『ロックマン』シリーズの特殊武器みたいな扱いで一度入手できれば以後はいつでも使用できるようになる。それもあってか用途も純粋な攻撃で使えるモノ以外に『新たな足場を作る』『落下速度を抑える』『特定のブロックを破壊できる』といったギミック突破/移動補助に転用できるモノが多い。
サブウェポンはしのぶと真夜でそれぞれ個別。ステージボスを倒すたびに一つずつ新たなモノが入手できる。しのぶ用と真夜用がセットで手に入るので、一度に2つずつ新アクションが解禁されるのが嬉しいところ。最初こそ使えるのは各1つずつだけであるが、最終的には各6つ、合計12種類ものサブウェポンを使えるようになる。
時間経過やアイテム回収により溜まっていくパージゲージというものもあり、これがMAXの状態であれば一度だけ悪魔ハンターの奥義を発動できる。発動から攻撃までには若干のタイムラグがあるため、一部のボスなど動き回る対象に当てるには少々慣れが必要だが、その威力は極めて強力。これだけでボスの体力が一気に消し飛ぶこともザラなので爽快感が実に素晴らしい。また奥義の余波によるものなのか、一瞬だけ魔城になる前の学校の風景が見えるのもいい。こちらは本家『ぎゃる☆がん』のプレイヤーならば『あー、見覚えあるわココ』とニヤリとできる小ネタである。
本作は先に挙げたようにステージクリア型のアクションゲームとなっているが、そのステージの数は全部で7つ。初めてプレイした時はこの7つのステージを順番に攻略していく。
7面をクリアすれば晴れてゲームクリア…と見せかけて、パケ絵にもいる謎の人物(CV:原由実)が登場、ここでようやくオープニングが流れて1周目のラストからそのまま続く2周目がスタート。2周目では拠点となるエリアが追加され、そこから任意のステージを選択して突入できるようになる。2周目では難易度の上がった各ステージをもう一度プレイすることになるのだが、本作はむしろここからが本番である。…ところで周回関係のシステムもほぼそのまんま『CotM』と同じである。
(別モード扱いではなくセーブデータも引き継がれる点のみが違う)
本作のゲーム部分における魅力はこの2周目の自由度の高さにある。本作のステージは面クリア型のアクションゲームにしては広く、またルートも細かく分かれている。特定のサブウェポンがないと入れないエリアなんてのもあり、1周目では『見えているけど進み方がわからない』『今持っているサブウェポンではこの先に進めない』…となる場面がそこそこ多い。そこで出てくるのがこの2周目。
2周目といえど物語は1周目のその後であるため、当然1周目で手に入れたサブウェポンはそのまま使用できる。つまり、1周目では諦めざるを得なかった要素を回収したり、1周目では発見できなかった新たなルートを開拓できたりするわけなのだ。隠しルートの中にはくまなく探索しないと気付けないものも多いためやりごたえもある。ちなみにモチロン一度クリアしたステージに再度訪れることもできるので、一発で全要素の回収ができなくても問題はない。
グリムガーディアンズをプレイ中。元々面白かったがサブウェポンの一つであるグラッピングフックで悪さができることに気付いてからは一気に楽しさが爆発したのである。フック刺せる壁さえあればどこへだって無理矢理行ける。正攻法なぞ知ったことか!#GrimGuardians #グリムガーディアンズ pic.twitter.com/AcjXm6tRBT
— 物好きな自称ゲーマー (@monozukigamer) 2023年5月1日
2周目の攻略で特にイチオシなのは『グラッピングフック』というサブウェポンで、なんとコレは無強化状態でも壁or天井とテクニックさえあればどこまでも登っていける極めて無法な性能を誇る。結局のところ各ステージでは最後にボスを倒すことになるため、最終的に合流する地点は同じなのだが、そこに行きつくまでのルートや攻略法が完全に自由というのが本作の面白さである。この楽しみ方は局所的ながら紛れもなく『探索型アクション』のソレであるといっていい。
とはいえ忘れてはならないのは本作が面クリア型アクションという点。確かにサブウェポンの活用でセクション単位ではスタイリッシュな動きや大胆なショートカットができたりもするが、ゲーム的な都合で分断されたエリアを越える…つまり探索型でよくあるシーケンスブレイク的な自由度はない。よって探索型アクション(メトロイドヴァニア)だけを期待して本作に手を出すのはあまりオススメしない。逆に『探索型も面クリア型も好き!』という人には本作がドンピシャな大当たりなことは保証する。
さて、そろそろ察してるかもだが本作のゲームシステムは『CotM』のものを踏襲している部分が極めて多い。巷ではその雰囲気からして『ぎゃる☆がんの悪魔城』といった扱われ方もされがちだが、その内容は悪魔城というよりも完全に『CotM』のソレである。…まぁCotMのルーツは悪魔城にあるんだがそれはさておき、本作と『CotM』はゲーム性や特徴が大体一致しており、むしろあっちにあったシステムを更に遊びやすく改良したのが本作である。よって本作はシリーズこそ『ぎゃる☆がん』の系譜であるが、ゲーム部分に限ってだけいえば『Bloodstained: Curse of the Moon 3』ともいうべき内容になっているのだ。それゆえ『CotM』を楽しんだプレイヤーならば本作のゲーム部分は確実に楽しめるであろう。
ここからはキャラについてである。最初に触れたように本作は『だぶるぴーす』にてメインヒロイン(つまりラスボス)を務めた神園姉妹が主人公となっている。本家では(そもそもジャンルが違うので仕方ないが)あちらの主人公に助けられてばかりだった2人であるが、本作ではついに悪魔ハンターとしての神園姉妹の闘いが描かれることになる。『まさかこんなに血みどろとは…』と衝撃を受けたプレイヤーも多かろう。
ほかのキャラたちも全員が本家『ぎゃる☆がん』シリーズからの出演。過去のぎゃる☆がんでは一般生徒こそ多くが作品を跨ぎ続投していたが、個別ルート持ちのヒロインとなると『無印』→『だぶるぴーす』で兎野さんとえころとぱたこ、『だぶるぴーす』→『2』で神園姉妹とくろなのみといった極一部のみの続投であった。さて、本作は『2』の続きなのだがどのヒロインが続投したのか?
神園姉妹のほかにはシナリオのメインキャラとして『ぎゃる☆がん』から野々宮かなめ(CV:三宅晴佳)、火吹晶(CV:内村史子)、兎野葵(CV:山本希望)が、『だぶるぴーす』からくろな(CV:藤田彩)が、そして『ぎゃる☆がん2』からは近藤ちる(CV:松田利冴)、玉前なな子(CV:谷口夢奈)、りーす(CV:木村千咲)が登場する。そう、本作は過去作では叶わなかったメインヒロイン同士の共演が成し遂げられた『ぎゃる☆がんメインヒロイン準オールスター』なのだ!
更に驚くことに本作には久時峰大(CV:照井悠希)…つまり『だぶるぴーす』の主人公であるホウダイまでもが登場する。本家では顔がハッキリと描かれずボイスも存在しない彼であったが、本作では普通にボイス付きで喋る。絶妙にコミカルながら決める時はしっかり決める性格は相変わらず。元々キャラが立っていたこともあり、プレイヤーの手を離れていてもちゃんと活躍しているのが嬉しいところ。
メインヒロイン勢での数少ない不在枠は無印の桜咲薫子とぱたこ、えころだけである。薫子先輩は『2』の時代だと既に卒業後なので出しづらかったのは理解できるが、(片方は元だが)天使であるえころとぱたこなら出せたんじゃないかと思わないでもなかったり。特にえころは『だぶるぴーす』だとくろなの対になるキャラだっただけに猶更。
また、過去作の主要人物では初代主人公の茂手杉天造(テンゾウ)も不在、まぁコレについては過去作の主人公を2人も出すと収拾がつかないことは容易に想像できるので仕方あるまい。どっちか出すなら神園姉妹と関わりの深いホウダイが適任だったのだろう。あと『2』の主人公も不在。こっちはそもそもデフォネームすら存在しないキャラなので納得はできる。
ところで魔城になってしまったとはいえ、本作の舞台は元々学校である。というわけで魔城と化した瞬間に校内にいたせいで閉じ込められてしまった一般生徒や教師たちも登場。その数実に32名!彼女たちを全て救出するのもまた悪魔ハンターの役目なのだ。
一般生徒&教師たちも全員が本家『ぎゃる☆がん』シリーズに登場した面々、言わずもがなドット絵や会話立ち絵は専用のモノになっている。救出すると拠点の一つである体育館に集合していき、一人一人と会話を行えるようになる。会話内容はメインシナリオが進むにつれて少しずつ変化していくので、ちょくちょく顔を出しておくべし。我は2周目クリア後に初めて体育館に入ったので悲しみを背負う羽目になりましたとさ。
本家の全キャラ登場…とまではいかなかったが、一般生徒では真っ先に話題に挙がるような気がする小杉ねね子(CV:野村真悠華)、♰黒薔薇の乙女♰ことトメさん黒澤乙女(CV:大倉紬)、シリーズを跨ぐ中で唯一留年してしまった柳田真冬(CV:小澤亜李)、皇神未来…じゃなくて謎が多い教師の倉敷きらら(CV:牟田実波)といった、ただでさえキャラが濃い中でもかなり印象的な人たちがチョイスされているため、本家をちょこっとでもプレイしたことのある人なら『あーキミか!無事だったか!』と嬉しく思えるハズ。本家が未プレイならばそれはそれで『なんだこの人!?』となるので楽しめる。ちなみに最初に遭遇するのが春野つぼみ(CV:椎名へきる)というお約束もちゃっかり踏襲されている。
本家『ぎゃる☆がん』だと(正気を失っていて)SakuraTalkくらいでしか見れなかった普段の彼女らの姿が垣間見えるのはファンとしては嬉しい点。魔城化という非常事態を前に困惑したり、何か役に立とうとしたりといった一面を見ることができる。ところで『だぶるぴーす』の記事からわかるかもしれませんが、ぎゃる☆がん一般生徒における我の推しはゲーム研究部部長の半場翠(CV:二ノ宮愛子)さんです。本作にも続投しており、見つけた時はホントに嬉しかったですね、ええ。
ちなみにメインシナリオに限らず作中のテキストはフルボイス。メインキャラはモチロンのこと、救出対象である一般生徒たちもちゃんとフルボイスである。実に40名近いキャラたち全員に(おそらく)原作通り(『りたーんず』『2』準拠)のキャスティングが行われているのは素晴らしい。
シナリオについても触れていこう。本作は『ぎゃる☆がん』のスピンオフとはいえ敵を倒したり真っ二つにすると爆発四散、血飛沫が飛び散るようなゲームである。ならばシナリオもさぞかし暗いなモノになるだろう…と思いきや、そのノリは相も変わらず『いつものぎゃる☆がん』である。1周目ではまだなんとかシリアス感が保てている(?)が2周目からは更に軽いノリが顕著になる。そのためステージの雰囲気に反してシナリオ自体はかなりライト寄り、『CotM』や『悪魔城』といった外観から想起されるシリアスでシビアな物語を期待すると肩透かしになる。最初から『ぎゃる☆がんのスピンオフ』と知った上でプレイするなら問題はないだろうが、ソレに気付かなかった人は困惑すること間違いなし。
なおライトなノリだからといって楽しめないというワケでは決してない。本作はマルチエンド制が採用されており、特定の条件で最終盤の展開が変化するのだが、どのルートになっても非常に『燃える』展開が待ち受けている。『萌え』じゃなくて『燃え』である。本作単独のプレイヤーでも楽しめる内容なのだが、特に本家『ぎゃる☆がん』のプレイヤーであれば一部のルートの展開を見るためだけに本作をプレイする価値があると言っていいレベルである。『ジャンルこそ違えども、本作は紛れもなく(色々な意味で)ぎゃる☆がんの系譜の作品であった』…それが全ルートをプレイし終えた上での我の感想であった。
ゲーム内には『ぎゃる☆がん』の小ネタもそこそこ用意されている。例えばサブウェポン強化に使われるアイテムが『おかし』で、ソレの入手手段がエンジェルリング(AR)社からの粗品だったり、一部のワザで生成できる回復アイテムがシリーズ恒例の『しあわせくん』だったりするのがソレ。使用できるサブウェポンも一部は本家シリーズで彼女らが使用していた武器であり、本家のプレイヤーであれば見覚えのあるものも多いハズ。更に単なるストーリーアイテムだがかの伝説の『フェロモンZ』*までもが登場する。
*フェロモンZ
『だぶるぴーす』のVita/PS4/PC版のみに存在したDLC。
購入するとゲーム内の全キャラの衣服透過率が100%…
つまりズーム中に下着がガッツリ見えるようになるという
脅威の効果をもたらすが、一方でそのお値段は
リアルマネーで10000円という禁断かつ禁忌、最恐にして最狂のDLC。
なおDLC全部入りのSwitch版だとなかったことにされた。
ちなみに『見えないからこそいい』というのは本作での真夜ちゃんの弁。
インティ製の作品といえばやはり難易度についても気になるところであろう。古よりインティ作品はとにかく難易度面でのシビアさでもお馴染みであり、この記事を読んでいる諸君でもどこぞのアステファルコンに泣かされた経験くらいはあるハズだ。
さて本作の難易度だが…なんと驚くことに非常に簡単、数あるインティ作品の中でもかなり低難易度の部類である。このへんは別ジャンルである『ぎゃる☆がん』のスピンオフだからというのもあるのだろう。そのため本作は普段からガッツリとアクションを遊びこんでいない層でも楽しめるような調整が施されている。
既に上に挙げた『姉妹レスキュー』なんかはそのいい例だろう。他にもサブウェポンの中には強化すると『回復アイテムを生成できる』というトンデモナイ性能になる『おおぬさ』なんてものがあったり、探索中に収集要素やボスの位置を示してくれるコンパス機能なんてのも用意されている。
だったらアクションをよく遊ぶ層なら物足りないんじゃ?と思うかもだがご安心頂きたい。サポート要素が豊富とはいえ、それらを強制される場面は作中に全くない。サポート要素を縛ってプレイすればいつもどおりの歯ごたえあるアクションが楽しめるはず。
特にボス戦はサポート要素を活用したとしても、ボスの行動パターンや安地を覚えなければ攻略がままならないものも少なくないため、初心者から上級者まで楽しませつつ、それでいて絶妙に詰まることもないくらいの塩梅になっている。
本作ではスタイルも選択可能。こちらはゲーム中の細かなシステムの設定で、カジュアル/ベテラン/レジェンドハンターの3段階。これもまた『CotM』にあった概念である。
ベテランが最も基本的な設定で被弾時にはノックバックあり、ミスした時には姉妹のもう片方を使っての再開となる。カジュアルはより遊びやすい設定で被弾時のノックバックはなく、オマケに残機は無制限、つまり何度でもやり直しが効く。レジェンドハンターは文字通りレジェンド級な某ヴァンパイアハンターみたいなシステムになる。被弾時のノックバックは当然として、姉妹のどちらか片方が倒れただけで完全アウトで残機を消費、更に画面を切り替えただけで敵が復活する。
これらのスタイルは(変更時にリトライが挟まれてしまうが)プレイ中にいつでも変更可能。ベテランでプレイしていて限界を感じたならカジュアルに変更できるし、カジュアルでプレイしていてヌルく感じたならばベテラン/レジェンドハンターにするのもOK。スタイル変更によるペナルティなどは全く存在しないので、初心者は安心してカジュアルでプレイするべし。本作にはランク評価がないのでオンボロだのテツクズだの罵倒されることもないぞ!
そして言わずもがな本作はクリアしただけで終わりではない。その先に待っているのはやりこみ要素である。最初から解禁されているやりこみといえばやっぱり一般生徒集めであるが、全生徒を集め終えてもまだ続く。なんと魔城化した折に(メイン・サブ含め)生徒たち全員がパンツ…つまり下着を紛失しており、今度はそのパンツを探すことになる。…色々ツッコミたくなるが気にしてはいけない。『ぎゃる☆がん』世界ならこのくらい普通(?)である。ちなみにパンツの方は入手した瞬間に大きく掲げるのだが、なんと生徒全員分に個別のデザインが用意されている。本家『ぎゃる☆がん』でも相当なものであったが、スタッフのパンツへの拘りはこっちでも健在であった…。
収集と関係ないやりこみ要素だと、アクションゲームにお馴染みの『ボスラッシュ』もある。こっちはクリア後にタイトル画面から選択できるようになり、文字通り全ボスとの連戦を行うことができる。スタイル設定や難易度のほか、サブウェポンの強化状態やWEAPONポイントを無限にするか等も選べるため、そこそこ色々な楽しみ方ができる。この手のボスラッシュにしては珍しくコンティニューも可能で、残機が許す限り敗北しても続行できる。ゆえにライトユーザーでもカジュアル設定で開始すればクリアは充分可能である。
ビジュアル面も見逃すべからず。ゲームを彩るドット絵は流石のインティクオリティ。同じドットでも8bitテイストな『CotM』ではなく『ガンヴォルト』『白き鋼鉄のX』方面のモダンな作り。ロックマンゼロの時代から引き継がれる繊細なドット技術により、見事『ぎゃる☆がん』の3Dモデルの特色を残しつつドット絵にキャラたちを落とし込んでいる。むろんドットのアニメーションパターンも豊富でかなり細かく動く。コレはプレイヤーキャラである神園姉妹どころか登場する生徒たち、やられ役のザコ敵から巨大なボスキャラまで全てにいえることである。
さてさて、本作は言うまでもなく徹頭徹尾『ぎゃる☆がんのファンに向けた作品』である。コレはぎゃるがんスピンオフであると考えれば当然であろう。だがしかし、本作の魅力はぎゃるがん以外の要素にもある。インティらしく純粋な2Dアクションゲームとしてもかなり高いクオリティとなっており、『世界観のライトなノリ』さえ受け入れられれば、本家ぎゃる☆がんを未プレイであってもパーフェクトに楽しめる。
ゲームシステムのベースやステージの雰囲気は『CotM2』の正当進化、ドット絵は『ガンヴォルト』シリーズ譲りの美麗なもの、それらの要素を活かして生み出された『ぎゃる☆がん』シリーズのスピンオフ…この説明からもわかるように、本作はこれまで数々の名作を世に送り出してきたインティ・クリエイツというメーカーのひとつの集大成であるといえるだろう。
先に挙げたシリーズ作を過去に楽しんだ経験のあるプレイヤーならば本作をプレイして決して損はない。そして本作をハブにしてほかのインティ作品をプレイするのもまた一興。キャラや世界観を気に入ったならば『ぎゃる☆がん』シリーズへ。本作がリリースされたプラットフォーム…特にSwitchであれば『りたーんず(初代のリメイク)』『だぶるぴーす』『2』といったシリーズ作も纏めて遊ぶことができる。そちらなら本作のメインキャラ達に濃厚な個別ルートもあるし、一般生徒とも交流(?)を深めて仲良くなることもできる。
雰囲気やゲームシステムならば『CotM/CotM2』、何度も触れたようにシステムの根底はそちらと共通なので本作での知識やテクニックはそのままあちらにも流用できるハズ。ドット絵がイイと感じたら『蒼き雷霆ガンヴォルト』や『白き鋼鉄のX』に手を出すべし。ガンヴォルトシリーズは本作とはちょっと方向性の違う2Dアクションであるが、あちらも名作であることに変わりはない。またひっじょーに細かいところながら『ぎゃる☆がん』シリーズと『ガンヴォルト』シリーズはどことなく繋がりを匂わせる部分もあったりするので、意外と本作からの流入先としてアリだったり。
単独での面白さもさることながら、そこから更なる名作へと進む選択を広げてくれる傑作…それこそがこの『グリム・ガーディアンズ』なのだ。ぎゃるがんプレイヤーも、そうではないアクションゲーマーも関係なく、ぜひぜひプレイするべしである!
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