いろいろとゲームを語ろう

物好きなゲーマーがただただ最近遊んだゲームの感想とか内容とか書いていくブログ。レトロゲームの割合が高いかもしれない。更新は気が向いた時にだけ。

LiEat (ニンテンドースイッチ)

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さてさて突然だが我がブログのゲーム記事は2つに大分される
1つは『ずっと昔からこのゲームについて語りたかったんじゃー!』という意気込みでじっくり時間(だいたい1ヵ月~半年)をかけて書き上げる記事、そしてもう1つは『なんだこの素晴らしいゲームは…ダメだ…抑えきれない…この感情をテキストにしてブチ撒けなくては…!』という勢いで想いのままに、衝動のままに一気(だいたい5~6時間)に書き上げる記事である。今回の場合は後者、この記事を書き始めるほんの少し前までプレイしていたゲームについて語るのである。

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さぁさぁ今宵語ります作品はこちら、NintendoSwitch用DLタイトル『LiEat』である。元々はフリーゲームとして3作に渡って配信されていた作品であり、その後追加要素込みで3作をセットにしSteamにて配信、そして今回、Steam版をベースにしてSwitch向けにリリースされたのが今作である。

開発は個人ゲーム開発者のMiwashiba氏、Switch版・Steam版ともにパブリッシングはインディーゲーだと毎度おなじみPLAYISMが担当。

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…とまぁ事情通のように語ってみせたが、正直に白状するとこの辺は今さっき調べて初めて知った知識である。というのも、自分は今作を正真正銘のジャケ買いで手に取ったため、内容や過去の経緯などの事前知識を一切持たないままプレイしていたのである。

よって、自分はフリーゲーム版やSteam版をプレイしておらず、当然ながら『Switch版でどこが変わったのか』については触れられない。単純に『Switch版を単独でプレイして、どこが面白かったのか』について語っていこうと思うのである。

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さてさて気を取り直して、今作はターン性のコマンドRPGである…が、少々特殊な難易度設計となっているのが特徴。まず、適当にプレイするとザコ敵との戦闘ですら油断するとアッサリ死ねるザコ敵に突貫して脳死での攻撃連打なぞもってのほか。回復手段はアイテムのみだが、こちらは有限かつ、ショップのような概念も存在しないため、序盤などはあまり頼りにならない。

…コレだけ書くと、凄まじい高難易度ゲー或いは理不尽ゲーのように取られてしまうかもしれないが、それは違う。今作においては戦闘よりも優先して行うべきモノがほかに存在するのだ。それこそが『探索』である。

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この『探索』…というとちょっと伝わりづらいかもしれないが、要はマップを自由に歩き回って、色々な人に話しかけたり、怪しいところを調べたり…などのような、ごくごく普通のRPGらしい遊び方をするということである。大抵のRPGにおいて『探索』はボスの弱点を知る、ダンジョンの抜け道を知る…など様々なメリットが存在しうるものであるが、こと今作においてはこのメリットが極限まで高められているのが特徴。というのも、今作は装備品・消費アイテムともに『探索』でしか入手できないため、『どれだけくまなく探索を行ったか』が戦闘の難易度に直結する。

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消費アイテムは序盤こそカツカツだが、きっちり探索を進めていれば中盤あたりから余るほど入手でき、特に装備品に至ってはパラメータの変動量が非常に激しいため、突き詰めると装備品さえ整えることができれば道中のザコ敵を全てガン無視してもラスボスを倒せたりする

言い換えれば、いかにRPGが苦手なプレイヤーであっても、探索さえしっかりできていれば詰むことはないということである。一方、探索で装備品を入手できずとも、戦略をしっかり立てたり、道中のザコ敵でレベル上げを行えばそれはそれで問題なくクリアできる。

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ちなみに強制戦闘以外のザコ敵は全てシンボルエンカウント、ただし、一部の例外を除いてこちらから話しかけない限り戦闘にはならないため、事実上ほぼ全てのエンカウントが任意。このエンカウントのシステムに加えて、前述した強力な装備品の存在もあってRPG部分の難易度は最短ルートでゲームを進めない限りはそこそこ優しめである。

 

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さて、ゲームシステムの話も終わってここからがいよいよ本番、今作には下記の3つのシナリオ(ゲーム)が収録されている。なお、ゲームシステムは3作ともに完全に共通。

『LiEatⅠ 噓喰いドラゴンと朱色の吸血鬼』
『LiEatⅡ 嘘喰いドラゴンと紺碧色の夢喰い』
『LiEatⅢ 嘘喰いドラゴンと黄金色の怪盗』

『詐欺師と嘘喰いドラゴンの物語』として見た場合、3作にも渡って続く長編のような印象も受けるが、それぞれの作品でピックアップされる事件そのものは完全に独立しているため、言ってしまえば今作は『全く異なる事件を描いた短編集』ということになる。

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いずれも共通して『主人公(詐欺師)とエフィーナ(嘘喰いドラゴン)が立ち寄った地で不思議な事件に巻き込まれる』という内容であるものの、作品ごとに舞台は大きく異なり、話の中核となるキャラも主人公勢と作中における警察ポジである『警騎隊』を除き総入れ替えが行われる。このため、(後述の理由からプレイ順は完全に固定されているものの)どの作品からプレイを初めても問題なく楽しむことができる

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ちなみに3作ともにマルチエンディングを採用、ただしどの作品もエンディングの分岐タイミングは非常にわかりやすく、全エンディングの制覇はかなり簡単。強いて言うなら『Ⅲ』のみ分岐条件が少々特殊だが、他のエンディングの会話をしっかり見ていれば分岐条件の察しが付くようになっているのでこれまた良心的。ただし一応の保険としてセーブファイルは分けておくことをオススメする

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タイトルからなんとなく察せられる通り、時系列は『Ⅰ』『Ⅱ』『Ⅲ』という順番になっている。コレに合わせてか、今作を初めて起動した時点では『Ⅰ』しかプレイできず『Ⅰ』をクリアすると『Ⅱ』が、『Ⅱ』をクリアすると『Ⅲ』がプレイできるようになる。

作品を跨いだセーブデータの引継ぎなどはなく、次の作品に入るとパラメータなどは初期値までリセットされる。セーブファイルも各作品ごとに個別であり、1作につき20個まで。よっぽどの事がない限りファイル数に頭を悩まされることはないだろう。

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世界観は『そこそこ近代的なファンタジー世界』といった風なもので、人間ドラゴンという2つの種族(人間のカテゴリには二足歩行する狼やら猫やらが含まれるのだがここでは割愛)が暮らしている。
絵柄のこともあってか、ゲーム全体を通してノスタルジックな雰囲気を感じられるが、その一方で世界観の根底にあるものは結構シビア、特にドラゴンに関係する設定は大体重い

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それぞれのシナリオで描かれる事件はまるっきり違うものの、いずれも話の中核にあるのは『ウソ』であり、この『ウソ』というのが作品全体を通してのテーマとなる。
ウソというのは誰もがついてしまうものであり、実際作中でも多数のキャラがウソをついていたりするのだが、『ウソをつき続けると、最後にはウソに憑かれてしまう』という設定もあってか、今作の世界観において『ウソ』は想像以上に重い意味を持っている。

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詳しくはネタバレになってしまうので若干暈した言い方になってしまうが、今作をプレイする場合はキャラの言葉をそのまま表面的に受け取るのではなく、そのキャラがウソをついているとわかっても、『なぜそのキャラがウソをついたのか』『そのウソにはどんな意味があるのか』などについて着目してほしいところ。そうすることで、今作のシナリオはどんどん奥深いものに感じられるようになる。

 

シナリオと同様に魅力的なのが、物語を彩るキャラクターたちである。

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新しい街に着くたびに姿と名前を変える詐欺師『主人公(このせいで本ブログでもこの表記)は公式設定でも『息をするようにウソを吐く』とか書かれるトンデモないヤツ。非常にドライな性格で、無邪気なエフィーナに対して突き放すような態度をすることも少なくないが、いざという時にはしっかり保護者として彼女を守ろうとするなど中々カッコいい切れ者かつ話術にも長けていることもあり、シナリオ中では真犯人の推理や追及、或いは情報を得るための捜査などで大活躍する。『ウソ』を巧みに操ることで相手を自分のペースに巻き込んでいく様は最早恐怖すら感じさせるレベルである。

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ヒロインであるドラゴンの少女エフィーナ(通称エフィ)は主人公とは打って変わって非常に素直で無邪気。生後間もないこともあってか子供らしさ全開であり、時には彼女の子供ならではの行動力で隠された証拠品を見つけてくれることも。正直者ではあるものの、一方で『相手のウソを実体化させる』という力を持ち、『ウソが主食』ということもあって、主人公に負けず劣らずこちらも『ウソ』との縁が深い。まだ子供ということもあり、シリーズを重ねることで少しずつ成長していくのも魅力。外見的にはそこまで大きく変わるわけではないものの、物事に対する理解の変化は目覚ましいものがある。そしてなによりカワイイ

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この主人公とエフィの関係性は見ていて特に微笑ましい
様々な事件を経てドラゴンという種族のルーツや、他でもない主人公の過去を知ることによって、『ただただ漠然と一緒にいるだけの二人』から、『互いを必要とする二人』へと関係性が少しずつ変化していく様は必見

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作品を跨いで登場するレギュラーなのが警騎隊の面々、彼らは『ドラゴン』という種族に対する設定の掘り下げに一躍買っており、今作の世界観への理解を深めさせてくれる非常に重要な存在。『ドラゴンの先輩』、そして『常識的な大人』という立場からエフィを導くシーンが多いため、出て来た時の安心感は相当なモノ。主人公の事はあまり好ましいとは思っていないものの、それでもお互い実力は認め合っているような関係性は個人的に大好物である。(ほぼほぼスポット参戦みたいなものだが)戦闘で協力してくれることもあり、その時は実力を遺憾なく発揮してくれるはず。

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前述したようにメイン二人と警騎隊以外のキャラは1作限りの出番であり、以降の作品ではテキストで触れられる程度であるが、そちらのキャラ達もまた魅力的主人公のウソにアッサリ騙される情報屋とその執事『ロザリー&レヴィン』や、相当な食わせ物であるように見せかけて一本筋の通った男『ルーカス』などは個人的に印象深い。事件の真相を巡って対立するキャラであっても、自分なりの信念や正義に従って動いていることから、作中人物で不快だと感じられるキャラが正真正銘一人もいないのは素晴らしい。ちなみに非モブキャラは全員に専用の立ち絵が用意されている。

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立ち絵の話が出たところでここらでデザイン周りの話をしよう。今作のデザインは見ての通り全編ドット調で描かれている。ドットと言っても8bit風とか16bit風といったそういうものではなく、純粋に今の時代に向けたドット絵となっている。各キャラ達の可愛らしいデザインもあってか、今作からは常にどこか暖かい雰囲気を感じられるのが特徴

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会話中に表示されるキャラの立ち絵についても、前述したように非モブキャラは全員に専用のモノが用意されている。また、シリーズを通して登場するキャラ達も新しいシナリオに進むたびに専用の立ち絵に描き直されている。都度都度姿を変える主人公や成長するエフィならばともかく、警騎隊の面々まで毎回新規の立ち絵になっているのには拘りを感じられる。当然、全ての立ち絵のクオリティが高い

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それだけでなく会話中の表情差分も複数存在し、1キャラあたり最低3~4種、シナリオの中核に特に絡むキャラは更に多く、特に主人公とエフィに至っては極一部のシーンでしか使われない専用の差分もある。

こういうゲームではあると嬉しいスチルも当然搭載重要シーンやキャラの初登場シーンなどではほぼ間違いなく表示される。和むシーンでは徹底的に癒されるスチル、シリアスなシーンでは緊迫感を際立たせるようなスチルが表示され、よりシナリオを盛り上げてくれる

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そして、シナリオのここぞという盛り上がりのシーンではなんとムービーが流れる。ムービー…というかドット絵で描かれたアニメーションというべきだろうか。このアニメーションのクオリティが本当に凄まじい。なんとこのデザインのテイストそのままでヌルヌルと動くため、非常に驚かされる。ムービーのラストがそのままスチルとして採用されているケースもあり、ムービー→スチル→流れるようにシナリオに戻るといった見せ方をしてくれることも。

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ゲーム中に流れるBGMは3作を通して使われるオルゴールのようなメインテーマ『LiEat』他曲の静かな雰囲気から一転テンポが早めで焦りを感じさせる戦闘曲『Liar』2曲を中心に良曲揃いピアノやオルゴール、アコーディオンのような音色を使った楽曲が多めで、どこか物悲しく大人びた曲調が多め。

特に『LiEat』は3作を通してとある局面で毎回異なるアレンジが流れるようになっており、その度に『物語が一区切りついたのだなぁ』と感じられる。個人的なお気に入り曲はLampで、シナリオの展開も相まって印象に残りやすいと感じた。

なお、ムービー・スチル・BGMはいずれもゲームのエンディング後(バッドエンドではNG)に自由に鑑賞可能、BGMに至っては周波数まで変えられる。本当に細かいところにまで手が届くゲームである。

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数少ないネックはやっぱりボリューム感であろうか。これといったやりこみ要素もなく、あくまで短編集ということもあり、(途中で詰まることがなければ)細かい会話を回収していても1作あたり1.5時間~2時間前後でクリア可能

逆に言えば区切りをつけやすく、それだけ気楽にプレイできるという見方もできるか。1000円にも満たない価格設定であることを考えると妥当なボリュームである。むしろデザイン周りのクオリティを見ると間違いなく値段以上の価値はあった

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今作は決して壮大な長編RPGなどではない。よって濃密なRPGを求めて今作に手を出すのはそこまでオススメはしない。しかし、短編には短編ゆえの良さがある。手軽に手を出せ、気軽に遊べ、そしてどんな人でも物語を完璧に楽しめる。これは間違いなく今作が短編集であるがゆえの強みである。

ゲームの規模はどんどん広がり、インディーのカテゴリでも大作レベルのものが少なくなくなってきた昨今だが、大作ばかりが続き、少しばかりゲームの胃もたれを起こしそうになっている人(もちろんそうでない人も)は、息抜きに今作へ手を出してみてほしいのである。きっと、今作で描かれる不思議な世界に浸ることができるであろう。

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