いろいろとゲームを語ろう

物好きなゲーマーがただただ最近遊んだゲームの感想とか内容とか書いていくブログ。レトロゲームの割合が高いかもしれない。更新は気が向いた時にだけ。

『Hatoful Boyfriend(はーとふる彼氏)』

クリスマス、それは恋人たちが愛を語らい合う日
皆様は今年、2020年のクリスマスはどなたと過ごしていましたか?
やっぱり大切な恋人とですか?それとも気を許した親友
家族と共に一家団欒…なんてのもいいかもしれませんね。

私、物好きな自称ゲーマーは去年のクリスマス、男一人のぼっちクリスマスに耐え切れず、夢の世界(クリスマスナイツ)に逃避していましたが、今年は無事、大切な大切な恋人と過ごすことができました。こちらのお方です。

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華原 涼太くん(カワラバト)

え?
男×男?
現実じゃなくて二次元の存在?
そもそも人間じゃなくて鳩?
……………………………………………………

ああそうだよ!ゲームキャラだよ!彼氏だよ!男だよ!てゆーかオスだよ!さらに言えば人間じゃなくてハトだよ!!
もう自分でもどこから突っ込んでいいんだかわかんねぇんだよ!!

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えー…ハイ、ということで今回も語っていきましょ(投げやり)
今回語る作品は『Hatoful Boyfriend』誤字みたいな表記だけどコレが正式タイトル。うん、今作は『Heartful(ハートフル)』じゃないんだ。『Hatoful(鳩フル)』なんだ。
ゲームジャンル的には女性主人公の視点で男性キャラを攻略する恋愛アドベンチャー…つまり一般的に言うところの乙女ゲームのカテゴリに属す作品である。しかし、今作は他の乙女ゲーとは一味も二味も違う

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今作最大の特徴は『ゲーム内に登場する主人公以外のキャラが全てトリである』という点。
アンジェリークから25年以上も続く長い長い乙女ゲームの歴史において『攻略対象がトリしかいない』などというゲームは後にも先にもおそらく今作しか存在しないというか今作以外に存在したら困る。

元々はPC向けの同人ゲームだった作品なのだが、何度かのリメイク(要素追加)ののち、海外スタジオで更なるリメイクが行われ、各種ゲーム機に移植されたという割と複雑な経歴の作品。

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自分が今回語るのは最後に出たPS4、つまり海外によるリメイク版『Hatoful Boyfriend』である。よって、シナリオのノリ自体は日本風なのだが、各種ボタン配置等は海外仕様に準じている。

今作のタイトル『Hatoful Boyfriend』は海外リメイクの際に改題されたものであり、それ以前のタイトルは『はーとふる彼氏』である。こちらの名前であればゲームメディアなどでもちょいちょい特集が組まれてたりもしたため、聞いたことがある人も多いかもしれない。

ちなみに今作を購入したきっかけは覚えていないなんかの拍子に衝動買いした記憶はあるが、何がきっかけだったかはむしろ自分が知りたいのである。

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さて、今作のプレイヤーは人間の女子高生である『十坂ひよこ(名前変更可)』となり、様々なハトが通う『聖ピジョネイション学園』での1年間を過ごすことになる。1年間の学園生活の中で、プレイヤーが行った活動・交流・選択の末に物語は分岐し、多種多様なハトと人間の恋愛模様が描かれることとなる。

…こらこら、ハトが豆鉄砲を食ったような顔をするんじゃない。
乙女ゲーの中でもとりわけ異色…というかイロモノ極まりない世界観だが、コレでも今作は大真面目である。この辺は後述。

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細かな要素は置いておいて、『世話焼きで気弱な幼馴染』『高慢ちきなお坊ちゃま』『運動部エースの体力バカ』『無口でダウナー気味な後輩』『軟派で軽い先輩』『ちょっと陰のある先生』などなど、一般的な乙女ゲーでありがちな攻略対象の属性はキッチリ網羅している。単純にキャラ属性だけを見た場合はそこらの乙女ゲーとそこまで変わらない。まぁ全員トリというだけで凄まじいインパクは残るケド。

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さて、もうご存じの通り、今作の攻略対象は殆どハトである。
まぁハトとはいってもカワラバト・ナゲキバト・クジャクバトヒムネバト…とバリエーションは豊富なので『どっちを向いても同じハトしかいねぇ!』といった状況にはならないのでご安心を。
ちなみに一部のキャラは例外的にハトじゃないこともあるにはあるが、結局ヒメウズラオカメインコなのでトリである事実に変わりはない。そのため、『どっちを向いてもトリしかいねぇ!』という状況は日常茶飯事

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システム周りは普通の乙女ゲーム。選択肢を選びながら物語を読み進めていく。
最序盤の選択肢である程度のルートが絞られ、そこからのプレイングで最も好感度が高いキャラのルートに進行する…といった作りになっており、攻略的な難易度はかなり低め知力・体力・センスといったパラメータのような概念もあるにはあるが、これらの数値を実際に参照する場面はかなり少ないため、意識的に上げる必要はそこまでない。せいぜいごく一部のキャラの専用イベントを見るのに必要という程度である。
よって、今作は分類上は乙女ゲーであるものの、プレイ感覚としてはビジュアルノベルサウンドノベルの方が近い

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1周にかかる時間もかなり短めであり、適当にプレイしていても大体40分~1時間もあればEDに到達できる。とはいえ、今作は1周だけプレイして終わりといったものではなく、むしろ何周もプレイすることが前提の作りになっているため、これぐらい手軽な方が正解だろう。そちらに合わせてかEDやルートの数もそこそこ多め。1周が短くても七夕クリスマスバレンタイン(っぽいもの)のように恋愛ゲームに外せない季節イベントはしっかりやってくれるのでそこは安心である。

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シナリオや世界観は後述の通りかなりクオリティが高いものの、システム周りには粗が目立つ。なんというか、根本的な乙女ゲー・ADVのシステムとして見た場合、あって当然の機能がなかったり、『コレ、本当にデバッグした?』となる挙動もちょいちょい見つかる。
自分も言うほどこのジャンルに精通しているワケではないので見当違いかもしれないが、とりあえずバックログ機能が存在しない』『自動送り(notスキップ)ができない』『選択肢が表示されている時にセーブ不可(+選択肢での自動セーブなし)などは昨今の同ジャンルと比較するとかなり不便に感じる。
まぁこの辺は我慢すればどうにでもなるレベルなのでいいのだが、個人的に致命的なのが『テキストが画面からはみ出してしまい途中から読めなくなる』『特定の文字だけ毎回必ず脱字する』という現象。

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前者はまぁノベルゲーのシステムを作ったことがある人間なら一度は体験するであろう不具合なので百歩譲ってわからなくもないが(それでも重要シーンで発生するのは勘弁願いたい)、謎なのは後者の方。どういうわけかゲーム内の全てのテキストから特定の漢字が抜け落ちているのだ。単純な脱字という割には毎回同じ文字が抜けているため、ゲーム内にその漢字のフォントがないとかその辺なのか。抜け落ちている漢字はそこそこある、『闇』『猟』『纏』とか
このため、一部のテキストでは特定の漢字だけが抜け落ちた謎の文章が表示されてしまい、その度にプレイヤーは穴埋めゲームをしなくてはならない

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特にこれで可哀想な目に遭っているのが『緋紅アンヘル、彼は所謂中二病キャラ』で言動もまさに厨二感溢れるものなのだが、この不具合の煽りをもろに受けており、彼のセリフは超高確率で脱字が発生している。このせいで実際の文章以上に彼が何を言っているのかプレイヤーは理解しがたい状況になっている。

コレは推測だが、基が日本の作品とはいえリメイク担当は海外スタジオなので、日本向けのデバッグが甘くなっているのが原因なのかと思われる。まぁどちらもやっていくうちにそのうちに慣れると思うので、気にしないのがベストである。

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さて、ここで終わりであれば今作は単なる『イロモノ乙女ゲー』でしかないのだが、そこで終わらないのが今作のスゴイ点。
最初から語っているように今作は『トリとヒトの恋愛ゲーム』、それに合わせて作中に登場する人物は主人公を除いて全てトリ…なのだが、実はコレにはしっかりとした理由が存在する。今作をプレイしていくうちに当然生まれてくる『何故トリが人語を介するのか』『何故主人公が学園で唯一の人間なのか』などといった疑問にもいずれも明確な回答が用意されている。

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更に言えば攻略キャラの個別ルートなどで描かれる『それぞれの過去』『それぞれの葛藤・思想』などは独立しているように見えて、本質を辿ればいずれも『過去に起きた一つの出来事』に繋がるようになっている。それらに関係した伏線もあからさまなものから『アレってそうだったの!?』となるものまで綿密に組み込まれており、何周もプレイしていくことで伏線という点と点が繋がる快感を味わえる。こういった作品ではどうしてもパラレル設定になりがちな『お遊び超展開のルート(キャラの根本設定からして変わる)』すらも伏線の一種として扱うのはまさにお見事である。

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正直に言うと今作は適当に一周しただけでは『見た目が変な乙女ゲー』という感想しか浮かばないだろう。何周も繰り返しプレイし、世界観を完全に理解しきったその時こそ、今作のシナリオは完成すると言っていい。そういった面から言っても今作は『乙女ゲー』よりは『ビジュアルノベル』に近い作りなのだ。

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作中のキャラ(トリ)はメイン・サブ含めいずれも良い性格をしており、好感が持てる…かどうかは置いといて、とりあえず印象には残りやすい。とりわけ最初から全速力で飛ばしまくるクジャクバト『尾呼散(おこさん)』インパクトは絶大。『トリじゃ印象に残らないよ!』という人のために各キャラの擬人化機能も搭載!…と書くと聞こえはいいが、ONにしても初回の登場シーンにしか反映されないため、結局はトリの方に印象は上書きされるあと約一名擬人化できているのか怪しいヤツが…。

それ以外にも作中屈指の常識人なので変な方面で好感を持てるカワラバト『華原涼太』や険悪(?)なクジャクバトの兄弟『銀朔夜&坂咲優夜』などなど、最後までプレイしたうえで印象に残らないキャラは一人もいないと言っていい。

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そして作中で最もはっちゃけているのが主人公(十坂ひよこ)彼女が今作のギャグ的な雰囲気の7割を背負っているといっても過言ではない。残り2割はおこさん1割は他キャラ。ハッキリ言おう、この主人公、感情移入はほぼできない『はっちゃけている』というのもかなり甘めな表現であり、ぶっちゃけサイコに片足突っ込んでいるレベルである。

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『元気で素直で快活な少女』といえば普通のキャラ造形に思えるのだが、彼女は少々…いやかなりおかしな方面にネジが飛んでおり、ノローグでは毒舌&パロネタ&謎ネーミングの嵐口を開けばキレッキレのツッコミ祭り勢いで飛び出した結果プレイヤーの想像もつかないような突飛な行動に出ることもチラホラ。特にとあるキャラ(トリ)とのデートよりにもよって焼き鳥の屋台をチョイスし、彼氏(?)との会話中に『焼き鳥うめぇ』とモノローグに表示する様はタダモノじゃないと感じさせる。

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ただ、ひたすらに変な方面に突き抜けてしまった結果、『主人公としては見れないが一人のキャラとして物凄く魅力的』という稀有なポジションに収まっているのも事実。むしろ彼女がいるからこそ今作のギャグ的な雰囲気が成り立っているともいえるため、今作には無くてはならない存在なのだ。ぶっちゃけると今作から彼女を省くとほぼほぼシリアス要素しか残らないのである。それを嫌というほど突き付けられるのが『BBLルート』という(仕様的には)今作最後のルートなのだが、コレは自分の目で見て確かめてみてほしい。

なお、彼女がこういったギャグ寄りの行動を起こすのはいずれも共通ルート、或いは個別ルートの序盤くらいであり、個別ルートの後半以降になるとドキドキするような乙女チックな恋愛模様を見せてくれる。このギャップもまた魅力の一つである。

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シナリオについてだが、前述した通りギャグ展開が多めだが、ルート次第ではシリアス多めの展開になることも。このあたりは誰のルートかで大きく変わる。例えばクジャクバトの『尾呼散』ヒムネバトの『緋紅アンヘルのルートはほぼ100%ギャグだが、一転してナゲキバトの『藤代嘆』イワシャコの『岩峰舟』シリアス100%の展開である。しかしこのブレ幅故に後者二人のルートは特に印象に残りやすい。とりわけ『藤代嘆』ルートでの嘆と主人公の問答は完璧なセリフ回しだと言っていいと思う。『岩峰舟』ルートのなんとも言えないインモラルさというか背徳感のようなものも見事まぁこっちはかなり趣味分かれそうだケドも。

ちなみにいずれのルートも当然トリ×ヒトの恋愛劇になるが、どのキャラも恋愛には真面目であるため、そこはご安心を。むしろ種族が違うからこその展開や、攻略対象が鳥だからこそできる展開もあるため要注目。

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それから、下手に書くと致命的なネタバレになりかねないので慎重に触れるが、『BBLルート』という事実上の最終ルートも見逃せない。
このルートはありとあらゆる面に散りばめられた伏線の数々を見事に回収しきり、それまで『キャラ薄いなぁ』と思われていた一部のキャラを見事に肉付けし、個別ルートだと断片的にしか語られていなかった各々のキャラ同士の因縁に決着をつけるというもの。

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このルートに限り他ルートの5倍近い大長編となっているため読み応えも抜群。ハト同士の恋愛ゲームであるにも関わらず、涙なしには最後まで読み進められない怒涛の展開の数々は全てのノベルゲーム好きに読んでほしいレベル。ぶっちゃけBBLルートだけでも今作の価値はある(他ルートあってこそのBBLルートでもあるが)
とにかく、今作をプレイし始めたなら絶対に『BBLルートのクリア』まで進めること!約束である!
(まぁこのルートは根本的な仕様からして乙女ゲーの範疇を逸脱している感は否めないが…)

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まぁ今回も長々と語ってしまったが、まとめると今作、『Hatoful Boyfriend』『単なるイロモノ乙女ゲー』として終わらせるには惜しいビジュアルノベルの怪作にして傑作』であるということである!
確かにハトとの恋愛ゲームという唯一無二のポジションにあるため、イロモノだと言われると否定はできないが、それ以上に世界観がよく寝られた『良質なビジュアルノベルなのである。前述した通り、若干システム周りの粗がないわけではないものの、それでも値段以上の価値はあるのである!ADV好きでまだ今作に手を出していないという人は、ハトで敬遠せずぜひともプレイしてみてほしいのである!!