2021年3月26日、いよいよ(個人的な)超期待作が世に放たれた。
あの伝説のクリエイターたちが今一度タッグを組むことで誕生した完全新作…『バランワンダーワールド』が!!
ハイ、というわけで今回語るタイトルは『バランワンダーワールド』である。
正直言うと今年発売予定の新作タイトルの中で最も期待していたタイトルである。
ぶっちゃけ今作をプレイするためにわざわざPS5を買ったと言っても過言ではない。
期待していた理由は単純に自分が旧ソニチの大ファンだからというだけだが。
当然、限定版であるショータイムセットを予約購入、こちらはゲーム本編にサントラCDと小説版、その他冊子がいくつかとピンバッジがセットになったバージョンである。
(画像には一部体験版キャンペーンのプレゼントも写っている)
購入したのはPS4版だが、今作はPS5アップグレード機能*に対応しているため実際にプレイしたのはPS5版となる。
*PS5アップグレード
PS5の機能の一つで『PS5版が存在するタイトルのPS4版を所持していると
無償でPS5版のDL権利が与えられる』というシステム。
PS4とPS5のマルチタイトルは非常に多いが、
対応タイトルはまちまちなのでそれぞれの公式を確認すべし。
プラットフォームはSwitch/PS4/ONE/XSX/PS5…まぁ現行機種全部である。
公式の略称は『バラン』だが、ぶっちゃけ他の固有名詞と被りまくるため、大抵の人は『バランワンダーワールド』という正式名称で呼ぶことが多い。ちなみによく間違われるが『バランワンダーランド』ではない。
数日ほどかけてクリア、更にその後1週間かけて(別ゲーに浮気しながら)トロコンまで達成できたため、こうしてこの記事でじっくり語っていくことにする。今回はスタッフがスタッフだけに比較対象として旧ソニチの作品を出すことが多いが、そこは許して欲しい。
(まぁ今作に興味持つような層は元より旧ソニチのファンだと思うケド)
さて、こちらが本作の顔役ともいえるメインキャラクター(主人公ではない)、謎のマエストロこと『バラン』である。ゲーマーであればどこか既視感を覚えるデザイン…そう、言わずと知れたNiGHTSである。しかし、今作のパブリッシャーはスクウェア・エニックス、ここまでSEGA臭たっぷりなのにスクエニ…コレはどういうことであろうか。
答えは簡単、今作の開発を手掛けるデベロッパーは『ソニック』や『NiGHTS』のデザイナーである大島直人氏のアーゼスト、そして開発の舵取りを行っているのが『ソニック』や『NiGHTS』などの生みの親にして、ソニックチーム…ないしはSEGAのレジェンド、ゲーム業界で知らぬものはいない天才プログラマーの中裕司氏だからである。
大島直人氏、中裕司氏の両名は既にSEGAを退職して久しく、大島氏がアートゥーン、中氏がプロぺを起業しゲーム業界で各々の道を歩んでいたのだが、諸々の末スクエニに移籍した中氏がかつての戦友である大島氏のアートゥーン改めアーゼストと再びタッグを組み、誕生したのが今作である。
この二人は『ソニック』『NiGHTS』『ファンタシースター』といった、かつてのSEGA黄金時代を示す数々の名作を手がけた伝説のコンビなのだが、実はこの二人がこうしてメインでタッグを組むのは約20年ぶり。これはもうSEGA好き・ソニチ好きとしては期待するしかないワケである。
(同一の作品に携わる、という意味であれば直近は10年前の『Wiiリモコンプラスバラエティ』になる)
さて、『バランワンダーワールド』のジャンルは3Dアクション、3DACTというと昨今ではオープンワールド系のものをイメージしてしまいがちだが、今作は古き良き箱庭探索型の作品である。箱庭アクションはゲーマー以外だと馴染みが薄いかもしれないが、『スーパーマリオ64』或いは『バンジョー&カズーイの大冒険』などを意識してくれるとわかりやすい。スタッフ的に見れば『ソニックアドベンチャー』のナックルズ編や『バーニングレンジャー』の系譜である。
プレイヤーは箱庭型の3Dフィールド上に降り立ち、あとは自由にステージを探索していく。ステージ内での進み方は完全に自由。ゴール自体は存在しており、ひとまずの目標は『ゴールへの到達』ということになるが、一方でステージ内には6~9つの『バランスタチュー』というアイテムも隠されており、こちらを探し回ることもできる。ただ単にステージをクリアするだけならば非常に簡単だが、スタチューを集めようとすると中々難しい…というような難易度設計となっている。
スタチューの入手には特殊なアクションが必要なケースも多く、むしろ初回来訪時にスタチューをコンプリートできるようなステージのほうが少ない。そのため、初回プレイは無理してスタチューを集めようとはせず、とにかくゴールを目指すのを第一目標とするべきである。あくまでスタチューはやりこみ要素であることを念頭に置いておくべし。
ステージ内には『バランチャレンジ』というミニゲームが用意されており、こちらの入り口を見つけることで1度だけ(重要)挑戦が可能。バランチャレンジでは謎のマエストロ『バラン』がアクロバティックに動いている映像をバックにタイミングよくボタンを押すQTEが行われる。このQTEは中々癖が強いものの、映像自体はド派手、かつQTEの成否による分岐も非常に豊富なため、見ていて壮観である。
とりわけ中盤以降のバランチャレンジではライバル『ランス』との対決が行われ、バランとランス双方のキャラを引き立たせる今作屈指の見どころとなっている。
バランチャレンジ終了時にはQTEの成否(4段階)の合計によって最終的なランクが表示され、このランクに応じてティム(後述)を育成するためのドロップの取得料が倍増する。また、ここで最高ランク(ノーミス)を達成しているとスタチューまでもが入手できる。
(このせいで悲劇を招くことになるのだが、コレについては後述)
今作のステージは『第○章ACT×』という表記で表され、全12章、各ステージごとにACT3まで存在、つまり合計で36ステージ*が用意されている。
『第○章』となっていることからも分かる通り、それぞれの章で異なる主人公(プレイヤーではない)が存在し、各々の物語が展開されることとなる。各ステージは『何らかのきっかけから心のバランスを崩した主人公たちの心象世界』という設定であり、コレに合わせてステージの雰囲気は『各主人公ごとのアイデンティティやトラウマが混ざりあった、統一感があるようでない不可思議な世界』となっている。
*全12章、ACT3、計36ステージ
普通に考えるとここはネタバレ項目なのだが、今作においては
発売前の時点で何故か公式が全12章のステージを公開した上で、
クリア後の隠しステージであるACT3まで一通り公開されていたため、
この記事でも特に隠すことなく触れることにする。
各章のACT1/ACT2を両方クリアすると、『心のバランスを崩したきっかけ』がムービーで流れたのち、各主人公の成れの果てであるボスが登場、そのままボス戦に突入する。ボス戦はゲーム全編通し一貫して3回攻撃を命中させれば勝利となるが、普通に攻撃してもボスには通用しないため、攻撃後のスキを狙ったり、あるいは特定のコスチュームの専用アクションを駆使してダメージを与えていくこととなる。
ボス戦自体はぶっつけ本番になってしまうものの、ボスに対する攻撃手段はそのステージで使用した攻略法の延長にあることも多いため、察しがいいプレイヤーはアッサリ勝てたりもする。わかりやすく言えば『ゼルダの伝説シリーズ』のソレ。ボス戦の終了時には『ボス戦での立ち回り』について評価が行われ、その結果に応じてスタチューが1~3個入手できる。『ボス戦の立ち回り』というのがちょっと分かりづらいのだが、より具体的に言うと『いかにバリエーションに富んだ攻撃をしたか』である。例としては以下を参照。
・『攻撃後のスキに攻撃』を3回でボスを撃破→スタチュー1個
・『攻撃後のスキに攻撃』を2回、『敵の攻撃を跳ね返して攻撃』を1回でボスを撃破→スタチュー2個
・『攻撃後のスキに攻撃』『敵の攻撃を跳ね返して攻撃』『ステージの仕掛けを利用して攻撃』を1回ずつで撃破→スタチュー3個
各章はスタチューを集めるごとに段階的に解禁されていき、解禁された章はACT1/ACT2のどちらからでも突入可能、一度に3つずつの章が解禁されていくため、攻略の自由度はかなり高い(ACTに関してはACT2がACT1クリア後前提みたいな設計になってたりもするが)。ゲームクリアを目指すと最終的には全部の章のACT2までのクリアとボスを撃破、かつスタチューを一定数(全体の約半分ほど)を集める必要があるのだが、それでも好きなところから挑めるのは嬉しいところ。ちなみに章と章の間に物語の繋がりは(おそらく)ないため、途中で章を飛ばしても物語に置いていかれることはないのでそこは安心。
さて、今作最大の特徴は『極限まで単純化された操作』にある。
3Dアクションといえば複雑なアクションのため操作が煩雑化しやすい傾向にあるが、今作は後述する『1コスチューム1アクション』のシステムとなっているため、今作の操作はなんと『コントロールスティック』と『LRボタン』、そして『それ以外のボタン』という実質3つの操作だけで完結する作りになっている。
(ポーズ用のスタートボタンやカメラ操作の右スティックを除く)
3Dアクションというジャンルでここまで操作性をシンプルに纏めた作品はかなり珍しい。…まぁコレが後述する問題点にも繋がっているのだが…。
プレイヤーができる操作は移動(左スティック)を除くとコスチューム変更(LR)とアクション(全てのボタンで統一)のみ。アクションはその時点で身に着けている『コスチューム』に応じたアクションが発動する。一つのコスチュームで使用できるアクションは1つだけなので、プレイヤーは状況に応じてコスチュームを切り替えながらステージを進んでいくこととなる。
コスチュームごとに用意されているアクションは様々であり、『ブーメラン上の武器で攻撃する』『特定の仕掛けを作動させる』のようなシンプルなものもあれば、『カギ(専用アイテム)を使用せずコスチューム入手可能』や『一定時間無敵の分身を作り出す』のようなヘンテコなものも。とりわけジャンプ能力を強化する類のコスチューム(連続ジャンプ等)は非常に強力で、コレを入手してから探索の自由度が大きく広がり、ステージ攻略が一気に楽しくなる。
コスチュームは公式で触れられている通り80種以上。一部のコスチュームは能力が丸かぶりだったり、他のコスチュームの完全上位互換のものもあったりするのだが、前者は攻略の自由度のため(詰み防止)と考えれば合点はいくし、後者は配置の都合上終盤にならないと入手できないため、一応バランスは取れている。
同時に持ち歩けるコスチュームは最大で3つ、持ちきれない分はクローゼットに収納され、ステージ内に用意されたチェックポイントからクローゼットにアクセスすることで持ち歩くコスチュームの切り替えが可能。どのコスチュームにも明確な弱点(移動速度が遅い・ジャンプできない等)が用意されているため、弱点を補うように選出するのが重要である。
コスチュームの効果はいずれも便利ではあるのだが、被弾するとその時点で着用していたコスチュームは失われてしまうため、希少なコスチュームを使用している場合は一層慎重に操作する必要がある。危険なエリアに足を踏み入れる場合は『失くなってもいいコスチューム』に着替えておくのも一つの手である。なお、コスチュームを全て失った状態で被弾するとミスとなりステージから追い出される。ただし残機の概念はないため、ゲームオーバーの心配はない。ステージから追い出されても再突入したらチェックポイントからの再開となる。
冒険の拠点となるのが『ティムズエリア』という世界、このエリアでは各ステージへの入り口のほか、『ティム』と呼ばれる不思議な生物の育成が可能。ティムは各種ステージ内で手に入るタマゴから生まれ、同じくステージ内で入手できる『ドロップ』を与えることで成長していく。ティム同士を交配させることで新たなティムが生まれたりもする。
系譜的にはソニックアドベンチャーのチャオやNiGHTSのナイトピアンなどの『A-Life』*を思い出すが、あちらほど複雑ではない。若干の個体差や個性のようなものもあるにはあるが、基本は単純で『ドロップを与えれば成長し、ドロップの色によって体色が変化する』程度である。
*A-Life
ゲーム内で擬似生命を育成できるライフゲーム的な要素で、
ソニックチームの作品ではNiGHTSシリーズの『ナイトピアン』と
ソニックシリーズの『チャオ』が該当する。
一件単純なように見えるが奥深く、本編そっちのけでこちらをやり込むユーザーも存在するほど。
『ナイトピアン』はあくまでオマケ的なポジションだったが、
『チャオ』はガッツリゲームのやりこみ要素の一環として含まれており
作品によってはチャオ同士を競い合わせるモードなども存在した。
さて、続いては今作のメインシナリオについてだが、
『心のバランスを崩し、バランによって集合的無意識から成る心象世界(ワンダーワールド)に迷い込んだ少年レオと少女エマが心のかけらを探すために冒険する』
というのみ。これだけ書くとエラくシンプルに見えるが、実際の作中ではOPムービーとラスボス前後でレオとエマの描写がほんの僅かにある程度で、残りは各章ごとの主人公の物語で占められているため、ゲーム内で語られるシナリオは本当に僅かである。
イメージとしてはNiGHTSが近いといえば近いものの、曲がりなりにも目標などがハッキリとゲーム内で明示されていたあちらとは違い、こちらは(作中の描写だけだと)本当に漠然と冒険しながら『心のかけら』を探すことになるため、より説明をブン投げた感が強い。
主人公は『レオ』か『エマ』のどちらかを最初に(人種や髪色も含め)選択する。この選択はあとから変更できないが、どちらもOPとEDのムービーが変わる程度で性能面での違いはない。なので単純に好きな方を選べばいい。
(片方でムービーを見れば、あとからムービーを見返す機能で別バージョンも視聴できる)
今作の世界観を理解したい場合は同時発売(限定版なら同梱)の小説版を読むのがオススメ。こちらは各章の主人公やバランたちの心象描写もしっかりしているだけでなく、ゲーム内の随所に用意されていた疑問点や違和感のある描写などについて明確な理由付けが行われており、更にゲーム内ではフワフワしたままだったレオとエマの冒険の目的までハッキリ明示されているため、ゲーム本編の補完…を通り越して完全にシナリオ面ではこちらが本編と化している。
単純に読み物として面白いものの、あくまで本編の補完という体なのか、本編部分の探索などは大幅に端折っているため、小説版は基本的に本編とセットで楽しむ作品となっている。しかし開幕の挿絵からゲーム本編のネタバレをかましてくるので、読むのはあくまでゲームクリア後を推奨。
そして今作で一番の見所といえばやはり『演出』にあるだろう。
さすがのスクエニということもあり、特にムービー周りには力が入っている。
前述したバランチャレンジは最たるものだが、ソレ以外にも各章主人公の過去が描かれるムービーも悲惨な映像の筈なのにどこか他人事のような雰囲気でスピーディーに、かつコミカルに流れていくためテンポもよく見ていてかなり面白い。
BGMもまたクオリティが高く、同一のメロディラインが作中で何度も使用されるものの、使われる局面によって毎回異なるアレンジがなされているため、『同じメロディでここまで雰囲気を変えられるものなのか!』と感服するばかりである。
そしてシステム面で一番力を入れているであろう箇所はやはり『箱庭の探索』である。『3Dの箱庭を自由気ままに歩き回り、世界を眺めながら隠されたキーアイテムを探す』という箱庭アクションに求められる面白さは今作でも健在であり、全てのスタチューを集めきったあとも自分なりの絶景をステージ内で見つける等の遊び方もできる。ステージ自体もかなり広く、1つのステージを隅々まで見て回ろうとしたら軽く1時間以上はかかる。そんなステージが36個もあるわけだから、ボリュームも充分である。
冒険が進み新しいアクション(コスチューム)を入手することで探索範囲が広がった結果、今まで探索したエリアで新しいルートを開拓できる…というメトロイドヴァニア的な側面もあり、同じステージでも何度もプレイすることで新しい発見があるのも魅力である。
コレは若干ネタバレになってしまうのだが、今作をある程度やり込むことで解禁されるコスチュームには『空中で連続ジャンプ可能・飛行可能・任意の地点で滞空可能』という今作でもトップクラスのアクションが設定されているため、このコスチュームを入手した瞬間から今作は大きく弾ける。広い箱庭フィールド内を自由に飛び回り、今まで行けなかったような高台を登ってステージを見渡す爽快感は素晴らしく、ハッキリ言って今作の真のスタートラインはこのコスチュームを入手したところからだと行っていいだろう。
(問題は前情報ナシだと最後の最後まで解禁できないことだが)
さて、ここまでは割と全面的に今作を褒めてきたのだが、ここからは若干シビアに語っていく。というのも、今作は魅力的なポイントとアレなポイントが尽く同居しているため、どう語ろうともアレなポイントを触れぬ訳にはいかないのだ。
まずは操作周りについてだが、前述したとおり今作の操作は非常にシンプル、ちびっ子でも遊べるようにする配慮からか、全てのボタンに同一の意味を持たせている。コレ自体は別に悪いことではないものの、その思想をなんとメニュー画面にすら持ち込んでしまっている。コレが何を意味するかというと今作にはキャンセルボタンが存在しない。○ボタンも×ボタンも△ボタンも□ボタンも全部引っ括めて『決定ボタン』なのだ。
PS4→PS5になって×ボタンの意味合いが海外仕様に統一されたことで一悶着あったのは記憶に新しいが、今作に関してはソレ以前の問題である。今作でキャンセルの操作を行いたい場合は、わざわざ『キャンセル』に該当する場所までカーソルを移動させてから決定するほかない。このせいで決定が恐ろしい頻度で誤爆する。慣れればどうこうの話ではなく、単純に直感的ではない。誤爆したところですぐ戻せば済む話ではあるのだが、どうにもモヤモヤが残ることとなる。
また、このゲームのメイン要素ともいえる探索部分なのだが、正直なことを言うとコスチュームが充実するまでは本当に、冗談抜きで探索が楽しくない。
今作のステージは縦横に非常に広い箱庭構造…つまり探索を行う場合はジャンプ能力強化系のコスチュームがほぼ必須級なのだが、マトモなジャンプ能力系のコスチュームが入手できるのは最短でも8章解禁後、8章に到達するまでの間はどうしてもジャンプ力がデフォルトorそもそもジャンプできないコスチュームでステージを探索する羽目になり、せっかくの広い箱庭マップが無駄になってしまう。
ジャンプ系の能力が低くてもステージ探索自体は可能なのだが、行けるエリアはほぼ限られてしまい、なんなら『ただひたすら退屈な道を順路通りに進むだけ』というパターンもあり得る。
今作で一番楽しい部分は『移動性能の高い能力でステージを縦横無尽に探索する』という点ではあるものの、始めて間もない時点ではそんなことを知りようがないため、序盤のこの退屈具合でリタイアする人が多いのも頷ける。実際自分が今作をプレイした際も1周目の序盤は『…大丈夫かコレ…?』となったのは事実。一応フォローしておくと、ジャンプ系装備が充実した後の探索は本当に楽しい。
コスチューム周りのシステムについても不満はある。
3つしか持ち歩けない件については『どのコスチュームを持ち歩くか』という戦略などにも絡むため、別にいいと思うのだが『被弾でコスチュームが失われる』という仕様には本当に困らせられる。
失われたコスチュームはクローゼットに戻るなどの生易しいものではなく、文字通り消滅してしまうため、攻略に必要なコスチュームを失った時点で、再度そのコスチュームを拾いに行く手間が発生する。同一ステージ内のコスチュームならまだ良い方だが、酷い場合には別のステージにまで拾いに行かなくてはならないため非常に面倒。
極めつけはゲーム内に存在する2つの特殊コスチューム(体験版特典/やり込み特典)で、これらは通常入手手段がほぼ存在しない/限られているにも関わらず、他のコスチューム同様に被弾した瞬間に問答無用で消滅してしまう。体験版特典の方は能力的には互換性のあるコスチュームがあるためそちらを使えばいいのだが、やり込み特典の方は前述したように今作最強クラスの性能&オンリーワンな性能であるため、被弾で失おうものならそのまま今作を二度と起動しなくなるレベルのモチベーション低下は避けられない。一応ステージの出入りをしない限りセーブは行われないため、被弾したら即座にリセットすれば大丈夫ではある。うっかりセーブしちゃった場合は知らない。
---2021/12/15追記---
どうやらやりこみ特典の衣装は一度取得条件を満たしさえすれば
被弾で失っても(多少のペナルティはありますが)再入手可能なようです!情報感謝です!
また、体験版特典の衣装もとあるコマンドを入力することにより、入手可能です。
こちらについては公式Twitterをチェック!
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バランチャレンジの仕様にも不親切な面があり、内容こそシンプルなQTEであるものの、途中で一回でも最高評価を逃した時点でスタチューの獲得ができなくなってしまう。それだけならまだいいのだが、バランチャレンジはその場での再挑戦が不可能、リトライのためには
①一度ステージから出る
②その章のボスを倒す
③再度ステージに突入してバランチャレンジに挑む
という手順を踏む必要がある。バランチャレンジ自体がQTEとして独特な仕様*が多くミスりやすいのもあり、その度にボス戦からやり直しを要求してくるのは中々苦痛である。(ボスを倒すとステージ自体の進行もリセットされる)
*独特な仕様
『バラン本人とバランの影が重なったタイミングでボタンを押す』というルールなのだが、
本人と影の両方が動き回っているケースも多く、タイミングが異様に掴みづらい。
重なった瞬間に最速で入力しないと最高評価にはならないため、
見てから入力したのでは間に合わず、最終的には感覚頼りになる。
(幸いQTEの内容やタイミングは毎回固定)
中には『バラン本人が奥から飛び出してストップ→遅れて影が重なる』というフェイント気味のものも。
ぶっちゃけると攻略法としての最適解は
『何度も失敗しながらムービーごとに最適なタイミングを指に覚えさせる』という身も蓋もない方法になる。
終盤の章になると1ステージ内に3回もバランチャレンジ(スタチューは個別)が挟まり、かつ終盤になればなるほどQTEの難易度も上昇していくため、よりストレスが溜まる。クラシック時代のソニックシリーズのスペシャルステージの仕様そのまんまなのでそう考えると理解はできるのだが、かといって納得ができるものではない。加えて、バランチャレンジは途中離脱が不可能、途中で失敗して消化試合になったとしても最後まで見るしか無い。ハッキリ言って拘りがなければミスった時点ですぐにリセットするのをオススメする。
バランチャレンジ自体のムービーはかなり良質なのだが、結局プレイ中はQTEのせいで映像に集中できないため、じっくり見ることができないのもまたツライポイントである。
(バランチャレンジのムービーはムービー再生機能でも視聴不可、複数の映像の継ぎ接ぎなので仕方ないが)
また、世界観について説明不足気味なのは説明したが、システム周りについても説明不足な点が目立つ。例えば今作には
『ティムを拾った状態でステージに入ることで任意のティムを探索に連れていける』
『ゲーム内の被弾数・撃破数に応じてゲーム全体の難易度が変化する』
『↑の難易度次第で出現するボスが変化する』
等の仕様が存在するのだが、これらは一切ゲーム中では説明されない。
これらが明かされたのは公式サイト…ですらなく、ゲームメディアのインタビュー記事である。当然、自分はこんな仕様を知らなかったため、ほぼ全ての要素をコンプリートしてもなお『ボス撃破』系のトロフィーが残ったことに首を傾げる事となった。
(ボス撃破系トロフィーは最高難易度状態のボスを倒す必要がある)
海外勢の攻略動画ですら、そもそもの大前提であるハズの基本仕様の解説からスタートし、その解説の根拠がファミ通インタビュー記事の翻訳という状況なのは流石に異常である。
あとコレに関してはあのコンビの作品だといつものこと*なのでぶっちゃけ予想できてはいたが、カメラ周りに癖があるため、3D酔いがかなり発生しやすい。よって3D耐性のない人にはあまりオススメできない。特にステージがナチュラルに90度単位で回転する10章と12章は普段から3Dゲーに慣れている人間でも余裕で酔いかねない危険地帯、プレイする際には適度に休憩を挟むべし。一応フォローしておくと、10章と12章は『酔いやすい』という一面にさえ目を瞑ればシステム的にもバランス的にも今作屈指の良ステージである。特にデザイン周りの力の入り様は凄まじい。
(むしろそのデザインが100%酔いを誘発する方向に作用しているのがアレなのだが)
*レジェンドコンビの3D作品
もはやファンは慣れたものだが、
このコンビの3D作品では共通して『酔いやすい』という特徴がある。
ローポリフィールドを探索するシステム上そもそも酔いやすい『バーニングレンジャー』、
カメラが暴れまわることから経験者はまずオートカメラをオフにする『ソニックアドベンチャー』、
システム的には高速2DACTなものの3D表現を多用する『NiGHTS』等。
まとめると、今作を簡単に表すならば即ち『評価すべき点は確かに多いが、その評価点が問題点までも内包してしまっているゲーム』である。
今作の評価点は
・シンプルな操作
・探索しがいのあるフィールド
・一部コスチュームの爽快感
・センスあふれるステージデザイン
・良質かつ長めなムービー演出(特にバランチャレンジ)
の5つだが、一方でこれらは
・シンプルに拘り過ぎて制約が多い
・序盤はロクな探索ができない
・被弾で消滅することを考慮すると爽快感を味わいづらい
・デザインに力を入れすぎて酔いを誘発
・折角のムービーなのにじっくり見られない&飛ばせない
という問題点を同時に孕んでおり、いずれも手放しに褒めるのは若干厳しい。これらの問題点を受け入れられる(許容できる)かどうかで今作を楽しめるかどうかは大きく変わるだろう。
とはいえ、ここまでの今作の語りを聞いて『なんか懐かしいな…』となった人もいるかもしれない。かくいう自分もその一人。そう、今作は色々な意味でかつてソニックチームが世に送り出してきたゲームを想起させるのだ。
ゲームシステム自体は紛れもなく今作独自のものであり、そこは似ても似つかぬ部分である。だが、今作の有り様は良くも悪くも昔のSEGA、ないしは昔のソニックチームの作品を思い出させる。
特に『ライト向けに媚を売ろうとシンプル路線を突き詰めても、根底がゲーマー向けなので結局ゲーマーしか寄り付かず、かつゲーマー側からはライト向けに入れたシステムが不評気味』という辺りにどこか既視感を抱く旧ソニチファンも少なくないだろう。
ゲーム内の要素にも随所にソニチの魂らしい部分が見受けられ、幻想的な世界観はどこか『NiGHTS』に近く、ワンダーワールドの住人たちは『ソニック』で感じたような馴染みやすさ、ステージを探索する楽しさは『バーニングレンジャー』のソレである。パブリッシャーこそスクウェア・エニックスではあるものの、今作は紛れもなく現代に生まれた『旧ソニックチームの魂を継いだ完全新作』と言っていいかもしれない。
ただし、忘れてはならないのが今作はあくまで『バランワンダーワールド』という完全新作であり、ソニックやNiGHTSの精神的続編では決してないという点。デザインや世界観こそ似通う部分はあるにしても、ゲームシステムや重視している点はそれらとは完全に別物であるため、『ソニックのスピード』や『NiGHTSのテクニック』を求めて今作に手を出すのは大きな間違いである。
何度も語っているが、今作のゲームシステムの根底にあるのは『箱庭の探索』であり、ソニチ的に言えばこれは『バーニングレンジャー』の系譜である。あちらに比べるとシナリオ面や戦闘面こそ薄められているものの、その分探索する楽しさは増している。
今作はいざプレイしてみると確かに粗は多く見受けられるが、同時に魅力的な要素も少しずつだが見えてくるため、なんだかんだで文句を言うこともありながらも、気がつくとどんどん進めてしまう、そんな不可思議な作品である。
令和に生まれた最新作でありながら、どこか懐かしい雰囲気を感じられる今作、かつて『バーニングレンジャー』の探索を心ゆくまで楽しんだプレイヤーは手を出してみるのをオススメするのである。
『バランワンダーワールド(Switch版)』のAmazonページ
※開発元が同じ新作