いろいろとゲームを語ろう

物好きなゲーマーがただただ最近遊んだゲームの感想とか内容とか書いていくブログ。レトロゲームの割合が高いかもしれない。更新は気が向いた時にだけ。

ソニックジャム

任天堂の赤い配管工に対抗すべく、SEGAが生み出した青いハリネズミソニック・ザ・ヘッジホッグ。その人気は当の日本では正直あんまりだが全世界から認められるほどであり、まさしく日本が世界に誇るスーパースターとも言うべき存在である。一部の国や地域に限って言えば現在進行形であの赤い配管工を越えていたりもする彼の『ソニックシリーズであるが、このシリーズは古今東西の一般的なゲームシリーズに比べると、とあるヘンテコな特徴がある。

その特徴とは『やたらコレクション作品が多い』ということ。元々長い歴史を持つシリーズは得てしてコレクション作品が出るものであるが、(看板キャラなので当然だが)SEGA自体が一時期やたらとソニックをプッシュしていたり、ソニック初主演となるメガドラ作品自体がどういうわけか復刻機会に恵まれることが多かったりといった要素が積み重なり、少なくとも自分が把握しているだけでソニック』の名を冠したコレクションは2022年現在リリース済みのものだけでも7本が存在。なんなら来週…ソニックの誕生日たる6/23にはまた新たなコレクションがリリースされるほどである。

そんなソニックコレクションの歴史は如何様にしてはじまったのか?新たなコレクション作品『Sonic Origins(ソニックオリジンズ)』のリリースを目前に控えたこのタイミングだからこそ、今宵は『SONIC JAM』について語らせていただきたいのである!!

ソニックジャム』というタイトルだけではどのようなゲームであるかイマイチ想像しづらいが、その内容は平たく言えばソニックシリーズ初のコレクション作品』である。
(2・3作セットのカップリング等は今作以前にも海外でちょいちょいあったがノーカン)

プラットフォームは64bitゲームハードのセガサターン。なおこの時代のソニックチームNiGHTSバニレンにてんてこまい、なんなら本家のSEGAですら当時全盛期だったバーチャどこからともなく現れた期待の新人ペパルーチョにお熱だったため、サターンでリリースされたソニックは今作を含め僅か3本メガドラ時代の大正義っぷりは何処へ行ったのか尋ねたくなるレベルの凋落具合である。

ちなみに3つのソニックのうち1作ソニックRについては過去記事で死ぬほどガッツリ語り済み。クセや粗が多いのは間違いないが、なんやかんやで非常に気に入っている作品である。

身も蓋もないことを言ってしまうと今作は旧作移植+αという内容であるが、今作の独自要素の大半は後年の移植作品でもフォローされていないものが非常に多く、そういった面で言えばかなりオリジナリティに溢れた作品と言えるのかもしれない。

ソニックジャム』はソニックコレクションの歴史のスタートライン。驚くことにこの時点で後続のコレクションで搭載されている機能は数多く備わっており、また局所的には後続以上に力の入っている箇所すらも存在するのが特徴。

収録されているのは栄えある第一作目ソニック・ザ・ヘッジホッグ、よりスピード感を追求したソニック・ザ・ヘッジホッグ2、アクションに特化した上でストーリー面を強化したソニック・ザ・ヘッジホッグ3、そしてそれらの完結編ソニック&ナックルズ』の4作品。いずれもメガドラ時代にリリースされた2Dアクションの所謂『本家クラシック作品』である。いずれもメガドライブ屈指の名作アクションとして名を知られる作品たちであり、それぞれのボリュームもそこそこ。4タイトルを遊びつくすだけでも充分満足できることだろう。

また収録タイトルの一つであるソニック&ナックルズ』にはメガドラ版発売当時『ロックオンカートリッジ』*と呼ばれるトンデモ機能が備わっていたのだが、驚くことにソニックジャムではこのロックオンすらも完全再現、よって上述した4タイトルのほか、幾億ものスペシャルステージをプレイできる『ブルースフィア』ソニック2のメインモードをナックルズでプレイする『ナックルズinソニック2』正真正銘のソニック3完全版ソニック・ザ・ヘッジホッグ3&ナックルズ』もプレイ可能。

*ロックオンカートリッジ
媒体によっては『ロックオンシステム』とも。
ソニック&ナックルズのROMカセットは通常のモノと形状が違い、
カセット上部に更に別のカセットを差し込めるような作りになっている。
こうして複数のカセットを文字通り合体させることにより、ゲームそのものを拡張可能。
MSX然りニンテンドーDS然り、マルチスロットによるゲーム拡張をハード側が許容した例は
ゲーム史においてそこそこ存在するが、ソフト側で無理やり対応した例は本作をおいて他にない。

ロックオンタイトルの起動時にはちゃんとゲームカセット同士を合体させる『わかっている』演出が差し込まれる。ちなみにソニック1~&ナックルズまでの移植は結構な数が存在するものの、ロックオンタイトルの移植となると地味にレアであり、日本国内では本作以外だと純粋な移植はGC/PS2/Xbox世代の『メガコレクション』系列とWiiのVC(現在は購入不可)だけである。

この当時、コレクション作品といえば『当時のゲームをそのまんま収録するだけ』に留まっているものが大半であった(コレは現代でも少なくない)が、今作はそういったコレクションとは異なり、全ての収録作品に何かしらの手が加えられている。とくに有名なのはソニック1』にてスピンダッシュが使えるようになっているところ。

コレは言葉通りソニック2から導入されたスピンダッシュソニック1でも使用できるようになる』というもの。言葉だけ聞くと非常に簡単な追加であるのだが、このスピンダッシュ付きソニック1というのが本当に長い間移植されなかった。それこそソニック1は本作以降に10をも越える移植が行われたが、本作に次いでスピンダッシュの導入を行ったのはなんと16年後の『3D ソニック1(3DS版)』である。

『3D』の移植は誰もが知ってる移植の鬼エムツーが担当し、当時のインタビュー記事を現在でも読むことが可能。その記事では本作(ジャム)についても触れられているのだが…なんとかのエムツーをもってしても本作のソース解析は困難を極めたことが語られている。事実、『3D』のスピンダッシュは『ジャム』『ソニック2』のものとは微妙に挙動が違う。コレは『3D』をベースにしたSwitchの『SEGA AGES』でも同様

ソニック1にて正真正銘『ジャム』とほぼ同じ挙動のスピンダッシュを再現したのは『3D』の僅か1日後に配信されたソニック狂の天才プログラマーであるChristian Whitehead』×『ソニック狂が設立したHeadcannon』というタッグが手がけるスマホ版が初。まぁコレはコレで元ソースに関係なく作られた目コピ移植なのでソニック1の完全移植として見ると『3D』に軍配が上がるのだが…。ちなみに『ジャム』にてスピンダッシュを追加したのはSEGAのレジェンド級天才プログラマ中裕司である。

そのほかの追加要素では難易度選択機能が挙げられる。難易度はオリジナルノーマルイージーの3段階で、オリジナルが正真正銘メガドラ版そのままの難易度ノーマルではメガドラ版の難易度を再現しつつもソニック2のミスティックケイブに存在した実質即死(トゲだらけなので死を待つしか無い)穴に脱出用のスプリングが用意されるなど、『根本的な難易度はそのままだが理不尽要素を減らす』という調整になっている。中でも大きいのはソニック1・ソニック2の最終面*やソニック3&Kの表ラスボス戦にリングが配置された点であり、この影響で理不尽にやられるような局面は大きく減らされている。

*最終面(ソニック1・ソニック2)
オリジナルでは1・2共に最終面にリングが一切配置されておらず、
必然的にラスボス戦はノーダメでの突破を要求される作りになっていた。
シンプルな1のラスボスならばともかく、
2のラスボスは機敏に動くメカソニック→高耐久で行動が多彩なデスエッグロボという連戦であり、
コレのノーダメ突破はシリーズでも屈指の難関だった。

一転してイージーではかなり大胆に調整が施されており、ノーマルから更に敵配置や足場が良心的になり、1ミスで即死するような地形もほぼ取っ払われている。加えて一部の高難易度ステージそのものがカットオマケにボスの耐久力も大幅に引き下げられる

難易度はオリジナル>ノーマル>イージーとなるが、難易度ノーマルなら純粋なアクションゲーム好きでもそこそこ歯ごたえを感じられ、イージーならゲーム初心者でもなんとか頑張ってED到達が可能。どうしてもメガドラ版と同様の楽しみ方をしたい人ならオリジナルも選択できる…とどの難易度もベストな調整になっている。その中には『ただ敵を消しただけ』『弱くしただけ』のような雑な変更は見られず、総じてステージデザインに合致した丁寧な調整が行われている。

そもそものオリジナル(メガドラ版)の時点で当時のアクションゲームでは控えめな難易度だった本シリーズだが、この難易度変更のおかげでより間口を広げることに成功しているといえるだろう。

難易度変更によるデメリットはコレといって存在しない。強いて言えばイージーではステージが減る分スペシャルステージの機会が少なく、カオスエメラルドのコンプ(≒真END到達)が少々難しいという程度。よって自分の腕にあった難易度を選ぶべし。

更にほぼ全ての収録作品が中断セーブに対応。ポーズメニューからゲームを終了することで難易度・残機・エメラルド収集状況を保持した状態で最後にプレイしたステージから再開できる。メガドラ版ではソニック3・ソニック3&Kを除きセーブ機能が存在しなかったため、非常にありがたい機能である。

オマケモードである『エクストラモード』では任意のステージ単体でのタイムアタックスペシャルステージだけ挑戦するプレイができる。コレによって解禁される要素は特に存在しないので挑むか否かはお好みで。

これらの追加要素のうち、セーブ機能とスピンダッシュは後年のエムツー系列の移植やスマホ版にてフィードバックされ、少々形は違えども面単位でのタイムアタックスマホ版に収録されたのだが、流石にゲーム全編に渡って大きく影響する難易度選択は再現が難しいのか、後年の移植版には存在しない本作独自のシステムとなっている。
(低難易度自体はエムツー系列の移植で追加されたが、内容は今作のモノとは大きく異なる)

上記の追加要素を除き、収録されている4作はいずれもオリジナル版をほぼ完全再現細かな挙動や(致命的なものではない)バグ隠しコマンドで起動する本当のスタッフクレジットやエディットモードまでそのまま残されている。一応ソニック3のアクトセレクトに限っては突入条件が緩和されていたり、一部UIが修正されたりしているが、コレは元々の方があからさまにおかしかっただけなので当然の修正といえる。

数少ない違いはSEが微妙に異なるものに差し替えられている点、それから光ディスクという媒体の都合上ソニック3などのBGM切り替え時に一瞬だけシーク時間(0.5~1秒)が入る…という言われなければ気が付かないレベルのもの。唯一ソニック1に限ってはジャム版で新たに発生するようになったバグ*が存在するものの、意識的に狙わない限り発生しない。

*ジャム版のみのバグ(ソニック1)
ソニック1のラスボス戦はトドメを刺すと爆発演出を起こしながら
ラスボスが引っ込みイベントが進行するという展開になっている。
トドメを刺した時点でイベントのためラスボスが無敵化するのだが、
ジャム版ではラスボスが引っ込んだ瞬間に無敵が解除されるらしく、
『爆発演出中にラスボスが地面に引っ込んだ瞬間にスピンダッシュで追撃』すると、
何故かダメージが通ってしまったうえで爆発演出がカットされ、戦闘が終わらなくなる。

さらにさらにメガドラ版発売当時の説明書も閲覧可能。日本版と北米版の二種類が収録されているので両者の違いを見比べてみるのもよかろう。ちなみに両バージョン収録しているのはあくまで説明書のみであり、ゲームそのものは普通に日本版+αの内容なのでそこは注意である。

ここまで来ると最早収録作品に対する不満点はほぼ存在しないと言っていいだろう。無理矢理挙げるとすればクラシック作品で直接的(?)な繋がりが存在するソニックCD』カオティクスが未収録であるというくらい。しかしながらこの二作はシリーズでも特に移植が難しいことで知られており、前者はコレクションに収録されるまで12年という期間を要し、後者に至っては発売から27年以上が経った現代でもなお移植が行われていないほど。故にコレを問題点というのは揚げ足取りに他ならないだろう。
(内容がどうこうというよりはメガCDスーパー32Xというハード側の問題)

さてさて、ここまでであれば今作は『ちょっと力の入ったコレクション』止まりである。いやそれだけでも充分ボリューミーではあるのだが、今作の魅力はそれだけでは終わらない。むしろここからが今作において最も重要なポイントである。

ソニックシリーズの名作群を楽しめる『GAME』と並び立ち今作を象徴する一大モード、それこそが『SONIC WORLD(ソニックワールド)』である!

タイトル画面からソニックワールドという項目を選択するとあら不思議。そこに広がるのは360度3Dで描かれるソニックの世界…コレがソニックワールド』

ソニック2やソニックCDのスペシャルステージに代表される擬似3Dクォータービューであるソニック3Dブラスト(フリッキーアイランド)等からもわかる通り、早い段階から3Dに意欲的な姿勢を見せていたソニックシリーズであるが、実はソニックシリーズ初めてソニックが3Dフィールドを自由に動き回れるようになった作品は今作、ソニックジャム』なのだ!!
(ソニックシリーズに限らなければ『クリスマスナイツ』が初)

ソニックワールドにはこれといったストーリー等が存在せず、ひたすら自由に走り回ることができる。一応の目的として『ミッション』というものが用意されており、基本的にはこちらの全制覇が目標となる。

ミッションの内容は『リングをX枚集める』『ポイントマーカーを全て通る』といったもの、それぞれに制限時間が設定されており、時間内に達成すると新たなミッションが出現する。もちろんミッションは後半のものになればなるほど難しくなる全てのミッションを達成できれば事実上のゲームクリアとなり、スタッフロールを閲覧できるようになる。

制限時間はそれなりにギリギリに調整されているため、初見でのミッション達成は困難であるが、失敗してもペナルティはなく何度でもリトライできるため、繰り返し挑戦しながら攻略法を頭に叩き込むべし

ミッションとは別枠で制限時間内にどれだけリングを集められるかを競う『ゲーム大会モード』というものもある。コレはTGS1997向けに用意されたものであり、ABCボタンを押しっぱなしにしてソニックワールドに入るとプレイ可能。ハイスコアを記録しても特に報酬があるワケではないが、自分の限界に挑んでみるのもいいだろう。

3D黎明期であることも相まって、このソニックワールドのシステムはハッキリ言ってかなり粗削り自由に動かせこそするがカメラに難があり、操作性もソニックにしては異様に硬くクセが強い。しかしながらバランスの絶妙なミッション3Dアクション特有の探索する楽しさ、そしてソニックならではのタイムアタックとの相性がよく、『動かしているだけで楽しい』という3Dアクション…ひいてはアクションゲーム全般の本質に立ち返った面白さがある。

そして今作時点では粗削りだったシステムはこのあとSEGAソニックチームの手で改良されていき、やがてはサターンの次世代機たるドリキャスが誇る大傑作ソニックアドベンチャー』に繋がる*ワケなのだから大したものである。

*フル3Dソニックの進化の歴史
シリーズ初のフル3Dは前述のように今作のソニックワールド。
これは一部のメディアにて公式から直々に『SA1のプロトタイプ』と明言されている。
ジャムからソニアドまでには同じく3Dでソニックを操作できる『ソニックR』がリリースされているが、
Rがジャムが与えた影響、SA1がRから受けた影響については不明。
(そもそもRとジャム・SA1は開発が別)

そしてこのソニックワールドには『3Dソニックのプロトタイプ』であると同時に、もう一つ別の魅力がある。

ソニックワールドの中にはミッション用のオブジェクトのほか、いくつかのパビリオンが用意されている。これらに入ることで歴代ソニックシリーズの資料やムービーを閲覧できる。そう、ソニックワールドが持つもう一つの顔…それはズバリソニックシリーズのデータベース』である!!

用意されているパビリオンは『ART GALLERY』『CHARACTER HOUSE』『MOVIE THEATER』『MUSIC SHOP』『HALL OF FAME』の5つ。

『ART GALLERY(アートギャラリー)』では過去のソニック絡みのコンテンツやSEGA社内報向けに書き下ろされたソニックイラストの数々が閲覧できる。どのイラストもソニックキャラが生き生きとしているが、共通して『いつもと違ったシチュエーション』であることが意識されているため、一味違うソニックたちを楽しむことができる。ここで収録されているイラストは『メガコレクション』や『ジェムズコレクション』、(現行の紹介映像を見る限り)ソニックオリジンズ』といった後年の移植版にも度々再録されているため、見覚えのあるものも多いかもしれない。

『CHARACTER HOUSE(キャラクターハウス)』では本作に収録されている4作品のキャラクターイラストの閲覧が可能。このパビリオンのみ入口が二か所あり、ソニック側から入れば味方キャラの、エッグマン側から入れば敵キャラの設定画を見ることができる。ソニック1・23&Kでデザインの方向性やタッチが大きく異なっているのがよくわかる。唯一惜しいのは敵キャラ側のイラストは雑魚キャラ+エッグマンのみの収録であり、メカソニックや各種エッグモービルのようなボス格は一切存在しない点か。
(そもそもボス組は設定画が存在しないのかもしれないが)

『MOVIE THEATER(ムービーシアター)』ではその名の通り歴代の様々なムービーを観賞できる。ムービーのラインナップはシリーズの歴史上避けては通れないであろうソニックCD』のOP/EDはもちろんのこと、当時までにリリースされてきた様々な作品やOVAのCM、果てには一部のテーマパークでしか見ることができなかったとされるオリジナルアニメの『ソニック・ジ・アニメーション』まで幅広く網羅している。どの映像も資料的価値もさることながら、中でも『SONIC RIDE』に至っては稼働することがなかった幻のアトラクション用映像の初出しであるため、シリーズファンならば必見。2022年現在でも今作以外では見ることができない内容である。

また、ソニックCDのOP/EDアニメはメガCD実機だとスペックの都合でかなり画質が荒くガクガクに動くものだったのだが、本作に収録されているアニメムービーは新しく作り直したのか、はたまたメガCDに落とし込む前の動画を引っ張ってきたのか非常に滑らかに動く高画質なものとなっている。ちなみにソニックCDは後に『メガコレクション』にムービーのみ収録されたり、『ジェムズコレクション』やスマホ向けにゲームそのものの移植が行われたりしたのだが、それらのムービーはメガCD実機のものではなく今作のものがそのまま利用され続けている。
(数少ない例外として先日発表されたメガドラミニ2には実機同様のムービーが収録されている)

『MUSIC SHOP(ミュージックショップ)』では本作オリジナル楽曲のほか、本作に収録されている作品のBGMやSEを自由に聴くことができる。本作収録の作品はいずれも隠しコマンド等でサウンドテストに入れるので恩恵が薄いようにも感じられるが、それでもわざわざ各タイトルを起動しなくても好きな曲を聴けるのはやっぱり便利ソニック2の未使用曲(通称『ヒドゥンパレス』*)も当然のように再生可能なのがニクい。

*ソニック2の未使用曲
ソニック2におけるサウンドテスト10番、ジャムの当該施設では16番に収録のBGM。
通常プレイでは流れず、サウンドテストでのみ聴くことができる。
サントラではデモ音源と共に収録され、そちらの曲名は直球に『Unused Song』
通称の『ヒドゥンパレス』はROM内に存在した没面が由来で、いつの間にやら定着した。
ちなみに当のヒドゥンパレスは2013年のスマホ版にて陽の目を見ることになったのだが、
そちらのBGMはミスティックケイブの2P対戦の流用。
よって厳密にはこの俗称は正しくない…が今でもこの呼び名を使う人は一定数いる。

なおソニック3とソニック&ナックルズは2つで1つの作品として扱われているらしく、3とナックルズどちらの項目を選択しても再生できる楽曲はほぼ同一。一応3&Kでは流れなかったソニック3版のナックルズのテーマやACT1のボス曲の再生は可能だが、本来ゲーム内で流れない未完成版の&ナックルズのBGM*は再生不可。ただしデータ上はしっかり存在しており、ソニック3内で隠しコマンドを入力すれば該当のBGMを聴くことは可能。なおジャム収録のソニック3はメガドラ版とはアクトセレクトのコマンドが別物になっているが、コマンドについてはソニックワールド内で閲覧可能なので特に問題はないだろう。

*未完成版のBGM
ソニック3のROM内には後編である『ナックルズ』のステージ名やBGMのデータが既に存在する。
これらは隠しコマンドで突入できるアクトセレクト画面で確認でき、
プレイこそ不可能だがBGMだけなら聴くことができる。
通常のステージ曲はおろか真のラスボス戦までほぼ収録されているのだが、
ここで流せるBGMは実際の3&Kで流れるものとは微妙に異なり、
聞き比べてみるとパートが抜けていたり主旋律がなかったりと
あからさまに未完成であることが窺えるものとなっている。
(そもそもメガドラ版だと3のアクトセレクト自体がまんま2の流用で突貫工事臭が凄いが)

『HALL OF FAME(ホールオブフェイム)』はやたら仰々しい名称だが、これはずばりソニックの歴史』を学べるパビリオンソニック1』の開発がスタートした1990年(リリースは1991年)から本作の1年前(1996年)にリリースされた『ソニック・ザ・スクリーンセーバー』発売までのシリーズの歴史が年表形式で閲覧できる。この年表では日本で発売された作品は勿論、それらの海外版海外限定の作品PCへの移植版までも網羅されており、数々の受賞歴やイベントをはじめソニックヘッジホッグ遺伝子(shh)』などソニックに関連する要素も一部ではあるが触れられている。

年表内で用意されている画像は自由に拡大縮小が可能。この年表の一番最初にあるソニック初公開のチラシ(ドリカムのライブで配布された物)等のような貴重な画像もあるため必見である。年代が年代なのでデータが古いのは間違いないが、それでもクラシック時代の歴史を学ぶならば充分すぎる情報量である。

今でこそコレクション作品には標準搭載となった開発資料やデータベースではあるが、1997年当時にこういった要素をゲーム内でカバーしていた作品はほぼ存在しなかった。ある意味今作は今の時代にまで続く多種多様なコレクション作品の始祖とも言えるのではなかろうか。

さて、冒頭でも一度軽く触れたが、ソニックシリーズは非常にコレクション作品が多いコレクション作品のクオリティは主に『収録作品の再現度』と『収録作品の数』で判断される。そして当然といえば当然だが後年のコレクションの方がメディアの差により多数の作品が収録できるソニックのコレクションにおいてもソレは例外ではなく、例えば今作に次いで発売されたソニックメガコレクション(GC/PS2)』では今作収録タイトルを全網羅した上で一部のスピンオフまでもプレイできる。そこにゲームギア作品までも加え入れた『ソニックメガコレクションプラス(PS2/Xbox)』では尚更のこと。

その少し先にリリースされたソニッククラシックコレクション(DS)』では収録ラインナップこそ今作と同一ながらも、DSというプラットフォーム故に『どこでも遊べる』という圧倒的な利点を持つ。
(まぁコイツは携帯性とかソレ以前にもっと根本的な問題を抱えているのだが…)

そして来週(6/23)にリリースされる『ソニックオリジンズ(現状の発表では)一部ロックオンの収録は行われないものの、今作のメイン4作のほか長らく待ち望まれてきた『ソニックCD』までもがセットになるという、ジャムの数少ない不満点を的確に潰したコレクションだといえるだろう。

ならばそれらのコレクションが出揃ったこの時代では今作『ソニックジャム』はお役御免なのではないか?ソレは違う。何故ならソニックジャムはオンリーワンなコレクションだからである。記事内でも触れたように『メガコレ』系列では本作のようなソニック1のスピンダッシュタイムアタックは導入されず『クラコレ』では本作のようなマルチプレイはできない。唯一のライバルと言っていい最新作の『オリジンズ』は(おそらく)スマホ版をベースにした移植であるため、ボリュームの面では今作を上回るかもしれないが『オリジナル版の徹底再現』という一点においては(多分)こちらが勝っている
(スマホ版ベースとは一言も言われてないが、開発や公開情報を考えると間違いなくスマホ版が元である)

何より、2022年現在になっても難易度システムを導入したコレクションは本作をおいて他にはなく、そして今作最大の特徴と言えるソニックワールド』も同様に復刻されたことは一度もないのだ。よって、本作の存在意義は現在でもなお消えることはない

今の時代でも変わらず通用するハイクオリティなゲームが4本(7本)も収録され、それでいて今作のために新作のプロトタイプであるかのような新モードも搭載、オマケで当時にしては完璧もいいところのデータ集まで内包した今作。

ゲームの移植やコレクションの歴史を学ぶうえで一度は手を出しておくことをオススメしたいのである!!
(まぁプラットフォームの壁はあるのでソニックデビューはオリジンズの方が絶対いいと思うケド…)

 

『ソニックジャム』のAmazonページ

『ソニックジャム(攻略本)』のAmazonページ

 

---オマケ---
あんまり話題を挟む余地がなかったので触れられなかったが、
本作の攻略本は収録作品すべての攻略情報や裏技を網羅した上で
主要スタッフのインタビューや裏話描き下ろしオリジナルストーリー
更に当時リリースされていたシリーズ作を(文字通り)全て紹介した上で、
当時のタイアップ商品まで画像付きでリストアップされている超豪華なものなので、
ゲームを持っていなくてもシリーズファンなら必携の内容である。
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