2001年1月にSEGAがハード事業から撤退すると表明したことで、最後のセガハードとなってしまった『DreamCast(ドリームキャスト)』。だがしかし、その寿命はセガハードの中でもかなり長い部類になる。撤退表明後もゲームハード末期特有の恋愛ゲームだけでなく、当時アーケード向けにリリースされていたゲームの移植が精力的に行われてきたからだ。コレはドリキャスというハード自身がアーケード基板NAOMIとの互換を前提とした作りであったためでもある。というわけで今回は我がブログにおける初のドリキャス回、『トリガーハート エグゼリカ』について語っていこうと思うのである!
(導入部がいつもに比べて短いのはネタが思いつかなかったからです)
さてさて今回の『トリガーハート エグゼリカ』は先に挙げたようなアーケードからドリキャスへの移植作品ではあるが、その発売日は2007年2月22日。ドリキャス撤退から実に6年後のリリースとなったドリキャス末期オブ末期の作品である。そのためソフトケースもドリキャスでよく見られたCD型のものではなく、末期作品にちょくちょくあったDVD型のもの(トールケースというらしい)となっていた。
ところで『SEGAハード最後のソフト』という響きはさぞかし魅力的に映ったのか、本作の1年前(2006年)にはわざわざ発売を遅らせてまでドリキャス最後のソフトを狙い、パケ裏に『ドリームキャストの最後を飾る~』とか書いてしまったグレフの『アンダーディフィート』というゲームがあったのだが、本作はそやつから無慈悲にも『最後のソフト』の座を奪い取った作品でもある。嗚呼なんと歴史とは無情なものか…。
…もっとも、本作から2週間後にマイルストーン社から(公式ライセンスの)最後のドリキャス向けソフト『カラス』がリリースされているので、本作もまたドリキャス最後のソフトとはなれなかったのだが。
まぁ余談はこのあたりにしてここからが本題、『トリガーハート エグゼリカ』というゲームそのものについて語っていこう。販売・開発はアテナから連なる老舗STGメーカーの童が担当。元々はアーケードゲームでリリースされたタイトルであるが、今宵語るは先ほどのハナシの通りドリームキャスト版。大元のAC版がNAOMIで動作するタイトルであったため、移植先にドリキャスを選出したのは必然といえよう。ちなみに『トリガーハートエグゼリカ』でも『トリガーハート エグゼリカ』でもなく『トリガーハート エグゼリカ』が正式タイトル。違いがわからない?スペースが半角か全角かってだけだよ。本作のデザイナーさんによるこだわりらしい。
ちなみに本記事で使用しているスクショは画像下に注釈がない限りはいずれも『DC版エグゼリカ』のものである。
本作でまず真っ先に目につく特徴といえば、やはりデザイン方面のハナシに行き着くだろう。タイトル画面からゲーム内デモ、移植版のパッケージ絵まで全編に渡って大々的に押し出されている美少女たち、彼女たちこそが本作における主人公(自機)である『トリガーハート』。この絵に惹かれて本作に手を出した人々も少なくなかったハズだ。
(我もSTGのSの字も知らなかった頃にDC版をジャケ買いしました)
(『ティンクルスタースプライツ(1996/ADK)』)
古くよりのゲーマー層であればSTGというゲームジャンルにはどことなく硬派なイメージがあり、事実横STG御三家(グラ/ダラ/R)のようによく話題に挙げられるタイトルなどはSFを主体としたシリアスな作風であった。しかしながらその一方で新たな客層を獲得するためキャラ方面を強化する道を開拓するメーカーも一定数存在したのも事実。硬派な世界観でありながらもデモシーン等で場違いなまでの美女のスチルが露骨に挿入されるという、そこはかとない大人の事情(『美少女出した方が儲かるんだよォ!!』という叫び)を感じられるゲームも結構な数あった。まぁ中には実際にゲーム性が評価されても美少女要素が足枷になったタイトルなんかもありはしたが…。
(『ダライアスバースト(2009/TAITO)』)
実際ソレは間違っていなかったようで、横STG御三家であるところのダライアスは『Gダライアス(1997/TAITO)』や『ダライアスバースト(2009/TAITO)』にて(上手くいったかどうかはさておき)キャラ要素を導入し、グラディウスはのちに『オトメディウス(2007/KONAMI)』として美少女を猛プッシュするようになった(キャッチーなのはパロからだが露骨に萌えを重視したのはオトメから)。近年にリリースされるSTGでも多少なりともキャラ要素でユーザーを引き込もうとする動きがみられる。STGの歴史を紐解いていくとこういった路線は『フェリオス(1989/ナムコ)』あたりが先駆者となり、1990年代初頭あたりがトリガーで爆発的に広がっていく。2000年代に入ってからのSTGはよほど硬派なシリーズものでもない限りは美少女キャラが作品の中核、或いは顔役のポジションを担っている。
そんな美少女要素を推し、自機が美少女であることも珍しくなくなったSTGだが、どうも自機の美少女の方向性にはある程度偏りがあった。具体的には『ファンタジー』『メルヘン』に向いた魔法使い…つまるところ魔女っ娘が主体の『魔女っ娘STG』が非常に多かったのだ。まぁSTGというジャンル上、自機は弾を撃たなくてはならず、自機を女の子とするのであれば『魔法』というのは都合がよかったのだろう。あと自機を美少女としたSTGで最初にヒットしたのが『コットン(1991/サクセス)』なのも大きかったのだと思われる。こういうのはいつの時代でも偉大な先駆者の影響を受け続けるものなのだ。
さて、STGに美少女要素が多分に含まれるようになってさほど珍しくもなくなった2006年、『トリガーハート エグゼリカ』はアーケードにて稼働を開始した。しかしながら本作のビジュアル面にはほかのSTGと大きく異なる特徴があった。自機が女の子…というだけであればこの時代には既によく見る特徴であったが、本作の自機はただの美少女ではない…スク水や競泳水着にマシンパーツをくっつけた『メカ少女』だったのだ!
一般的には『MS少女』から浸透したとされる『メカ少女』文化の歴史は極めて古いものであり、本作が稼働した時点で少なくとも誕生から20年近くが経過していた。それゆえ本作がリリースされた時点でマニア層はもちろん一般層にも受け入れられており、メカ少女の登場する作品は当時の時点でそれなりに存在した。しかしながらそれらのメインストリームはまだ漫画やアニメ、フィギュアが主流であり、ゲームという分野においてはさほど浸透していたとは言えなかった。もちろんゲームにメカ少女がこれまで一切なかったかといわれるとNOで、例えば古いものでは『銀河お嬢様伝説ユナ(1992/ハドソン)』が、近い時期だと『武装神姫(2006/KONAMI)』が登場している。
ならば本作『トリガーハート エグゼリカ』のどこが画期的かと言われると、それまでゲームという媒体においてはまだ浸透していない、あるいは登場するにしてもADVなどごくごく一部のジャンルに限られていたという扱いであったメカ少女をシューティングゲームの自機/ライバル機として導入した点にある。女の子が自機のSTGの方向性がややメルヘン方面に偏る中、本作はメカ少女の分野を取り入れることで美少女要素をフォローしつつ、前時代のSFな世界観を構築することに成功しているのだ。
(我が知らぬだけで本作以前にもあったかもしれないが、そこは目を瞑ってほしい)
さてさてここからは本作のキャラ要素について語る…前に『んで、どういうゲームなんだよ!』とそろそろツッコまれそうなので、ひとまずは本作のゲーム部分について紹介していくとしよう。
基本的なゲームシステムはオーソドックスな縦スクロールのシューティング、ステージクリア型で敵弾の量は結構なものながら、自機の当たり判定は非常に小さい…要は『弾幕STG』のカテゴリに属するタイトルである。全5面構成で周回などはない1周エンド、ミスやコンティニュー時はその場からの復活となる。
使用するボタンは3つ、ショット・ボムは説明不要として残り1つは『アンカー』、これこそが本作を象徴するアクションである。アンカーを使用すると正面にいる敵を『キャプチャー』することができる。
キャプチャー中というのは敵を掴んでいる状態を指す。アンカーボタンを離すとその場でキャプチャーを止め掴んでいた敵を倒すことができるが、それだけでは勿体ない。本作ではアンカーボタンを押しっぱなしにしている間はキャプチャー状態を保持したまま動き回ることができるのだ。
そしてキャプチャー中にショットボタンを入力し、更にその状態でスティックを回転させると敵をグルグルとぶん回すことができるのだ。当然振り回されている敵には判定が発生しており、敵弾を打ち消せるだけでなく直接敵にぶち当てることも可能。そしてここでアンカーボタンを離すと…?そう、手放したその方向へ一直線に振り回された敵がすっ飛んでいく。その軌道上にある敵弾や敵キャラを片っ端から破壊しながら。これぞ本作を本作たらしめるアクション、その名も『アンカーシュート』である!
敵をぶん回さずに盾として扱うこともできるほか、敵をぶん投げた時の威力は絶大で、その火力たるやボスですら一瞬にして溶かしかねないほど。更にキャプチャーを利用して倒した敵は得点アイテムに変わるためスコアアタック狙いでは必須のシステムとなっている。
キャプチャーにかかる時間は敵ごとに異なり、大型の敵であれば通常よりも長い時間をかけないと掴むことができない。当然キャプチャーに成功するまでは無防備になってしまうため、その間はなんとかして凌ぐ必要がある。しかしながら大型の敵はそれだけぶん回した時の攻撃範囲が広いし、敵の攻撃で破壊されることも少ないため非常に便利である。
全ての敵をキャプチャーできるかというとソレは違う。戦車をはじめとする地上にいる敵やステージボスなどは当然キャプチャーはできない。そういった敵に対しアンカーを撃つと『ロックオン』になる。ロックオンはアンカーボタンを押しているあいだ引き継がれ、その状態でショットを撃つと全ての弾がロックオンされた敵に向かって飛んでいく。
ロックオン中は普段分散している自弾が集中するため、通常のショットよりも火力が望めるほか、自動的に敵を狙ってくれるためプレイヤーは弾幕の回避により集中することができる。まぁ一直線に敵に向かって飛んでいくため、敵との間に遮蔽物があったりすると思ったように削れなかったりもするが、そこは位置を調整してカバーすべし。
さて、掴んでは投げ、そしてまた掴んでは投げを繰り返し、敵弾から身を守りつつスコアを稼ぐ…これこそが本作のオーソドックスなプレイスタイルとなる。そのひたすら敵を投げ続ける姿から、いつしかアンカーシュート或いは本作そのものは一部のユーザー層から『室伏』などと呼ばれるようになった。というか後述するSwitch版のTGSステージではとうとう(権利を取得した)公式にすらそう呼ばれた。
…とはいえ狙い通りに敵をぶち当てるのはやや難しく、オマケにキャプチャー中は通常ショットが撃てなくなってしまうというデメリットもあるため、コレだけやっておけばいいというわけではない。あくまでアンカーシュートは上級者向けアクションといった扱いなので最初は使いこなせなくても大丈夫である。ただし4面終盤のようにキャプチャーを活用することでとんでもない爽快感を得られる場面もあるので、少しずつでも覚えていきたいところ。
さて、先に挙げたようにアンカーシュートを利用して倒した敵は得点アイテムに変化する。得点アイテムはショットボタンを離すと自動で引き寄せられる。これ自体は割とよくあるシステムであるが、本作においてはこの得点アイテムが後述の『V.B.A.S.』に深く関わってくるので一度ここで触れておいた。
アンカーシュートと並び本作のシステム面における特徴、それが『V.B.A.S.』である。正式名称は『Variable stage Boss Attack System』、平たく言えばシューティングというゲームジャンルにおいてお約束ともいえるランクシステムの延長なのだが本作におけるソレはボス戦の内容が大きく変化する点が見どころである。近いシステムを採用した例でいえば『Rez』あたりか。
本作では集めた得点アイテムの数に応じてボス戦の形態数が変動する。道中でしっかり稼ぎを行うような上級者であればボスが3段階・4段階と形態変化(=その回数分体力を削りきる必要がある)し、逆に稼ぎをほぼほぼ行わない初心者であればボスは1形態で終了する。当然ながら稼ぎありでのみ出現する形態は相応に攻撃パターン/弾幕量ともに凄まじく一筋縄ではいかない。一方で1形態で終了する場合ならばその攻撃の量も控え目なので初心者でもなんとか突破できる程度の難易度に収まるようになっている。本作ではこういった稼ぎの有無によるボス戦の変化がゲーム内の全ボスに対して行われるのが特徴なのだ。また形態変化とは別に稼ぎの状況に応じてボス戦後に更に別のボスが乱入するケースもある。
ここからはお待ちかね、キャラと世界観設定について語っていこう。
まず本作のシナリオはややシリアス目な作風で、ざっくり語ると『ヴァーミスと呼ばれる兵器に対抗するため防衛組織チルダがトリガーハートという少女型兵器を投入するも、戦いの最中トリガーハートのうちエグゼリカとクルエルティアが地球に飛ばされてしまう。それから二人は地球で暮らしていたものの、地球にもヴァーミスの侵略の手が迫ることとなり、再びトリガーハートたちはヴァーミスとの戦いに向かう』…というものになっている。
そしてトリガーハートとされる存在こそが本作の自機であるエグゼリカ(CV:河原木志穂)とクルエルティア(CV:清水こずえ)である。ともに記事の上の方で散々語ってきた通りのメカ少女であり、エグゼリカが白スクの小柄な方、クルエルティアが競泳水着の方である。この両者は外観以外にキャラ性能でも差別化されており、アンカーの性能・移動速度・ショットの挙動の3点が異なる。
エグゼリカは通常ショットが広い範囲に広がる代わりにアンカーの性能がやや低め、逆にクルエルティアはショットこそ狭い範囲だがアンカーの性能が高い。基本的にクリアだけを目標とするならエグゼリカの方が初心者向けだが、スコアタを狙いだすとクルエルティアに軍配が上がるといったところ。
PS2版だと更にもうひとり登場するが、アーケードの時点だとゲーム内に出てくるメカ少女は上記のトリガーハート2名のほか、乱入ボスであるフェインティア・イミテイト(CV:石橋優子)のみ。それ以外の敵キャラは全て機械機械染みたマシーンたちである。そもそもトリガーハートが少女型なのはチルダ(味方)側の都合なので当然である。
本作について話題になるときは専ら室伏…もといアンカーシュートとキャラ要素となるくらいには重要なファクターをしめているだけあり、本作のキャラ人気はとにかく絶大なものとなっている。当時のアケゲー専門誌『アルカディア』のキャラ人気投票では主要キャラが軒並みランクインを果たし、特にエグゼリカに至っては首位を獲得しているほどである。
ちなみに本作のキャラクターデザインを担当しているのは当時童に所属していたGRAことかこいかずひこ氏、本作以降もたびたびメカ少女の作品に携わるお人であり、本作のことを知らずとも『武装神姫(アーティル/ラプティアス)』や『アリス・ギア・アイギス(依城えり/文島明日翔など)』で氏の名前を存じている人も多いはず。
STGといえばやっぱり気になるのはBGM、本作のBGMは『プリンセスメーカー』などを手がけたKAJAこと梶原正裕氏が担当している。可愛らしい見た目に合わせた軽めの曲調から、STGらしい燃えるようなノリのいい曲までバリエーション豊かなBGM群のクオリティの高さは間違いなく本作の高評価の一因を担っていると言っていい。
特に人気のある曲といえばやはり1面で流れる『エグゼリカ、暁に舞う』であろう。この曲によって本作に引き込まれたという人がいてもおかしくない。スコアタをやるほど本作をやりこんだ人であればフェインティア・イミテイト戦で流れる『深紅の衝撃』も印象に残ることだろう。あまり話題にはならないが個人的にはキャラ選択画面で流れる『トリガーハートたち』がイチオシである。
本作の音源は(おそらく)通常の販売は行われておらず、ドリキャス版の初回限定版にてドリキャス版追加楽曲+未使用曲+限定アレンジと共に収録されたサントラが同梱された1度きりであった。我は昔ドリキャス版を購入した頃、まだSTG自体に慣れ親しんでいなかったこともあってゲーム自体はサッパリであったが、BGMの方にはすっかりほれ込んでおり、そのころからずっとこの同梱サントラを聞き続けていたりする。
(後述する360版のアレンジは長らく音源化はされていなかった…ハズ)
…とまぁこんなところがオリジナルのアーケード版時点から存在する『トリガーハート エグゼリカ』というゲームの主な特徴である。ここからはその最初の移植版であるドリキャス版で追加された要素について触れていこう。このドリキャス版では原点であるアーケード版の要素をそのまま引き継ぎつつ、更に初心者・上級者の双方へより間口を広げたような移植になっている。
そもそもの根本的な移植度については大本のアーケード版がNAOMI基板ということもあってほぼほぼ完璧。よほどアケ版をやりこんだプレイヤーでもない限り違いが気になることはないだろう。基本画面設計は横となっているが、設定で縦画面表示も可能、でも横画面は横画面で美麗な壁紙を見られるのが嬉しいところ。
アーケード版の時点でかなり間口が広めのシステムが特徴の本作であるが、このドリキャス版では充実したオプションを搭載。代表的なのは『キャプチャ中のオートぶん回し』なんてものもある。地味に右回転か左回転かも指定可能。このおかげで本作で唯一とっつきづらい要素でもあったアンカーシュートも扱いやすくなっており、より初心者でも楽しめるようになった。とはいえオートぶん回しを有効化すると常に回転させ続けてしまうほか、回転方向も固定されてしまうため攻略面ではやや小回りが利きづらくなる場面もないわけではない。
難易度選択も可能であり、最低難易度であるEASYに設定すれば一部の敵弾を通常ショットで相殺できるようになるため更に初心者フレンドリーになる。こういったオプションではお約束のボム数や初期残機、エクステンド設定も変更可能。スコアランキングは各難易度/使用キャラごとにそれぞれ別集計される。
ドリキャス版では3つのゲームモードが用意されている。ひとつはアケ版の移植である『アーケードモード』、そして残りふたつがドリキャス版の目玉である『ストーリーモード』と『アレンジモード』である。ひとつずつ触れていくとしよう。
まず『ストーリーモード』は読んで字のごとくシナリオを楽しみながらプレイを進めていくモードである。世界観設定については上で触れた通りではあるが、アケ版時点ではアーケードゲームらしくシナリオ描写はせいぜい背景演出を通して行われるものと終盤のイベント+デモシーン程度なものであった。
このストーリーモードでは各ステージの開始時にテキストでの会話イベントを挿入することでよりシナリオをわかりやすく、そして没入しやすくしている。もちろんテキストは全てフルボイスで、大筋の流れこそ共通ながらエグゼリカ/クルエルティアのどちらを使用しているかでテキストも変化する。
ちなみに肝心のステージ構成自体はアーケードモードのものと同一、強いて言うならばシナリオをより盛り上げるためか稼ぎに関係なく乱入ボスが必ず出現するようになっている点が違う。あとは些細なモノながらラスボス戦の直前にストーリーモードでしか戦えない新規ボスが追加されている。
(アーケードでも登場するのだがそちらは戦わずに終わるイベント扱い)
また新たにエンディング分岐の概念が導入されており、『ラスボス戦までノーコンティニューで到達』という条件を満たすことでアーケード版とは異なるエンディングを見ることができる。エンディングの内容はキャラによっても異なるため、実質的にこのストーリーモードでは4パターンのエンディングが用意されていることになる。アーケード版と同じ結末であってもストーリーモードであれば新規のCGと共に専用のエピローグが流れるため、そちらも必見である。
アーケード版と異なるエンディングを見る条件は先に挙げた『ラスボス戦にノーコンティニューで到達』…ということからハードルが高いようにも思えるだろうが、実際にはノーコンティニューでさえあればほかの条件は問わない。難易度EASY+初期残機5+初期ボム3+250,00,000エブリエクステンドという徹底した低難易度設定にすれば、無理して稼ごうと思わない限り充分STG初心者でも達成できるハズ。ヤバい時は遠慮なくボムを使うことで突破率は目に見えて上がるためしっかり覚えておくべし。
そしてもうひとつの目玉が『アレンジモード』、これは上級者向けの挑戦状といった意味合いのモードであり、弾幕の量も敵の行動も非常に容赦ないモノとなっている。オマケに難易度設定もコンティニューも不可。しかしその一方で得点アイテムの出現量が他モードの比ではなく、ガンガンとスコアを稼げるのも魅力。画面いっぱいに得点アイテムが出た瞬間の脳汁はなかなかのものである。とはいえアーケード/ストーリーをガッツリプレイして本作のシステムを理解してから挑戦することを推奨したい。
ちなみにアレンジモードに限りステージ道中のBGMがアレンジバージョンに差し変わっているのも特徴。基本的には原曲を踏襲しつつより豪華に、ムーディーになったアレンジであるためこちらもまた良曲揃い。個人的には本作の顔ともいえる『エグゼリカ、暁に舞う』はこのドリキャス版アレンジモードバージョンが一番お気に入りである。
このほかにも任意のステージをパワーアップ段階などを選択してプレイできる『トレーニングモード』なんてのも搭載。苦手なステージの練習やパターン記憶に役立たせるべし。
この説明からも理解できる通り、ドリキャス版は『トリガーハート エグゼリカ』の初の家庭用移植でありながら既にパーフェクトな内容となっており、非の打ちどころはない。本作はのちに別のプラットフォームに移植はされてきたが、ドリキャス版の要素の一部はそれらに引き継がれることがなかったこともあって、長らく本作が家庭用エグゼリカの最適解のようなポジションにあった。せっかくなのでここからはドリキャス版以外の移植について語っていこう。
(まぁガッツリ語れるのは360版くらいなのであるが)
(360版『トリガーハート エグゼリカ』)
まずはXbox 360版、こちらはXBLA…つまりはパッケージ版などが存在しないDL専売のタイトルである。Xbox系列のハード特有の後方互換機能に対応しているため(購入しているならば)後継機たるXbox OneやXbox Series X/Sでもプレイ可能。ドリキャス版にあったストーリーモード/アレンジモードは共に存在しないがオプション関係は続投している。シナリオ要素やキャラ紹介についてはヘルプ画面に全部押し込めるというなんとも簡素な形式。
ゲーム自体はドリキャス版でいうところのアーケードモード一本に纏められた内容になっているが、実際のアケ版ともドリキャスにあったアーケードモードとも異なる箇所がそこそこ多め。局所的にストーリーモードの要素も導入されており、エンディング分岐やラスボス直前の乱入ボスもある。また会話デモ(アケ版仕様)の発生タイミングも微妙に変わっていて、その影響で新規ボイスも収録されている。
(360版『トリガーハート エグゼリカ』)
エンディング分岐は条件が『ノーコンティニューかつ乱入ボスを全て倒してラスボス到達』…とドリキャス版以上に厳しい難易度になったため、最低難易度でもある程度稼ぎを意識しないと少々ツラい。しかしながら360版の分岐エンドはアケ版は勿論ドリキャス版の分岐とも異なる内容になっているので、ぜひ到達してみてほしいところ。
360版ではBGMはアレンジとオリジナルから選択可能なのだが、アレンジを選択した場合はドリキャス版と異なる新規アレンジが流れるようになる。こちらのアレンジはキャラ選択やボス戦も含め全曲アレンジとなっており、フェインティア・イミテイト戦に至っては乱入した場面によって3パターンもの個別アレンジが用意されるようになっている。特に5面のバージョンがおすすめである。
次世代機らしくグラフィックはより高解像度化。フレームレートもアップしているため、そういった方面での遊びやすさは向上している。またオンラインランキングにも対応しているのも特徴のひとつ。長らくエグゼリカのオンラインランキングは360版にしかなかった要素だったのだ。ただオートぶん回しの回転方向固定ができなくなったり等、微妙にシステム関係でドリキャス版に劣る箇所もあるのが難点ではある。
続いてはフィーチャーフォン…つまるところ携帯電話版である。そもそも携帯電話でエグゼリカとか可能なのかと思うが…まぁ実際いろいろSTGがフィーチャーフォン向けに出ていたという事実はある(この辺は最近になって知りました)のでエグゼリカも大丈夫だったのだろう…。アンカーシュートとかどうやって携帯でやるのかは正直気になるところだが。ちなみにWikipediaの記述を信じると、これまたのちの移植に引き継がれなかった新モードや新ステージがあったらしい。
そして最後に登場したのがPS2版。こちらのみタイトルが異なり『トリガーハート エグゼリカ エンハンスド』となっている。…この説明でなにか疑問を感じたお方は優れた分析力をお持ちである。そう、エグゼリカはアーケードからはじまりドリキャス→360と順当に移植され、(間に携帯電話を挟みつつ)その後に何故か前世代機であるPS2に移植されたのだ。PS3やWiiならまだわかるがいったい何故PS2に…?当時の普及率や客層の問題だったのか…?
販売はそれまでと異なりアルケミストが担当、過去記事でいうなら『ぎゃる☆がん』のところである。美少女ゲームの移植を多数手がけてきたメーカーということもありキャラ/シナリオ方面を充実させた移植で、オープニングムービーやストーリー演出の強化、設定だけの存在であったフェインティア(CV:水樹奈々)を新規プレイアブルキャラとして追加したりといった点が特徴である…が肝心のSTG部分の評価はあまり芳しくなかったと聞いている。なおフィーチャーフォン版とPS2版の紹介が伝聞調なのは我がそれらを所有していないからである。申し訳ない。
この通りCSで出た移植群は『ストーリーモードとアレンジモードがあるドリキャス版』『オンラインランキングに対応した360版』『ストーリー演出特化かつ追加キャラもいるPS2版』とどれも一長一短であり、各機種ごとにオンリーワンな要素が用意されていた。このうちのどれを選ぶべきかについては、そのプレイヤーが何を求めているかによって異なるだろう。しかしながらパッケージ販売であるドリキャス版とPS2版は共に結構なプレミアが付いてしまっており、今の時代に手を出すにしては些かハードルが高い。
というわけで長期に渡ってエグゼリカのデビューに最も向いているとされてきたのが360版である。DL販売ゆえどこでも入手できるうえ、他の移植に比べるとかなり安価であったことが大きかったのだろう。…しかし、非常に残念なことに360版はつい先日(2023年8月末)に配信を終了してしまった。そのため現在はそれ以前に購入していた人でなければプレイできない。…だが悲観することはない!
(この記事を書いている真っ最中に配信終了の報を聞いたのでビックリしました…)
(360版『トリガーハート エグゼリカ』)
実は本作『トリガーハート エグゼリカ』、今年になって急激に復活の兆しを見せている。なんと童が所有していたエグゼリカの権利を近年『式神の城II』や『ファンタビジョン』を復活させたコスモマキアーが取得したというのだ。そしてコスモマキアーはエグゼリカを現行機種…具体的にはNintendoSwitch向けに移植するというクラファン(応援購入プロジェクト)を実施、見事最初のストレッチゴールを達成している。自分?もちろん応援購入しましたぜ。360版アレンジや未収録曲込みのサントラといわれると購入する以外の選択肢なぞなかろう!
現時点で発表されている情報によると、こちらのSwitch版はアーケード版の忠実移植であるアーケードモードのほか、かつてドリキャスにて追加されたストーリーモード&アレンジモード&トレーニングモードを搭載、更に360版同様にオンラインランキングにも対応…というアケ版・DC版・360版のハイブリッドになるとのこと。おまけにゲーム内のサウンドはアケ版や移植版のモノにも変更可能、このシステムの充実具合…おそらくはこれこそが17年の時を超えて帰ってきたエグゼリカの決定版になると断言してもいいだろう。ちなみにPS2版の要素は含まれていないが、コレは当時のメーカーにPS2版の資料が残されてなかったかららしい。アルケミストェ…。
リターン品としてのSwitch版エグゼリカのDLコードの配信は2023年の11月末とのこと。おそらくはDL版の一般販売もそのあたりの時期であろう。また今回はパッケージ版の販売も行われ、そちらの発売日は2023年12月14日!まだプレイしたことのない人も、かつてアケ版やCS移植版で敵をぶん投げまくったプレイヤーもぜひぜひ手を出してみるべしであるぞ!
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