さてさて、『レトロゲーム語りがメインかも』とかブログ紹介に書いてる癖にここ半年は最新ハードの作品ばかり語っていたので、今回は久しぶりにレトロなハード、ニンテンドーDSの作品について語るのである…いやいや、言いたいことはわかる。DSをレトロゲー扱いしていいモノなのかは自分としても非常に悩ましいのだが…DSって2004年発売なんすよ…。下手すると今の高校生が生まれる前のハードなんですよ…。
まぁそんなこんなで今回は『みずいろブラッド』を語っていこう!今作を購入したのは遥か昔、しかしいつものように今の今まで放置してたため、先日一気にプレイ、完全クリアしたのである!
公式が提示するゲームジャンルは『即死系ハチャメチャラブコメディ』、コレだけ聞くとよくわからないと思うかもしれないが、実際にプレイしてみると大体その名の通り。より噛み砕いて言うならば『ミニゲーム集』のような内容である。
パブリッシャーはバンダイナムコゲームス(現:バンダイナムコエンターテインメント)、後述するデザインや世界観のことももあってかナムコ側(ナムコレーベル)の作品に思えるが、実はこう見えてバンダイ側(バンダイレーベル)の作品。このため今作のデベロッパーはバンダイ系作品を多数手がける『クラフト&マイスター』である。
(まぁ今の時代ではレーベル自体にさほど意味はないのだケド)
まずは世界観について説明していくが、基本的には画像のようなデフォルメ調の可愛らしいキャラクター達が多数登場する感じである。また、主人公(と親友)が真っ二つにされて水色の血飛沫(タイトル回収)をブチ撒けるのが恒例のお約束オチになっていることからもわかるように、ゲーム内の世界観はかなりゆるーいものとなっている。
登場キャラもシュール&カオスの極みであり、恋に恋する乙女で暴走しがちな主人公『みずいろちゃん』を筆頭に、何故か工場で大量生産されているカマボコ『ラブネリちゃん』に典型的(?)ワルガキだけど一途な『くろはらくん』、無口で気になるカレな『加藤くん』などなど、所謂『普通のキャラ』が存在しない。シナリオ上で特に目立つのは上記4人だが、このほかのサブキャラもまたインパクト全開である。
なお、どことなく『太鼓の達人シリーズ』を想起させるデザインだが、コレは今作のキャラデザ担当が太鼓の達人シリーズでおなじみの横尾有希子氏であるため。キャラデザ繋がりのゲストキャラとして同シリーズの『和田どん&和田かつ』もシナリオに登場する。
シナリオでは『ブラッド学園』に入学した主人公『みずいろちゃん』の1年間の学園生活が描かれており、入学式からはじまり、文化祭や運動会など学校行事のほかに、加藤くんをストーキングしたり夏休み中は宿題やバイトに奮闘したりと賑やかなラブコメとなっている。
フルボイスではないもののボイス自体はしっかり用意されており、ムービーシーンや後述するミニゲームの回答時に流れたりする。ラブネリちゃんの叫び声やみずいろちゃんの鼻歌はなんか妙に耳に残るため必聴。
シナリオは『第〇〇話 ××の巻』といったような形式で区切られ、各話それぞれが『ムービー(トラブル発生)→ミニゲーム→ムービー(トラブル解決)』といった構成。なので基本的にはムービーとミニゲームが交互に挿入される形になる。一度クリアした話は後からいつでもプレイ可能。
ミニゲームの内容は各話によって異なり、代表的なのは『よみがな』『しりとり』『あなうめ』『かけっこ』『シューティング』あたり。全体的に文字を手書き入力して進めるゲームが多めで、いずれのゲームも制限時間付きなので素早く正確に入力しなくてはならない。
『よみがな』は『出題される漢字の読み』を回答するゲーム。漢字の読みについては音読み・訓読みのどちらでも正解になるので難しい漢字でも割とどうにかなることが多い。訓読みしか存在しない漢字や人名の読み?真面目に勉強したまえ。
『あなうめ』は読んで字の如く『単語の穴埋めとなる字』を回答するゲーム。基本的に前後の文章の流れから簡単に推測できるものも多いので難易度は然程ではない。ちなみに穴開き部分は出題の度に変わるのでちゃんと単語単位で覚える必要あり。死語クイズは根性で頑張りたまえ。
『しりとり』はその名の通りしりとり、『かけっこ』は連打ゲー+回避ゲーで連打した分だけ移動、ジャンプボタンで障害物を回避しながらゴールを目指すもの。
『シューティング』は名前的に身構えてしまうが、タイミングよくタッチするだけで自動的に敵を倒せるため簡単、敵はBGMのリズムに合わせて出現するためどっちかといえばシューティングというよりも『リズムゲーム』である。『リズム天国』をイメージするとわかりやすい。
ゲーム中で特に多く挑戦することになるミニゲームは上記のものだが、これ以外にも多数の要素を一気に覚える『記憶ゲーム』や重なり合って流れる文字を正確に読み取る『動く文字』などバリエーションも豊か。
その中でも特に目立つのは『ツッツクツー』や『ジリジリ』などと呼ばれるリズムに合わせて回答するゲームで、お気楽なノリと可愛らしいキャラ、回答のボイスとシュールな出題も相まってかなり印象に残る。
いずれも『単純にストーリーを進めるだけ』ならクリアは簡単で、最初の数問を正解するだけで最低限のクリアノルマは達成可能。わからない問題はパスで飛ばすこともできるほか、不正解時にはその時の問題の回答と説明(アクション系ルールの場合は蘊蓄)が表示されるのでありがたい。
ただし、最高ランクの金メダルを目指そうとすると話は別であり、この場合は出題された問題をパスなしで全問正解する必要があり、そこそこ手ごたえのあるゲームに変貌する。
…え、『チビッ子向けのゲームだし全問正解なんてラクショーでしょ?』と思った?漢検1級相当の難読漢字を当然の如く出題してくるゲームがチビッ子向けとでもお思いか。
そう、基本的に今作の難易度はかなり低い、金メダルを目指すにあたっても『よみがな』と『しりとり』以外は至って簡単…なのだが、この二つは金メダルを目指した場合の難易度がかなりエゲつない。
『しりとり』は序盤のものこそ楽勝だが、文字数制限が入るようになるのは序の口で、終盤には執拗に同じ文字(それも絶妙に厄介な『ぱ』行)ばかりを返してくるようなイヤらしい戦術を使ってくるようになるため、こちらも相応に作戦を練る必要がある。
そしてなによりもヤバイのは『よみがな』であり、なんとチュートリアル直後の第2話の時点で『薊』『菘』『蓼』などの難読漢字が普通に出題される。これら程度ならばまだ音読みで切り抜けられることもあるが、中盤では『鯏』『鯑』『鰰』など音読みが存在しない漢字が出題されるためかなり厳しい。通常クリアならばパスで飛ばせばいいだけなのだが金メダル狙いだとパス使用不可のため一気に難易度が跳ね上がる。
ただし、その分金メダルを入手した時の達成感もひとしおであり、やり込みがいがあるともいえる。特に『しりとり』については相手の戦術がかなりイヤらしい(=かなりの強敵)という事もあり、何度プレイしても普通に楽しめるのが魅力である。金メダル狙いのプレイの際にはムービーを飛ばしていきなりミニゲームを始めることもできるため、やり込みプレイヤーにもかなり優しい仕様なのもありがたい。
一定以上のランクでミニゲームをクリアするとミニゲーム後に『おかあさん(単眼で巨体のモンスター)』から『ごほうび』を貰える。ごほうびの内容は様々でシナリオのフレーバーとして機能するもののほかに、どこから拾ってきたのかソルバルウだのスペシャルフラッグだののナムコネタも。おそらくストーリークリア後の最終目標はごほうびのコンプリートになるだろう。
まぁ今作はだいたいこんなゲームである。
ミニゲーム自体の面白さもさることながら、『即死系ハチャメチャラブコメディ』の名に恥じぬ独創的かつほんわかした世界観こそが今作最大の魅力であり、『とにかく勢いで物語を楽しめる作品をプレイしたい!』というプレイヤーにこそ今作をオススメしたいところである!
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と、普段ならゲーム語りを終えているところなのだが、今作についての語りはもうちっとだけ続くのだ。ここからの語りは今作のネタバレにある程度触れるため、ネタバレを避けたい人はブラウザバックしてくれるとありがたい。
最初に語ったとおり今作はほんわかしたゆるーい世界観の物語である。『シュールでコミカルなキャラたちが織りなすラブコメという喜劇』、それが『みずいろブラッド』というゲームなのだ。だが今作にはもう一つ、隠された裏の顔がある。
今作のシナリオは微笑ましいノリで進んでいくわけだが、なんと終盤には一転していきなり極度のシリアスパートに突入する。一応中盤辺りからソレっぽい伏線はそれなりに用意されているため、ある程度『何かあるのかな…?』と予測はできるのだが、ソレにしても急激に雰囲気が変わるため、初見は面食らうことだろう。
さて、突然だが諸君は『UGSFシリーズ』*というものをご存知だろうか。
UGSFは『United Galaxy Space Force(銀河連邦宇宙軍)』という組織を中心に描かれるシリアスな世界観のシリーズであるが、なんとそんなシリアスさとは無縁そうな今作『みずいろブラッド』もれっきとしたUGSFシリーズの一つなのだ。
*UGSFシリーズ
『United Galaxy Space Force(銀河連邦宇宙軍)』と呼ばれている組織が存在するゲーム作品の総称であり、コレに分類されている作品はいずれも地続きの同じ世界の物語ということになる。
『ギャラガ』『ギャラクシアン』『ディグダグ』『ミスタードリラー』『スターラスター』『バーニングフォース』など該当作は多数存在するが、あまりにも多すぎる(+かなり複雑)ため詳細はUGSF公式サイトを参照してほしい。
なお、時系列的に各作品は短くとも数十年~長い物では数千年単位で離れているため、基本的にUGSFシリーズ間の繋がりを知らずとも普通にどの作品も楽しめる、あくまでおまけ要素的なアレである。
しかし、シナリオ中ではUGSFシリーズであることが巧妙に隠されており、おそらく大抵のプレイヤーは今作のラストで初めてソレを知る事となる。
上述した急展開で突入するパートとは即ち『今作のUGSFとしての側面が描かれるパート』であり、ここだけ妙にシリアスなのもそのため。
これまた軽くネタバレだが、ゲームとしての今作は無事(?)ハッピーエンド、お約束のオチとともにコミカルに締めくくられる…のだが、コレはあくまで今作のゲーム側の話、実は今作の物語には『その後』が存在するのだ。
それこそが『みずいろブラッド』の公式ブログである。
普通ゲームの公式ブログといえば『ゲームそのものの宣伝』や『スタッフによる小話』が書かれているものであり、ぶっちゃけ今作もそこは同じ。
ブログの内容は『みずいろちゃんの日記』だったり、『おかあさんのお料理教室』だったり『加藤くんのレトロゲー語り』だったりとまぁ色々。ノリは完全にゲームのソレと一致しており、どこかヘンテコな表現やら哲学やらが混じった文章はまさしくゲーム世界から飛び出してきたような内容となっている。
(まぁゾルギアだのジオソードだのUGSFシリーズの片鱗が見え隠れしているが)
しかしある日、淡々とシビアな現実を告げるニュースのような文章が唐突に投稿され、ブログの雰囲気が一変。それからはあの軽かったノリはどこへやら、シリアスで落ち着いた小説のようなものが投稿されるようになる。そこで描かれていたのは『5年後のみずいろちゃんたち』、即ちゲーム版の後日談であった。
そう、今作のスタッフは『ラストで衝撃的かつシビアな現実を突きつける』という手法を、ゲームとブログの両方で取ったのだ。このどんでん返し極まりない展開とあまりにツラすぎる内容は今でも語り草となっているレベルであり、今作はゲームと公式ブログの両方を体験することで初めて全貌が見える作りとなっているのである。
みずいろちゃんたちが5年後にどうなったかについてはここでは触れない。公式ブログは今でも残っている(タイトルでググれば出てくる)ため、自分の目で『みずいろブラッド』の真の結末を確かめてみてほしい。ただし、読むのはあくまで『みずいろブラッド』のゲームをクリアしたあとである。
先にブログを読んじゃうと印象変わっちゃうから要注意である。
そしてもう一つ注釈をつけておくと、『みずいろブラッド』の物語はゲーム単体でも綺麗に完結している。『ゲームとブログの両方で初めて今作の全貌が見える』と評しはしたが、『ゲームだけに留め、ブログは読まない』という選択肢を取ることもできる。
良くも悪くもブログで明かされる後日談はかなり衝撃的な内容であるため、こちらを読んでしまったら最後、以降ゲーム側に対する見方すらも大きく変わってしまう。『みずいろブラッド』の全貌を見るべきか否か、それは今作のゲームを最後までクリアしたあとによく考えてみてほしいところである。
『ブログとゲームで相互に補完し合う作品』は数あれど、ここまで作品そのものの印象を大きく変えるゲームは他に例がないだろう。今作の可愛らしい世界観に惹かれた人も、今作の手法に興味がある人も、ぜひとも手を出してほしいのである。