諸君らは『JRPG』という概念をご存じであろうか。JRPGとは『ジャパニーズRPG』のこと。RPGの中でも特に『キャラ性が強め』『アニメ・マンガ的』『シナリオ重視』といった日本ならではの要素を重視した作風のモノを指す(諸説あり)言葉である。
このワードの歴史は存外に古いのだが、当初はどちらかといえばマイナスの意味合いが強い言葉であった。『キャラ性が強くシナリオ重視でアニメ・マンガ的』と書くと聞こえはイイが、これらは『自由度が低い一本道』の裏返しであり、そういった作品はRPGの原始的な概念である『ロールプレイ・没入感・リアリティ』を重視する海外のゲーマーから嫌われることが多かったからである。尤も、この頃のJRPGというワードはゲーマーの中でも極々限られた層が使っている程度の知名度であったが。
さて、ある時期を境にして『JRPG』という概念は一般層にも強く認知されるようになる。とあるゲーム会社が『JRPG宣言』と称して、先に挙げたような『JRPGらしさ』を徹底的に追及したJRPGらしいJRPGを多数リリースしたからである。
そのデベロッパーの名は『イメージエポック』、2010年代のゲームに深く触れているのであれば一度くらいは名前を耳にしているであろうゲーム会社である。『JRPG宣言』などと言い出すのは伊達ではなく、このメーカーはリリースしたゲームがほぼ全てRPGであるというトンデモナイ特徴がある。RPGに注力している会社は数あれど、ここほどに開発作品が1つのジャンルに偏っている例は珍しい。
(コマンド式やARPG、SRPGとバリエーションは豊富だが)
…ところでそんなイメージエポックの選択が正解だったかと言われると…少々判断が難しい。イメエポは『セブンスドラゴン(販売:SEGA)』『クリミナルガールズ(販売:日本一ソフトウェア)』といった後の時代に続くシリーズや、『ブラック★ロックシューター THE GAME』『Fate/EXTRA(販売:マーベラス)』といった根強いファンを抱える作品を確かにリリースしていたのだが、一方で『時と永遠〜トキトワ〜(販売:バンダイナムコゲームス)』のようなトンデモ作品もあり、結果的にイメエポがJRPGの顔となることは叶わなかったのだ。
しかしながら『JRPG宣言』から10年以上の時が流れた現代では『テイルズオブシリーズ』『ゼノブレイドシリーズ』等の大作タイトルがメーカー直々に『JRPG』として送り出され、Steamをはじめとするゲーム販売サイトでは『JRPG』指定のソートがあるなど、かつてのJRPGのネガティブイメージは殆ど払拭されている状態にある。
『JRPGの象徴』にこそはなれなかったが、後の世代がJRPGをリリースするハードルを下げ、よりJRPGを受け入れられる土壌を生成した…という意味でいえばイメエポの『JRPG宣言』は大成功だったとも言えるかもしれない。ここもまたゲーム業界、とりわけRPGの歴史を語る上で必要なメーカーだったのである。
というわけで挨拶も程々に今宵もゲーム語りをするのである。今回語るタイトルは『STELLA GLOW (ステラグロウ)』!記事冒頭で語ったゲームメーカーにしてJRPGの立役者『イメージエポック』の遺作である!…なんか不穏なワードが出てきたが、その話は追々。
本作は数多のRPGを世に送り出してきたイメージエポックが手掛ける完全オリジナルSRPG。プラットフォームはニンテンドー3DSで2015年発売。イメエポの10周年記念作品であり、スタッフも同社の処女作『ルミナスアーク』のメンバーを中心に、代表作『セブンスドラゴン(2020シリーズ)』『クリミナルガールズ』を手掛けた方々も参加するなど、イメエポの歴史の総決算と言わんばかりの布陣で開発された一本…なのだが色々あって販売はイメエポではなくセガゲームス(現:株式会社セガ)が担当。
(左側が2015年にパッケージでリリースされたSRPG、右側は他のイメエポ関連作品)
当時…2015年はとにかくいっぱいSRPGがリリースされた年であり、3DSのパッケージソフトに限っても『ファイアーエムブレムif』『スーパーロボット大戦BX』『デビルサバイバー2 ブレイクレコード』『ラングリッサー リインカーネーション -転生-』『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』『Code Name: S.T.E.A.M. リンカーンVSエイリアン』『雷子』が登場している。本作『ステラグロウ』はそんなSRPGが溢れ返る中でデビューした作品である。
ステラグロウ真エンドクリア、ぶっちゃけ最初はノーマークで全く期待してなかったわけだが、いい意味で想像を裏切られた。本当に面白かった。FEよりも面白いと感じるSRPGは10数年ぶりだ。 pic.twitter.com/xu7BG1WyhU
— 物好きな自称ゲーマー (@monozukigamer) 2015年8月20日
個人的なハナシだが2015年の我はSRPGフィーバー真っ只中であり、『SRPGならとりあえず買う』というムーヴを敢行していた。当然この『ステラグロウ』も購入していたのだが、正直なところ事前の期待値としてはそこまで高いものでもなかった。それどころか同ジャンルの金字塔『ファイアーエムブレムif』と同月発売だったものだから『こっちはいったん後回しでもいいか…』とまでも考えていたレベルである。…蓋を開けてみれば『ステラグロウ』は上述したSRPG群…否、我が今までプレイしてきた全3DSソフトの中で一番のお気に入り作品にまで成り上がったワケなのだが。
なにはともあれ、公式が提唱する本作のジャンルは『剣と魔法のメロディアスSRPG』、その響きからもわかるように、本作では『歌』が世界観・システムの両面で重要なファクターを担っている。本作の世界観における最大の特徴は『歌が失われた世界』であること。本作の世界に生きる人々はとある事情で歌が奪われてしまっており、歌を歌えるのは『魔女』と呼ばれるごくごく一部の存在に限られている。というわけでまずは本作のサックリしたあらすじから紹介させていただこう。
レグナント王国の小さな村で暮らしていたアルト(CV:阿部敦)とリゼット(CV:南條愛乃)であったが、あるとき滅びの魔女ヒルダ(CV:田村ゆかり)…そして彼女が率いる『福音使徒』により村が結晶化してしまう。クラウス(CV:鳥海浩輔)率いる騎士団に保護され王都に連れてこられた二人は結晶化を元に戻すための『祝歌計画』のこと、その計画に4人の魔女が必要なこと、リゼットが魔女であることを聞かされる。そして主人公のアルトは祝歌計画遂行のための部隊『第9小隊』に所属することになる…というのが冒頭のあらすじである。
さて、本作は大きく分けて『作戦時間』と『自由時間』の2つから構成。主人公であるアルトはゲーム序盤に『運命時計』なるものを手にすることになり、この『運命時計』がゲーム全体の進行を表している。運命時計は赤か青のどちらかを指し示し、必ず一つずつ動いていく。物語は章仕立てで運命時計が最後まで進んだら1つの章が終了、また次の章がスタートする。
運命時計が青を示した場合は『自由時間』、シミュレーションゲームよろしく時間(行動回数)が許す限り任意の行動ができ、味方キャラとの交流やアルバイト、調律(いずれも後述)のように次の戦いへ準備を整えることができる。限られた時間の中でどのように過ごすかはプレイヤー次第。行動回数を使い切ったら自動的に運命時計が進む。
運命時計が赤を示した場合は『作戦時間』、SRPGらしくマップを攻略するパートであり、目標となるマップをクリアしたら運命時計が進む。逆に言えば目標マップをクリアするまでゲームが進むことはない。『作戦時間』では『自由時間』に比べると行動が制限されているものの、武器・防具・オーヴなどの購入はできるうえ、目標マップ以外のマップに挑みレベル上げ等も行えるため、詰みを警戒する心配はない。
運命時計の存在は意外とありがたく、『今日はこの位置まで運命時計が進むまで遊ぼう』のように遊び方にメリハリを付けやすい。章全体の進行を視覚的に示してくれるおかげで『次がこの章の最後の戦いだし入念に準備を整えておこう』といった風に考えやすいのも大きいだろう。その反面、先の展開がやや読みやすいのはまぁ残念な点だがこればかりは仕方ない。
ここからは『作戦時間』にフォーカスしていこう。ジャンルがジャンルなので基本システムは同じくイメエポ開発の『ルミナスアーク』シリーズの延長といったところだが、どっちにせよ我がブログでは触れてないのでイチから説明しよう。
作戦時間ではマップごとに用意された勝利条件を目指し各ユニット(キャラクター)を動かしていく。マップ自体は四角形のマス目で区切られ、視点は斜め上から見下ろすクォータービュー。カメラの向きは固定で拡大・縮小のみが可能。
敵味方問わず素早いユニットから順にターンが回ってきて、それぞれ移動や攻撃といった行動を行っていく。基本行動には通常攻撃とスキルの二種類があり、通常攻撃は各キャラごとの武器カテゴリに応じた位置への攻撃が可能。スキルは各キャラごとのSPを消費して発動するもので、通常よりも高火力だったり広範囲だったりする強力な攻撃や回復・バフデバフ等が行える。
行動順は常に画面上に表示されているほか、そのターンで行った行動(移動のみ・移動+攻撃・その場待機など)によって次にターンが回ってくるまでの時間が変化する。なお行動終了時にはどの方向を向くかも選択する。ダメージ・命中率などは正面>左右>背面の順に大きくなるのでなるべく敵に背を向けないようにするべし。
ほかに独特なシステムを挙げるなら『高低差』。本作のマップには高低差の概念があり、移動タイプや専用パラメータ『ジャンプ』の値によって登れる高さが変化する。当然空を飛んでいたりワープ移動をするユニットの方が移動の障害が少なく、マップ上でも有利に立ち回ることができる。攻撃・スキルにも『どの程度の高さであれば届く』といったパラメータが設定されている。
各種ユニットは基礎パラメータのほか『属性』『特性』『支援効果』が設定されている。属性は水風火土の4すくみ+影響を受けない無属性の5種類、弱点属性を突くことで目に見えてダメージ量は変わる。特性はいわゆるパッシブスキルで常に発動し続ける特殊能力である。時折敵側にもやっべぇスキル持ってるヤツがいたりするのでボス相手には要警戒。『反骨心』とかこの手のゲームにあっていいヤツじゃないヨ。
基本的に味方ユニットだけが持つのが支援効果で、そのユニットに隣接している他ユニットにバフ効果を与えることができる。各キャラとの好感度(後述)に応じてパワーアップしていき、最終的にはそれなりに大きい補正が得られるためできる限り有効に活用していきたいところ。
SRPGなのでユニットの成長要素はモチロンあり。なんらかの行動をすることでキャラの経験値が少しずつ溜まっていき、100に達するごとにレベルが上昇する。レベルアップ時にはHP/SPが全回復するため、慣れてくるとレベルアップの回復も前提とした戦術も組めるようになるかも?ちなみにレベルが一定に達すると新たなスキルや特性を習得することもある。
出撃前には各ユニットの装備もしっかり整えておくべし。本作の装備は基本的に後半のものになればなるほど強力なので、こだわりがないのであれば章の切り替え時に一軍メンバーの武器・防具を一通り新しいものに買い替えておくといいだろう。武器には『オーヴ』というモノを設定して様々な効果を付与させることができる。オーヴの効果は純粋な火力強化のほかに属性付与だったり経験値上昇だったりそこそこ多彩なので色々試してみるべし。
この通り基本システムは絵に描いたようなSRPGのソレなので、一度でもSRPGを遊んだことがある人であればすんなり入っていけることだろう。もっともオーソドックスではあるものの、本作がそこらのよくあるSRPGに埋まってしまうかといえばそれは違う。その理由はキャラごとの『個性付け』にある。本作の味方ユニットは決して多いわけではない。しかしながら…というかだからこそか、その殆どに個性豊かな能力が設定されている。
例えばユアン(CV:平田真菜)やキース(CV:岩澤俊樹)は『開錠』で宝箱・扉のような破壊に時間を要するギミックを1ターンで起動できるほか、サクヤ(CV:榊原ゆい)は移動前に『構え』で『納刀』『抜刀』状態を切り替え移動範囲やスキル・特性が変化する…といった専用コマンドが用意されている。
専用コマンドを持たないキャラであっても性能面でかなり極端な個性があり、『胡蝶の夢』で地形に応じたデコイを任意で設置できるモルディモルト(CV:新田恵海)のようにスキルで差別化しているもの、『ガーディアン』で一定範囲内の味方に対する攻撃を自動で引き受け、かつそのダメージを無効化するアーチボルト(CV:櫻井トオル)といった特性で差別化しているものなど個性付けの仕方も様々。
個人的に印象的だったのはドロシー(CV:種﨑敦美)、彼女はほぼ全てのスキルで自傷ダメージや自己デバフといったマイナス効果を抱えている一方スキル・特性のどちらにも『自身が瀕死でなければ発動しない/効果を発揮しない』モノが備わっている…つまり『瀕死状態をキープしながら立ち回ると非常に強い』というコンセプトのキャラで、扱う難易度こそ非常に高いが運用次第で大暴れできる面白い調整になっている。
味方ユニットはシンプルで扱いやすいキャラから、先に挙げたような非常にクセの強いキャラまで色々なモノが揃っているが、どのキャラであっても加入直後のマップにてキャラ個別のチュートリアルが挟まるためひと安心。このチュートリアルでは主なスキルやその特徴・運用方法の例も説明してもらえるため、『加入したけど使い勝手がわからず足を引っ張る』事態が起こりづらいのもナイス。
そしてこれらの性能はそれまでのキャラ描写にピッタリ合致しているものが殆どというのが何よりも素晴らしい。フレーバー要素とキャラ性能がここまで見事に一致しているSRPGというのは珍しいのではなかろうか。また差別化そのものが強烈であっても性能がマイナス方面に振り切れていることは全くないため、どんなキャラであっても個性を理解ししっかり運用すれば最終盤まで十分戦っていけるポテンシャルを秘めているのも嬉しい。早い話が愛さえあればどうにでもなる。お気に入りのキャラをぜひとも重用するべし。
とはいえ『敏捷』というパラメータが行動順に関係する…つまりは敏捷が高ければ高いほど何度も行動できるという仕様上、必然的に敏捷が高いキャラ=扱いやすいキャラとなりがちなのは否めない。敏捷のパラメータの重要性はパラメータを細かく見ずにプレイするライトなプレイヤーでさえ最序盤で気付くレベル。飛びぬけて敏捷が高いラスティ兄貴(CV:間島淳司)やののか(CV:矢作紗友里)にお世話になったプレイヤーは数知れず。
本作の難易度はSRPGの中でもかなり簡単な部類である。プレイ中はことあるごとに丁寧なチュートリアルが差し込まれるだけでなく、敵の強さもマップに入る前の時点で推奨レベルを表示してくれる。先に触れたように味方ユニットも軒並み強力で戦力不足を感じるような場面は殆どない。ダメ押しとばかりに戦闘マップ中は何度でもやり直せる中断セーブをいつでも作成可能。命中やクリティカルに不安があるときはいつでも頼ればよろしい。総じて本作は難易度的にもSRPG初心者に心からオススメできる。
一方でSRPG経験者向けのやりこみ要素としては『特殊条件』というものがある。コレは戦闘マップ開始時に勝利条件と共に提示されるもので、マップクリアまでに条件を達成できていれば報酬としてアイテムを入手できるという要素である。特殊条件は『マップ上の宝箱を全て開ける』『(倒す必要のない)ボスと戦闘する』『友軍を全員生存する』『特定ユニットが一度も戦闘せずにクリア』などマップごとに専用のモノが用意されている。簡単なものから一筋縄ではいかないものまで様々で、絶妙にマップ攻略の難易度を上げてくれている。達成の有無は本編シナリオには関係しないため腕に自信がある人だけ挑むといい。特殊条件の達成状況は常に下画面に表示されている。
さて、戦闘が進むと少しずつ『歌唱石ゲージ』というものが溜まっていく。コレは名前から察せられる通り『歌』に纏わるゲージである。このゲージを消費することで『魔女』の味方ユニットが『歌魔法』という専用のコマンドを使用可能。歌魔法は通常とは別枠のスキルといった趣で、各魔女ごとに2種類ずつ用意されている。歌魔法には補助用のモノと攻撃用のモノが存在するが、どちらにしても魔女を中心としたそこそこの範囲に効果があり、なおかつ攻撃用なら味方を巻き込まないため非常に強力である。
…とはいえ、本作にはそんな強力な歌魔法すらも霞むもっとスゴい『歌』がある。それこそが本作最大のキモともいえる『合奏(アンサンブル)』。歌魔法は魔女がソロで歌うものであったが、合奏は魔女ともう1人…本作の主人公である指揮者アルトが奏でる代物である。本作のキーワードである『少女を"奏でる"』とはこの合奏を指すのだ。
『合奏』を行うにはアルトと魔女を隣接させる必要がある。魔女と隣接している状態のアルトは専用コマンド『合奏』が選択可能。合奏を発動すると専用のムービーが流れた後、魔女が歌を歌い始める。合奏は魔女ごとに2曲ずつ用意されており、1曲目は合奏解禁時から選択可能、2曲目は好感度がMAXになると解禁される。
合奏を始めた魔女はその場から動かなくなり、自身のターンを迎えるたびに使用した合奏に応じた特殊効果が発動する。その効果というのが一例を挙げると『防御デバフ+行動不能のバステ付与』『絶対会心のバフ付与』『HP/SPを全回復』などなど…。しかも合奏の効果はフィールド全域に及び、全ての敵or味方に例外なく効果を発揮する。
(流石にバステは"状態異常無効"のスキル持ちには防がれるが)
おまけにコレらは最初から使える1曲目の合奏であり、2曲目の合奏ではここに『敵全体へ大ダメージ』の効果まで付いてくる。歌唱石ゲージの消費量こそ歌魔法より激しいがそれ以上に凄まじい効果であり、文字通り戦況を丸ごとひっくり返すことができる。
そしてもちろん合奏中はBGMがそれぞれの魔女が歌う合奏曲に上書きされる。南條愛乃氏に内田真礼氏、榊原ゆい氏に新田恵海氏、そして田村ゆかり氏…と魔女のCVを担当している声優さんは錚々たる顔ぶれであり、そんな方々が歌う合奏曲のクオリティはもはや説明するまでもないだろう。しかも合奏曲はなんと全てがフルコーラスで収録されている。
いかなる絶望的な状況からでも大逆転が狙えるほど絶大な効果に、ソレを更に後押しするかの如く素晴らしい合奏曲…これはもう盛り上がるなという方が無理なハナシ、この合奏による戦況の変化と高揚感こそが本作のゲーム部分における最大の魅力なのだ!!何度も言うが合奏曲はどの魔女のどの楽曲でも非常にハイクオリティ、勝利の瞬間を最高の形で彩ってくれることを保証しよう。
…ただし合奏中の魔女はその場から動けなくなってしまうので、うっかり集中砲火を受けてやられないように注意するべし。合奏は魔女が自分のターンを3度迎えるまで続き、3ターンが経過すると合奏は終了する。勝ち確じみた演出に夢中になって油断して負けるのはすっごく恥ずかしいので気を付けよう。
『作戦時間』の説明を終えたところでここからは『自由時間』についてのオハナシ。自由時間では何をするのも自由であり、行動回数が許す限り好きなことが行える。ここでプレイヤーができる行動は主に『仲間との交流』『魔女の調律』『アルバイト』『探検』の4つ。あと『休憩』ってのもあるが選ぶ人はまずいないだろう。なお武器・防具の購入ができる『ビアンカ商会』とオーヴの精製・購入ができる『フランツ工房』は行動を消費せず利用可能、この二つは作戦時間でもOKである。
『仲間との交流』は『騎士団兵舎』で可能。ここでは任意の仲間と一緒に過ごすことができる。仲間との交流を行うと好感度が上昇し、一定の好感度に達するごとに作戦時間におけるスキル・特性・支援効果を仲間が会得できる。ただし仲間たちは常に全員が兵舎にいるとは限らずタイミング次第で不在だったりすることもあるので、そこのところは要注意。
交流時のイベントは全て専用のモノとなっており、読み進めていくことでそのキャラのことをより深く知ることができる。とりわけスキル等を会得できるタイミングのイベントはフルボイスなので特に必見。ただし魔女のユニットとの交流では稀に好感度が上昇しないこともある。その時は『魔女の調律』の出番である。
『魔女の調律』は『調律ノ館』にて行う。『調律』とは魔女たちが持つ悩みやコンプレックスを解消するための行為のこと。より具体的には魔女たちの精神世界に入り込み、その原因を取り除くことである。調律では通常の作戦時間と同じようにマップ攻略を行うことになる。ただし精神世界はやや特殊なギミックが存在するだけでなく、捻った勝利条件が設定されていることも多い。さらには調律対象の魔女の出撃もできないため、通常のマップ攻略よりも難易度は高い。
精神世界における勝利条件を無事満たすことができれば、魔女とアルトの一対一の会話が始まる。ぶっちゃけここまで来れば調律は必ず成功するので一安心。調律に纏わる一連のイベントでは魔女自身が抱えていたコンプレックスがハッキリ示されるため、後ろ暗い点も含めてそれぞれの魔女のことを更に深く知ることができる。
特に調律終わりの会話ではアルトが魔女たちと真っ向から向き合う様が見られるのでアルト・魔女のどちらも魅力が際立っている。調律に成功すれば上がらなかった分の好感度が上昇し、新たなスキルや歌魔法・合奏を会得可能。
お次は『アルバイト』、コレは『赤熊の酒場』から受注できる。アルバイト先は『ビアンカ商会』『フランツ工房』『調律の館』『赤熊の酒場』の4種類。アルバイトを実行するとお金を得ることができるが、ぶっちゃけコレ自体はほぼオマケ。重要なのは一定回数アルバイトをこなした際に発生するランクアップイベントである。ランクアップ時にはそれぞれの施設の担当者と仲良くなれるほか施設の利用料金が割引されるようになったりもするため、行動回数に余裕がある時は実行しておきたい。
最後に『探検』。といっても1ボタンで終了するシンプルなもので、一度の章のうちに一定回数実行すると特殊な装備品が手に入る…という要素である。探検で入手できるアイテムはコレ限定のモノも少なくないのでぜひとも入手しておきたいところ…だが、強さについてはピンキリなのでそこまで必死にならなくてもいいかもしれない。ちなみに章ごとに入手できるアイテムは固定(のハズ)である。
ところで1度の自由時間でプレイヤーに与えられる行動回数は僅か3回。…そこからうっすら理解できるように自由時間の全ての要素をコンプリートするのは不可能である。仲間との交流だけが狙いであってもそのうち何人分かは諦めなくてはならない。だからこそ初めてプレイするときはお気に入りのキャラとの絆を重点的に深めるべし。
…もっともコレは1周目のハナシ。2周目では1度の自由時間あたりの行動回数が9回まで増加。こうなればかなり余裕を持って交流に勤しめることだろう。目指せ全キャラ好感度MAX!…まぁ好感度MAX+アルバイト完遂+探索アイテムコンプをやるにはやっぱり行動回数が足らないので、どれかを犠牲にしなくてはならないのは変わらぬのじゃが。
ここからはRPGにおける最大の命であろうシナリオについて語っていこう。
本作のシナリオはイメエポの代表作である『セブンスドラゴン2020』シリーズや『クリミナルガールズ』などを手がけた与田想氏が担当、氏の作風ともいえる『ひたすら絶望的な目に遭いながらも、それでも僅かな希望を胸に前を向いて生きていこうとする人々』は本作でも健在、それでいて基本は王道ファンタジーのフォーマットに乗っかっているので、さながら『少しヒネた王道』ともいうべきか。『セブンスドラゴン2020』シリーズあたりが好きな人であれば全力でオススメできるだろう。
ところで主人公たち第9小隊の最終目標は『魔女を集め、祝歌計画を完遂する』であるものの、一方で各章ごとに小さな目標(〇〇を仲間に加える等)が明示されており、こういった小目標は基本的にその章のうちに達せられる。そのためメリハリがしっかりしているほか、そこに行き着くまでのドラマもしっかり描かれていることもあり、ひとつの章だけをピックアップしても満足度は高く印象に残りやすい。もちろん全部の章を通して描かれる本作全体のシナリオも言わずもがなハイクオリティである。
また章の中には運命時計が自由時間のみの回もある。ゲーム的には『大量の行動回数を消費してどのように過ごすか』という遊びを持たせ、またプレイヤーへの小休止を目的としている回なのだが、こういった章では第9小隊およびその周辺人物たちのオフの姿が目一杯描かれるため、各キャラたちの掘り下げにも一役買ってくれている。クラウス隊長やアナスタシア陛下(CV:櫻井智)あたりはこのパートで好きになった人も多いだろう。
キャラクターそのものについても描写が極めて丁寧。主人公のアルトやシナリオの中核となる魔女たちはモチロン、敵組織である福音使途の面々も含め全てが魅力的に描かれている。いなくても成立するようないわゆる『死にキャラ』なんてものは誇張抜きで本作に一切存在しない。味方ユニットにはメインストーリーにおいて全員にしっかりと見せ場が用意されている。なかには意外過ぎるタイミングでピックアップされるキャラもいるため、だいぶ前に本格加入したキャラですら油断ならない。ゲームクリアまでの過程で全キャラに愛着がわくのは間違いなかろう。
こういったゲームだとどうしても影が薄くなりがちな非戦闘メンバー(NPC)もフォーカスされるパートが存在。例えば各施設の担当キャラたちはアルバイト/施設利用時だけでなく、メインストーリーにおいてもたびたび登場し協力してくれるため、『この人誰だっけ?』とはなりづらい。そしてNPCの中でもおそらくダントツで印象に残るであろう人物こそがアナスタシア陛下の側近エルマー閣下(CV:北山恭祐)である。彼の活躍はどうかご自身の目でプレイして確かめていただきたい。
ただでさえ良質なシナリオを更に魅力的なものとする『演出』もまた素晴らしい。例えば作戦時間の終わりに毎回挿入される帰還シーンのスチルなんかはその筆頭だろう。第9小隊は様々な出来事を経て仲間を増やしていくことになるわけだが、当然増えた仲間はこの帰還スチルにも一緒に描かれる。最初は僅か数名だったのが終盤になるにつれて大所帯となるその様にワクワクするなという方が無理なハナシである。
ゲーム的にはセーブ用途で使用される主人公アルトの部屋『マイルーム』もそういった演出を担っている。ここでは仲間たちが増えるにつれてその仲間を示すようなアイテムが背景にどんどん増えていく。メインシナリオでは仲間の加入イベントを終えると毎度仲間たちがアルトの部屋に遊びに来るシーンもあるため、『仲間がちょくちょく部屋に遊びに来て、毎回何かしらを置いていくんだろうな』ということがよくわかる。散らかった部屋からは仲間たちとの時間を感じられることだろう。
…まぁ個人的に一番印象に残っている描写がどこかといわれたら、やっぱり本作プレイヤーなら誰もが忘れもしないであろう『勝利条件:生き残れ(ネタバレ反転)』及びそこから連なる一連の流れなのだが。あのシーンが色々な意味で衝撃的すぎて本作を語ろうとすると真っ先に思い出してしまうのである。難易度的にも山場だったせいであそこが初ゲームオーバーだった記憶が…。
軽くネタバレをしてしまうとメインシナリオそのものは分岐なしの一本道。ただしエンディング自体は2種類存在し、特定条件を満たした時だけ突入できるトゥルーエンドが用意されている。条件自体は1周目でも達成可能かつ、2周目もプレイするのであればほぼ間違いなく達成できる条件なのでそこまで気負わずとも大丈夫である。
またソレとは別にゲームクリア時には好感度が最大に達していた仲間を1名選び、その仲間との個別エンディング(後日談)を見ることができる。個別エンドは仲間全員に用意されており、いずれも専用イベント&専用CGスチル付き。恋愛的な意味でのハッピーエンドもあれば、男同士の熱い友情エンドに色々な意味でぶっ飛んだカオスエンドまでバリエーションも豊富。1度のゲームクリアで1人分しか見れないのが実に口惜しい。まぁラスボスにトドメ刺す直前の中断セーブ作っておけば(比較的)ラクに全エンドを見ることもできるのだけど。
お次はグラフィックのハナシである。本作はデザイン方面にも力が入っている。基本的なシナリオパートは2Dの立ち絵とCGスチルで進行し、一部の重要な場面ではアニメムービーも挿入される。
立ち絵は非常に種類が豊富で、特定シチュエーション限定の差分も多数存在。ほぼワンシーン程度の出番しかないキャラにすら立ち絵があるのが驚きである。なお立ち絵が出ている会話中はBボタンで会話ウィンドウを消せるだけでなく、スライドパットの入力でカメラを動かしてほぼ全身を眺めることもできたりする。
何より素晴らしいのはスチルの量で、ゲーム開始から終わりまでとにかく潤沢にスチル付きシーンが用意されている。当然ソレに合わせて差分も大量にあり、これもまた先述したシナリオの演出面に一役買ってくれている。こちらもまたBボタンで会話ウィンドウを消せるのでじっくり目に焼き付けるべし。
作戦時間ではSD頭身の3Dモデルを操作していくことになる。マップ上のグラフィックは良質でこそあれ動き自体はやや地味目ながら、戦闘アニメになると一転してダイナミックに動き回ってくれる。敵・味方含めスキルには使用時のモーションがあり、エフェクトも相まってとにかくド派手!キャラごとの個性を生かしたモーションのものも少なくなく、ついついスキルを無駄打ちしたい気分になってしまうこともしばしば。ちなみに武器のグラフィックは全て個別に存在し、戦闘アニメーションにも反映される。
なお忘れられがちながら本作は3DSのタイトルらしくきっちりと3D立体視にも対応している。特に戦闘アニメでは立体視の恩恵を得ているため、気が向いた時には立体視も有効化してみると新たな魅力も感じられるかもしれない。
ところで本作のキャラデザを手掛けているのはideolo氏と釈迦堂真人氏の2名。このうちideolo氏は開発当時なんとまだ学生だったという。学生でこれほどまでのクオリティ&量を作れていたというのは驚くほかない。ちなみにideolo氏は本作発売と同時に商業から引退しているものの活動そのものは継続しており、氏のX(Twitter)アカウントでは度々本作のキャライラストを公開、諸々の事情から今後の展開がほぼ臨めないステラグロウのファンにとって貴重すぎる供給となってくださっている。
そして『歌』がテーマというだけあってサウンド面も凄まじい。むしろ本作を話題にした場合、確実にサウンドの評判がセットで付いてくるほど珠玉のクオリティを誇る。基本的なBGMはプロキオン・スタジオの光田康典氏と土屋俊輔氏が担当。光田氏は『ゼノシリーズ(ゼノギアス/ゼノサーガ等)』『イナズマイレブンシリーズ』、土屋氏は『アナザーエデン』『寿司ストライカー』あたりが代表作、イメエポ的には2人とも『ルミナスアークシリーズ』に携わっている。
先んじて一つ注釈をつけておくと合奏を除く本作のBGMの曲名はいずれも間違っている可能性がある。というのも本作にはサウンドテストもサントラも存在しないため正確な曲名が不明だからだ。じゃあなんで曲名が出せるのかというと、どの楽曲もJASRACのデータベースに登録されているため。とはいえデータベースでは実際に曲を聴くことができないので、曲名から『おそらくこの場面の曲がコレだろう』と推測されたものがファン内で共有されている…という経緯である。ゆえに今後もしも本作のサントラがリリースされる時が来たら『曲名違うじゃねぇか!!』となるかもしれないが、そこはどうか許してほしい。
本作では戦闘マップの地域ごとに異なるBGMが流れる。それらすべてがその地域の特色や雰囲気に見合ったもの揃いなだけでなく、ちょうど章ごとにBGMも切り替わるほか、マップ攻略中にイベントが発生しBGMが変化したり…といったことも相まってマップ内容やシナリオ展開ともども印象的。当然シナリオ上の重要なボスとの戦闘が行われるマップでは専用曲も用意されている。
汎用のマップBGMでは『風駆け抜ける丘(2章・戦闘マップ)』『光焔万丈(3章・戦闘マップ)』あたりが特に人気な印象。個人的には『真実を求めて(9章以降・戦闘マップ)』もお気に入りである。フリーマップで過去の章の舞台に戻ればBGMもそちらのモノが流れるのはありがたいポイント。
シナリオ上の重要マップで流れる専用曲は全てが大人気。とりわけ終盤の重要ボス戦で流れる『祝祭の間の決戦』は極めて高水準な本作のサウンド群の中でも頭一つ抜けた人気を誇り、名実ともに本作を象徴する名曲であるといえるだろう。個人的には大逆転系のイベント後に流れ始める『拓かれたミライ』もそちらに負けない名曲だと思うのだが、こっちはあんまり話題にならないような…。
…そしていよいよ皆様お待ちかねの『合奏』の楽曲についても語っていこう。合奏はそれぞれの魔女ごとに2曲ずつ存在するというハナシは既にしたが、やはりというかメインシナリオ上でも大きく取り上げられ、解禁イベントでものすっごく丁寧にお膳立てしてくれる1曲目の方が若干印象に残りやすいか。その中でもゲーム中において初めての合奏となる『錆び付いた鍵(歌:内田真礼)』、満を持してのタイミングで流れる『伝説の海へ(歌:南條愛乃)』あたりが特に人気のイメージ。
ならばメインシナリオには絡まない2曲目は影が薄いのかというとそれも違い、こちらもまた調律を経ての解禁になるためワクワクさせてくれる。魔女としては覚醒しているものの未だ心に悩みを抱えた状態の1曲目の合奏、アルトとの交流・調律を通し悩みと向き合い一歩踏み出した2曲目の合奏…歌詞や曲調も含めて聞き比べてみると色々とエモさも感じられるかもしれない。なお合奏曲での個人的なイチオシは『冥闇ヲ割ル光(歌:田村ゆかり)』。
またメインテーマの『真聖輝のメタモルフォシス(歌:鈴木このみ)』もこれまた名曲。合奏曲でこそないがここぞというタイミングで流れるため、合奏曲に負けず劣らず人気である。
…で、ここまでは全面的に本作を高く評価してきたが、ここからはマイナス面についても触れていこう。どんな名作といえど100点満点のゲームなんてものは存在しない。必ずどこかしらに穴は生まれてしまうモノである。…というか新規IPでそういう要素が一切存在しないゲームがあるならこっちが教えてほしいぐらい。
本作の不満点としてよく挙げられるのは『戦闘マップのテンポの悪さ』である。一応言っておくとレスポンス自体は快適で敵の思考時間も短め、戦闘アニメもON/OFF可能でON状態でも1ボタンでスキップできる。ならテンポが悪くなる要因なんかないじゃないかと思うだろうが、残念ながらそうもいかない。
本作の戦闘マップのテンポを一気に悪くしているのは『待機で発動する特性』にある。コレは一部のユニットに存在するもので、『待機すると隣接したユニットに何かしら影響(デバフ等)を与える』効果なのだが、『待機時に自動で発動する』という仕様上、『敵がその場から動かずにターンを終えた』時にも発動してしまう。
本作では終盤になるとこういった特性持ちが一気に増え、かつ本作の敵ユニットは原則『プレイヤーが一定範囲に入ってきたら一気に纏めて進軍してくる』という思考AIなので、敵ユニットの大群と味方ユニットの大群が一気にぶつかり合う局面なんかでは敵にターンが回るたびにデバフ演出を見る羽目になってしまうのだ。しかもこのデバフ演出はマスごとに個別に行われる(つまり特性持ちユニットの四方が囲まれていた場合4回再生される)うえに、戦闘アニメと違ってこちらはスキップ不可だから困る。これさえなければバトルシステム周りが完璧だっただけに実に惜しい。
…まぁ戦闘のテンポ関係はやっていけばそのうち慣れるし、待てばいいだけのハナシ。本作における最大の問題点は戦闘とは全く関係ない別の部分にある。ではここで本作のプレイヤーが100人いたら100人が問題点として挙げるであろう点をご紹介しよう。ズバリ、本作には『CG鑑賞モード』や『サウンドテスト』といった趣のオマケモードが一切存在しないのだ!!!
そうだ!!名シーンを彩った大量のCGスチルも!!本作の評価点として真っ先に挙げられるBGM&合奏も!!本作では後から見返すことが一切できない!!ソレらを満足いくまで味わえるのは本編中におけるその場面のみである!!なんてこった!!
本作のグラフィック・サウンド面のクオリティの高さについてはここまでの語りで散々触れてきた通り。だからこそこの問題点があまりにもクリティカルに響いて来てしまう。初クリア時にそういったモードが一切解禁されず絶望したプレイヤーは星の数ほどいることだろう…。
『だったらそういうシーンに合わせてセーブしておけばいいんじゃね?』などという望みは残念ながら容易く砕かれる。本作のセーブスロットはたった2枠。マップ攻略中の中断セーブを含めても3枠しかない。これではあまりにも少なすぎるのだ。せめて5枠…いや20枠くらいなければ本作の名場面を振り返るには不足なのだ…。………よく考えたら20枠でもたぶん足んねぇなコレ……。
…とまぁ、そういった些細な(いや鑑賞モードがないのは非常に残念なんだが…)問題点こそあるが、丁寧なレベルデザインに心に残るシナリオ、良質なグラフィックに3DS作品でトップを狙えるほどのサウンド…ゲームを構成する要素の全てがその名の通り星の如く輝いている本作『ステラグロウ』はイメージエポックの中でも、そして3DSの中でも屈指の傑作SRPGである。
我は過去色々なゲームを遊んできたゲーム好きであるが、『3DSで一番の名作を選べ』『今まで遊んできたSRPGで一番の名作を選べ』という問いに対しては迷いなく本作の名を挙げることだろう。本作はそれほどまでにクオリティが突き抜けている一作なのだ!!
…で、いつもならここで『イメージエポックの今後にも期待である!』みたいなテキストを書いて〆るところなんだが、悲しいかな本作がイメージエポックの遺作なのだ。
…本作がリリースされたのは2015年6月4日のこと。しかしながらイメージエポック自体はその直前の2015年5月7日に破産している。つまりイメエポは自社の10周年記念作品を開発したものの、ソレがリリースされる前に力尽きてしまったことになる。なんと無念であろうか。
なお『ステラグロウ』は2014年に既に発表されていたのだが、イメエポ自身がそれどころではなかったのか続報がピタッと止んでしまう。発売前から注目していたファンですら『コレ発売しないんじゃ…?』と感じ始めていた矢先、救いの手が差し伸べられる。そう、ここで出てくるのがイメエポとの縁がそこそこ深かったSEGA。裏でどういう経緯があったのかは想像するほかないが、イメエポの10周年記念作品の販売をSEGAが担当するという発表がなされ、なんとか本作『ステラグロウ』は無事日の目を見ることが叶ったのだ。
(ちなみにこの後にイメエポ公式サイトが消滅したり社長さんが消息不明になったり色々あった)
そうして世に出た『ステラグロウ』は多くのゲーマーに遊ばれ、そして瞬く間にその評判は広まっていった。もちろん良い評判である。多くのプレイヤーが『ステラグロウはいいぞ』と口を揃えて言い、そこから興味を持ったプレイヤーが手を出して…の好循環。販売を担当したSEGAもソレを全力でサポート。そもそも本作を販売してくれたというだけでも御の字だというのに、更に廉価版の販売や度重なるDL版のセール、それどころかセール時には近年の自社の顔である『ぷよぷよ』や『ソニック』とほぼ同格の扱いまでしていたのだ。
だからこそというか、本作は初手の注目度&期待度からは考えられないほど多くのファンを獲得するに至っている。リリースから実に9年もの年月を経た今であっても時折本作のことを話題にする人を見かけ、更には今なお『サントラはよ』『設定資料集はよ』『新作はよ』といった(我含め)本作に脳を焼かれた者どもの嘆きが後を絶たないのだろう。
本作『ステラグロウ』そのものが無事発売を迎え我々の手元に届けられた…それだけでも十分奇跡のようなもので、これ以上のナニカを望むのは高望みであるというのは百も承知である。だがそれでも、またいつか本作に関する何かしらの動きがあるのを期待して待ち続けているのである!サントラでも設定資料集でも移植でも続編でもいつでもウェルカムですぞSEGA様!!
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