
『天皇陛下が生前退位!?元号が変わるらしいぞ!』という一大ニュースが日本全国を駆け巡ったのが今でも記憶に新しいが、早いもので元号が令和になってからもう7年。令和生まれの小学生がだんだん増えてくる頃合いである。なにはともあれ改元というわかりやすいターニングポイントがあることで、当時のことを思い出すことが比較的容易なのはありがたいところ。というわけでヒトツ聞きたい、諸君らは改元からの7年間でどれくらい成長できましたかね?(突然の全体攻撃)
…とまぁ冗談はさておき、時代とは諸行無常に流れ行くものである。一昔前であれば『平成生まれの若造が~』『昭和をレトロ呼ばわりするんじゃねぇ』など『平成=新しい、昭和=ちょっと古い』といった扱いをよく目にしたものだが、今となっては昭和は2世代も前、平成ですらレトロ呼ばわりされる時代である。ぼーっとしてたら時代に取り残されてしまうだろう。開幕からなんでこんなハナシをしたかといえば、今回の主役は2つの元号…『昭和』と『平成』の狭間で生まれた作品だからである。

というわけで今宵語る作品は『スペースハリアー』!の『ファミコン版』!である!!ええはい、毎度恒例のスぺハリ移植記事のお時間でございます。本作は言わずもがなSEGAが体感型アーケードゲームとして世に送り出した名作3Dシューティング『スペースハリアー』を任天堂のファミリーコンピュータ向けに移植した作品である。原点であるアーケード版は過去記事でガッツリ語り済みゆえそちらを参照すべし。

本作は意外や意外、この世代のCS据置機向けスぺハリ移植では最後発となるバージョンである。本家SEGAによるセガ・マークIII/マスターシステム版どころかPCエンジン版よりも後の登場。その発売日はファミコン登場から実に5年半も経過した1989年1月6日である。ちなみに1989年を元号に表すと昭和64年…そう、昭和最後の年である。
昭和天皇が崩御し時代が平成へと移り変わったのは1989年1月7日のことだが、この日にリリースされたCSゲームは存在しない。よってその前日に発売されたこのファミコン版『スペースハリアー』こそが記念すべき『昭和最後のゲーム』ということになる。まぁ本作はACからの移植タイトルということから、オリジナルタイトルという観点では同年同月同日に同じくファミコンでリリースされた『100万$キッド 幻の帝王編』の方が昭和最後のゲームに相応しい気もしないでもないが。

というわけで販売を担当するメーカーはタカラ(現:タカラトミー)。『おいおいスペハリはSEGAのゲームだろう?』とツッコミたい人も多いだろうが、この時代のSEGAにとっては『ライバルプラットフォーム向けに自社アーケード作品の移植許可を出す』のも『SEGAハード以外の移植版はSEGA以外が販売する』のもよくあるハナシである。事実ファミコンには同じように『ファンタジーゾーン』やら『エイリアンシンドローム』やらが出ていたワケで。
なお開発元に関してもタカラと記載された情報がネットに多く転がっているが、一方で海外だと本作の開発元を『株式会社ホワイトボード』である旨の記載を行っているサイトも存在した。ホワイトボード自体はSEGAのアーケード作品のCS移植を何度も手掛けていたほか、後に『株式会社サントス』と名を変えた後に『メガソフト』というSEGAの完全子会社になるなど何かと縁があるメーカーなので納得といえば納得である。
(ホワイトボードは『め組レスキュー』、サントスは『バトルゴルファー唯』、メガソフトは『ああ播磨灘』あたりが有名)

さてさて『スペースハリアー』はスーパー32X或いはセガサターンの時代になってようやく完全移植が成し遂げられたほどの代物、よってぶっちゃけたハナシ最初の移植版であるセガ・マークIII/セガ・マスターシステム(SMS)版とどっこいの性能であるファミコンではスペック不足もいいところ。
というわけでタイトル画面ではSMS版にて用意されたオリジナルBGMが奏でられ、タイトルデモではこれまたSMS版特有だった『ハリアーサーガ』も一言一句同じ内容のものが表示(なおURIAHの名前をURJGAと誤字ってたり)、18面ボスラッシュの最後にはSMS版オリジナルボスである『HAYA-OH』も登場する…などなどファミコン版のスぺハリは『アーケード版スぺハリの移植』ではなく『SMS版スぺハリの移植』とでもいうべき代物になっている。

ただし後述するように多くのボス戦の内容が簡略化されていたり、SMS版にあったボスラッシュ中の城の出現→崩壊演出がなくなっているなど、何から何までSMS版と同じというわけではない。また後のGG版にあったようなキャラデザ変更なども存在せず、基本的にはSMS版或いはAC版をベースにした外観となっている。
SMS版→FC版での最も大きな違いは敵の描画にスプライトを用いるようになった点だろう。SMS版ではBG領域(要は背景)に敵キャラを描画しソレを高速で切り替えるという妙技によってアーケード版さながらのダイナミックさの再現を行っていたのだが、本作では一般的なSTGらしく敵味方含めスプライトを用いて動かす作りとなっている。

この影響で良くも悪くも画面がこじんまりしてしまっているのは否定できないが、少なくとも動作は(処理落ちこそあれど)SMS版以上に軽快、BG領域に余裕ができたことでSMS版だと一色だった背景がステージごとに専用のモノが用意されるようになっている。高速面は天井/地上が迫ってくる演出の都合で専用の背景はないものの、ステージ進行に合わせて背景色がチマチマ切り替わるなど総じてカラフルな印象を受ける。
コレは背景だけでなく敵キャラにも同じことが言え、後半ステージでは動きこそ同じながらステージによってスプライトの色違い…要はカラバリを出している等、絵面だけでいえば他の移植版にはない本作独自の味のようなものを感じさせてくれる。例えば人面岩『アイダ』はわざわざザコ敵バージョンとボス用バージョン(バーバリアンの取り巻きや3面ボス)、18面バージョンの3種類のグラフィックが存在する。

ステージ数はAC版/SMS版と同じく全18面、ステージカットなどは存在しないものの一方でボス戦の内容に変更点が非常に多い。具体的にはAC版における『多頭』『群体』系のボスの再現がスプライトを用いた実装では難しかったのか、該当する面のボス戦がファミコン版独自のものへと変更。
多頭ボスというのは具体的に『ゴダーニ(3面)』と『サルペドン(11面)』のこと。3面ゴダーニの代わりに登場するのは『アイダ』、ステージ道中で現れるように2体セットで出現し、猛スピードで自機狙いの弾を乱射してくる。耐久力は本編同様で1発当てれば倒せるものの、2体倒すとまた次の2体が出現して…の繰り返しで計6体倒す必要がある。まぁ放置してれば勝手に帰ってくれるし、なんなら倒すにしても対処法はステージ内に出てきたヤツと同じなのでそう苦戦はしないのだが。

そして11面サルペドンの代役は『ドム』、毎度おなじみスペハリいちの人気キャラの高性能モビルスーツ型ロボットである。アケ版と同じく4面・9面でもボスとして出現するので本作ではドムが3回に渡ってボスを務めていることになる。ライバル枠か貴様は。一応4面・9面のものとは異なりオーソドックスな地上移動タイプのドムの中に手前からすれ違いざまに撃ってくるタイプが混ざるようになっているので順当に強化自体はされている。なお本作では4面と9面のドムは同タイプで無敵化する金ドムは出てこない。

『ローリーズ(6面)』『トモス(10面)』『オクトパス(13面)』といった群体系はボス自体は登場するものの行動パターンが大きく変化。一気に全員が出現するのではなく『2-3体が出現』→『出現してたヤツが全滅or全員撤退したら再度2-3体出現』といった繰り返し。ボスバージョンのトモスに至っては1体ずつ出現し独特の挙動で攻撃&撤退を繰り返すというものになっている。
コレはコレで格好良くて好きだし、なんならアーケード版だとトモスとローリーズは行動パターンがコンパチだったので本作の方が差別化できているという見方もできる。一方でアケ版だと独自性の強いボスだったオクトパスはボス版アイダのコンパチとなっており、『3体ずつ出現し回転しながら超速で自機狙い弾を乱射する』行動パターンになっている。おかげさまでアケ版とは比較にならないほど厄介なボスと化していたり。

ほかにも『バーバリアン(2面)』は『超高速でアイダを回転させつつ突っ込んでくる』という行動パターンはそのままながら、アイダの数が減った分回転速度が尋常ではないレベルで上昇しており、アーケード版のノリで行くと痛い目を見ること間違いなし。というか総じて本作は『アイダがやたら強くなる改変』が行われている。ファミコン版の移植スタッフはアイダの熱烈なファンか何か?…まぁアイダ自体は『ファンタジーゾーン』にも作品の垣根を越えて出演(IDA-2)しているうえに、そもそも元となった人物が開発スタッフにいるっぽいので可能性はゼロではなさそうではある。
また似たような要因からか障害物がかなり小出しに出現するためボーナスステージが長時間に渡って続くようになっている。まぁその分ボーナスステージのBGM『BATTLE FIELD』を長々と聞けるのでそう悪いことでもない…か?他のバージョンだと1ループせずに終わっちゃうから後半部分はサウンドテストとかじゃないと聞けないのよね。その分本作だと通常プレイでループまで流れるのでちょっとオトクかも。

先に挙げた通り敵がスプライト描画になった影響で敵の当たり判定が総じて小さいのがちょい困り者。自機のハリアーもスプライト描画なのでミスしにくいのでは…と思いきやこっちは残念ながら違う。そもそもSMS版でもハリアーだけはスプライト描画だったしね。そのためファミコン版スペハリは他移植版やアーケード版と比較して、『こちらのショットのみ命中しにくい』というなんともな特徴がある。
初期残機は2固定、5,000,000点エクステンドとなっており、上記当たり判定のこともあって非常にゲームオーバーになりやすい。隠しコマンドによるコンティニューやラウンドセレクトは搭載されているので気長に挑戦していくといいだろう。なお本作のベースになっているSMS版にもコンティニューのコマンドは存在したが、あちらとは異なりFC版では回数制限が撤廃。ラウンドセレクトに至ってはSMS版には存在すらしなかったFC版オリジナルの機能である。

BGMもファミコンの音源できっちり再現。AC版からあった曲はもちろん、SMS版での追加曲も全てフォロー。ただし何故かプレイ中にバルダ戦のBGM『VALDA』が流れなくなった。バルダ自体は本作にも登場するのだがBGMは15面が『GODARNI』、18面が『STANRAY』で代用されている。専用BGMを用意する余裕がなかった…と思いきやサウンドテストだと普通に『VALDA』も収録されている。…設定ミス?
多くの要素をSMS版から引き継いでいることからも察せられる通り、なんと隠しコマンドや裏技の類も軒並みSMS版と同じものが揃っている。タイトル画面から突入できるサウンドテストはもちろん、隠しオプションによってハリアーの見た目を初期案である戦闘機仕様にもできる。戦闘機でスぺハリをプレイできるのは数ある移植のなかでもSMS版とFC版のみである。ただしSMS版にあった『ERI』の隠しメッセージはオミットされている。本作の裏技/隠しコマンドについては記事の終わりに纏めて紹介させていただこう。

ところで本作はぶっちゃけると初期のスペハリ移植の中ではあまり評判は良くない方である。まぁその理由は理解できる。同条件のCS機のスペハリでは過去記事でも触れたようにマスターシステム版とPCエンジン版がリリースされており、本作はそれらよりも更に遅いタイミングで登場している。つまり言わずもがなその2作とも比較される運命にあったわけだが、SMS版とPCE版は良くも悪くも真逆の方向に『振り切った』移植であった。

例えばマスターシステム版は迫りくる敵の圧迫感を表すためにスプライトを使用せず『背景(BG)の拘束切り替え』で敵を描画するという荒業を採用した。結果としてフレームレートはアーケード版に遠く及ばずスピード感は喪われてしまったものの、それでもアーケードとほぼ同じといっていい『ダイナミックさ』をプレイヤーに与えた。一方のPCエンジン版ではハイスペックさを活かしとにかく動作の軽快さを追究、スプライト描画なのでアーケードやSMS版よりも圧迫感は薄まっているが、その代わりに常時60FPSでのプレイが可能となっていた。アーケードの『スピード感』がなによりも現れていたのはPCエンジン版だろう。
アーケード版の『ダイナミックさ』を表すために他の要素を犠牲にし、その分をオリジナル要素でカバーしたSMS版、アーケード版の『スピード感』を追究しAC版の再現の限界を突き詰めたPCエンジン版…では今回の主役であるファミコン版はどうだろうか?

SMS版を基準とした場合、背景がちゃんと描画されていたり高速面での天井が表示されてたりといった『アーケードの細かい再現』こそ確かにあったが完全移植というほどでもない。むしろPCエンジン版と比較しても一部ボスの不在や行動パターンの違いといった『アーケード版からより外れてしまった要素』もまた非常に多く見受けられる。SMS版とPCエンジン版の折衷ともいえる本作は決して悪い出来ではないのだが、振り切った過去の移植と比べると『どっちつかず』『中途半端』な印象が拭えない。もちろんプレイしてみれば確かにコレも『スペースハリアー』であることは感じられるのだが、どうしても比較対象が強かった…ということなのだろう。

それもあってか本作は同世代のスぺハリ移植だとどうにも扱いが悪い。この世代のスぺハリ移植にはマスターシステム版とPCエンジン版、そして本作から少し遅れて携帯機であるゲームギア版が存在する…が、本作はこれらの中でも頭一つ抜きんでたファミコンという国民的ハードでのリリースでありながら、どういうわけか今なお移植の機会に一切恵まれていない。
マスターシステム版とゲームギア版はPS2の『SEGA AGES 2500シリーズ Vol.20 スペースハリアーII ~スペースハリアーコンプリートコレクション~』、PCエンジン版でさえ『PCエンジンmini』にて(正確には海外のTG16版だが)移植されていたにもかかわらず、本作はそれらのコレクションどころかWii/WiiU/3DSなどのバーチャルコンソールにすらスルーされてしまった。
(スぺハリのVC移植はSMS版とAC版のみ)

しかし、だからといって本作に魅力がないかと問われればその答えは間違いなくNOであろう。アーケード版はおろかマスターシステム版やPCエンジン版と比較するとその輝きは鈍いものかもしれない。しかしながら他の移植版にはない敵バリエーションやオリジナルの行動パターンを持つボスたちなど、鈍いながらもファミコン版ならではの輝きは確かにそこに『ある』のだ。数多のプラットフォームに移植され、プラットフォームの数だけ新たな表情を見せてくれる『スペースハリアー』…本作もまた『スペハリ』の歴史を彩る1本なのであーる!!

--オマケの裏技紹介コーナー--
サウンドテスト

タイトル画面で→←↓↑と入力する
入力タイミング・コマンドともにSMS版とまるっきり同じ。タイトル画面でSMS版ベースの移植だと察した人ならノーヒントで突入できること間違いなし。ゲーム内に収録された全楽曲を再生可能。FC版の『VALDA』はここでしか聴けない。ちなみにSMS版と異なりボイス再生の項目がないぶん番号が微妙にズレている。
隠しオプション

サウンドテストで7→4→3→7→4→8→1という順に再生する
CSスぺハリでおなじみの7437481の裏技。『難易度』『ノーマル/リバース入力』『ハリアーの見た目(人間/戦闘機』を変更可能。ラインナップが異なる関係で流れるBGMはSMS版とは違うものの、再生するサウンド番号は同じ。
ラウンドセレクト

サウンドテストで7→6→5→4→3→2→1という順に再生する
FC版オリジナルの裏技。開始する面を自由に選択できる。選択可能なのは1面(MOOT)から17面(NARK)までで最終面(ABSYMBEL)からの開始は不可能。真面目に17面を頑張ってクリアするべし。
コンティニュー

ゲームオーバーが表示されているタイミングで↓↓↑と入力する
SMS版のコンティニューとはコマンドの内容が異なる。あっちと比較すると簡素な入力かつ回数制限も存在しないので非常に良心的。FCの十字ボタンはSMSよりも入力しやすいのでコマンドミスってアウトになりづらいのもありがたい。