夏真っ盛り、暖かい…を通り越して普通に暑い日々が続く今日このごろだが、夏が過ぎれば秋が来る!そして秋といえば…?そう、スポーツの秋である!!今宵は一足先に秋気分を味わうため、我のイチオシのスポーツゲームについて語ろうと思うのである!!
(ちょっと導入が無理やりだって?気にするでない!!)
さてさて今回語るタイトルは『パワプロクンポケット3』!色々な意味でアツい野球ゲームである!!
早速だがまず本シリーズについて解説するところから始めよう。パワプロクンポケット…通称パワポケとはその名が示す通りKONAMIを代表する野球ゲームの金字塔『ebaseballパワフルプロ野球』…もとい『実況パワフルプロ野球』の姉妹作ともいえるシリーズである。ちなみにパワポケシリーズのタイトルナンバリングは日本語読みがお約束。つまり『パワポケ3(スリー)』ではなく『パワポケ3(さん)』と呼ぶのが正しい。
→どうやら『パワポケ7』までは普通に英語読みが正解らしい。下調べ不足であった…!!(2022/08/09追記)
より厳密に言うならばニンテンドウ64にてリリースされた『実況パワフルプロ野球5』のスピンオフにあたる作品群であり、同作に登場した敵チーム『極亜久商業(≒極亜久高校=パワポケ1の主人公チーム)』にスポットを当てたところから始まり、1999年にゲームボーイにてシリーズ1作目『パワプロクンポケット』が発売されたのを皮切りに年に1~2本のペースで毎年新作をリリース、2011年の15作目にして最終作『パワプロクンポケット14』に至るまで任天堂の携帯機と共に歩み続け、多くのプレイヤーに惜しまれつつも完結した。
純粋な『野球ゲーム』としてのクオリティは本家に劣る…どころか足元にすら及んでいないことも少なくなかったが、サクセス(選手育成モード)のシナリオ面やほぼ別ゲー化するオマケ等でひたすらに独自路線を貫き、最終的に本家パワプロとは大きく異なる独自のファン層を形成するに至っている。『全く違う路線へと進みながらも、互いに食い合うこともなく双方人気を博したシリーズ』としてみると非常に類稀な例とも言えるかもしれない。
さて、実はこのパワポケシリーズには一つトンデモナイ特徴がある。それはなんと『ナンバリング作品(+外伝1作とパワプロ5)全てが同一の世界・同一の時間軸で繰り広げられている』という点である。前述したことからもわかるように今作のナンバリングは全14作、そんじょそこらのシリーズ作とは比較にならないレベルで作品が存在し、更に毎作作中で1年~3年*という時間が経過するにも関わらず、である。シリーズ1作目であるパワポケ1から最終作であるパワポケ14までの間に実に30年以上もの年月が経過しており、当然作中人物たちもソレに合わせて年齢を重ね成長していく。プレイヤー視点でも(人によりけりな部分もあるだろうが)リアルタイムで12年ものあいだ彼らの成長を見ていくことになったため、キャラたちへの思い入れもひとしおである。
*パワポケの作品ごとの時間経過
作品によってある程度ブレが存在するが、
高校野球編/プロ野球編の作品では必ず3年、
社会人野球編の作品では1年(例外アリ)が作中で経過する。
なお、必ずしも発売順通りに時間が経過しているとは限らず、
『パワポケ3とパワポケ4が同時期』だったり、
『パワポケ8より後に発売されたダッシュが時系列的にはパワポケ8より前』だったりと、
別作品と同時期だったり重なってたりするパターンが割と多い。
長々と語ってしまったが、ここからがいよいよ本題、『パワプロクンポケット3』について語っていこう。そのタイトルからも分かる通り、今作はパワポケシリーズの3作目である。プラットフォームはゲームボーイアドバンス。前作であるパワポケ2はゲームボーイ(カラー対応)でのリリースであったが、今作以降パワポケはパワポケ3~7(+リメイク+ダッシュ)の7作品をGBAでリリースしていくこととなる。ちなみに発売日は2001年3月21日であり、コレはゲームボーイアドバンスの発売日…つまり今作はGBAのロンチタイトル*でもある。
*GBAのロンチタイトル
余談中の余談だが、GBAのロンチタイトル(同時発売ソフト)は驚異の25本。
ソフト開発のコストからして別物なので一概に比較はできないが、
近年のロンチタイトルが5~6本でも多い部類であることを考えると衝撃的な数字である。
しかしソレよりも驚きなのはこのうち8本がKONAMIのタイトルであること。
コレはGBAのロンチタイトルだと最多であり、ファーストである任天堂よりも多い。
主なゲームモードは『サクセス』と『野球』の2つ。ハード移行直後故に『裏サクセス』は存在しない…が、その代わり『ドキドキ地雷パニック!』というミニゲームをプレイして選手を作ることが可能。コレは所謂マインスイーパーであり、地雷を踏まないように各ステージを攻略、選手を強化していく。うっかり地雷を踏むと一発で選手データが消滅するハイリスクな内容である。ぶっちゃけパワポケ2の戦争編における呪い島の再録。
前作の戦争編や次回作以降の裏サクセスに比べると非常に薄味だが、コレばっかりは仕方ない。ちなみに同じくハード移行直後のパワポケ8の裏サクセスは今作の延長のような内容(ストーリーがある分幾分マシ)であり、シリーズファンからは『新ハードは地雷』等と呼ばれたことも。
野球システムはこれまたハード移行直後ということもあり非常に荒削り。ハードの変化もあるので当然ながらGBのパワポケ2とは比べ物にならないほどの進化を遂げている。特に『ストライク』『アウト』等といった判定がボイス付きになったのは大きいだろう。しかし、あくまで素晴らしいのは演出面に限った話。
特に妙に球場が狭いため、普通にプレイするとホームラン以外はほぼフライになるというなんともな状態になっている。また守備のAIにも穴があり、ゴロをキャッチャーが拾わない、ゴロを追いかけていたピッチャーが突然棒立ちになり離れた位置のショートが拾いに来る等の妙な挙動をすることが少なくない。この思考の穴があるため、今作のCOM試合は突き止めると『パワーAはホームラン狙いで強振、ソレ以外は三塁側へセーフティバント』が定石になる。というか一部の敵チームもこの戦術を使ってくる。
アレンジチームは2001年当時の12球団と本作中に登場した4チーム、そして前作・前々作の主役チームである極亜久高校・ドリルモグラーズの計18チームから選択可能。実はサクセス作中で登場したチーム全てをアレンジできる作品は結構珍しかったりする。
そしてここからが本題、今作のサクセスはシリーズ初の社会人野球編*、社会人ということもあって主人公の立場も高校生やプロ選手に比べ非常に特殊…ということで今作の主人公はサイボーグである…いや本当に冗談抜きでサイボーグなのだ。
*パワポケシリーズのサイクル
パワポケシリーズのナンバリング作品では
高校野球編(1・4・7・10・13)
→プロ野球編(2・5・8・11)
→社会人野球編(3・6・9・12)
というサイクルでリリースされている。
ただし番外編である『ダッシュ』と最終作である『パワポケ14』だけは例外。
あらすじと共に詳細な説明をさせてもらうと今作の主人公は『パワポケ1の主人公』と同一人物。パワポケ1にて極亜久高校を甲子園優勝に導いた彼は見事ドラフトでプロ入りを果たし、恋人と結婚式を挙げたもののソレが人生の絶頂期(アレと結婚した時点でドン底とか言うな)。以後の彼はプロでパッとした成績すら残せないまま、あろうことか事故が原因で命を落としてしまう。
それから数年後のこと、死んだ筈であった彼は肉体の大部分を機械へと置き換えたサイボーグとして目を覚ます。彼をサイボーグに改造したのは科学者の唐沢博士と高校時代からの旧友である亀田の二人、自分たちのことを正義の組織『ネオプロペラ団』であると明かした二人は主人公に悪の組織『プロペラ団』打倒のため、共に戦うよう協力を持ちかけ、主人公も成り行きでそのままネオプロペラ団の一員として活動し始める…というのが今作の冒頭ストーリーである。
なんかもうこの時点で野球ゲームの範疇から逸脱してしまっているような気がしないでもないが、コレがパワポケである。また主人公がサイボーグ*であること自体は衝撃的かもしれないが、後継作の主人公はそれこそタイムパトロールだったり殺し合い上等のハンターだったり風来坊だったりするので、シリーズ全体で見ていくと割とマトモな部類の主人公だったりする。ちなみによく『パワポケのジャンルは野球バラエティだから何が起こってもセーフ!』なんて言われることもあるが、パワポケ3の時点での公式ジャンルはまだ普通の『スポーツゲーム』である。
(野球バラエティになったのは『パワポケ8』から)
*サイボーグとアンドロイド(余談)
創作作品では混在されがちなサイボーグとアンドロイドだが、
パワポケにおいてはそれぞれにしっかりした定義がある。
サイボーグは『肉体の一部を機械に置き換えた人間』であり、
アンドロイドは『目的を持って人工的に作り出された存在』である。
すなわち『元人間』がサイボーグ、『人造人間』がアンドロイド。
なお、人間を模していない機械は普通に『ロボット』と呼ばれる。
パワポケ3の時点ではまだサイボーグとロボットしか存在しないので、
特に気にする必要はないが、パワポケ8以降はコレを理解しないとややこしい。
そして主人公が所属することになる野球チームは『火星オクトパス』。火星行きを目標とする『火星カンパニー』のチームである。ちなみにメンバーの服装は統一されており、青い帽子にスーツにグラサン、監督兼社長の垣内に至っては眼帯を身に着けている…まぁぶっちゃけるとヤ〇ザのフロント企業である。設定からして明らかにヤバめなチームだが、実は初期段階で所属しているメンバーは意外とおとなしく、非モブの選手もパワポケ初の女性選手であるアンヌとその兄にしてトラブルメーカーのアルベルトだけである。
しかし、プレイヤーの攻略(と運)次第ではドンドン個性的な面々が加入してくることとなり、全員加入の暁にはシリーズでも屈指のトンデモチームと化す。どんなヤツが加入してくるかって?まぁ色々だよ、サイボーグとかロボットとかバッタとか教祖とか…。
(ちなみにパワポケ6で再登場した面々を見るに全員加入が正史らしい)
勧誘できるチームメイトには上記のイロモノたちの他に、パワポケ1で強力なライバルとして登場した鋼(大東亜学園)にネロ(聖皇学園)、パワポケ2で仲間だった倉刈・ドミオ(ドリルモグラーズ)といった面々がおり、過去作プレイヤーにとっては心強く頼もしいメンバーが揃うこととなる。
新たな仲間を集めるか、それとも外部の力を頼らず自分達だけで戦い抜くか、ソレはプレイヤー次第。ちなみに本作の仲間たちは非常に強力なのでついつい仲間にしたくもなるが、結構な割合でマイナスイベントを多数抱えており、加えて仲間が増えるにつれて主人公が得られる報酬が減るといったデメリットも大きいので実に悩ましい。
シリーズ恒例の彼女候補は今作でも健在。事実上のメインヒロインである唐沢ヒナコ、主人公の過去を知る謎の人物の里美美千代、マッド気質な天才女子大生の寺岡薫、火星オクトパスの紅一点アンヌ・A・アズナブル、亀田くんに一目惚れされる看護婦の叶野ミキ、野球好きな小学生の大宮ゆかり…以上の6名が攻略対象となる。攻略の難易度はヒナコ>ゆかり>かおる>さとみ>ミキ>アンヌといったところ。とはいえヒナコとゆかりが群を抜いて厳しいくらいで、必須フラグさえ理解してしまえばシリーズでもかなり簡単な部類。このあたりは後述するように根本的なクリア難易度が高いこととの兼ね合いもあるだろう。
彼女シナリオのボリュームはパワポケ1・2と比べると順当にアップ。特に本作の中核を成すヒナコ・さとみのシナリオや、後の作品に重大な影響を与えることになるかおるシナリオは非常に読み応えがある。ただし一方で残りの3人のシナリオは薄味気味なのは否定できない。とはいえ薄味ながらもそのクオリティは折り紙付き、彼女候補たちに迫る難題や困難にシリーズでも随一のアツい主人公が真っ向から立ち向かったり、彼女たちを励ましたりして乗り越える内容はまさしくパワポケである。
…まぁコレはグッドエンド時の話であり、バッドエンドではシリーズおなじみの報われない悲惨な展開が待ち受けているのも事実。本作の彼女候補6名のうち、実に5名がバッドエンドorノーマルエンドで死亡する展開になる。この死亡率の高さは流石のパワポケシリーズといえど最上位。しかも5人のうち2人は主人公が関与しないと(死因が主人公と無関係なところにあるので)確実に死ぬ。これもまたパワポケ特有のエグみ…というか魅力である。
後年の作品と異なり彼女攻略は二股可能、特定の組み合わせに限り三股もできる。三股プレイを行った選手は最強クラスのスペックになれるポテンシャルを秘めている…が、そのためには綿密なフラグ立て&少しの予断も許さないスケジューリングと試合を全制覇できるほどの野球スキル、それから数々の攻略必須ランダムイベントを引き当てる豪運が求められるので、今作の中でも最難関のやりこみ要素となっている。
(自分は過去に100週以上パワポケ3をクリアしてきましたが、三股プレイを成功できたのは1回だけです)
ここからは表サクセスのシステムについての話。基本はいつものパワポケなので毎ターンごとに練習を繰り返し選手を強化していく…なんてことはなく、今作の表サクセスのシステムは他のナンバリングと比較して非常に独特。コレは主人公がサイボーグであることが原因。最初に言っておくと今作の主人公はサイボーグ(機械)であるため、どれだけ練習したところで絶対に強くならない。ただ無駄にエネルギーを消費してしまうだけである。
ならばどうやって主人公は強くなっていくのか、答えは簡単。新しいパーツを購入し身体にセットしていくことで能力が上昇するのだ。コレが今作の強化システムである。パーツの新規購入のためには当然お金が必要になる。だがボーッとしてるだけでお金が手に入るなんて都合のいい展開はないため、主人公はお金を稼ぐため『アルバイト』に精を出すこととなる。
アルバイトは任意で実行することができ、アルバイト終了時には事前に設定されていた給料を受け取ることができる。何度も同じアルバイトを繰り返すことで少しずつ昇給していったり、特定のアイテムを入手することで新たにできるようになるアルバイトもあったりする。まぁ要は『アルバイト』『所持金』がいつものシリーズにおける『練習』『経験値』にあたるワケである。
アルバイトは必ずしも成功するとは限らず、『(皿洗いで)体内の回路が浸水する』『(トンネル工事で)落盤事故に遭う』等のトラブルが発生する可能性もある。この場合は大幅にエネルギーが減少&ストレスが増加するほか、所持しているパーツが破損、状態異常(後述)の発生といったような被害を被る羽目になる。
『所持金』以外のサクセスのパラメータとして用意されているのは『エネルギー』『ストレス』『記憶』『善悪度』の4つ。『エネルギー』はいつものサクセスでいうところの『体力』であるが、残り3つは今作独自のもの。いずれもゲームオーバー/エンディングの条件に直結しているため見逃せない。
『ストレス』は文字通りの意味合いで働いたり理不尽な目に遭ったりすると上昇、逆にリラックスしたり彼女とデートしたりすると下降する。コレが一定を超えると『行動不可+エネルギー大幅減少』という絶大なペナルティが(場合によっては複数回)課せられるため、原則貯まる前にストレス解消に努めるのが鉄則。
『記憶』は『主人公がどれだけ生前の記憶を取り戻したか』を示すパラメータ、主人公と縁のある場所を訪れたり、パワポケ1時代の仲間たちと交流することで上昇する。この値を非常に高く保たないと最終盤でゲームオーバーになるので要注意。しかし上げすぎると今度はマイナスイベント発生のトリガーになるのが困りもの。
最後に『善悪度』だが、コレはズバリ『主人公が善寄りか悪寄りか』というもの、良いことをすれば善寄りに、悪いことをすれば悪寄りになる。ぶっちゃけご想像どおりエンディングの分岐条件はコレであるのだが、ソレ以上に面白いのはこのパラメータに応じてゲーム内の通常イベントの内容も変化するという点。例えばチームメイトが胡散臭い商売を始めようとした際、善よりであればソレを引き留める展開になるが、悪よりであればソレに加担して分け前を貰う内容になる。彼女イベントにおいても善悪度は重要な分岐条件になっており、場合によっては彼女の生死すら分けることがある。
ゲームクリアの条件は『1年目終了までに能力値一定以上』『2年目終了までに300万円貯める』『3年目終了までに記憶を80%取り戻す』の3つ。ここに更に『パラメータやイベント起因のゲームオーバー条件を満たさない』が加わる。書き出してみるとシンプルなものではあるが、いざプレイしてみると中々一筋縄ではいかない。
ゲームクリアを目指すに当たり、全編通してプレイヤー最大の敵となるのはズバリ亀田くん。主人公が同一であるパワポケ1でも相棒を務めており、パワポケ/パワプロ共に相棒としてお馴染みなメガネくんのポジションであるが、こと今作においては相棒キャラであると同時にお邪魔キャラまで兼任している。彼はパワポケ1の時点でもちょっとばかし自分勝手な面もあったが、それから3年後となる今作では諸々の事情からスッカリ歪み、理不尽な八つ当たりでストレス増加、利己的な理由で主人公を暴行、アイテムとセットで状態異常をプレゼント等、ありとあらゆる妨害を徹底的にやってくる。
特に酷いのは何かと理由をつけての無駄遣いであり、このせいで慣れないうちはただでさえカツカツな所持金がマッハで減っていくこととなる。とりわけ『運営資金』という名目の取り立ては『全所持金のX%(タイミングにより変動)』とかいう極悪極まりない徴収が行われる。2年目はクリア条件の都合上大金を持ち歩く&集める機会が多いため、この徴収がクリティカルに響いてくる。場合によっては亀田の徴収や妨害が原因で主人公や彼女候補が死亡することも稀によくある。『かめだしね*』が今作プレイヤーの合言葉と化すのも納得の所業である。
*かめだしね
文字通り『亀田○ね』という意味。
誰が言い出したかは不明だが、彼の妨害にブチ切れたプレイヤーが発したであろう一言。
これだけなら単なるプレイヤーの愚痴でしかないのだが、
何故か『かめだしね』とパスワード画面で入力すると普通に成立してしまう。
コレは今作がパスワード入力の初導入だったが故のチェックの甘さが原因なのだが、
奇跡的に通ってしまった結果、『かめだしね』は今作を象徴するワードと化してしまった。
なお入力すると『変化球なし・最大球速0km・スタミナ&コントロール共に0・特殊能力なし』という
どう使ってもゴミにしかならない名無しの投手が誕生する。
(起動時の不正チェックに引っかかりセーブデータが初期化されるおそれがあるので注意)
というか亀田くんの事を抜きにしても今作の表サクセスは歴代でも特に難易度が高い。というのも今作では他のシリーズ作で言うところの体力…エネルギーが尽きた時点で問答無用でゲームオーバーになってしまうためである。一応、アルバイトや試合等でエネルギーが尽きてしまうことはない(必ず1残る)ものの、ランダムイベント(チンピラに絡まれる・回路にキムチ突っ込まれるetc…)やショート状態(行動するたびにエネルギーが減少)だと問答無用で死ぬ。
よって、今作において最も警戒すべき状態異常はショートであり、当然早急に修理コマンドを使用して治す必要があるのだが、直るかどうかはいつも通り完全に運。完治する確率は歴代シリーズの中でも極めて低く、ショート状態→修理失敗→修理失敗→修理失(ryのループにハマるケースも珍しくない。修理コマンドは使用するたびに時間が経過するため、運が悪いとひたすら所持金とエネルギーを削られ続けジリ貧になることも。
修理でジリ貧になるくらいならばまだいい方であり、酷い時には文字通り何もできないまま死ぬ。『事故でショート発生+ストレス増加』→『ストレスのせいでエネルギー減少』→『そのままショートで死亡』というデスコンボはおそらく今作で最もメジャーな死因である。ソレ以外の状態異常も『カサカサ虫(行動のたびにストレス増加)』のように着々とゲームオーバーに近づくものや、『サビつき(行動のたびに確率でパーツ破損)』のように洒落にならないものも。行動が制限される『恋の病/弱気』も発生タイミング次第では死因になりうる。
ソレ以外にも今作は他のナンバリングに比べてゲームオーバーになる条件がやたらと豊富であり、発生条件や定期イベントなどを事前に把握できていないと知らぬ間に着々と死亡フラグが積み上がっていた…なんてことも今作ではよくある。エネルギー切れ・溺死・寿命・借金・奴隷・メルトダウン…これらのゲームオーバー(≒主人公死亡or破滅エンド)を一切見ることなくエンディングを迎えられたプレイヤーはまず一人もいないと断言してもいいレベルである。初期シリーズ故に一度のゲームオーバーで選手データ(セーブデータ)抹消なのも厳しいポイント。
このあたりは理不尽極まりない難易度で伝説になったパワポケ2の戦争編*のシステムが近い。ただ運要素以外でのカバーが不可能なあちらに比べるとこちらの方が難易度的には幾分かマシではある。回復コマンドを実行した際は確実にエネルギーが最大値まで回復するという便利な仕様もあるといえばあるが、一方で今作はエネルギーの最大値が据え置きであり、上昇させる手段が一切存在しないため、どっちにせよ厳しいことに変わりはない。
*戦争編(パワポケ2)
前作であるパワポケ2において条件を満たすと遊べるようになるおまけサクセス。
第二次世界大戦の時代にタイムスリップしてしまった主人公を操作し終戦まで生き残るモード。
コレ以上無いほど戦争の不条理感を描いた内容となっており、
空襲・魚雷・赤痢・マラリア・ペスト・黄熱病・ゲリラ・誤射・地雷といった要因であっさり死ぬ。
実はパワポケ3のシステムに歴代で最も近いのはコレ。
リメイクであるGBAのパワポケ1&2やSwitchのパワポケRにも収録されているので、
その難易度に反してプレイし始めるまでの敷居は低い。気になったならプレイすべし。
そして、その難易度の高さを押し上げる一因として、今作ではランダムイベントの多さが挙げられる。ランダム要素自体はパワポケシリーズ全体でもよくあるものなのだが、今作では仲間の加入やパワーアップ、彼女イベントの進行にすらランダムイベントが多数絡んでくる。このせいで攻略には非常に運が絡み、安定した強選手の作成が非常にやりづらくなってしまっている。特に仲間の一人であるドミオのパワーアップイベントの異常なまでの発生率の低さは語り草。見られた人は誇っていいだろう。当然ランダムイベントの中にはマイナスイベントも多分に含まれており、場合によってはたった1つのランダムイベントのせいで順調に進んでいたところから一転して即死する…なんて事態も起こり得る。
*ドミオのイベント
倉刈さんの加入後、低確率で発生するランダムイベントで正しい選択をし、
更に別のランダムイベント(低確率)に繋げることで初めて加入。
パワーアップにはここから更に低確率のランダムイベントが必須。
ちなみに倉刈さんの加入も特定の手順を踏まないとランダムイベント頼りになる。
しかし、事故要素こそ多い一方で『防水スプレー(浸水)』『犬(交通事故)』『チョコレート(破損)』『発電機/予備電池(エネルギー切れ)』等、事前に準備しておくことでそれらに対策できる要素が豊富に存在する。よって今作では『避けられない事故要素を如何にして排除していくか』が何よりも重要になる。悪名高い亀田くんの運営資金徴収も『徴収日が固定』『徴収額は所持金のX%』という仕様さえ理解してしまえば、前日までに所持金を『金目の物(購入額と同じ金額で売却できる)』に替えてしまうことで対処できる。
(無駄遣いは完全に運なので諦めよう)
また、強化をパーツで行うシステムであるため、他の表サクセスではなかなか引き剥がせなかった『マイナス特殊能力』を簡単に捨てられるのも魅力。売却ではなく引取という形になるため、ある程度の損は避けられないもののそれでも出来ないよりは十分マシである。事故などにあった際に壊れる(マイナス能力が消える)可能性があるのもイイ。
更に特筆すべきは『野球の試合の勝敗はクリア条件に含まれない』という点。今作のサクセスでは試合に勝利することで多額の賞金を得られるというメリットこそあるが、他のナンバリングにあるような『負けたらバッドエンド直行の試合』が一切存在しないのだ。極論サクセス中に行われる全ての試合に負けたとしても各種パラメータの条件を満たせているのであればクリア可能(逆も然り)。
これらの要素から本作は歴代パワポケの中でも特に『野球ゲーム』らしからぬ攻略が求められる。それ故に今作の魅力はパワプロのサクセスの前身となった『ときめきメモリアル』に代表される『育成SLG/ADV』の方面にひたすら突き抜けている。野球ゲームとしてアリなのかと疑問に思わないこともないワケではないが、こういった自由さもまた『パワポケ』ならではの魅力である。むしろ今作の存在があったからこそ、後々のナンバリングの自由度が上がったといってもいいだろう。
ただし試合全敗でもどうにかなるというのはあくまで『単純なクリア』だけの話であり、クリア以上の何か(彼女ルートのグッドエンド)を求めだすと自ずと試合の勝利を目指すことになる。流石に最後の大会の優勝が求められるのは1名だけだが、それ以外の彼女も攻略しようとすると資金面があまりにカツカツすぎるので、一試合でも負けると彼女ルートのバッドエンドが急速に近付いてくる…程度ならまだいい方で最悪主人公が(資金不足で)死ぬ。
BGMについても紹介しておこう。GBAのロンチでありながら『パワポケらしいサウンド』はこの時点でほぼほぼ出来上がっており、ドラマチックにサクセスのシナリオを彩ってくれている。パワポケ1のラストのアレンジでありながら本作では最初に流れるBGM『セレクト』や大人しめな春BGMから一転してノリのいい曲調が特徴の『サクセス夏』、ラストバトルで流れる燃え曲『ガンダーロボ(ゴーゴーガンダー)』あたりは特に人気が高い。
自分のイチオシBGMは『エンド前エンド』、本編ラスト以外にゲームオーバー直前で必ず流れる(=ラスト以外でコレが流れたら死亡&データ削除確定)モノなので、本作プレイヤーはイントロ(コレも特徴的)を聞いた時点でトラウマを想起させられる曲なのだが、『何かの終わり』を前にした切なく穏やかな曲調は様々な思いをプレイヤーに訴えかけてくる。理不尽なゲームオーバー、全てをやり遂げたクリア直前、どちらも流れる曲は全く同じだが受ける印象は全く異なるものに感じられるだろう。
ただし本作にはサウンドテストのような便利機能は備わっていないのがチョイ残念。本作のBGMをじっくり聴くには2009年の『パワポケ音楽館(1・2・3・12を収録)』を待たなければならなかった。ちなみに2021年に全ナンバリング分のデジタルサントラの配信が始まったので、今から聴きたい人はそちらをどうぞ。
パワポケ最大の見所でもあるシナリオのクオリティは限りなく高品質。シリーズを全てプレイした上でもかなり上位に位置する面白さだということは保証する。まぁ諸々の理由からパワポケデビューにはあんまり向いてはいない。
『初代主人公が死んでサイボーグとして復活』とかいう突飛極まりない設定からスタートする物語ではあるのだが、記憶を失くした主人公がかつての親友たちを通して改めて自分という存在を見つめ直し、やがて生前(パワポケ1)から続いていた『プロペラ団』との因縁に決着を付けることになる本作の物語は、まさしく『パワポケ』の一つの大きな区切りといっても過言ではない。
前述の通り異様に個性的なチームメイトたちも実は『帰る場所を失ったはみだし者』という共通点があり、チームへの加入もなし崩し的に行われていたのだが、一人一人が主人公との出会いや野球をきっかけにして自分なりの生き方や居場所を見つけることとなる。実質的なモブキャラたる火星カンパニー(及びそのライバルチーム)の面々も物語が進むにつれ『金稼ぎの手段』としてではなく、『純粋なスポーツ』として野球を楽しむようになる…といった描写が非常に丁寧なのも印象的。
本作でついに決着が付けられるパワポケ1から暗躍し続けた悪の組織『プロペラ団』については過去2作より更に深く掘り下げられた。今作の最重要人物たる四路智美やかつてプロペラ団傘下だった鋼、元スポーツ記者の大谷といった様々な立場の人間からその成り立ちや構成員について語られるのだが、作中の行いこそ褒められたものではないとはいえ一概に『悪の組織』というだけで片づけていい存在ではないことが伝わってくる。一方で主人公たちの組織である『ネオプロペラ団』も正義とも悪とも言い切れない微妙な立場であり、単純な『正義VS悪』の構図では終わらない深いシナリオとなっている。後の『パワポケ7』でも語られる『正義の反対は別の正義、或いは慈悲・寛容である』という開発陣のスタンスはこの頃からあったのだ。
とりわけ今作の黒幕は『誰よりも主人公の事を知っており』、そして『誰よりも主人公の影響を受けてしまった』存在であり、その思想の根底にあるものや彼が狂ってしまったきっかけを知ると、決して割り切ることができない一つの事実が浮かび上がることになる。
全ての始まり…『パワポケ1』の時点では些細なボタンの掛け違いだったかもしれない。だがソレが一つ、また一つと新たな綻びを生み、ソレが歪みとなって世界を揺るがす大事件になったのが本作『パワポケ3』の物語なのだ。以降の作品もリリースされている以上、この物語は所謂『正史』となるわけなのだが、一方で本作は『パワポケ1における最悪なルートを辿った先にある未来』の物語だと言ってもいい。
誰よりも主人公という存在を妬み憎む一方で、誰よりも主人公に憧れを抱き続けていた今作の黒幕は、良くも悪くもエゴに満ち溢れた『人間らしさ』を突き詰めたラスボスであり、シリーズファンからも非常に高いヘイトを向けられながらも、ソレに比例するように非常に高い人気も獲得している。様々な葛藤やすれ違いの末、拗れに拗れた『腐れ縁』という名の因縁にケリをつける今作のラストバトルはBGMや戦闘後の描写も相まってシリーズ屈指の名シーンとして挙げられることも多い。
(展開によっては戦闘が発生しなかったりもする)
ところで、最初にも軽く触れたように『パワポケ』は本来『パワプロ5』のスピンオフとして誕生したシリーズである。特に最初期の作品である『パワポケ1』『パワポケ2』ではそういった方向性がまだ根強く残っており、パワポケ特有のダークさこそあったが、まだあくまで『パワプロのスピンオフ』の域を脱却できていなかった面も感じられる。
そんな中でリリースされたのがこの『パワポケ3』、パワポケ1・2というパワプロ5の延長にありながら、『サイボーグ』という(少なくとも当時の)本家パワプロでは奇天烈過ぎて手を出さないであろう要素を登場させ、『ダークでアツいシナリオ』を繰り広げた本作はまさしくその後の『パワポケ』の方向性を決定づけた作品と言っていいだろう。
また、ダイジョーブ博士や加藤理香といった『パワプロ』初出のキャラは今作を最後に登場しなくなるほか、今作は後のシナリオにも強く影響を与えている。『パワポケ5』では今作で壊滅した組織の残党が登場し、『パワポケ6』では火星オクトパスの一部面々のその後が描かれる。3の作中で唯一残された謎は『パワポケ11』で詳細が語られ、サイボーグ技術は『パワポケ8』にて新たな事件を引き起こしたほか、その技術のせいで今作のある人物が『パワポケ12』に深く関わることに…。そして火星カンパニーの願いはやがて最終作『パワポケ14』の主人公へ託される…といった繋がりからもわかる通り、本作は『パワプロの延長であったパワポケ初期3部作の完結編』であり、そして『パワポケがパワポケシリーズとして完全に独立した作品』なのだ。
そして、パワポケは昨年発売されたNintendoSwitchの『パワプロクンポケットR』で(リメイクという形だが)ついに10年越しの復活を遂げた。10年というブランクは短いようで非常に長く、おそらく『パワポケR』で初めてこのシリーズに触れた人も少なくなかろう。そういった人にこそぜひともパワポケが本当の意味で『パワポケ』になったとも言うべき本作に触れていただきたいのである!!
(そしてあわよくばパワポケ3のリメイクに繋がってほしい…)
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