さてさて、ゲーム記事としては2回連続でATLUS作品になってしまうが気にしない!今回語るのはPS4/Switch用ソフト、『ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ』である!正式名称が死ぬほど長いのでここからは公式略称の『P5S』と呼ぶことにする。
今作は2016年に発売された『ペルソナ5』の『続編』である。
開発はオメガフォース…つまりコーエーテクモゲームスの無双チームが担当。
過去のペルソナシリーズにおいてP4→P4UやP4→P4Dのようにスピンオフ作品が実は本編の後日談だったというパターンはそこそこあったものの、今作はそれらとは違い発売前の時点からハッキリと続編であると明言されている。
さて、まずは最初にハッキリ言っておこう。
今作は『無双』ではない。やってみればわかるが、ゲーム性からして根本的に無双とは別物である。というか発売前は散々『ペルソナ無双』だなんだ揶揄されたが、公式が今作の事を無双に例えたことは(おそらく)一度もない。
今作はハナから無双とは無関係なゲームなのである…のだが、まぁ『コーエーテクモが開発する』『一度に沢山の敵を相手取る』『キャラゲー』って言われて何を想像するかっていうとそりゃ『無双』が真っ先に浮かぶので仕方なしである。
コマンド式RPGだった本家ペルソナとは違い、こちらは自由にマップを移動し戦えるアクションRPGになっている。基本的な操作方法は□が通常攻撃、△が特殊攻撃で、□□△・□□□△といった風にコンボが繋がる。要は無双と同じである。
フィールド上にはシャドウが存在し、こちらから攻撃を仕掛けるor敵に発見されると戦闘開始、大量のシャドウが出現して襲い掛かってくる。
つまり、溢れんばかりの敵が出現するのはあくまで戦闘中のみ、戦闘が終了すれば再びフィールドには僅かなシャドウしかいなくなる。
ここで大多数のプレイヤーは『今作は普通の無双とは違う』と気付くのである。
というか純粋なアクションの無双とは違い、P5SはあくまでアクションRPGである。よくよく考えてみると上述した戦闘の流れも一般的なRPGにおけるシンボルエンカウントのソレだし。
戦闘はとにかくド派手、ペルソナ5の戦闘をそのままアクションゲームにしたような感じであり、溢れんばかりの大量のシャドウたちと戦うことができる。なお、ペルソナ5では戦闘時に全てのシャドウが悪魔の姿に変わっていたが、今作では一部シャドウ姿のまま戦う敵も出てくる。
(まぁ悪魔姿じゃないヤツは一撃でノされるレベルの雑魚だケド)
戦闘システムでは『無双シリーズのゲージ削り』と『ペルソナシリーズのプレスターンバトル』が見事に融合している。敵の弱点属性で攻撃することでゲージが削れ、完全にゲージを削り切ることができればダウン状態となり、シリーズ恒例の『1More』や『総攻撃』に繋げることができる。中型以上の敵であれば総攻撃時に特殊な演出も流れる。
攻撃に使える物理・魔法スキルは本家と全く同じものが登場。
スキルは物理ならHP消費、魔法ならばSP消費で発動するが、これは『普通にスキルを使う場合』の話である。今作では『戦闘中にスキル画面を出してスキルを発動する』以外に『コンボの〆でスキルを発動する』ことができる。
コンボ中に発動するスキルはHP・SP消費もないため、気軽に使うことができる。これらは必ずコンボの〆で発動し、どのコンボで発動するかはキャラクターによって異なる。ジョーカーならば□□△△、□□□△、□□□□□△△のコンボの終わりにスキルが発動する。
ここで発動するスキルはペルソナによって固定であり、例えばアリスなら順番に『コンセントレイト』『マハムドオン』『メギドラオン』となり、マーラ様なら『ワンショットキル』『マララギダイン』『チャージ』となる。これが各ペルソナの使い勝手に大きく繋がっている。
ジョーカー以外のメンバーはペルソナの付け替えができないため、コンボ中のスキルがそこまで大きく変わることはないものの、終盤にはラクンダ→マハラクンダやジオ→ジオダインのように上位スキルに強化されるため置いて行かれることはなく一安心である。
ちなみにスキル画面からのスキル発動はHP・SP消費が必要とはいえ、選択中に時間が止まるため、よく考えながらスキルを選ぶことができる(ペルソナの切り替えもここで可能)。
雑魚戦の度に普通にスキルを使っていくと当然SPがカツカツになるため、コンボ〆のスキルを利用して戦うことが多くなる。よって今作では『敵の動きのパターンを見つけ』『そのスキに的確に弱点を突きゲージを削り』『総攻撃で一気に叩きのめす』という無双とペルソナをミックスさせたバトルを行っていくことになる。
さらに戦闘中では周囲の足場や仕掛けを利用して攻撃できる『ファントムムーブ』も存在、怪盗団らしいダイナミックな戦術で立体的に戦える。
プレイアブルキャラクターはP5無印のパーティメンバー+新キャラ2名、大多数が最序盤から加入しているため最初からほぼフルメンバー、好きなキャラを使用可能。パーティメンバーは4人までで、戦闘中はいつでも十字キーでバトンタッチできる。各メンバーはそれぞれ明確な個性や強みを持っており、『モルガナカーに変身して暴れまわるモナ』や『カウンター主体のフォックス』など一味違った遊び方が楽しめる。パーティメンバーの入れ替えは戦闘中以外ならいつでもできるのも便利で嬉しい点。
ただし、アクションゲームになったとはいえペルソナはペルソナである。
弱点属性に被弾すれば一瞬でやられるし、祝福呪怨への耐性を疎かにすると飛んできたハマムドで(運が悪いと)即死、ペルソナや装備の強化をサボると普通の雑魚戦ですら余裕で死ねる。当然である。
シリーズファンにとってはお馴染みの難易度だが、結果的に『ただの無双だと思って安易に手を出した結果あっさりイゴる*』というプレイヤーが相次くこととなった。
*イゴる
ペルソナ3以降のシリーズ作においてファンがよく使う用語で、
早い話が『戦闘でゲームオーバーになる』という意味である。
P3以降ではゲームオーバー時に『ベルベットルーム』および
そこの主たる『イゴール』が登場することから、略して『イゴる』と呼ばれるようになった。
類義語に『パトる』『hageる』などが存在、大抵ATLUS系列の作品で使われる。
(P5Sはイゴール不在の暗転ゲームオーバーなのでイゴるは誤用な気もしないでもない)
まぁ今作は(最高難易度以外だと)ジョーカー死亡でゲームオーバーにならず、かつゲームオーバーになってもすぐ再開できるのでシリーズ的にはかなり有情な方なのだが。
初期で選択できる難易度は3段階だが、2段階目でも普通に難しい。
ちなみに最高難易度でも全ての要素の引継ぎが可能になっているが、簡単になったかというと全くそうではなく、むしろ『全味方・全ステータスカンスト前提としか思えない難易度』と化しているため、逆にシリーズ最難関まであり得るレベルである。
シリーズ恒例のペルソナのシステムも当然存在。
ペルソナの種類自体は本家に比べると少な目であるが、
それでもペルソナ合体の面白さは変わらない。
(体感だが本家に比べて合体事故の頻度が妙に高いような…)
新システムで『仮面の融合(ペルソナ強化)』というものが追加。
これは『PP(ペルソナポイント)』という専用のポイントを消費して好きなペルソナのレベルを上昇させたり、各能力値を強化できるというもの。
PPはペルソナを消滅させた際にもらえるポイントであるが、敵を倒したときに所持数上限をオーバーしている場合にも加算されているため、思った以上に簡単に溜まるのが特徴である。コレがあるおかげで、今作では本家よりもずっとペルソナのレベル上げが簡単になっている。
オマケに、ペルソナ取得時に所持数上限をオーバーしており消滅してしまった場合は、そのペルソナが未登録のものだった場合に限り一度だけ無料でペルソナ全書から引き出せるようにもなっているため、今作のベルベットルームの利便性はシリーズでもダントツクラスである。
ちなみに今回は初期習得スキル+レベルアップで習得するスキルに限り、後から無条件で思い出すことができるようになった。これも地味ながらかなり大きな変更点である。
ストーリーは『ペルソナ5(無印)』のED、もしくは『ペルソナ5 ザ・ロイヤル(P5R)』の通常ED*から約半年後の物語…とはいえ、ベースはP5無印となっており、P5Rの追加キャラである芳沢や丸喜については一切言及されない。
(開発時期の都合上Rの要素は入れられなかったらしい)
*P5Rの通常ED
追加ルートのフラグが立てられなかった場合のEDで、
早い話がP5無印と同じED。
今作単体でもシナリオが完結するようにはなっているものの、P5無印に登場した固有名詞(オタカラ・パレス・改心等)が普通に飛び出すので少なくとも『P5』『P5R』『P5A(アニメ版)』のいずれかを先にプレイ(視聴)しておくのが望ましい。終盤にはP5の黒幕についても言及されたりするので要注意。
(最低限の情報は説明してくれるが1から覚えるのはややキツイ)
今度の舞台はなんと日本全国、P5無印の舞台であった東京を飛び出し、北は北海道から南は沖縄まで日本を縦断する。全国で発生する改心事件の解決のため、心の怪盗団は全国を巡る。北海道・宮城・東京・神奈川・大阪・京都・福岡・沖縄…心の怪盗団が訪れる都市は現実の地形を再現している箇所もあるため、その地域のプレイヤーならばきっと楽しめるだろう。
(まぁ福岡と神奈川はほぼ通り道程度の扱いだケド…)
都市に現れる異世界(ジェイル)は全てその都市がまるまる異界化したような内容になっていて、これまた盛り上がる。
全国を巡るという内容であるためか、今作のカレンダーシステムには演出とシナリオ以上の意味合いはない。ジェイルのボスを倒すまで日付は進行しないし、特定の行動で日付が進んでしまうということもない一般的なRPGらしいシステムになっている。
都市のシナリオでは各パーティメンバーが目立つような内容となっており、P5無印のオマージュのような部分も多い。ただし、怪盗団の仲間達は無印の戦いを通して人間的に大きく成長しており、P5無印をプレイ済みだと感慨深くなるような内容となっている。
また、それぞれのダンジョンではその時に目立っているメンバーを使うと有利になれるような作りになっているため、よりシナリオに没入しやすくなっている。
スカル・モナ・クイーン・ナビの4名は特定の都市でピックアップされること自体はないものの、それぞれ今作からの新キャラクターとの絡みが多めになっているため、決して空気のような扱いにはなっていない。
今作からの新キャラも複数登場、特に長谷川警部補は近年のペルソナシリーズには不足しがちだった『人生の酸いも甘いも嚙み分けた大人』であり、事実上今作の影の主人公ともいえる。同様に謎のAIソフィアも『心』というP5のテーマにこれ以上なくマッチしたキャラで、今作には必要不可欠である。
メインとなる上記二名以外も魅力的なキャラは多く、あくまで『警察』として正義を成そうとする鏑木管理官や、ネタバレなので名前は伏せるが怪盗団と対立する『改心事件の犯人』などなど、どれも印象によく残る。
今作の敵は、情状酌量の余地がほぼなかったP5無印の敵たちとは異なり、『過去の挫折から歪んでしまった一般人』というような描かれ方をしていて、怪盗団がこれまで行ってきた『改心』というものについてもう一度考えさせられる内容となっている。
その中でも特に『改心事件の犯人』は動機・手段共に心の怪盗団と重なる面が多く、ある意味『怪盗団のif』ともいえる存在となっている。この両者の激突シーンは今作屈指の名シーンである。
P5無印から続くテーマを見事に発展させた今作のシナリオはまさにお見事である。
ペルソナシリーズ全体で定評のあるBGMは今作でも変わらない。P5無印の流用・アレンジ・新曲と幅広くカバー。
アレンジ曲では『Last Surprise』『Rivers in the Desert』などの人気曲がチョイスされている。更に『Blooming Villain』はボス前のムービーから流れ出すため、ムービーの演出に合わせて転調するようなアレンジがなされている。こういったBGMはペルソナシリーズだとかなり珍しい。
流用曲も予告状を出したときに『Life Will Change』、新キャラのペルソナ覚醒で『Will Power』という風にここぞというタイミングで流してくれる。
新曲も戦闘曲である『What you wish for』『Axe to Grind』をはじめとして良曲揃い、特に『Counter Strike』は流れるシーンも相まってとにかく燃える。
今作は確かにジャンルこそ大きく変わったものの、そのゲーム性や世界観などは紛れもなくペルソナ5の続編にふさわしい内容となっている。
続編ということから、前作をプレイしていない人にはややオススメしづらいという点はあるものの、少なくとも前作を遊んだプレイヤーならば100%楽しむことができるのは間違いない。
今作もまた、最高のゲームだったのである!
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